終わる日常――(そして世界は動き出すのですかーっ!?)
どうも、毎度のハカタです。遅筆なハカタです。
毎度遅くなってすみません。
そう言えば一年も経っていることに気付きました。これで24話目です・・・。
一章、いつ終わるんでしょうね・・・。
この日を最も端的に分かりやすく言うと・・・。
――約束された災厄の誕生日。
だろうか。誕生日って、一応クーの誕生日である。
止める術は、いくらかあるが・・・。至極面倒なので却下させて頂いた。高みの見物といく。クーも状況は知っているだろうから、片方は対処してくれるだろう。
因みに、実益と慈悲を含めて、一応動くつもりはある。
止めるとは言ってない。
という訳で、早朝である。準備と緊張により徹夜したが、更に本日の予定に不安を覚えて、眠気が全く無い。
3人とも寝る必要も無く、俺が気絶させるといった情事も発生していないので、起きてはいるが、クーとブラウニーは地下にいる。
準備万端と言ったところで、朝飯を作り、ついでにおやつのデザートも作る。異世界でほぼ娯楽なんてものが無い中、デザートは最早欠かせない贅沢となりつつある。これも《料理》スキルのお陰である。食材は良いものを使おうとすると高いからなあ・・・《料理》スキルはそういうところ全部無視して、絶品料理が作れるから有り難い。
そうしている内に、手がサクサクと動いて、朝飯を完成させる・・・頃には後ろでつまみ食い大会が始まっていると・・・。美味いよな。それは、分かる。今度から料理に《シールド》張っとこうかな。今度が来るかも分からないが。
自分で作ったんだが、自分で作った気がしない、しかもつまみ食い済みの朝飯を4人揃って仲良く食べる。朝なので軽めだが、やはり超をいくつ付けても足りないくらい、美味い。
いつも通り綺麗に平らげられ、食器を片す。イースが突然、「水は私の出したのしか使わせません!」とか、意味深何だかそうじゃないんだか良く分からない発言をしたのを軽くスルーしつつ、皿を水で流す。
そして、イロンと戯れつつ、イースといちゃこら無駄話に花を咲かせる。
何の変哲も無い日常だ。
「マスターって、トンでもないのに、抜けてますよね、本当に。」
今日のことで、少し神経質になっていたからか、少しイースの言葉に引っかかりを覚えた。
「トンでもない・・・か。イースは、俺が怖かったりするのか?」
別に、トーンは変わっていないが、少しだけ普段と違った方向性を孕んでいたのは間違い無い。
イースの瞳が一瞬だけブレる。いや、彼女の過去を知った今、常にその瞳に影が差している印象すらある。
「マスターに対して恐怖を抱かない方が可笑しいレベルですね。」
そんな俺の心情を知ってか、それとも全く知らずか、軽いノリで結構グサりと来ることを言われた。
「酷い言われようだ。」
おどけたように言う。イースには一定の信頼を置いているから、内心ショックだというのは、おくびにも出さない。
「まあ、マスターですからね。」
「結局最後はそれか。」
フォローしてくれるとか、ちょっと期待してた俺がいる・・・。
「それを抜きにしても、良いじゃないですか、ミステリアスっぽくて。私は好きですよ、そういうの。」
イースは蠱惑的に微笑む。なんとなしのフォローが最後に入った。ちょっぴり喜んだ俺は、イースの掌の上か否か。
というか、地球出身の俺からすると、ミステリアスの象徴、精霊にそれを言われるのは、甚だしく遺憾であると言っておこう。心の中で。
「なるほど。・・・いや、そういうレベルなのか?」
なんだかはぐらかされた様な気分だ。
「・・・正直、振古神の一柱である可能性も考慮に入れてます。」
ああ、なるほど。少し地球感覚が過ぎたのか。この世界には本当に人類を超越する神とも呼ぶべき存在が、それなりに居るのだ。しかも、イースはその振古神、つまり太古の昔から生きる神の一柱を知っている。
