千里眼にて魔王戦実況・・・。(センのメンタルがついに限界を迎える。・・・あれ?括弧内が比較的真面目だ・・・)
毎度のハカタです。
今回で10万字突破です。
じゃ、そういうことで。
戦争が始まったが、徴兵制はあれど、冒険者は家を持っていようが強制ではないらしい。リンテル国出身者は、漏れなく強制であるが。この辺は、ギルドと国との関係性に理由があるのだが、どうでもいいので割愛。
《一隻眼》に《千里眼》、それに加えて《スキルコピー》を駆使して、スキル集めをしたいところだが、一応、戦況ぐらいは把握しておきたい。
因みに、数日前から帝国軍の一部と交戦状態になっているらしいが、魔王軍はゆったりとした進攻だ。魔王軍は今日の早朝、リンテルとぶつかり始めた。
件の魔王軍から見ていこうか。
魔王軍は、その大半が魔物で占められている。故に、スタンドプレーが目立つ、かと思いきや、それでも無いらしい。
命令を聞く程度の脳はあるらしく、騎士団及び有志の冒険者も、苦戦を強いられている。
その魔王軍の首領である魔王を相手取っているのは、天使フォークルだ。多彩な魔術スキルと、《魔術の源》によるほぼ一瞬で全快するMPを駆使して、魔王に相対している。
《魔術の源》は、「チートスキル」に分類してもいい気がしてきた。
かなり強いぞ、これ。
一方、魔王は物理攻撃が多い。《槍術》のレベルがかなり高く、魔法やスキルを殆ど使っていないにも拘らず、フォークルを圧倒している。若干、フォークルが劣勢だな。
「テラー=ケエル=ドラゴン」とかイースみたいに個々の戦力が圧倒的に強ければ別だが、そうでない限りは、互いにかなりの戦力を削られながら勝つしかない。
騎士団はご丁寧に、前衛、中衛、後衛と並んではいるが、前衛の後退が激しい。魔物にしたって、さっきまで前衛の騎士団が居た場所に魔物の死体がわんさかある。
俺みたいに《死霊魔術》が完璧に使えれば話は別なんだろうが。
つーか、フォークルは劣勢だと思って居たが、中々どうしてやりおる。全体攻撃系の魔術をバンバン放って、魔王に攻撃するついでに、魔物をかなりの勢いで倒している。
ふむ。
「?・・・どうしましたか?」
イースが突然起き上がった俺に、首を傾げる。何この愛らしい生き物。
「いや、耳が足りないと思ってな。」
「はい?」
臨場感を求めたいわけではないが、無機質な無声動画を淡々と眺めるのは辛いものがある。それに、重要な情報が話されているかもしれない訳だし。後者の方が結構重要だ。
つまり、《千里眼》の聴覚バージョン求む!ということである。
以前何処かで見かけたはずなんだが、何処だったか。
「こういうときの、『メモ帳』だよなっと・・・。」
もしものときとか、妙に役立つのが《回想ログ》。特に『メモ帳』と名づけた手動記録機能には、物価、一般常識、魔法詠唱、スキルの種類、神話と、大量の情報が書かれている。いや、結構頑張ったからね。
ちなみに、『メモ帳』に容量制限は今のところ無さそうである。本にしたら軽く広辞苑を超え、六法全書を飛び越えそうな分量なのだが・・・いや、それは流石に誇張と言うものか。
そんななんでもメモってある『メモ帳』から、スキルについて記述してあるものを見つけ出す。この辺は、ファイルを探してクリックしているあの感じを思い描いてくれれば問題ない。
お、あった。あー、そうそう。名前は《順風耳》だった。持っている奴は、とあるミドル持ち。一応言っておくが、神ではない。名前を、レインシャ・・・とか。
そうですね。件の奴隷ですね。
まあ、彼女がそのスキルの存在を知っているかどうかは、知らないけどな。特殊なミドルスキル持ち故に。
《順風耳》を魔王軍の場所に合わせる。ふむ?フォークルが何か言ってるが・・・言語が違うのか。
えっと、《第三言語》と・・・。
「シスト、もう一度聞く。・・・何故?」
「愚問だね、フォークル。君こそ、何故だい?・・・いや、これもまた愚問かな。」
「それは、どういう、意味?」
「魔王の神が、天使の神が降臨したんだよ。知ってたかい?」
「・・・どういうこと?」
