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イースと夜のナチュラルデート!(なんかこういう雰囲気ってこの小説では初めてじゃないですかーー?!)

連載中から完結済みにしてしまうという致命的なミスを犯しました。ハカタです。


 一ヶ月ぐらい開きましたね。すみません。


 《威圧》というスキルがある。今回の本題ではないので、軽く説明するに留めるが、敵を『状態:恐慌』もしくは『状態:恐怖』にするスキルだ。恐慌や恐怖状態になると、単純に言って動けなくなる。


 厄介なことに、魔力消費無しのパッシブスキルである。


 《暴圧》は、アクティブスキルであるが、《威圧》と効果は殆ど同じである。まあ、敵が受けるプレッシャーは段違いで《暴圧》の方がヤバいが。


 しかし、イースには全く効いていないようだ。状態異常に掛からない。


 この辺の魔物ぐらいだったら、十分な効果を発揮するみたいだが。さっきから一度も戦闘が無いのはそういう訳だ。


「月が綺麗ですね、マスター。」


「ああ・・・死んでも良いくらいに。」


一応、定石で返してみる。イースはそのつもりではないだろうが、そう言われたらこう返すしかない。

 俺は《夜目》があるために、今は灯りなどは使っていないが、《夜目》無しでも、月の明るさで近い距離なら見えなくも無いだろう。


「今日は月が二つですか。」


地球と違い、月が最大で3つまで出る。一つは、銀色。一つは、青色。最後は翡翠色。

 今日は、青色の月だけ出ていない。


 湖の(ほとり)まで辿り着き、雑草の上に腰掛ける。


「すっげ・・・。」


「綺麗です・・・」


月を反射する湖面。そこに映し出されている月はとても美しい。さらに、それなくしても、何処から湧いてくるのか、水が湧き出ていたり、水がとても綺麗でほぼ透き通っていたり。夜に来るとかなり神秘的な場所になっていた。


