観光とはつまり創造――(一話に詰め込みすぎて何て言えば良いのか分からなくなっただけ)
投稿したらブクマが減りました。ハカタです。ショボン・・・。
気を取り直して・・・。今回妙に長いです。前回短かったせいですかね?
・・・誤字修正しました。・・・前書きの(笑)
《不眠不休》は便利だが、違和感しかない上に、こうして過ごしていると、24時間って長いなあとか思ってしまう。まともに働いてないからってのもあるな。今は、冒険者活動休止中だし。
まあ、前も言ったように《不眠不休》スキルはパッシブスキルの中では珍しくMPを消費するので、俺以外が使うとMPがカツカツになってぶっ倒れるんだが。
朝飯を振舞って、戦地じゃない様なところを適当に《千里眼》で見て、観光している。情報の大部分を占める、視覚と聴覚がそこにあるような気がして、かなり観光って感じになっていると思う。
本当なら、イースとクーとブラウニーも伴って、4人で実際に観光スポットに行けたらと思うが、戦争中だし、ブラウニーは屋敷の外にはまだ出られないし、クーにも事情がありそうなので、実現は不可能だろう。
ちなみに、ベッドの上で寝ているような状態であり、イースが隣で寝ている。ただ、声を掛けられてもおそらく集中していて気付かないので、寝ているということにしている。目を閉じてても発動しますしね!
これで、連絡魔法とか入手したら、司令塔ができそうだな。
良く考えたら、俺、司令塔やるほどの人員持ってないわ。残念。
と、言う訳で王城を観光している。いやー。王城の観光とか、絶対させて貰えなそうだったからな。この機会に是非やっておきたかった事だぜ。・・・もう少ししたら王城自体無くなっちまうかもしれないしな。流石にそれは無いか。
王女が普通に美女である。良く考えても見ろ。うちの屋敷には、まともな(年齢の)美人が居ないんだ。ブラウニー以外。
つーか!家の奴等全員人外ですけど?!
そういう訳もあって、こういう普通の美女を見るのは久々である。
「それでは国を売れと言っているのと変わらないではありませんか!」
・・・・・・話してる内容はともかく。
「とんでもない。我々には、そのような意思はありませんよ。ただ、魔神様の復活に手を貸して頂きたいだけです。」
その場にいるのは、王族とその側近、そして、直前に発言した魔人のみである。締めて12人しか居ない。
「そうすれば、帝国との戦争の助太刀をして頂けると?」
「ですから、先ほどからずっとそう申しております。」
王妃の質問に、少しイラついたように答える魔人。
魔人と聞いて、良いイメージを抱かない人も居るだろうが、この世界においては、純人族より少しステータスが高く、容姿が少し変わるぐらいである。天人や、獣人、エルフなども、多少の能力の差はあれど、違いは無い。
まして、魔人の崇拝する魔神が巨悪であるなどということは、全く無い。この世界には何柱もの神がいるということは、常識であるので、一神教と言うものが存在しないのだそうだ。だから、そういう宗教関係の人から見ても、魔神はときに崇拝すべき対象であっても、嫌悪すべき対象ではない。
ただ、浅ましい事に、純人族と魔人との違いを最も簡単に示すなら、地球における白人とそれ以外のソレである。ただ、純粋な戦闘であれば、ステータス的に強い魔人が圧倒的に有利なので、直接的と言うよりは、ねちっこい嫌がらせが多い。
自由国家と謳われるアルデリカという国でさえ、裏では差別的なことが行われていると言う。
だからだろう。少々双方の態度が粗いのは。
「しかし・・・。」
危機的状況であるのにも拘らず、王は決断を出来ずに居た。うーん。観光のつもりが、どっかの間者みたいなことをやっている様な気さえしてきた。《千里眼》だけなら、結界を張られてしまえば、見えなくなったりするらしいんだが、《一隻眼》のせいで全部無意味なんだよなあ。更に、『無音化』という《結界魔術》の術式も、《順風耳》には何故か効果が無い。《一隻眼》関係あるか?それとも別の要因?
