こうして僕らはさらわれて~
放課後になったので僕は、マーガレットのもとに向かう。
マーガレットは待ち構えており、
「それで、何で魔法演習まで出ていたの? あの感じ、貴方魔法なんて知らないでしょう?」
「実はリセントという人物が……」
と僕は状況を説明すると、マーガレットが楽しそうに笑う。
「へー、あの王子様が……キスくらいはしたのかしら」
「それがそちらにも事情があるみたいで。あのレオ王子にさっるのは駄目みたいです」
「……どういうこと?」
「何でも、ルイはマーガレットと王子の仲を取り持つために、何か契約をさせられているようなんです」
それを聞いたマーガレットが少し黙ってから、
「……どんな脅しをしたかわからないけれど、汚い事をするわね。ふーん、あのレオ王子は気に喰わないけれど、ルイの方は不憫だから何かあったら手助けしたげるわ」
「よろしくお願いします」
「ふふ、それに貴方にはベリオールとの仲を取り持つって貰っているもの」
「はい、最後まで僕は面倒をみさせていただきます。あ、そういえばベリオールの好感度は92になっています」
「そんなに高いの!」
「は、はい、後は……明日の朝、今度の休みにベリオールが買い物に誘ってくるので即答してください」
「そんなもの即答に決まっているわ!」
マーガレットが目を輝かせている。
今回は変な事にはならないなと思いながら僕は、とりあえず、ベリオールが何処にいるのか後でルイにチェックしてもらおうと思う。と、
「それで今日のレオ王子、変に感じなかったかしら」
「え?」
「……そう、気のせいならいいわ」
マーガレットはそう言ってこの話はお終いよと、切ってしまったのだった。
部屋に戻ると、ルイが慌てて何かを隠していた。
それは以前この部屋にレオ王子が来た時見ていたものだったけれど、
「お、お帰り」
「ルイ、今隠したものは何?」
ふとわいた不安から僕は聞いてみる。
それがルイを縛る契約だと僕は知っている。
そこでルイが悲しげに笑って、
「瑠伊には話してもいいかな。これは、僕がキスをすると“死ぬ”契約であり、僕を従わせる契約書なんだ」
「……何でそんなものが」
「僕のいた孤児院の援助をうち切るって言っていたから。それで仕方がなく、ね。……レオ王子の横に立ってお手伝いできるくらいになりたいって、僕が欲張ったからこんな風になってしまったんだ。自業自得だよね」
「! そんなこと無いよ! ……僕は手助けするから安心して! 必ずルイは、幸せにするから」
「何だか愛の告白みたいだよ?」
「え?」
「冗談だよ。でも、瑠伊でよかった。僕の呼び声に応じてくれたもう一人の僕」
そう言ってるいは僕に抱きついてくる。
とても精神的に参っているようだった。
そして僕はあれがそんな契約だってずっと知らずにいて……酷いことをすると思う。
絶対にこの世界のルイは幸せな結末に持っていかないとと、僕は心に決める。
そこでルイが僕から抱きつくのをやめて、
「ありがとう、瑠伊に抱きついていたら少しホッとした」
「うん、いいよ。あ、そうだ、それでお願いがあるのだけれど……」
そう告げて僕は、ルイにベリオールの居場所を教えてもらったのだった。
ベリオールの居場所を聞いて、透明になった僕は彼のもとに向かう。
そして一人になったところを見計らって話しかけた。と、
「また何処からともなく、ルイの声がする。俺、疲れているのかな?」
「疲れていないよ、大丈夫! それでね、明日の朝、明後日の休みにマーガレットを買い物に誘うように!」
「! それってデートじゃないか!」
ベリオールが焦ったように言うけれど僕は、
「100%成功するから誘ってみるべし」
「こう見えても俺は貴族だから、マーガレットとレオ王子をくっつけるべきって話も回ってきているんだが」
「マーガレットは、自分と同じように性格の悪いレオ王子は嫌いだそうです」
「……マーガレットが性格が悪いわけないだろう、変わっているだけで」
ベリオールが真面目にいい返してきたので、僕は少し黙って考えてから、
「それはベリオールだからだと思う」
「つまり?」
「ベリオールの前だから、ベリオールだから自然と素直になってしまうのかも。マーガレットが一番一緒にいたい相手はベリオールかもしれないのに、ベリオールはそんなマーガレットの気持ちを踏みにじるの?」
「それ、は……あいつの幸せが一番だから……」