「水の精霊に会えそうなぐらい、不思議な感覚がするぞ。」


「・・・ここなら、精霊王がいると言われても不思議じゃないかも知れません。」


俺もイースも、イースが精霊であるということを棚に上げて語らう。


 ――とぷん


魚が跳ねたのか、そんな音が聞こえる。


「美味しそうですね。」


「・・・イース、食い意地も大概にな。」


「マスターの料理が美味しいせいですよ?」


「それはどうも・・・。」


「すみません。そういう問題じゃないですよね、マスター。」


そう言って、俺の隣に腰を下ろす。何処となく心配そうな表情が目に付いた。


「なんだ、バレてたか。」


「昨日の夜辺りから、ずっと変じゃないですか、マスター?」


「そうだな・・・。」


イースとは一番長い。そうは言っても、二月も一緒に居ないが・・・。


「愛のなせる業ですよ、マスター。」


まるで思考を読んだような回答に、苦笑してしまう。本当にそうだなと思う。


「ま、知らんがな。」


「うわー、酷いです。責任とってくれないんですか?」


「気が向いたらな。」


DNA検査なんて無い訳だから、誰の子を産んだって分かりゃしない。俺の子であるという証明も、俺の子でないという証明も、誰も出来ない。だから、気が向いたら、だ。


「というか、お前から子供が産まれる想像が付かん。」


「・・・私もです・・・。」


精霊から子供が産まれるというのは事実らしいが、この幼女のどこに子を宿すんだろうか。というか、水の精霊なんだが。透き通って見える気がするんだが。


「もしかしたら、ある日突然増えてるかもしれませんよ?」


「イースが二人か?まあ、それでも良いが。」


「良いんですか・・・。」


「イースと俺の子だったら、どんな奴が生まれるのか気にならないか?」


「・・・やっぱり生まない方が世のため人のため精霊のための様な・・・。」


「それは否定しない。」


二人で笑った。


「マスター。」


心なしか、トーンの落ちたイースの声が聞こえる。


「何だ?」


俺は、いつも通り返す。


「マスターは・・・何処を目指しているんでしょうか?」


その質問の意味が、良く分からなかった。だから、「つまり?」と聞き返した。


「マスターが、もし・・・。仮にですが、『世界征服』などを目論んでいる場合、もう私個人の意見で言えば、この世界の民は詰んでると思うのですよ。」


否定できないな。不確定要素は多々あるが、攻撃力の観点で俺に勝る奴がいるとは思えない。


「そこまで行かなくても、現状でマスターは力で全てを解決できるお方です。」


確かにそうだが、それをするのは些か面倒と言うものだ。下手をすれば、世界を敵に回す。いや、《幻惑魔術》を上手く利用すれば・・・。


「冒険者ギルドのランクというのも、上げる気概を見せませんし、だからと言って、完全に家に引き篭もるわけでもないですし・・・。」


そりゃあ、ランク上げたら面倒そうだし。家に居てもつまらないだろうし。


「マスター。マスターは何を求めているんでしょうか?・・・この世界に。」


「そんな壮大な言い方をしなくても良いじゃないか。別に、何を求めているわけでも無い。強いて言うならば・・・退屈しない世界だな。」


「・・・そんな理由で、私を神精霊にしたんですか?」


「そうだな。目的のための手段の一つとして、それを講じたことは事実だろう。」


「奴隷を買おうとしたのも?」


「体裁の他に退屈凌ぎという目的があったことは認めよう。」


「幽霊屋敷でクーを相手にしたのも?」


「屋敷を手に入れるのは、風呂的な意味で死活問題だったからな。退屈とは違うんじゃないか?いや、でも結果的に人が増えて、楽しくはあるが。」


ん?人?・・・まあ良いか。


「戦争に参加しないのは?」


「あれは、退屈だし、百害あって一利無しだろう。特に、誤射フレンドリーファイアーが怖い。」


「どれにしろ、酷い理由には変わりありませんね。・・・マスターですからね。」


「終わりはいつも通りだな、オイ。」


「マスターですからね。」


イースが微笑みながら言う。俺だから何なんだよ・・・。


「そう言えば、奴隷どうしよう・・・?」


「買うんですか?今更な気もしますが?」


「・・・そうだな。奴隷商も、俺が戦争に行ったと思ってくれているだろう。」


ふむ。イースと二人きりなのに、奴隷という直接的ではないと言え、他の女の話をしたのは、良くなかったかもしれない。話題転換と行きたい所だが・・・。

 そう言えば、前から気になっていたことがある。


「なあ、イース。」


「なんでしょう?マスター。」


「今俺とイースが戦ったら、どっちが勝つかね?」


「マスターでしょう。どう考えても。」


「それは本心から?透過も使えるのに?」


イースの『特性:透過』の前では、全てのものが無意味になる。


「おそらくですが、直接体内に働きかける魔法などには、透過は使えないのではと思います。」


・・・《デバフマジック》などがそうだろう。直接状態異常にするものだ。

 《火魔法》でも、火傷などの状態異常にすることができたり、《風魔法》で腕を切断すれば、出血、貧血などの状態異常にすることができるが、副次的なもの。そういうものは、透過できてしまうんだろう。

 《雷撃魔術》で雷を当てれば、麻痺状態になるが、雷が当らなければ、麻痺状態にならないということだ。


 ただ、直接働きかけるスキルって、分かると思うけど、かなり少ない。呪い系だと、アイテムに付与されていることが殆どだし、スキルとして・・・ん?ああ、生死を問わないなら、俺が瞬殺できるのか。何故なら。


 《スキルコピー》の能力、スキルペーストは、相手に自分の能力をペーストする(自分のスキルは消えない)ものだ。しかし、制約として、「対象に合わないスキルだった場合、対象が形を保てなくなる事がある。」とか言う恐ろしいことが書いてある。


 ――ヤバそうな奴に会ったら、これ使おう、うん。あ、いやでも逆に強化される恐れもあるのか。面倒な。


「じゃあ、勝てないことも無いのか。」


《スキルコピー》のことなどはおくびにも出さず、そう言う。言っても良いのだが、それを知ったところで、得はしない。イースにとっても、俺のことを一番知っている等と言う一時の優越感にしかならないだろう。それ以上は害でしかない。

 後は、俺が楽になるのかもしれない。ただ、それも俺の一時的な安堵に他ならない。秘密があることに罪悪感など覚えていたら、俺は人生で何度自殺していた事か。秘密がないことは良いことだが、あっても別段それを卑下する事などないと思う。


「マスターに勝てるなどとは思い上がってませんよ。」


イースが肩を竦めて言った。いよいよ俺の認識が気になるところだが、まあ、良いさ。


「さて、イース。そろそろ帰るぞ。陽が上ってきちまう。」


「ああ、妙に視界が広がったと思ったら、もうそんな時間ですか・・・。」


「夜が明けると、街も動き出すからな。それまでに帰ろうぜ。」


そう言って、立ち上がり、イースに手を差し出した。




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