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魔法の本  作者: 尾岡れき
9/10

#10


 教授はブックマウンテンライブラリーが炎上しなかった事を見届けて、賓客の一人に電話をした。

 

 相手先は君島薙沙警視総監だ。女性らしい名前だが、れっきとした厳つい男だ。夜見の父親でもあり、教授にとっては旧知の間柄のビジネスパートナーでもある。

 

『教授か』


「ええ」


『首尾は?』


「想定内ですよ。娘さんは無事に魔法の本を取得されたようで・・あ、今、部下からメールが入りました。完璧です。矢島君は 自害しました」


『そうか。惜しい人材をなくしたな』


 楽しげに言う。


「多分、彼女は魔法の本を公表しますよ?」


『それでいいのだ。これでお荷物を一掃する。そして若手警官には市民の為にここまでやる者がいるとアピールできる。それを私 は許容する。日本警察の膿を出して、業務改革に乗り出す、と。Companyもその方が動きやすいだろ?』


「魔法の本の提案者が貴方と知ったら夜見さんは哀しむでしょうな」


『喜々と忠告頂くのは遠慮願いたいな。それでなくても私は娘に嫌われてる。膿を出したそれだけだし、害虫共はそれで今まで 生きながらえた。利益は享受した訳だ。悪辣なヤツは刑罰を受けるだけの話だ』


「ライブラリーの被験者にも提供してくれた貴方だ、そは夜見さんも嫌うでしょう」


『遠慮ないな。まぁ娘の気質を考えたら、司書にはならなくて良かった。全ての事実を暴きかねんな。【Reader(読み手)】で あるというだけで恐怖を感じる』


「ライブラリーに関しては、まだ調整が必要です。商品としてはかなり、可能性を秘めてます。もう少し国にも出資をお願いした い所ですね」


『それは多方面でパトロンを募ってくれ。私一人では如何とも、だ』


 警視総監は言葉を切った。

 

『それより、司・ライトの方はどうだ?』


「娘さんのおかげで、検索精度を上げてますね。貴方の愛情が足りない分、夜見さんは[Write]に依存している所もあり、それ は今後、突く上では良い材料です」


『所詮はあれも欠陥品か』


「お父様に釘をさされてますから、私達もそれ以上は手を出せない事がありますので、総監、そこは堪えてくださいね。私の発 言は上に届くようにもなってますので」


『忌々しい限りだ』


「本日は当社をご利用いただき有難う御座いました。またのご利用、を」


 教授は電話を切った。


 夜見はカワイソウに、と思わなくもない。

 徹底的に絶望し、この世を呪ってくれたら、あるいはCompanyへの道もあるかもし れない。

 

 この世は嘘、虚構、欺瞞だらけだ。 「おじいさんに近づく、近道でもありますけどね?」 小さく笑む。酷薄で、悦楽な、そして空虚な笑みを。



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