二人が攻撃を止め、空中に停滞する。
「・・・天族でありながら魔王であった僕に、慈悲を与えてくれたよ。」
「質問に、答えて。」
「君も捨てられたじゃないか。『千年の魔女』。」
「質問に・・・答えてっ・・・。」
「・・・魔人の神ならば、スーィワァルが居た。天人の神ならば、ニィアルスが居た。しかし、魔王に神は居ない。天使に神は居ない。・・・ずっとそう思われてきた。」
「天使の・・・神・・・?」
「『千年の魔女』、聞くよ。いつまで人族の真似事をしているの?」
そこで、フォークルが揺らぐ。そこを見逃すほど優しい魔王ではなかった。
フォークルは咄嗟に避けようとするが、叶わない。
「君を捕らえる事が、目的の一つだった。・・・君は、きっとここにくるだろうと踏んでいたからね。」
優しげな声でそう言う。その声音には、愛しい人を愛でる様なものさえ感じる。
「さあ、蹂躙せよ」
打って変って底冷えするような声が、戦場に轟く。フォークルが呆気無く倒された事で、冒険者及び騎士団に動揺が波及する。
言葉通りの蹂躙だった。魔物が死なない訳じゃない。騎士団が弱いわけじゃない。魔王が彼らにとっては強過ぎた。拳を一振りすれば、騎士団の前衛は半壊し、蹴りを入れれば、直線状に居る冒険者は全て肉塊と化す。
魔物すらも、魔王の餌食になる始末だ。
「無理だろ・・・あんなの。」
「お、俺は帰るぞっ!こんなところにいつまでもいられるかっ!」
「いやだあ・・・死にたくねぇっ・・・。」
「アスア・・・何で・・・私を置いてかないでよ・・・。」
まるで、戦争ではない。この光景だけ見れば、10人が10人、魔王が悪だと断じるであろう。
例えば、アンデット系の魔物が、死体を食い荒らす。それに怒りを覚えて、冒険者がアンデットの魔物を殺す。そうすると、他のアンデットの魔物達が、その死体さえも食い荒らす。
騎士団は白旗を揚げられることはなく、全滅し、その戦場は街をも巻き込んだ。
領主は高を括っていた。だから、呆気なく蹂躙された。
・・・意図が分からんな・・・。フォークルを捕まえたいだけなら、ここまでする必要はないし・・・私怨か?
それが、ある街を蹂躙し終わった魔王が何事も無かったかのように軍を退いて帰ってしまった後、俺の頭にあることだった。
「ふう・・・」
予想以上にグロい光景を見せられて、流石の俺も神経が参ってしまった。《千里眼》と《順風耳》を解き、一旦落ち着く。
食欲が湧かないどころでは無かった。自分で思っていたより無理をしていたらしく、洗面所で吐いた。
洗面所は、石を刳り貫いて、つるつるに加工されている。おそらく、その石の上から塗料か何かで塗ったのだろう白色。
その何処か無機質な感じの色、触った感触、そして、冷たさ。それが先の光景を思い起こし、また、吐く。
「・・・はあ・・・。」
漸く吐き気が収まり、うがいとか洗面所の掃除とかをして、部屋に戻った。本当なら、今から他の戦場も見ておきたかったんだが。
「・・・はあ・・・。」
全く。思うようにいかないものだ。しかし、そんな中で、少し安堵している自分を見つけて、自嘲気味に嘆息する。
――良かった。まだ自分は人間的な部分が残っている。
そう思えたことに安堵している。
例えば、先日の盗賊のときだって、俺は盗賊が死体になっていく様を、さも当然の如く受け入れていた。
異世界に来て、何処か変わってしまったんじゃないかという不安でもあったのかも知れない。
「柄じゃないな。」
イースを抱き寄せながら、呟く。今日は、優しくしてやれないだろう。
「マスター・・・?」
自嘲気味な表情と、目に宿る野獣の様な性欲が、イースに疑問符でも投げかけたのかも知れない。
ただ、それに構っていられる様な余裕は、持ち合わせていなかったが。
一仕事終えて、イースの頬を撫でる。
「そんなマスターも大好きです。」
致している間も言っていた台詞を、イースが呟いた。今日は珍しく気絶していない。まあ、仮にも神だからな。
「困った事があったら、行って下さい。全力で当りますから。」