え、つまり俺って8割方神格化されてるってことかよ。
「・・・振古神って確か女神ばっかで男神って五柱ぐらいだった気が・・・。」
「あ、そう言えば、その内四柱死んでますから・・・。マスター、若しかして男装ですか?!」
因みに、男神最後の一柱は、相棒の女神と必ず一緒に居る事が知られている。どうでも良いか。振古神だからと言って長生きと言う訳ではないので、ほぼ生き残っていない。というよりラグナレクで居なくなった神々が多い。天神や魔神の様に封印された神も少なくない。
「何故そうなるっ?!」
この後、俺イコール振古神という発想からの脱却を計れないイースと小一時間言い合いを続けていた。
必要性の有無を問われると悩ましい会話を終えると、いくらか緊張が解けた。良いコンディションで事に臨めそうだ。
《探知》が捉えていた精霊王の反応が消えた。
それに続けて、クーの反応も消える。
「・・・?」
イースが不思議そうに首を傾げる中、イロンの突っついていた鉄剣をひょいっと持ち上げる。
まだ《浮遊》の拙いイロンがフラフラと蛇行しながらも、鉄剣に引っ付こうとするイロンも持ち上げてやる。
「さってと。」
戦場よりは近いが、それなりに遠いところから、力の波動が生まれたのを、イースが感じたらしく、イースの体が波打つ。
「イース。」
呼びかけるその言葉に、イースが「何でしょう?」と振り向く。何でもない風を装ってはいるが、目がいつもより若干鋭く、それでいてどこか戸惑っている表情が窺える。
「逃げよう。」
「・・・はい?」
イースの表情は、雄弁に語っている。いや、マスター、此処下手な聖域とか神域とかよりよっぽど強固な防御壁と、頭可笑しいレベルの反撃魔術組み込んでるじゃないですか。なのになんで此処から出て逃げるなんて、いやむしろ此処にいることが最大の逃げじゃないんですか・・・と。
確かにそれは一つ正解ではあるんだが、懸念事項がいくつかある。俺もそんなに頭がキレる方じゃないから、何か見落としとかあったら目も当てられない。
未来予知だとリンテル消失で済んでいたが、俺が引っ掻き回したせいで世界滅びましたとかになったら嫌だなあ・・・。そこまでは流石に無いと願いたいものだ。
「とりあえず、屋敷を出て、森に入る。全速で、な。」
「了解です、マスター。」
怪訝な表情ながらも、俺に従い屋敷を出る。当たり前だが、神となったイースは勿論、《魔王》や《天使》などでステータス強化された俺も、かなり速い。
が、今回は《天空魔術》と《嵐撃魔術》でかっ飛ばさせていただこう。《天空魔術》がヨット、《嵐撃魔術》が風の役割をすると言えば、分かるだろう。《天空魔術》が馬車、《嵐撃魔術》が馬と言っても良い。
因みに、防御には同じく《天空魔術》を使用している。
「うわー、流石マスター容赦ない速さです・・・。」
呆然としているが、これでもG軽減のために加速には気を遣っている。・・・イースはそもそも関係無いのか、それとも神だからなのか平然としている。
ちなみに、この調子でも、リンテルを完全に《千里眼》の範囲外にするためには、15分以上掛かる。ま、そこまで行くつもりも無い。
因みに、俺がイースと一ヶ月歩きながら旅をした訳だが、時速3kmで一日10時間、30日歩いたとして、900kmな訳だが、この速度だと・・・えっと・・・恐らく7分ぐらいで着く。世知辛いな。
実際ステータスがどうあれG負荷が心配だし、《千里眼》の有効範囲からリンテル国が抜けてしまうのも不安なので、10分ぐらいのところでストップする。ゆっくり減速してるからレッドアウトの心配も恐らく無いはず。
《一隻眼》で事前の調査はしていたが、ひねくれてヨレまくった老齢の大樹が大自然を想起させ、森全体に香気を放っているように感じられる。
その樹に寄りかかり、一応魔術で周りを固める。
ふとイースを見ると何か深刻そうな顔をしている。瞳の奥には不安も見える。何かあったか・・・?
