02
お姫様の朝はそんなに早くない。
侍女が忙しなく準備してるのに、お姫様に起きられちゃ大変だからね。
って言うか、俺も侍女じゃん。
どんな仕事するべきなんだろ。
あ、今俺は姫様のリビング?ルームで寛いでます。
主人見てない時に何サボってんだとか言わない。
主人の生活を見て初めて仕事がわかるからね。
まあ、凄く酔いそうなんだけども。
人の歩行って実際かなり揺れるのね。
結局は慣れるまで目を逸らしていた葛木と申します。
さてさて姫様観察日記初日。
日の出と共に朝起きて叔母さんメイドにお召し替えを手伝って貰います。
ヴァオラ視点だからどうやって着せてるのか分かんねぇな。早速仕事にならんぞこれ。
着替え終わったら直ぐに食事。
ただ、何処か食堂とかに行く訳でもなく、見るからに美味しい料理を作るであろう、膨よかな体型のおっさんが部屋に持っていらっしゃった食事を食べる。
あ、ちゃんとシェフ毒味するんだ。
今日のご飯は黒くて大っきくて硬そうな…パンと野菜がドロドロで栄養も無さそうな不味スープ。
味覚共有は嬉しきかな無い様です。
尚、机の下にあったカトラリー一式は封印させて頂きました。食べませんよ?振りじゃありませんからね。
正直拷問だと思います。
これ姫様の食事だよね?肩書きに偽り有り?
つかシェフ、お前実家帰れよ。
そういや、ぼっち飯だけど兄弟とかはいないのだろうか。
パパンママンは忙しいとか色々有るかも知れないけど、皇族なんだし兄弟は流石に居ると思うんだ。
だって皇族だよ?
……弱肉強食蹴落とし合いの皇位争いパティーンですか?
うん、深く考えない様にしよう。
飽く迄も俺は侍女。
下手な事をしなければ、巻き込まれますねはい。
何たって一心同体?ですからね。
畜生め。
さて、飯も食い終わったご様子。
次は何をするのかな?と見ていましたらお勉強タイムらしい。
『姫様、今日は数字のお勉強から始めましょう。』
ほう、数学ですかな。
これは異世界チートの見せ所ですかな。
我に任せれば忽ちヴァオラ嬢を天才にして見せましょうぞ。
『では、覚えてる内容を確認しましょう。』
『はい、1、2、3、4、5、6、7、10、11…』
おいおい、姫様や。
「8」と「9」が抜けてますぜ?
いやまあ可愛いんだけd…
『はい、よく出来ております。では今日は…』
「ふぁっ?!」
いやいや待て待て、それは可笑しい。
確実に間違ってる。
俺が合ってる?え?え?
もしかして8進数?!
『では、4+5は?』
『はい、11です!』
…俺この世界でやってける気がしないわ。
まあ、そんな事で躓いて、人生棒に振るのはじっちゃんがダメだって言ってた気がしなくもないから、頑張って授業について行きました。
もうね、地球の常識は忘れる事にしました。
ガチで「8」と「9」が反射的に出てきてしまう癖はどうにかしないとな。
そんな破茶滅茶な算数教室の時間は過ぎまして、続きましては歴史のお勉強。
と、言ってもおの付くバカのヴァオラに小難しい事を溜め込んでも抜けてくのがオチって分かってるのか、簡単に噛み砕いた内容を反復させてるってのが正しい。
内容は、
1.改めましてこの国の名前はユルートレピア帝国。
2.建国から1000年以上ある強くてデカイ国らしい。
3.隣の国とはあんまり仲良くないけど、今は落ち着いてる。300年程前にウチが持ってる銀山を巡って争ったそうな。
4.大陸を端から端まで通ってる、長くて大きな商人の道があって、銀の道って言うらしい。
5.その道の端っこがウチ、ユルートレピア帝国の首都だから人は結構集まる様子。モノの流通は良いそうだ。
他にも特産品がどーたらこーたら言ってたけど、其れは割愛。
重要なのは戦争の可能性があるって事と、いざとなったら銀の道で亡命するって事かな。彼処は警備結構ガバガバらしいし。
友好国とか治安が良さそうな国は随時チェックかな。
あ、ついでだから話すけど、通貨は2つあって。
此処ユルートレピア帝国のみで使えるユルート通貨。
銀の道とか万国共通で使えるソル通貨。
どっちも銀貨で、銀の保有量はユルート通貨の方が多いそうな。銀山万々歳です。
価値的にもユルート通貨の方が高いそうです。
如何でも良いわ帰れ。
値段設定とかはまた8進数らしく奇天烈ですけど。
もう生きる気力なくすよね。
そんなこんなあって昼ご飯。
カチカチパンは相変わらずに子ウサギ?ど思われる小動物の丸焼き、時代的に高価であろう香辛料をこれでもかとぶっ掛けたメインでまあ辛そう。緑だらけで彩りの無いサラダ、栄養バランスの概念が皆無ですね。
そして「待ってた?」と言わんばかりに颯爽と現れるスープ。
待ってねぇから。帰れ。
つか、この量晩飯じゃね?
と、思ってたら午後は身体を動かすダンスレッスンだそうだ。
あと礼儀作法。
まあ、飯食った後は眠いからね。
身体動かして正解だと思います。
因みに、ヴァオラ姫はダンスが御上手らしい。
教師の話では歌も音楽器も嗜んでるとか。
お前そっちの道行けよ。
皇族辞めて踊り子でもなって逃げちまえよ。
多分人気出るから。美少女だし。
んで、礼儀作法は俺も真面目に勉強します。
と、言うものの姫様が主なので侍女設定の俺には方向性が違うのであんまり役に立たなかったけど、言葉遣いとかは勉強になりました。
使えるとは言ってない。
時が過ぎるのは早いもんで、もう晩御飯の時間がやって参りました。
メニューは相変わらず、パン、スープ、サラダに今度は豚かな?のステーキ肉。量は昼に比べて控えめ。
後は自由時間で読書をしたり、歌を歌って暇を潰し、眠くなったら御就寝。
因みに歌はガチで上手かった。
一歩も部屋から出なかったなこいつ。
「お帰りなさいませ、ヴィオラ様。」
「ただいま、カツラギ。」
勿論、優秀な俺はサボってる様子など見せない。
ちゃんとベッドから少し離れた場所で、メイドさん達が見せていた完璧な礼を、見様見真似でして待っていますよ。はい。
「じゃあ、私は今日のことをまとめます。」
と、一言述べると、某猫型ロボを思わせる4次元から、何処からか取り出したノート程の厚さの本にツラツラと今日の覚えたミミズを走らせる。
成る程、これが記憶の整理ね。
時々、「あれ?」って言ってる事があるのか可愛らしい。
口出しは如何かと思いつつ、教えてあげるんだけどね。
姫様馬鹿で困るのは俺だし。
纏め終わったら今日の内容を本棚に。
使わなそうな内容は真っ白な床にポイしてる。
って思ったら投げた本が「スー…」って音を立ててる様な立ててない様な擬音語を立てて消える。
あ、一応持てた。
へー。でもこの内容結構重要そうなんだけど、良いのかな。
其れから暇潰しの絵日記タイム。夢に部類されるものだと勝手ながら推測してる。
今日は大きなダンスホールでお腹が空くまで踊る夢らしい。
お腹が空くまでってのがまた可愛いね。
何が悲しくて姫様の絵日記の感想言わなきゃいけないんだろ。
しかし、俺要らなくない?