「聞けば既に街が5つ落ちたというではありませんか。使える手段は全て講じるべきだと、我々は思うのですよ。」
街が5つ落ちただと?そりゃ凄いな。どんだけ無双してんだ?帝国軍は。
「しかしっ!」
そこで、王女が嘆くように叫ぶ。問題は、魔神を復活させる方法にあるようだ。
魔人曰く、魔神復活の儀式には、多くの触媒が居るらしい。それは、物から、生物、死体まで様々であるそうだ。・・・俺、イース召喚するために魔力しか使ってないんだけど・・・。
まあ、精霊が特殊ってことで。
「何も、全てを差し出せとは言っていないのです。こちらとしては、至極真っ当な取引を申し出ているつもりなんですが。」
客観的かつ合理的に考えると、一旦この話を受けるべきだと思う。後で約束を反故にするかどうかはともかく。
確かに、飽くまで俺視点から見て、戦況は絶望的である。例えば、帝国軍の精霊がどんなに0~2歳であろうとも、奴隷の様に命令を聞いている限りは、軍として機能する上に、使い潰しても替えが利くのだ。無限に作り出せるわけではあるまいが、帝国としてはほとんど傷を負わずに戦闘データまで取れる。
それに、帝国軍には普通の軍もある訳で、加えてゴレームも居る訳で、ぶっちゃけリンテル王国が一人で頑張ったって負けない要素が殆ど無いのである。皆無と言っても、差し支えない。
「帝国に敗戦したらどうなるかは、そちらの方が良くお分かりなのでは?」
王族の顔色が悪いのを感じ取ったらしい魔人が、一気に畳み掛ける。
そして。
「では、詳しい話はまた後ほど。安心して下さい。すぐに来ますよ。我が精鋭達が。」
この会話のせいで、俺の戦争に参加する気が更に下がったのは内緒である。元々零だったのが、マイナスになっただけだが。
面倒なことをと思いながら、《千里眼》と《順風耳》の方向と距離を変える。
でも、普通の観光名所だったら、一人で行くよりは、皆で行った方が楽しいんだろうし・・・。観光名所が消える可能性があるのか。戦争で。・・・それは考えて無かったわ。平和な国、日本に居た弊害と言う奴だな。良い事なんだが。
「本気ですか?バルセス殿?」
という訳で、またもや怪しそうな会話をしている人を見つけましたよ。この建物なんだろうと気になったんだけど、覗いてみたら魔道具っぽいもの使って映像会議してましたよ。4人が。お偉いさんなのかね?
「ここまで来れば仕方ない事じゃよ、ドルクドよ。」
「そもそも、我々とは元来そういうものだろう?」
「・・・しかし、残った者達にはなんと・・・?」
「放っておけば良いじゃねぇか。そこまで気にする必要はねぇよ。何のためのあの条文だと思ってんだ?」
「・・・。」
「ドルクドよ。愚かなことは考えるな。お主一人居ようが居まいが、この戦況は覆せるものではない。」
俺が見てる中で、唯一映像でない、つまりこの場に唯一いる奴が、ドルクドと呼ばれている奴らしい。此処を離れたくないのか、机の下では手を強く握り締めている。
「・・・しかし。しかしまた、お主が生きていれば変わるものというものは存在する。」
「納得できません。」
「ドルクド、君のそういうところは長所だと思う。だが、同時に短所でもある。」
「つーか。なーにをそんなに悩んでんのさ?殺りたいなら、パーっと殺っちまった方が気は楽だと思うぜ?」
「これディギアス。言葉には気を付けよ。」
「うぃーす」
ディギアスとか言う奴、絶対反省して無いだろ。そもそも、話を理解しているのか怪しい。この会議に出席してるんだから、理解はしてるんだろうけど。まさか、わざとか?
