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5.

 (※ヘレン視点)


 ウィリアム王子との縁談の話をお姉さまから奪い、私は殿下と婚約するに至った。


 私はそのことが、とても嬉しかった。

 まず、殿下と婚約で来たということ自体が、素直に嬉しい。

 彼と婚約したいと思っている人は、この国に数えられない程いるけど、実際に婚約できたのは、この私だけだ。

 縁談を持ち掛けられたお姉さまに成りすますというアイディアを思い付いた過去の私を褒めてあげたい。

 そのおかげで、現在こうして、王宮で殿下と一緒に幸せな暮らしを送ることができているのだ。

 

 私が殿下と婚約したことで、お父様とお母様も嬉しそうだった。

 私がお姉さまに成りすますことに協力してくれた二人には、本当に感謝している。

 双子だから、私とお姉さまは見た目がそっくりだけれど、それだけでは殿下を騙すことはできなかった。

 お父様とお母様が、私のことをエマとして紹介したから、殿下もそのことを信じてくれたのだ。


 私一人では、こんなことは成し遂げられなかった。

 まあ、そうはいっても、お父様とお母様が私に協力してくれるのは、わかりきっていた。

 私は二人に溺愛されているから、昔から私のためなら、なんでもしてくれる。

 だから、お姉さまから縁談を奪うことにも、喜んで協力してくれた。

 本当に、お父様とお母様には感謝している。


 そして、殿下との幸せな生活の様子を、お姉さまに報告するのが、とても愉快だった。

 本来なら、お姉さまが得たであろう幸せを、実際には私が満喫している。

 お姉さまにとっては、心底悔しいことだろう。

 そんなことは、私の話を聞くときのお姉さまの表情を見ればわかる。

 

「あの顔は、いつ見ても最高だわ……」


 私は思い出して、笑顔になって呟いた。

 お姉さまが私に何かを奪われて、それを取り戻せないと痛感している時の表情は、いつ見ても愉快だ。

 あの顔を見られるだけで、私は幸せな気持ちになる。

 今回は特に、殿下との幸せな生活という、人生に関わる大きなことを私に奪われたから、いつもにも増して、お姉さまは悔しそうだった。


 私はその様子を見て、悦に浸っていた。

 毎日のようにお姉さまの絶望している表情を見ているけれど、本当に飽きない。

 それに、最近はお姉さまのことで、面白い出来事があった。


 なんと、お姉さまが王宮の兵に捕まったのだ。

 私が殿下を騙しているという真実を、殿下に伝えようとして、無理やり王宮に入ろうとしたそうだ。

 この話を聞いて、私は笑いが止まらなかった。

 どれだけ哀れなの、お姉さま。

 本当に、お姉さまは私を楽しませてくれるわ。


 真実を暴露するというお姉さまの行動は、お父様とお母様にはお見通しだった。

 だからあらかじめ、対策を講じていた。

 そのせいで、お姉さまは兵たちに捕まった。

 私がお姉さまに成りすまして殿下を騙していることも、バレずに済んだ。

 私のために色々と協力してくれたお母様とお父様には、何度感謝してもしきれない。


 私のこの幸せな生活は、永遠に続くものだ。

 真実が明るみに出ることなんて、絶対にない。

 そう思っていた。

 しかし、そうではなかった。


 ある日、私に唐突な試練が訪れたのだった。


「君と初めて会った時のことを、今でも時々思い出すよ」


 殿下と一緒に食事をしていた時、彼は昔を懐かしむような表情で話し始めた。


「あの時は立食パーティの場だったけど、私が食べているものに、君が興味を惹かれて話しかけてきたのが、話すきっかけになったよね?」


「ええ、そうでしたわね。懐かしいですわ……」


 私は遠くを眺めるような表情で答えた。

 しかし、全然懐かしくなどなかった。

 なぜなら、私にはそんな記憶などないからだ。

 表向きは昔を懐かしむような表情を作っていたが、内心ではかなり焦っていた。


 このあとの殿下の話の展開次第では、その食べ物が何だったのか、私は答えなければならない。

 話の流れからして、間違いなくそんな展開になるだろう。

 しかし、私にそんなことができるだろうか?

 うまく話を合わせることができるのか、私は不安な気持ちでいっぱいだった。

 体中に緊張が走り、気付けば冷や汗をかいていた。

 返答次第では、私がお姉さまに成りすましている偽物だということに気付かれてしまう。


 王宮内で突如として開催されようとしている、間違えれば重い処罰が下されるという地獄のクイズ大会のせいで、私の心臓は張り裂けそうだった。


 正解を導くなんてこと、偽物の私にできるのかしら……。

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