「マスター・・・。」
震える声を発するイースは、まるで捨てられる子犬の様な視線を俺に向ける。
何だ?本当にどうしたんだ。イースがここまで気が弱いのなんて初めて見たぞ。こっちまで凄い不安なんだが。
「マスターは、私を捨てませんよね?」
「は?」
全く意味が理解できないままに、イースの腕が俺の体を抱き、顔は胸に埋められる。この状況をどうにか咀嚼しようと、賢明に頭を動かすが、全く理解できない。どうしてそういう結論に至ったんだイース。
イースの思うがまま、半ば逃避的に色事に勤しんだ俺だが、状況は今一つなのには変わりなく、《千里眼》を片目だけで使いながら、イースの復活を待っていた。
《千里眼》の有効範囲は4000km弱。対して、今動いた距離は1800km弱。更にリンテル全体で端から端まで200kmないので、状況は全く問題なく見通せる。
一頻り余韻に浸っていたらしいイースが顔を寄せて、キスをねだる。心なしか少し安堵している様子だ。
《千里眼》によれば、まだ俺が動くときではない。その前にイースの誤解と思わしき問題を解決しておかないとな。
「で。」
「はい。」
くるっと回って俺に全体重を掛けてくる。まあ、体重知れてるけどな。幼女(見た目だけ)だし・・・。歳のことなんて考えてないから、睨むのやめろ。
「捨てるなんて話はどっから出てきたんだ?」
今更ながら、イロンが俺達のことをじっと見ていたのに気付き、情操教育とか色々ヤバいんじゃないかと居た堪れない気持ちになり、語尾が早まった。
「えっと、その・・・。クーとブラウニーは捨てたじゃないですか。」
「・・・あー。」
何故か苦く笑いが漏れた。凄え愛されてるなあと思う。俺には勿体無いぐらいだ。
「クーはまだ分かります。クーはマスターに打算で体を捧げてたように見えましたから。でも、ブラウニーは最初こそ警戒してましたが、途中からマスターに恋していたように見えます。腹を押さえられたという事もあるかもしれませんが・・・。」
そう。その通りだ。俺もそう思っていたし、実際そうなのだ。
クーは夜の方面は相当の経験と自信があったようで、俺をそれで屈服させようとしていた節がある。屈服とまで行かなくても、クー彼女自身に俺が存在意義を見出すように努力していた。特に最初の方は顕著だった。結局上手くいかなかった上に、食事で逆に夢中になっちまってたけど。
理由は簡単だ。ブラウニーがあの屋敷でなければ生きていけないから。
まあ、それは良い。
「クーはイースの言った通りだ。ブラウニーは・・・どうなんだろうな。」
「え・・・?」
イースは困惑の表情を見せる。
そりゃそうだろう。ブラウニーには特に不自然な点や欠点なんてものは無い。
クーのようにこちらに必死でアピールしてきたり、イースのように愛情表現過剰となることも少ない。自分の立ち位置を良く理解しているらしく、大抵の場合は羨ましいと言って悔しがるだけで、こちらが不利益を被ることは無い。
食事の仕方も丁寧だし、仕草も流麗で品がある。加えてイースやクーと違った初心な反応は、どちらかと言えば好印象だ。
知って良かったのか、それとも知らないままの方が良かったのか・・・。
「とにかく、イースとは契約もしてるし、見捨てるとかそういうことはしないから、大丈夫だ。」
「本当ですか?」
じっと見つめてくる。ぎゅっと服を掴み、少し震えているのが可愛らしい。初恋では無いにしても、恋人なんかは初めて出来たイース。恋を知らないイース。
実際これ凄い破壊力高い。
齢40も超えるとさ、当たり前だけど、付き合う女性はほぼ「彼氏居ない歴≠年齢」になる。芸能人とかじゃあるまいし、20やらの年齢差での付き合いとかできないし、外聞的にもしたくない。
そうなると、付き合う奴等皆が、まるでルーチーンワークをするように、若しくは俺を査定するように接してきて、俺もそういう風に付き合うようになっていた。
それはそれで、良いんだよ。お互いにそれなりのルールを知ってる状態でスタートってのは、分かりやすくて良い。仕事で疲れた精神にも優しい。
最終的に、チキンスキルのせいで破局が多かったのは、聞かないで欲しい。泣けるぜチクショウ。
イースの年齢はどうでも良くって、こういう付き合いが凄く新鮮だった。俺も精霊の勝手なんて知らないし、イースも付き合い方なんて知らない。
因みに、恐らくだけど、異世界に来て仕事の人間関係から開放され、ストレスフリーになったことや、若返った事、不思議な付き合いだったこと、そして、イースの容姿が俺のチキンを治したんだと思う。半ば強制的に。
きっと、実際に体験してみれば分かるだろう。マンネリ化した交際から一変、ロリータと怪しい関係・・・。
100%捕まるな!
それだけ破壊力は高いんだがな・・・。
「・・・ああ、本当だ。」
すると、ジト目でイースが睨んでくる。
「今凄い間が空きましたけど・・・。」
イースに見惚れていたなんて冗談でも小っ恥ずかしくて言えないので、そっとキスしてやることにした。イースの場合、全体的に水なので、フレンチな感じのキスでなくとも、ちょっと色っぽく感じてしまう。
「んむ・・・こ、こんなので誤魔化されませんよ!」
やばい。イースが初心過ぎて可愛過ぎてもうなんかヤバい。しかし、これから世界・・・いやリンテル国の命運を分ける戦いが始まるので、パブリックな交わりをしている場合ではない。
「誤魔化すといえば、結局ブラウニーの件も聞いてませんし・・・。あ、いえ。マスターの個人的な嗜好に口を出すつもりはありませんが。」
おい、誰がロリコンだ。ちゃんと、正当な理由があるんだぞ?
ブラウニー、あいつは――
「――魔神だ。」
次回、神はうどん県を潰せます! お楽しみに!
(予告は本編と大きく食い違っている可能性がございます)
冗談はともかく、次回は神の眼です。最近神の眼多すぎて主人公影薄い・・・。