「マーガレットが幸せを感じるのはベリオールが一緒の時だと思うけれど、でもそこまで言うなら、今度の休みにお買い物に誘って様子を見て考えてみたらどうかな。マーガレットのことを他にもレオ王子以外で狙っている人達もいるし」
何気なく僕はベリオールに言ってしまう。
だって僕の知っている乙女ゲームの世界はそうだったから。
だがそこでベリオールが暗く笑った。
「へぇ、俺がこんなに我慢しているのに……なるほど、分かった。明日の朝マーガレットを買い物に誘ってやる」
何故か物凄くやる気を出されてしまったのだった。
そう言えばベリオールは初めの方にフラグが集中していた気がする。
しかも、現時点でここまで好感度が高いとなると、
「余裕でクリアできるかもね。でも油断は禁物と」
ということで次の日の朝は、ルイにベリオールの居場所を探してもらい、様子を見る。
「マーガレット、明日の休み、買い物に行かないか?」
「いいわよ? どうしたの、急に?」
「いや、明日天気が良さそうだから」
「何よそれ」
くすくす笑うマーガレットにベリオールは何処か嬉しそうだ。
とりあえずは、僕が提案した通り、ベリオールはマーガレットを誘い、それを受けたマーガレットの微笑みを見て92→95まで上がった。
よし、後少し、後少しと僕は観測する。
途中マーガレットを気に入った男性教師という危険あ香りのフラグも立ちかけたけれど僕はこっそり助言をしてフラグを回避した。
今の所順調に思えたけれど、そんな僕は隠れて様子を見ていたら、レオ王子に捕まってしまったのだった。
朝の短い時間だけれど僕にお話があるらしい。
人気のない場所に連れて来られて僕は、レオ王子に、
「最終的に、力を合わせないとどうにもならない封印関係は昨日の夜の内に処理をした。だから他の者達と協力する必要はない。特に、リセントとは」
「あ、はい、分かりました……」
とりあえずラストのイベントは必要なくなったらしい。
そこでレオ王子は独り言をつぶやくように、
「そしてその内、スノーホワイト侯爵家に密偵を送る必要がありそうだ。映像だけでは分からなかったからな」
「もしかして、ルイの契約関係ですか?」
ふと僕が気になったので聞いてみるとレオ王子が変な顔になり、次にああと頷いて、
「ルイから聞いたのか?」
「聞きましたが、その前に僕達の部屋をあさりに来たじゃないですか。その時ブツブツ言っていました……よね?」
そんな僕の言葉に、レオ王子は黙ってしまう。
そういえばあの時透明化していたはずだった。
だから気付かなかったのかと僕は思っているとそこでレオ王子が、
「それもあって、協力的なのか?」
「え? 僕がですか? ……そうかもしれません。でも、何だかルイは放っておけなくて。僕を呼び出した時凄く泣いていたから」
「……そうか」
「それに、言うことを聞いてあの孤児院で待っているべきだったってとても後悔していますから、あまりきつく責めたりしないでくださいね」
「分かっている。……他に契約関係で何かを言っていたか?」
そう問いかけられた僕は少しだけ視線を彷徨わせながら、
「レオ王子とこう……キスすると、ルイは死んじゃうらしいです」
「……何だと?」
レオ王子の目が、怒気を孕んだものに変わり、あれ、もしかしてまだ知らなかったのかなと僕が思っていると、
「つまり生命をも縛る禁呪のたぐいを強いていると? 僕のルイに?」
「そ、そういう事かなと」
「……つくづく嫌な手を打ってくるな。だが、なんとかしてその全てを奪い返す。そしてルイを“自由”にする」
「はい、僕もお手伝いさせていただきます」
そう僕が答えると、レオ王子はほんの少し険が和らぐ。
他に何か言っておこうかなと僕が思って、今のうちに話しておいたほうがいいかなと僕はあることに気づく。つまり、
「ただそのスノーホワイト侯爵には“先読みの魔女”がついていて、それがルイに指示を出しているよう……ぐえっ」
そこで僕は後ろから伸びた細いのにとても力強い腕で、首をがっと締められる。
背中になにか柔らかいものが当たった気がそこで僕の耳元で、
「それで先読みの魔女がどうしたのかしら。また何かしているのか、教えていただける?」
いつの間にか背後をとられていた僕は、マーガレットにそうささやかれる。それに僕は、
「く、苦しいです」
「ゆるめてあげたわ。それで、早く言いなさい?」
やさしい声で言われて僕は背筋に薄ら寒いものを感じながら、
「マーガレットとレオ王子をくっつけたいので、先読みの魔女であるマーガレットのお母様は、スノーホワイト侯爵に手を貸しているそうです」