「確かに。私もディギアス殿の様になれれば、悩むことなど無かったのですが。」
苦笑したように言うと、流石のディギアスも「おい、そりゃどういう意味だ」と怒ったように言った。
それから、何十分もして、そろそろ聞くのもダルくなってきたなあと思いつつも、のらりくらりとはぐらかすドルクドの手腕が面白くて、つい聞いてしまっていることに気付いた。だが。
「・・・分かりました。それでは、バルセス殿。また後日。」
「うむ。」
まるで、王族が折れたのと同じように、ドルクドも折れた。それからすぐに俺は別の場所に《千里眼》と《順風耳》の座標を動かしたため、結局ドルクドという人がどんなとこの、どのような役職の人間かは分からなかった。
いや、結構午前中から濃い観光スポットを巡ってしまったな・・・。やってることは、ただの覗きだが。まあ、気付かれたら極刑を免れないぐらいヤバいことしてる自覚はある。だが、家の3人でも誰も気付かないからなあ、この2つ。《天狐》とか結構色んな効果がくっ付いてるから、クーなら気付くかと思ったし、イースなら何でも出来そうだと思ってたんだが。ちなみに、クー自身に《千里眼》を発動してもらっても、やっぱり誰も気付けなかった。・・・まあ、神だもんね。神の持ってたスキルだもんね。一応。
「今何かー。すごーく失礼なことを考えてませんでしたー?」
「いや、考えて無いぞ。クーって一応神なんだよなーとか思ってただけだ。」
「神を神と認識出来ないって時点で相当ですよ?マスター。」
昼飯時になったので、皆を呼んで軽めの食事をしている。軽めなのは、俺の気分だ。俺以外は食わなくても生きていけるんだよなあ・・・。その内、そういうスキルも入手してしまうんだろうか・・・。自分の能力が恐ろしい。
「いやだって・・・俺でも勝てるぞ?」
「セン様が『俺でも』とか言っても、誰もその基準をクリア出来ないでしょうに。」
「イースとか?」
「その話はさっき結論が出てたはずですよ、マスター?」
そう言えば、今日の午前3時ぐらいにそんな話を湖の辺でしていた様な、していなかった様な。
「じゃあ、イースでも勝てる。」
「その基準もー、どうかと思いますよー?」
「そもそも、私とクーのどちらが強いかは――」
「「「それは分かりきってる(でしょ)(ますー)」」」
「ブラウニーまでそれで良いんですか・・・。」
「イースもちょっと謙虚過ぎるんじゃないか?」
「全て、マスターの力ですから。」
「つまり、結局セン様が一番ということね。」
「あらー。そんなこと言ったらー。私達も一応ー、主様の傘下に入ってるんですけどー?」
イースと同様、こいつらにも一応、様付けはやめろとか、主様は止めろとか言ってみたんだが、そういうところの命令だけ聞いてくれない。
ちなみに、基本的に俺が言った事には忠実にしてくれている。色んな方面で。
え?チキン?何ソレ?
「・・・マスターですからね。」
「主様ですからー。」
「セン様だものね。」
「お前ら3人で俺に精神攻撃仕掛けてくんな!」
地味に人外認定されている様で辛い。
「「「??」」」
しかも自覚なし!
イースなんかは首を傾げながら、昼食をあーんしてくるし。
それはともかく。
「暇だ。」
「その台詞気に入ってます?マスター。」
「やることが何も思い付かん。」
「まー。純人族ってそう言う種族ですよねー」
どういう種族だよと聞けば、四六時中、年百年中仕事やら遊びやらをして退屈を紛らわす種族だという認識らしい。
「まあ、精霊なんかは100年程留まってても別に暇とも思いませんしね。」
「うーむ。これが種族間差と言う奴か・・・。」
「どうします?吸血鬼とか呼んで、吸血鬼にして貰います?」
「・・・それって、思考までガラリと変わるのか?変わっても嫌だし、変わんなくても問題だぞ?・・・しかも、精霊でも獣でもねぇぞ。」
「我侭ですねー」
「だが暇だ。」
「イース様と模擬戦でもすれば?」
「街が壊れるどころか、国の1つや2つ壊れそうですけどねー。」
「さらに、セカンド・ラグナレクとかになったりするかもですよ?」
ラグナレクっていうのは、神々が戦ったという地獄の時代を指す。戦いそのものを指すときもあるが、300年間ずっと戦っていたらしいことを考えると、時代を指すと言われたほうが、こちらとしてはしっくりくる。