何があったのかは分からないが、何かあったのは分かっているといことなのだろう。俺も、隠し通せるとは思って居ない。
所詮、心はただの平和な日本人のものでしかないのだし。
「イースとこうしてるだけで、結構救われてるんだがな。」
恋愛どうこうとか、そういう話ではないが、側にいつも誰か居てくれるというのは、中々嬉しいものだ。それが、自分を愛してくれているなら、尚更だろう。
「マスター・・・。」
そのまま二回戦を始めようとするような声音を発するイース。止める事も無いんだが・・・。
「入ってこないのか?」
「「ギクゥ?!」」
ドアの向こうで何をしているのか知らないが、別にお前ら相手だったら今更何を見られても困らないんだがな。
「つーか、口で『ギクゥ?!』とか言うなよ。」
とりあえず、二人を部屋に入れる。
「で、何の用だ?」
「私達もー。にゃんにゃんしたいなー?なんてー?」
「二人でやってれば?」
「あらー。乗り気じゃないですかー?」
「いや。そういう光景もそそるなあと。」
ブラウニーのような、スレンダーなカラダをした美女と、ロリ巨乳というアンバランスボディーを持つクーの絡み合いならば、おおよその人はどちらかでヒットするんではなかろうか。
「で、何しに来たんだ?」
「お昼まだかなあって・・・。」
「混ざりにー。」
そう言いつつ、互いに顔を見合わせ、「そっち?」的な表情をしている。色気より食い気か、その逆か。
そう言えば、なんだかんだでもう3時すら当の昔に過ぎている。
「すまん。食欲が沸かなかったんだ・・・。つーか、ブラウニーお前食事必要ないだろ。」
「だって、セン様の料理美味しいんだもん。」
「なにが『だもん』だ、無駄飯ぐらいめ。終いにゃ叩き出すぞ。」
「それを言っちゃー、お終いですよー・・・。」
二人とも自覚はあるらしく、珍しく落ち込んでいる。
「夕飯は作ってやるよ・・・。イース、お前の分もな。」
「はいマスター!」
今のイース、きっと猫だったら耳が大変なことになってるんだろうな。滅茶苦茶笑顔だよ。クーのキツネミミが大変なことになっているのを見て、純粋にそう思った。
時間も時間だったので、そのまま料理をすることにした。如何に《料理》スキルを持っていようとも、完成品やおおまかな材料ぐらいは知っていないと作れないので、レパートリー自体はそんなに多くない。
米とか魚とかのなんちゃって和食なら、色々レパートリーも増えるんだが、残念ながら、そういうのはこの国では出回ってないらしい。
仕方が無いので、パスタ的な麺類を駆使して、ラーメンモドキや、パスタモドキを作っている。元の世界スペックであれば、激マズの料理も、《料理》スキルを使えばあら不思議、超美味な味になる。しかも、想像通りの味が出る。
うむ。さっきのイースとの行為のお陰もあるだろうが、出来上がっていく料理の匂いで、段々食欲が戻ってきた。良い事だ。
最後にメインのパスタと具を和えて、少しフライパンで焼けば、出来上がりっと。
「お前ら、バレてるからな?」
「「「はむ?!」」」
つまみ食いをしている3人組。別に、堂々と食っても良いんだがな。
「ホレ、暇なら運ぶの手伝え。」
「「「はーい」」」
なんだここは。託児所か。可愛らしい幼女二人に、俺とブラウニーの組み合わせ・・・。うん、アブナイ発想に行き当たった。これ以上考えるのはやめよう。おい、誰が妻子持ちだ。
「むー。マスターが変なことを考えてる気が・・・。」
イースが鋭過ぎる。
食欲をそそる香りを廊下に振り撒きながら、一際大きな部屋に辿り着く。クーが言うには、貴族が居たときはここで皆が一緒に食事をしていたらしい。その時に使っていたらしい大きな長テーブルは、古くなって使えそうになかったため、片付けてしまったが。
今使っているのは、10人用の円卓で、別の部屋で会議用に使われていたらしいものを拝借している。
広く使えば良いのに、4人連続で座っているのは、言うまでも無いことだろう。勿論、イースが隣に来るのは当然だろう。イースなら、他の二人を蹴落としてでも、その座は譲らないだろう。
「さあ、マスター、あーんです。」
