#11
夜見はH県警の捜査一課で、司にコーヒーを淹れてもらい捜査資料に目を通していた。
「あのな、夜見! 俺も図書館で仕事があってーーーー」
「いやぁ、司君、こっちにも淹れてくれんか。君のコーヒーは美味い」
「俺紅茶ー!」
「煎茶」
「コーラ」
「ドクターペッパー」
「私、ビール!」
すでに小間使いか。お前ら警察だよな?
「・・・警察官、仕事しろ!!」
その怒号にもケラケラ笑って楽しそうな面々だ。毎回、これが恒例行事になっている。
「ま、君が来てくれると、君島の検挙率があがるんだ、頼むよ」
「そーそー、最近、司君がいると君島、集中力が違うっていうかーーーー」
夜見に睨まれて、石塚という刑事の言葉が凍りついた。その夜見は今日はしっかりパンツタイプのスーツで、捜査資料を直視し ている。前回の「魔法の本」だ。
 無事、解決した事件でもある。
この件で、官僚含み、警察庁上層部15名が逮捕の運びとなった。警察の威信ガタ落ちとなるはずが、君島警視総監ーーーー 夜見の父親の巧みな弁舌で、夜見の名前こそ出なかったが、優秀な若手警官チームにより、警察のゴミを逮捕、業務改革を進め ると宣言、俄然、マスコミを中心に日本警察特集が組まれている。
【正義の日本警察ココに在り!】
この見出しを見る度に、夜見は吐き気を覚えた。
父親の真意は分からないまでも、利用されたのは感じる。だからこそ口惜しい。
司が夜見の隣りに座った。一課に来ると司は読みと距離を置いて座るので、珍しい。他の面子の好きな言いようを無視して、 司は夜見に囁いた。
「誰がなんと言おうと、君島夜見が導いた結果だ。騒ぐヤツは騒がせてろ」
「司君・・?」
「普通なら潰されていた。殺されていた、と言ってもいい。でも夜見はやり遂げたんだから自分を褒めてやればいい。少なくとも、俺はお前を褒める」
「うん」
「それから」
「え?」
「どんな答えでも一緒に見届ける。それだけだ」
矢島の言葉、それはしっかりと口から漏れて、聞き取る事ができた。悪魔に魂を売った、か。それなら自分の体は一番、悪魔 に近いのかもしれない。夜見にはかなり酷な言葉であったのは確かだ。
「ありがとう」
夜見がにっこり笑った。それから書類の下に隠していた紙をこっそり司に見せる。猫のファンシーなレター用紙でこう書いてある。
【次の非番はここにいきたい。ご褒美ください】
日本最大規模の遊園地、ネズミーランドのパンフレット。司はため息をつく。こいつは徹底的に計画的だ。心配したのが馬鹿
らしい。
「褒めてくれるでしょ?」
ニコニコ笑って夜見は言う。最早、拒否権は司にはないことを実感する。
「好きにしろ」
司はそっぽを向いてーーーー一課の面々の好奇心旺盛に聞き耳を立てていた様子と目が合う。
「あんたら・・・」
この後、再度、怒号が響く。
夜見はそれすら心地良く、目を閉じた。
悪魔に魂を売った、君島山都。それはもしかすると、【暗殺】そのものすらカモフラージュの可能性が高いという事でもあ
る。だが、正直、それはどうでもよくなってきていた。
自分の正しいと思う事を為す。
それがおじいちゃんの正しい事であれば。
だから私は私の正しい事を為していきたい。
それは、警察官としての自分の行動であり、やはり司に危害を加える人を排除する事になってしまっている。むしろCompany を潰したいと、心の底から思う。
真実は知りたいとは思うが。
だから。
近くにきた司の手を取った。絶対に離さないつもりで。君にしかできない事がある。私にしかできない事がある。絶対にある。だからーーーー
「ちょっと捜査を手伝ってくれない?」
次の資料に目を通しながら夜見が言った。満面の笑顔で。
世界は監視されている。
しかし監視された情報を統合する術がない。
世界は欠陥だらけだ。
その中で欠陥品の烙印を押されても 世界が欠陥品なら怖くない。
でもあなたは欠陥品じゃない。
私の欠損を
あなたの血管が
体温が
温度が
埋めてくれるから。
私にできること
あなたにできること
だから 今を為す
「何から検索する?」
司は応える。夜見は頷く。だから、今を為す為に。
最後まで読んでくれた皆様、ありがとうございました。書きたいものはたくさんある中、言い訳ばかりの遅筆が最近やっと書き上げた一品です。
想定していたプロットを活かしきれてなかった感がありますが、まぁ今後の課題。
刑事物もあんかなか楽しい。でも世界観の収拾がヘタクソ。今後の課題で頑張りつつ、またお付き合いくださいませ。
お付き合い頂いた皆様、本当にありがとうございました。