「ラグナレクですかー。あれは酷かったですねー。」
「クーも参加してたのか?」
「まさかー。まあ、スーちゃんがうざかったので5万回程殺しましたがー。・・・・・・まだ生きてますからねー、あの根暗女・・・ちっ」
「あれ?今絶対クー様から聞かないような毒舌が・・・?」
「なんのことですかー?」
クーはあんまり怒らせないようにした方が良いのかもしれない。
「そう言えばー、主様がやりたいことは無いんですかー?暇潰しにー。」
うむ。無理矢理で露骨な話題転換。
しかし、俺のやりたい事か・・・。
異世界と思われる(今更思われるなんて使うのもどうかと思うが)ところに来て、最初の30日は、生きるための『住』を求めていた。そして、これまでは、その住も含めた衣・食・住の安定を目指してきた。冒険者という職業も、金を貯め、「衣・食・住」を安定させるためにあった。
正直に言おう。もう俺のステータスを全て駆使すれば、殆ど敵無しだ。《魔王》、《天使》、《勇者》のスキルによって底上げされたステータスは、イースやクー程に化け物ではないが、高位精霊であったころのイース程度の力はある。それでも、ブラウニー(Lv0)にすら劣るのだが。
まあ、合法非合法、道徳非道徳を問わず、この世界で生き抜く基盤は最早磐石と言えそうである。一般人から逸脱したレベルで。
じゃあ、暇潰しに何をしようかと言うと、昨日のこともあるし、余り残虐な光景を見るようなことは避けたい。見たとしても、ソフトなものから段々とハードなものにしていきたい。でなければ、身が持たない。
だからと言って、屋敷に居ても暇だし・・・。
「ん?そうか。何か作るか?」
せっかく、《無限創造》という馬鹿げた才能を持っているのだ。
無限創造LvMax(0)
MPは無限となり、業力は2倍になる。
創造系スキルの限界を突破する。
この、「創造系スキルの限界を突破する。」というのが何を指すのか気になっていたところだし。
「マスター、少し自重しないと、大変なことになりますからね?」
「イースみたいなのが沢山出来そうだな。」
「マスター?」
おおう。イースの声が完全にトーンダウンした。
「「???」」
他二人は分かってないらしい。そう言えば、イースが俺をマスターと呼ぶに至った経緯すら知らないのか。
イースにちらっと目配せすると、「私が」という目を寄越したので。首肯する。
「実は・・・私。マスターのモノなんです。」
「「それは知ってた(ましたー)」」
何か違う?!
「コホン。間違えました。実は、私は元々高位精霊だったんですよ。」
二人はその発言に唖然とする。そして、ブラウニーが再起動しない中、クーだけがその理由に心当る。
「強化召喚ですかー・・・。・・・いやいやいやー。」
思い至って、否定する。イースの顔が雄弁に語る。「そりゃ、否定もしたくなりますよね」と。
「かつて、神精霊に至った方も、精霊王だったと記憶してますがー?」
「ええ、しかもエルフの始祖神と呼ばれる方が、全力を注いで。」
クーの疑問形に、付け加えるような形でイースが肯定する。
一人状況が把握できていないブラウニーに、強化召喚について話してやった。
「「純人族・・・?」」
そして、二人がその事実を飲み込んだときに出てきた言葉が、この失礼な台詞だ。
「驚きたい気持ちも分かりますが、そういう理由ですよ、今私が苦言を呈したのは。」
何の話から逸れたのかと言われれば、そうそう俺の作るものが、イース級にぶっ飛ばなければ良いねという話であった。つまり、自重せよと。
そうして、俺の創造者としての生活が始まる。精々暇潰しになれば良いと考えていた。
しかし、その甘い考えも、イースの忠告も全てを嘲笑うかのように、俺のスキルはやらかした。
「マスター?今、何をしたのですか?」
驚く声も当然である。
地球の考えで行ってみよう。量子とかそういう難しい話は省いて、原子とか分子とかが寄り集まって、物質界というものは成り立っている。さて、じゃあ、考えてみてくれ。
土から鉄を生み出せる錬金術があったとしよう。
じゃあ、何故空気から鉄が生まれる可能性を考えない?