ああ、違う。イースは座とかそういう問題じゃなかった。座ったと思ったら、《浮遊》で浮いてきて、俺に「あーん」をしにきやがりましたよ。
「ラブラブですねー。」
「う、羨ましい。」
ブラウニーは何を言ってるんだよ・・・。まあ良い。食ってやるさ。この歳にもなって恥ずかしいが・・・ん?・・・イースの方がヤバ・・・。
「マスター?何か?」
所謂ところの、超真っ黒な微笑という奴である。この思考はこれ以上してはいけない。ステータスだけでは抗えないものというのも、やはり存在するものだ。
年の功とか全く思ってない。うん。
「美味しいですか?マスター?」
「俺が作ったからな。」
「私も食べますか?マスターの作った私。」
「強ち間違いではないが、誤解を招くぞ。」
「この4人の中に、誤解だのなんだので騒ぎ立てる人は居ませんよ」
言われて見れば、確かにそうである。だからと言って、心置きなくそういうことを言うのは何か違う気がする。
「イースには品性が足りない。あーんだ。」
「大丈夫です。マスターの前でだけですよ。こんなに理性が保てなくなってしまうのは。はむ・・・美味です、マスター。」
「そうか・・・それなら大丈・・・ほぼいつもじゃねぇか!」
「ちっ。バレましたか。」
「マスターと呼んでる奴に向かって舌打ちする奴は初めて見たよ。」
「まあ、マスターですからね。」
「いや待て、その返しは可笑しい。」
イースが席を離れた事で、ブラウニーとクーが両隣に来て、イースが真正面に《浮遊》する形となっている。
イースと食べさせあいをしながら、偶にちょっかいをかけてくる2人とじゃれる。
あれ?思っても見ないハーレム展開が?何故だ?一度もフラグを立てた覚えが無いし、好かれる要素が見つからない。
「マスター?お腹一杯ですか?」
「ん?いや。貰う。」
つい思考に没頭しそうになるのを、イースが意図せず止める。
何考えてたか忘れたけど、そんなに大事な事じゃなかった気がするので、そのままイースに今度は俺が食べさせてやる。
その後、イースが俺の口元が汚れていると言い、そのままディープキスしてきたり、それを見たクーが対抗したのか、「当ててんのよ」的なことをしてきたり、更にブラウニーが酒を口移ししてきたりと色々大変だった。
贅沢な悩みである。贅沢すぎる悩みである。地球時代の俺なら、死に晒せと呪いを掛けているところだ。
4人と風呂に入りながら、今後の予定を立てる。風呂は基本静かにしたい派であり、風呂で酒を飲むときも、一人で静かに飲む。そう言ってあるので、気の抜けた表情の3人も、余り話しかけてこない。
正直言うと、今日見たものだけで相当参ってしまったので、これ以上戦場を見物するのは何処か気持ちが乗らない。
残念ながら、街の娯楽施設や外食店のほとんどは、自主規制と冒険者の不在でシャッターを閉じている。しかも、冒険者は普通戦争に向かっているので、余り外に出る気もしない。まあ、森での魔物対策として一部は残ってるから、肩身の狭い思いはしないんだろうが。
家に居てもすることもないし・・・。
森の方に出かけるか。自然に囲まれるのも悪くない。最近はそんな状況ばっかだった気がするが、気にしない。
さて、そうと決まれば。
風呂から上がり、クーの長髪を乾かしてやる。他二人はさあ、髪って言うのか?あれ。
「これから、森の方に行こうと思うんだが、一緒に行く奴は?」
「勿論、私は行きます。」
「んー。ウニちゃんのお守りがありますのでー。」
その片目に《千里眼》が発動した事を、《回想ログ》は見逃さない。片目だけとか器用だな。俺にはできない。警戒はされているということか。割に意識を手放したりとかしてるけどな。
「お守りって言う程じゃないでしょ?!・・・まあ、二人で楽しんで来て良いわよ。」
お前に許可されなくても行くわ。
さて、じゃあ行きますかね。極力魔物との戦闘は避けて行きたい。じゃないと、何の為に行くのか分からんからな。
俺達の戦いはまだまだこれからだー(ぇ
ご意見・ご感想あればお気軽にどうぞ。
プロットから微妙にズレたので、修正中・・・。
更新停止(次話未定)




