捕食
エリアボスとは、本来ダンジョンの奥地などに用意されているボスモンスターとは違いフィールドにランダムです出現する。
その特徴は、プレイヤーのレベルに関係なく遭遇する事があり、低レベル帯では恐怖の象徴となる。
代わりに高レベルになってくれば、エリアボスからドロップするアイテムは非常においしい者となる。
時に強力な武具の素材になれば、時にイベント用のアイテムとなる。
そのかわり、出会うためには相応の運が必要となってくるためジレンマを抱える事になる。
「死ぬかと思った……」
シロを抱きかかえている事を忘れて、力を籠めすぎていたことを思い出してあわてて手を放した。
しかしシロは身震いを一つして何事もなかったかのように地面に降り立った。
「にゃー」
「……おまえはかわいいねえ」
思わずシロを撫でるが、先ほどまでの危機感が薄れていく。
「はぁ……」
そして再び思い出して、ため息をついた。
それから立ち上がり、伸びをしてから周囲を見渡す。
最初に行くべき町は先程より小さくなっているものの、まだ視認は可能だ。
しかしその方向には、エリアボスがいる。
そう考えると気が向かなかった。
「しばらくレベル上げでもしようか」
そう言ったショーコの肩に飛び乗ったシロは、毛づくろいを始める。
ふわふわとした毛がショーコの頬に触れてくすぐったがる。
しかしいつまでもそうしているわけにもいかず、敵を探してみる事にした。
「……見っけた」
しばらく歩いていると小さなネズミが現れた。
小さいとはいえ、小型犬程度の大きさがある。
その大きさまでなれば、可愛らしいとはいえず不気味というにふさわしいだろう。
「あー……」
過去に、ショーコはハムスターを飼っていたことがあるためネズミに忌避感はない。
だからと言って平気かといわれるとそうでもない。
逃げ出したくなることはないが、相手をしたくないというのが本音だろう。
そうとは言ってられない現状を打ち崩したのはシロだった。
「ふしゃー! 」
おもむろに声を上げて、ショーコを踏み台にネズミに飛び掛かった。
そして喉笛を食いちぎり、そのまま残った体に牙を立てた。
体力を示すHPバーが見る見るうちに削られ、そして0になった瞬間だった。
シロはネズミをかみ砕き、ゴリゴリと音を立てながらそれを咀嚼、最後にはごくりと嚥下した。
「おうふ……」
思わず吐きそうになってしまったが理性と根性でそれを押しとどめて、飛びついてきたシロを避ける。
その外観に血がついているわけではないのだが、今は抱きしめる気にはなれない。
「あ、ごめん」
落ち込んでいるシロをみてしまい、とっさに謝って頭を撫でる事で機嫌は損ねられなかったようだ。
満腹になったためか、その場ですやすやと眠り始めてしまったシロを撫でながらメニューのヘルプを確認した。
「ヘルプ:捕食」
『ヘルプ機能を使用。
質問を理解、回答します。
テイマーのモンスターが敵を捕食する事があります。
草食モンスターは植物型の、肉食モンスターは動物型の、雑食モンスターは双方を捕食する事があります。
好みに合った敵を捕食すれば経験値を得る事も出来ます。
デメリットとして、好みでないモンスターやタイプの合わない相手。
例えば肉食なのに植物型を捕食した場合はステータスが一時的にダウンします』
ヘルプ機能を利用して、先程のシロの行動を確認する。
それから、ステータス画面のテイムモンスターという欄から、シロのステータスを確認するとそのレベルが4まで上がっていた。
「さっきのネズミ1匹でレベル4……?
もしかしてあのネズミが好物とか? 」
その検証のため、数分で目を覚ましたシロとネズミ狩りを行う事にした。
結果として、ネズミは非常に弱くショーコ単体でも勝てるという事。
シロの好物であり、捕食すると確実にレベルが上がるという事。
捕食は一定の時間を置かないといけないという事。
そして、シロが倒した、もしくは捕食した場合に得る経験値の一部をショーコも得ているという事が判明した。
「これもしかしてテイマーって強い? 」
思わず口にしたショーコだったが、現実はそんなに甘くないという事を思い出すのはこの直ぐ後だった。
『超危険:エリアボス出現』
「……あちゃー」
先ほどとは違って頭に超がついている辺り、絶望的としか言えない。