至極単純に考えれば、この発想に辿り着く。
善は急げだ。直ぐに試してみた。
それが、《錬金》の真価なのか、それとも《無限創造》の力なのかは、不明であるが。
俺の手には、鉄が握られていた。
「・・・いやー。本当に出来た。」
「マスター?私は自重して下さいと言ったつもりですが。」
「いや、これは違くて・・・その・・・すまん。」
イースの人をも殺せそうな冷たい目線に負ける。
「で?何をしたんです?」
「うむ。空気から鉄を作った。」
「・・・・・・はい?」
俺の発言からたっぷり10秒ほど固まっていたイースが、搾り出せた唯一の声がこれである。
「・・・マスターですからね。」
この言葉を発する事で、イースは思考を放棄した。
まあ、荒唐無稽な話ではある。例えば、さっきの原子論であろうが、量子論であろうが、実際にその存在を見たことは愚か、自分でその理論を証明をした事も、実験をしてみたことも、無い。そんなある種馬鹿げた理論を異世界に持ち出して、果てには到底有り得ない結果を弾き出す。
これを荒唐無稽と言わずに、他にどう表現のしようがあろうか。
まあ、この世界にも『魔力量子論』というとんでもない理論があるそうだ。気になって数ページ読んだのだが、「おそらくこれを読む者なら誰でも必携しているであろうが、もし無いならば、『魔方陣大全集(第70版推奨)』と『魔術語及び、詠唱辞書』をすぐにでも手に入れることをお勧めする。」というのが「はじめに」に書いてあって、諦めた。そもそも、ド素人の読む本ではなかったと悟った。
とりあえず、鉄をゴトリと小さなテーブルに置き、自分で淹れて置いた紅茶を飲む。紅茶?まあ、紅茶だろう。紅い茶だもんな。真っ赤だよ。こんなに透き通る赤も珍しい。
「見られてると恥ずかしいんだが。」
「見てないと何をするか分かったものではありませんので。」
俺が持っている創造系と呼べるスキルは少ない。《料理》を含めても、精々3つが良い所だ。《料理》、《錬金》、《鍛冶》である。《薬精製》とか、《大工》とかいうスキルもあったりするが、コピー上の都合で、入手していないものが大半である。
例えば、《鍛冶》スキルを生まれながらに持ち、周りから妬まれるような才に溢れ、周りから賞賛されるべき努力に暮れたドワーフが、その果てに伝説の金属の様なものまで加工し、等しく神器とも呼べる武器を作れたとしよう。
だが、それを人はチートとは呼ばない。
だから。
だから、俺はやはり千一卜なのである。
「何・・・何を・・・何・・・。え・・・?」
イースの声は、途切れ途切れで要領を得ない。それどころか、混乱してしまっている。
だが、別段俺も平静という訳ではない。どこか諦めた風もあるが、動悸は止まらなかった。
そして、不意に理解した。ああ、成る程。これが。
――これが、《無限創造》の真価だ。
ふざけ半分で《鍛冶》を使ってみようなどと考えなければ、一生気付かなかったであろう。
神器と言うほどの物でなかったのが、俺にとっての唯一の救いである。いや、そういう穴を見つけて安心しなければならない程の驚愕だったのだ。
例えば、そう。なんでも良い。西洋剣も勿論、日本刀、剣に限らなくたって良い。弓?それも入るだろう。はたまた、ボーガンや銃なんていうものも、そうだろう。
西洋剣は両刃であったり、弓は木製が多かったり、ボーガンや銃は時代の幅が大きくズレていたり。その全てに共通する点は、余り無い。尤も、《鍛冶》スキルで銃が出来るかは、試していないが。
けれど、これだけは言える。
イースも言っていた。
「詳しくは知りませんが、鍛冶ギルドというところにでも行かないと、そういうのを作る道具やらは置いてありませんよ?」
今は、鍛冶ギルドは錬金術ギルドに併合されているから、正確に言えば、錬金術ギルドに行かなければならない。
道具を使わずして、剣が作れるか?
道具を使わずして、銃は完成されるか?
この時理解した。「チート」と言う言葉の真意を。ゲームの世界なら、まだ良い方であったと。
皆は知っているだろうか。ラッダイト運動という破壊運動のことを。
イギリスにはその当時、産業革命に伴い、機械の導入を進めていた。当たり前であろう。一人一人出来が違う手工業よりもよっぽど均質なものが大量に作れる様になるのだから。手工業者や労働者はそれを見て、「我々の生活が危ない」と危機感を募らせずには居られなかったという。
確かに、彼らは正しいと言えるだろう。俺の居た時代では、最早手工業等と言う言葉は歴史用語にも等しくなっている。手作りと謳うだけで、価値が上がると思っている時代であるし、また価値が上がって当然だと思っている時代である。
だから、至極当然なことに、彼らは製作機を破壊し始める。
この時失業者達が起こした運動に際して、そのスローガンが「パンか、血か」であったそうであるから、どれだけ苦肉の策であったかが伺える。
