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4.

 無理やり王宮に入ろうとした私は、兵たちに捕らえられ、牢屋に入れられていた。


 まあ、牢屋といっても、扱いは酷いものではなかった。

 というか、私がいる場所は牢屋とは呼べない。

 一応私は侯爵令嬢なので、普通の監獄での生活をするような事態にはなっていない。

 行動は制限されているけれど、普通に生活できるものは揃っている一室の中で、私は自由に暮らすことができた。


 キッチンも備え付けられているし、寝具もあるし、小さなシャワー室やトイレもあるし、本棚もある。

 私の部屋よりも、大きいくらいだ。

 私はこの部屋で軟禁状態となっていた。

 王宮に勝手に入ろうとしたので、しばらく反省しろ、ということらしい。


「まあ、しかたないわよね……」


 あの時は確かに、我を失っていた。

 無理やり王宮に入ろうとしたのは、さすがにやり過ぎた。

 殿下に真実を伝えるために必死だったとはいえ、王宮に無理やり入ろうとするなんて、私らしくもなかった。

 それだけ、今の状況がショックだったのだ。


 まさか、両親が先に手を打っていたなんて思わなかった。

 でも、考えてみたら、当たり前のことだ。

 妹のヘレンのためなら、あの人たちはなんでもする。

 

 ヘレンが殿下と幸せな生活を送ることができるように、私が真実を話すことを防ぐなんて、簡単に予想できたはずだ。

 いくら平静を装っていても、やっぱり私は、今までの展開にショックを受けて混乱していたのだ。

 しかし、一人この部屋で何日か過ごすことで、ようやく冷静になり、今の状況を客観的に見つめることができるようになった。


 ヘレンと殿下の婚約が破棄されるのは、時間の問題だ。


 冷静になった私は、ようやくそのことに気付いた。

 少し考えれば、そんなことはすぐにわかることだ。

 だって、私とヘレンでは、外見はそっくりでも、中身は全く違う。


 肝臓が悪いとか、胃腸を切っているとか、そういう話ではない。

 中身というのは、頭の中身のことだ。

 要するに、私とヘレンでは、保持している記憶が異なる。

 

 当たり前のことだけれど、そんな当たり前のことを、ヘレンも両親も気付いていない。

 

 私は生まれてから今に至るまで、パーティ会場などで殿下と会って、何度も話をしたことがある。

 ヘレンと殿下が王宮で一緒に過ごすようになってから、しばらく経過していた。

 昔の思い出話をする機会も、きっとあることだろう。


 その時、ヘレンはうまく話を合わせることができるかしら?


 きっと、無理でしょうね。

 たまたま何度かうまくいったとしても、そんな奇跡が何度も続くはずがない。

 外見がそっくりでも、中身が違うので、いずれ成りすましていることがバレる時が来る。

 べつに私が何か訴える必要もなく、ヘレンがいずれボロを出して自滅することは自明だった。


 ヘレン、私はその時が来るのを、楽しみに待っていますよ……。

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