「……なるほど、わかったわ。道理で的確にルイが邪魔しに来るわけね……ふふ、近いうちに殴りこみに行くわ」
「……今すぐにではなく?」
マーガレットの性格だとそうなりそうなので僕が聞くとマーガレットは鼻で笑い、
「明日のデートのための服やアクセサリーの検討があるのよ。最高の私をベリオールに見せてやるんだから」
「あ、はい。そうですか……」
「ということで、そちら対策は来週にお願い。いいわね? レオ王子も」
「……いいだろう」
嘆息するように答えるレオ王子。
そして僕も来週にはある程度片がつくかなと僕は思っていた。
けれど、事態が急変したのは次の日で、その時は僕はまだそんな出来事も知らずに、平穏の中にいたのだった。
どうにか今の所は上手くいっているなと思いながら部屋に引きこもっているのも何なので、僕は授業中の静かな廊下を歩いて行く。
できるだけ足音を立てないように、ふらふらと。
この魔法学園の直ぐ側には森のようなものが広がっている。
ここには危険な魔物がいたりするのでは入り込まないようにねという説明がゲーム内であった。
もちろんそんな説明は入り込んでしまうフラグだったりするわけですが、
「でもベリオールルートだと、入り込んだりはしなかった気がする」
なのでそんな危険な場所に行かなくてすむなと思いながら、僕は歩いて行く。
そしてそれは、ある場所に差し掛かった時に起こった。
こつん、こつんと、ハイヒールか何かのようなものが地面を打つ音が聞こえる。
今の時間は授業中のはず、そう思っていた所で一人の女性が姿を現した。
妖艶な色香を持つ胸の大きい美女。
ピンク色の長い髪がウェーブを描く、青い瞳の彼女。
マーガレットを大人にしたような、そんな女性だけれど……どうしてここにいる?
そもそも僕は透明化しているのに、何で僕をまっすぐ見つめているのだろう?
そう僕が思って一歩後ずさると、
「貴方が私の見た“未来”を邪魔する悪い子ね。ルイに本当にそっくり。あの子には悪いことをしたと思うけれど、これも全部マーガレットのためなの」
「で、でもマーガレットは好きな人が……」
「そんな一時の激情で全てを決めるのは愚かなことなの。……だから邪魔する貴方にはしばらく、事が終わるまで捕らえておこうかしら」
クスッと笑った彼女に僕はぞっとして走って逃げ出す。
けれど彼女の足音は大きく早く響いていてその気配は僕の真後ろに迫る。
――嫌だ!
僕は捕まりたくないと願い必死で、逃げて逃げて逃げて……気づけば外に出て、森の中に入り込んでしまう。
周りを見回すと、彼女はいない。
それに安堵しながらも、“捕まえる”と言った彼女に僕は不安を覚える。
捕まったならどうなってしまうのだろう、そんな不安を僕は今更ながら感じてしまう。
それにあちら側に僕の存在がバレてしまったのだ。
どうしよう、更に不安を覚える僕。
そう思いながらも蕎麦の暗い木の影から鳥か何かが不気味な叫び声を上げて飛び立っていくのを聞いて、ここは危険だから移動しないとと思う。
とりあえず魔法を使って姿を消せば追われないだろうと思って、先ほどの先読みの魔女がまっすぐに僕を見ていた不安から魔法を再度使う。
これで大丈夫、そう思った矢先にそれは現れた。
狼のような魔物。
ゲームでも見たことがあるけれど、確かこの前レオ王子に教わって魔法を使ったけれど、
「た、確かこうやって……」
けれどその準備をしている間に、その魔物が襲ってきて……目をつむり、悲鳴を上げそうになった僕は、そこで誰かに抱きしめられる。
同時に、
「“雷の槍”」
轟音と断末魔の悲鳴が僕の側で聞こえる。
そして再び静かになって、僕は恐る恐る目を開いて自分を抱きしめる相手を見上げると、
「良かった、間に合って」
そう微笑むレオ王子……だと思う相手がそこにいたのだった。
このレオ王子は、伶音に似ている。
そう思いながらも僕の気のせいかもしれなくて聞くことが出来ずにいる。
そんな僕はカフェ……の近くに連れて来られて、レオ王子が甘くて温かい飲み物を持ってきてくれる。
初夏の果実の香りのするお茶だ。
その甘さと温かさにようやく僕の体の震えがおさまる。
先読みの魔女や魔物に追いかけられて僕はとても怖かった。
そこで優しげな眼差しで僕を見ていたレオ王子が僕に、
「それでどうしてあの場所に?」
「実は……」
といったように事情を話す。
それにレオ王子は少し深刻そうな顔をしてから、
