森
ショーコは地面の冷たさを額で感じていた。
道に張られた一本の蔦、うわさに聞いていた精霊のいたずらだろう。
随分と子供らしい悪戯だと思い、それをまたぐとそこには落とし穴があった。
体重を完全に移動させていたショーコはなすすべなく落とし穴に吸い込まれ、そして額から落下した。
よく見ると画面の恥に表示されたHPバーが微妙に減っている。
落とし穴ごときで随分と情けないと苦笑しながら、めくれ上がったスカートを直して起き上がった。
ちゃっかり肩から飛び降りて難を逃れていたシロを半眼で睨み付けるがどこ吹く風とあくびをされてしまった。
「やるじゃないの……」
思わず漏れた声の低さに、自分で驚きながらも周囲を見渡す。
薄い霧に包まれてこそいるが視界が悪いわけではない。
「……いない? 」
作り置きされたものだったのだろうか。
周囲に人影はない。
そう思っているとシロが唐突に声を発した。
「にゃー」
ある一点を見つめながらそう鳴く、ふと思いつきその方向へ石を投げつけた。
「ぎにゃ! 」
木に当たると思われた投石は、その途中の空間にぶつかり地面におちた。
それと同時に、先ほどまでは不可視だったはずの小人が現れた。
「つーかーまーえーたー」
鬼気迫る、というよりは危機迫るという光景だがショーコは無事精霊を捕獲することに成功した。
今は蔦をつかってぐるぐる巻きにしている。
途中亀甲縛りにしてやろうかとも思ったが、技量が足りずにあきらめたようだ。
「さて、スキルからテイム」
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『テイムに失敗しました』
『霧の精霊LV5をテイムしました。
名前を決めてください』
10回以上の挑戦の末、ついにテイムを成功させたショーコは精霊にキリという名前を付ける。
シロに引き続き、非常に安直ではあるがそれはねーみんぐセンスの無さゆえだろう。
「さて、じゃあ次のモンスターね」
そういって、ショーコは森を突き進んだ。
ある程度進んでは、罠にかかり、シロが精霊を見つけて、気絶させてテイムする。
その流れが完成して10体を超える精霊をテイムした。
道中MPが枯渇する場面が何度かあったが、小休憩をすることですぐに回復した。
テイムのスキルは相手によって消費するMPの量が違うらしく、精霊は比較的安価のようだ。
「あとは……ん? 」
罠に気を付けながら森を突き進むと、のそのそと歩く小さなカメがいた。
ミドリガメ程度の大きさだろうか。
思わず手に取ってしまったショーコは次の瞬間に驚愕した。
『テイム可能』
その文字を見た瞬間迷わずにテイムを行使する。
しかし十回、二十回と行使しても失敗する。
諦めかけたが、ここで逃しては惜しいモンスターかもしれないと思い肉を与え、小休止を挟み、200回もテイムを繰り返したころだろうか。
『玄武LV1をテイムしました。
名前を決めてください』
ついに苦労は報われた。
そして半ば予想していたことだったが、カメは玄武だった。
随分可愛らしい外見をしている。
そう思いながら、ミドリと名前を付けた。
そのミドリをシロの頭に載せて街への道を進んだ。
そして、ふいに聞こえたブーンという耳障りな羽音。
ショーコは戦慄した。
あわててステータス画面を見ると先ほどまで表示されていた虫よけスプレー使用中の文字が消えている。
「しまった……」
『テイム可能』
キラービークイーン、別名初心者の登竜門と呼ばれるモンスターにショーコが初めてであった瞬間だった。




