リア友
夜になって帰宅した翔子は夕飯を食べ、風呂につかり、翌朝の準備を終えてからゲームにログインする。
昨日宿でみた天井と、その横ですやすやと眠るシロ、そしているの間にか服の中に潜り込んでいたミドリの姿を確認して体の節々を伸ばした。
『プレイヤーネーム:アカネさんからチャットの申し込みがあります。』
「了承」
「やっほー、いまどこー」
「最初の街の宿」
「おっけー、今いく! 」
このやり取りでチャットは途切れてしまった。
そっけないやり取りだが、これ以上は直接話せばいいという判断だろう。
「おまたせ! 」
それから数十秒後にアカネはショーコの部屋に現れた。
服装は忍者を彷彿とさせるもので、全身黒づくめだ。
強いて言うなら頭部に防具はつけておらず顔をむき出しにしている。
黒髪赤目の麗しい美少女がそこにはいた。
「……美化しすぎ」
「ぐふっ」
あまりに直球であんまりな言葉にアカネは傷ついたのか胸を押させて苦しみの声をあげる。
現実のアカネは、確かに可愛い部類に入るといえる。
けれど、今目の前にいるのは傾国の美女と呼んでも差し支えないレベルだ。
「いいじゃんか!
ゲームでくらい夢見せてよ! 」
「それ何時間かけたの? 」
「……8時間」
「気合入ってるねぇ。
私10分よ」
フィーリングで自分と同じ髪型、気にいったパーツで仕上げたショーコのアバターはいたって普通だった。
「とりあえず紹介しておくよ。
この白くてもふもふが白虎のシロ、そっちの小さいのが玄武のミドリ」
「……本当にテイムしたのね」
驚きよりも呆れの感情が強いのか、アカネはため息をついた。
そしてあきらめたかのようにアイテム画面から地図を取り出す。
「二つ提案があるの。
今の私のレベルだとちょっと強すぎるからサブキャラクターを使って適当なところに遊びに行くのが一つ。
もう一つがショーコのレベル上げ、パワーレべリングしちゃうよ」
パワーレベリングとは高レベルの者が低レベルのプレイヤーを連れて、高レベルのモンスターと戦闘することを指す。
近年のゲームでは初心者が遊びやすくなるという理由で推奨されている場合もあるが、苦労して育てたのにあいつらは楽しているという批判が上がる事も少なくない。
時にその姿を揶揄って養殖と呼ぶこともある行為だ。
「んーレベルは自分で上げたいし遊びに行こうか」
「おっけ、じゃあちょっと待ってて。
サブキャラでログインしなおすから」
そう言って慌ただしくログアウトしていったアカネを見送った。
それから10分ほどかかって、アカネがサブキャラでログインしてショーコの目の前に現れた。
「おっまたせー」
その恰好は先程が忍者ならば、こちらは武士といったところだろうか。
ふと歴史の教科書で見た織田信長を思い出しながら、そのレベルを確認すると38と表示された。
サブといいつつもそれなりに育てている辺りゲーマーの力を感じたショーコだったが何も言わない。
「何かテイムできるところでおすすめない。
チャレンジミッションがもうすぐできるんだ」
現在精霊とハク、ミドリを合わせて8体のテイムモンスターがいる。
これが10体になればミッション完遂となり、なにかしらのアイテムがもらえるというわけだ。
「んーじゃあ平原で」
平原とは次の街へ続く街道の事であり、非常に広い。
その広さ故に、モンスターとの遭遇率は低いうえに基本的には弱いモンスターばかりなのでデートスポットに使われることもある。
「それじゃあ行きましょうか。
とりあえず実力を見せてもらおうかな」
アカネに引きずられるようにして、ショーコは宿を出た。
やはりと言うべきだろうか。
この後に大きな問題が発生することに気付くこともなく。