「そうなのか。そして、先読みの魔女から瑠伊は走って逃げることが出来たと」
「うん、そうなんです……」
何となく今、ルイではなく僕の名前が呼ばれた気がしたけれど気のせいだよね、と僕は思ってから、
「それがどうかしたのですか?」
「いや、先読みの魔女もマーガレットと同じくらい危険な相手だったはずだから、よく逃げられたなと」
そう言われてみれば確かにそうだ。
ゲーム内もそれは言及されていた。
そう思うとまた体が小さく震えてしまう。
そこでレオ王子が僕の頭を撫ぜる。
これはよく伶音が僕を安心させるようにしていた仕草だった。
そのせいかもしれない、段々と僕は落ち着きを取り戻していく。
それが分かったらしくレオ王子の手が僕の頭から離れていく。
寂しいような気がしていると、そこでレオ王子が透明な石のついたペンダントを僕に渡してくる。
「これは?」
「僕が何処にいても分かるようにという印のようなものだけれど……今は、瑠伊の方が危険なようだから、持っているといい」
「いいの?」
「もちろん。何かあればすぐに助けに行くから」
「……うん」
その優しくて僕を思いやるその言葉に僕は、嬉しくなって頷き、その場は別れて僕は部屋に引きこもったのだった。
お昼休み、先読みの魔女にあったことを戻って来たルイに伝える。
顔が蒼白になるルイ。そしてすぐに、
「今すぐにでも元の世界に戻した方がいい? あれに狙われるなんて……どうして気づかれたんだろう、いや、時間の問題だったかも」
「……でも後少しでベリオールとマーガレットはくっつきそうだから、それだけでも何とかしていくよ。ルイのためにも」
そう微笑む僕にルイはちょっと黙ってから、
「ごめん、そう言われてしまうと僕、そちらを優先したくなる」
「いいよ、僕もルイが幸せになって欲しいって思うから」
そう答えるとルイは申し訳無さそうに僕を見る。
そんなルイだからこそ僕は手助けしたくなるのだ。
それに僕は、レオ王子に貰った……レオ王子かはわからない彼に貰ったペンダントが僕のポケットにはある。
何かあればすぐに助けに来てくれる、そう彼は約束してくれたから、だから……その口約束に甘えている部分もあって、勇気が湧いてきたのだ。
確かにあの先読みの魔女は怖い。
でもそんな彼女から僕は逃げられたのだ。
そういえばこの世界に来るとチート能力がといっていた気がする。
その能力がもしかしたら発動したのかもしれない。
でも一体どんな能力なんだろう、そう僕が悩んでいるとそこですっとスープの入った皿が僕に差し出されて、
「瑠伊は食べないの? 冷めちゃうよ?」
「う、うん、食べる」
そう答えて僕たちは昼食を楽しんだのだった。
次の日、ルイは先読みの魔女から指令が来たと言っていた。
「でも、瑠伊の事は僕には聞かれなかった。別人の可能性はないの?」
「ゲーム内の絵と同じだったから、そうだと思う」
「……それとも泳がされているのかな?」
「……レオ王子やマーガレットと相談した方がいいかも」
僕がそう呟く。
より危険な状況になっているかもしれないから、そう僕が思っているとそこでルイが驚いたように僕を見る。
「マーガレットとレオ王子と接触していたの? いつの間に?」
「え? えっと……」
「瑠伊がいるって二人共知っているの?」
「……うん、事情も説明しちゃって……でも協力してくれるみたいなんだ」
「そんな話僕は知らないし、それにレオ王子はそんなこと一度も僕には言わなかったし……」
「ル、ルイ?」
そこでルイは瞳に涙をためて、
「僕だけ仲間はずれだ。レオ王子は僕にも何も言ってくれなかったし。瑠伊と会っていたのにあんな……」
「ルイ、えっとレオ王子はルイのことが凄く好きだから……」
「だったらどうしてあんな風に僕を責めるんだ! 酷いよ」
「ルイ……」
「……今日は徹底的にマーガレットを邪魔してやる。自分ばかり幸せで、僕ばかり不幸で、僕がどんな思いをしているか知っているはずなのに自分だけ幸せなんだ……許せないよ!」
そう叫ぶとともにルイは部屋を出て行ってしまう。
そんなルイを僕は、姿を消す魔法を使って慌てて追いかけていったのだった。
途中で僕はルイを見失ってしまう。
どうしよう、妙なことにならないといいけれどと僕は思いながら見回すと……マーガレットとベリオールがいた。
マーガレットのアクセサリーを見ているらしく、蝶をかたどったペンダントを購入していた。