農民であった人々は、農地に放火までしたそうだ。
おそらくであるが、同様の不満は地球の世界中にあったであろうし、今も尚燻り続けているかもしれない。それでも尚、職人であり続ける人がいるのも忘れない。
そう。鍛冶師は職人である。彼らが作るものが縦、伝統工芸品だとか言う、高尚な名前を謳わずとも。弱い冒険者に渡り、一度も使われず土に埋もれようとも。
彼らが職人であることには変わりは無い。
だから、これは冒涜である。さらに言うならば、機械というチートの様に、一部の欠陥がある様な冒涜ではない。
機械と手工業は違うという。そこにどれ程の意味を地球人が見出すのかは知った事ではないが、「機械産」等とは誰も強調しないが、逆はあるのである。つまり、差は存在するはずである。
それすらも、冒涜する。唯一の救いは、機械すらも大量生産できる機械と違い、これはほぼ俺しか使えないという点だろうか。
綺麗に装飾まで施された鉄の剣がある。細部まで作りこまれた銀色のそれは、まるで観賞用に作られていそうにも拘らず、何か恐ろしいものも同時に感じさせる。
ただ、これは数十秒も前には、ただの鉄塊であったはずだ。
熱も使わない。圧力も要らない。鋳型も要らない。何もかもを無視して。
まさにチートだ。一度、武器屋に行った時、奥で鍛冶をしている人を見ていたから、尚更そう思うのかもしれない。
それは正に、鍛冶師の全ての行いを、「無駄」の一言で切り捨てることに等しい。この世界にはダンジョンというものは存在しないが、ダンジョンの宝箱から出てくる武器が、この世で最も優れた武器だと評されたときの、鍛冶師の心の折られ方に等しい。
だから、冒涜である。
そして、そんな冒涜に対して、周りはどう反応すれば良いのか。
「嘘・・・・・・です・・・よね?」
何が言いたいって、イースが再起動しない。剣を見てはいるが、焦点は定まらず、《浮遊》も制御しきれて居ない。
そして、そのまま俺に寄りかかる。
「ドロ・・・ファウ・・・?」
「なんだそのドロファウっていうのは。」
「ドワーフ・・・の、始祖神・・・です。ラグナレクで、死んだはず、ですが。」
段々と復帰し始めたイースが、その名を言う。《回想ログ》の『メモ帳』を見れば、確かに載っていた。
ドワーフの始祖神3柱の内の1柱であると。特に、ドロファウは鍛冶の神でもあったらしい。鍛冶の神と言えば、今でも2柱が存在しているが、そのどちらもドワーフとは縁が無いので、未だにドワーフはドロファウを崇め奉っているという。
仏かよ。
「で、そのドロファウがどうしたんだ?」
「彼は・・・えと、彼はマスターと似たようなことができたと言われています。クーに聞けば、真偽は分かると思いますが。」
そう言えば、イースがドロファウを呼び捨てにするのはともかく、俺がしちゃいけないんじゃ・・・。ま、大目に見てよ。
「よし・・・おい、クー!」
「はいー?何でしょうかー?」
「なんていうか、もう、なんでもアリですね。」
絶対に地下に居る事は、イースの《霊素感知》でも明白であったのだろう。しかし、俺が呼んだ瞬間、ここに来たと。早過ぎ。「速さ」ステータスがかなり高いっつっても限度があるぞ。イースならともかく。
「ドロファウが一瞬で武器作れるって本当か?」
「ドロファウ・・・?あー、あのドワーフのー・・・?一度作ったものと寸分違わぬものに限りという条件付ですがー。」
・・・あー。やっちまったなー。イースが半眼でこっちを見てくる。自重しなさ過ぎている。
「一応。一応無駄だとは思いますが・・・マスター?作った事は?」
「無い。」
「・・・マスターですからね。」
「物作りも封印か?」
クーが不思議そうに首を傾げ、机の上に置いてある剣を見て、まさかという表情をし、次にどこか納得したような顔で、「なるほどー」と言う。
「売るのは考え物か・・・流すならともかく。」
「足が着くと厄介でしょうね。マスターに限ってそれも有り得ませんが。」
「とんでもないですねー。」
再び鉄の剣を見ると、下位精霊のイロンが突っついて遊んでいた。やはり、鉄から作られたから、鉄に引き寄せられるんだろうか。
「そもそもマスターは剣使わないですしね・・・。」
「速さが足りないからなあ。魔術の方が楽だし強い。」
「意味不明に強いですからねー。」
「ええ、本当に。」
イースは、テラー=ケエル=ドラゴンのときのことでも思い出しているのかもしれない。クーは直接戦ったときのことを思い出しているのだろう。
「まあ、何か使えるかも知れんし、色々作っとくか。・・・イース、窓を開けてくれるか?」
「はい?・・・はい。」
追記:4話でダンジョンがあることを示唆する発言を勇者がしてしまっていたことを発見・・・。4話をちょっとだけ修正しました。
この世界には、ダンジョンは無い設定で行きますので、よろしくお願いします。それではまた自戒。




