学校
ショーコこと翔子の朝は早い。
通っている学校は片道2時間半という不便なところに有るためだ。
「くぁ……」
あくびを隠そうともせず、寝ぼけ眼のまま制服に着替えて荷物を手に取る。
そのまま階下に降りて用意された朝食を口に運んだ。
「おかわり」
茶碗を母親に差し出して、みそ汁を啜る。
焼き魚が良い塩加減でご飯がよく進んでしまったのだろう。
まだ半分以上のこっている魚と、ツナサラダをみて体重が気になってしまったのはお年頃ゆえだろう。
「行ってきます」
「いってらっしゃい、あぁ今日は出張だから夕飯は自分でお願い」
「わかったー」
結局おかわりもおいしくいただいてしまった翔子は学校を目指す。
電車での移動時間は貴重な睡眠時間だ。
夜間7時間に加えて2時間の電車内での睡眠、合計9時間睡眠だが翔子曰くもう少し行けるとのことだ。
「おはよー」
「おはよー」
教室に入った翔子に何人かが声をかける。
テイマーズオンラインに翔子を引き込んだ生徒たちだ。
「始めたよ」
「お、どうよ。
何の職業選んだ」
「テイマー、というかなんでテイマーズオンラインなのにテイマー少ないの」
ゲームをしていて思ったことだったが、なぜかテイマーの数が少ない。
モンスターを捕まえて、自由な編成をできる事が売りのゲームなはずなのにその点を度外視したプレイヤーが非常に多い。
「テイマーはね、不遇なの。
単体での戦闘力は軒並み最低ランク。
モンスターはテイムに失敗すると襲ってくるのもいる。
挙句、強力なモンスターのテイム成功確率は高くても0.001%。
たまに嫌がらせのように大量のスライム召喚して物量作戦に持ち込む人いるけど、基本的には剣士とかの方が強いの」
「……そうなんだ」
「テイマーは運と根気って言われているけど、9割の運と1割の根気。
ぶっちゃけ運がなければ何もできないよ」
「えーと……ごめんなさい」
反射的に謝ってしまった翔子の肩を、友人のアカネががっちりとつかんだ。
その眼は光が抜け落ちたかのような暗さを含んでいる。
「なんで謝ったのかな、お姉さんにしっかり聞かせてよ」
アカネは小柄だが、こういう時の迫力は凄まじい。
そのことをしている翔子は包み隠さずすべてを話すことにした。
「白虎に玄武、それに精霊を数種類……。
精霊はモンスターの中では比較的テイムしやすく、なかなか強いから好む人も多いけどさ。
あれ見つけるまでが大変だし倒したら経験値沢山もらえるんだよ」
「そうなの? 」
「ビギナーズラックってのは恐ろしいって聞くけど……なにやってるんだかほんとに」
「あ、でもあれだよ。
蜂に囲まれて死亡したよ」
「そりゃそうでしょうよ。
あの森レベル15以上推奨だからね。
安全に冒険するならレベル25は必要。
蜂に囲まれたらレベル30代はないと生き残れない」
余談ではあるが、レベル30の剣士キャラと同等のステータスを得ようとした場合テイマーはレベル70が目安になる。
非常にステータスの低いテイマーは大群、遠距離攻撃、範囲攻撃のいずれかが使える相手に当たると非常に弱い。
それらの能力はプレイヤー、もしくは人型の敵であれば全員取得している為相応に強力なモンスターを仲間にしなければならない。
「次は朱雀?
それとも青龍?
言っとくけどその二体はレベル25以上推奨の洞窟と、レベル40以上推奨の荒野だからね。
今レベル8だっけ、即死するから先送りにしておきなさい」
「はーい」
「あと、四神以外もテイムしておくこと。
四神使いは結構多いから、対策も立てられてるの。
だからPvPではあまり使えないから」
PvPとはプレイヤー同士で行う戦闘の事だ。
その戦闘でHPが0になってもデスペナルティも教会への転移も行われない。
その場で何事もなかったかのように復活するようになっている。
数少ない街中でのモンスター召喚が可能な方法である。
「じゃあおすすめは? 」
「組み合わせ次第だから自分で考えなさい」
プレイヤーによっては力自慢のオーガをテイムし、さらに魔法にたけているモンスターでオーガを強化するという一点特化戦法をする者もいれば、バランスよくモンスターを召喚してパーティ戦に持ち込む者もいる。
その辺りは個々の好みである。
「四神はその中だとパーティだよね……一点特化はろまんだよね」
「男のロマンでしょうに……。
でもまあそういう考えの人は結構多いけどね。
中には魔法使い系のモンスター大量に投入してテイマーにバフかけて、なんてプレイヤーもいるけどね。
それでも弱いけど」
バフ、というのはステータス上昇効果を付与することを言う。
逆にステータスを減少させるデバフというのも存在するが、好き嫌いが別れる。
「ねぇねぇ、なんなら今日一緒に行かない? 」
「お、いくいく」
翔子の誘いにアカネは二つ返事で返した。
それに合わせて授業の予鈴がなってしまい、二人は席に着いた。