支払いをベリオールがしている辺り貢物……と言うかプレゼントなのだろう。
試しにステータスを見ると、
「100、MAX って表示が。これでもう大丈夫かな……。後はルイだけれど、多分近くにいるよね。でも人が多いからどうやって移動しよう。……透明化の魔法をといちゃおうかな」
その方が危険は少ないかと思って薄暗い路地に入り魔法を解いた僕。
だがすぐ側の木箱がガタンと大きな音をたてた。
何もしていないにも関わらず、だ。
「……もしかして、ルイ、ここにいたりする」
沈黙する木箱。
なのでそのフタを開けるとそこには、やはりルイがいて何やら魔法陣を書いており、
「じゃ、邪魔しないでよ」
「……何だかすごく危険な、長い首が二つある魔物を召喚しようとしていたりする?」
「! どうして知っているの!」
「ゲームでそうだったから」
「でももう止めようとしても遅い。マーガレットをターゲットに、魔物を召喚する!」
そこはベリオールにしないとまずいんじゃ、と僕が思っている内に、そんな魔物がルイの魔法陣から現れたのだった。
さて、そのルイが呼んでしまった魔物は、結果として周りに被害をもたらすことなく、マーガレットに倒された。
それも瞬殺である。
この辺りもゲームと同じ展開だなよなと思っていると、
「それで、ルイはどういうつもりなのかしら」
様子を見ていた僕達の前にマーガレットが現れる。
僕達を見下ろすように見回してから、
「それで私の楽しい楽しいデートを邪魔をしてくれたのは……そっちのルイよね?」
真っ先に僕ではなくルイを見て笑うマーガレット。
確かこの後どうなったんだっけと僕が思い出そうとした所で、マーガレットは僕を見た。
「貴方も止めなかったのだから同罪よ?」
「! 僕が来た時には既に魔法が発動しかかっていたんです!」
「そんな言い訳が通ると思っているのかしら。私はとても今、機嫌が悪いのよ。……二人まとめて、お仕置きしてあげるわ」
ふふっと笑って指を鳴らしたマーガレットに、類が即座に逃走して、次に僕も逃走した。
そんな僕達をマーガレットが追いかけて、それをベリオールが追いかけてきているらしい。
でも僕には振り返って様子を見る余裕もなかった。
そこで、声がした。
「あら、私の可愛いマーガレットを襲おうなんて、驚いたわ。もう貴方は使い物にならなそうね。だったら……別の使い方をするしか無いわよね?」
現れた彼女は昨日、僕があった先読みの魔女。
それを見て真っ青になって立ち止まるルイ。
僕はルイの手を掴みマーガレットにお仕置きされる方がマシだと思って、戻ろうとする。けれど、
「ふふ、駄目よ? 逃さないわ」
そんな彼女の声が聞こえて、マーガレットの叫び声が聞こえて……僕達の視界は闇に包まれたのだった。
冷たい石の感触。
寒いと思って僕は体を震わせながらゆっ作りと目を見開く。
目を開いて僕はぎょっとした。
「な、何これ。鎖が……ルイ!」
僕の両手の手首には銀色の枷が付けられていてその枷から伸びた鎖が天井に繋がっている。
そしてそれと同じものが僕の両足についている。
それは目の前の気絶したように瞳を閉じたルイも同じだ。
地面にぺたりと座ったままの状態で僕達は拘束されていた。
ルイに声をかけても目を覚まさないので僕は揺さぶって起こそうと思うけれど、鎖に拘束されて手足が届かない。
だから何度も僕はルイの名前を呼ぶけれど、中々目を覚まさない。
しかたがないので僕は周りを見回す。
ここは石造りの牢屋のようだった。
目の前には黒い鉄の棒が何本も立てられていている。
一応扉はああるらしい。
試しに魔法でこの棒と書かせとか壊せないかなと思って、この前教えてもらった魔法を使おうと呪文を唱える。が、
「使えない。魔力が封じられているのかな? というかルイ、そろそろ起きようよ、この状況はすっごく危険だよ! ルイ、ルイ!」
そこでルイがようやく小さく呻く。
やがて瞼が少し動いて、次に僕を見て、
「瑠伊、もう少し眠いから、静かにして……」
「二度寝している場合じゃないよ、僕達捕まっちゃったんだよ!」
「……え?」
そこでルイはパチっと目を見開いてまわりを見回して、
「こ、ここどこ?」
「僕が知りたいよ。確か先読みの魔女に僕たちは捕まったんだと思うけれど……」
「で、でもどうして僕達が拘束されているの?」
「わからないよ。でもなんとかここから逃げ出さないと……」
そう僕が焦ったようにルイに言うとそこで、遠くからコツコツと靴を鳴らす音が聞こえたのだった。




