テイム
ショーコは周囲を見渡して思う。
(VR、ヴァーチャルリアリティ……ちょっとリアル過ぎない? )
脳に直接電気信号を送っている為、肉体は睡眠状態となっている。
つまり、夢を見ているような状況であるためほぼ現実のそれと区別はつけられない。
「あ、街だ」
見渡している間に、どちらを向いているのかは分からなくなってしまったが小さな街が目に映った。
ひとまずそれを目指して歩みを進めたショーコの前にメッセージが現れる。
『チュートリアルミッション:モンスターを討伐せよ0/1』
『チュートリアルミッション:モンスターをテイムせよ0/3』
『チュートリアルミッション:賭けに勝て0/1』
『注:チュートリアルミッションは初期選択スキルで変化します」
それらを見てショーコは納得する。
モンスターを討伐、これはおそらく全員に出されるミッションだろう。
ならばテイムせよ、というのは寵愛や友好を取ったために出たのだろう。
数が多いのは重複している分だろうか。
賭けに勝て、というのは幸運を選んだことに違いないだろう。
そこでふと思いつき、メニュー画面を出してアイテム一覧を選択する。
現在そこに入っているのはG(100)と書かれた物のみ。
それはこちらの世界の金で金貨である。
それを一枚取り出して、親指ではじきあげる。
「表」
そう言って手の甲に伏せたコインを見ると見事に表向きになっていた。
『チュートリアルミッション:賭けに勝て1/1クリア』
目の前に現れたメッセージを見てやはり、とほくそ笑む。
『ミッションクリアのため報酬が出ます。
硬い肉(10)、モンスターの有効度が微量上昇。
非常に硬い肉、人の顎では調理しようとしまいと噛み千切るだけで一苦労。
独特の臭みがあり苦手とする者も多い』
「……これはなかなか」
今手に入れたアイテムを使えばテイムも楽になるかもしれない、そう考えたショーコはすぐに行動に移した。
街を目指しながら周囲をきょろきょろと見渡す。
そして、ついにあるものを見つけた。
風も吹いていないのにかさかさと不自然に揺れる茂みがある。
現実であれば体感しても気づかないほど微量の風て草木が揺れるというのは珍しい事ではないがここはゲームの中。
意味もなくそのような演出が行われることは、まずない。
その茂みに近づいて、ショーコは首をかしげた。
犬かウサギかと適当な予想を立てて近づいた茂みにいたのは一匹の猫だった。
ショーコを見るや否や、首をくりくりと傾げてきた。
その愛くるしさに思わず手を差し出す。
その手をぺろぺろと舐めてきて悩殺されかけたショーコだったが、息を整えてアイテム一覧から肉を取り出す。
それを猫に与えると臭いをかいでから豪快にかじりついた。
「にゃー」
申し訳程度に一声鳴いて食べ終えた猫の真上にメッセージが現れる。
『テイム可能』
その文字を見た瞬間にスキル:テイムを発動させた。
『白虎LV1をテイムしました。
名前を決めてください」
早々に仰々しい名前のモンスターをテイムしてしまったと思いつつも、ショーコはシロと名前を付けた。
見たままの名前だが、わかりやすい方がいいだろうと判断してのことだ。
シロは非常にショーコを気に入ったらしくころころと音を立てながら撫でられている。
その様はまさしく猫だが、見る者が見れば吐血しかねない程に愛くるしい。
「……うん、気を付けないとこのままずっと撫でてそうだしそろそろ先に行こう」
正気に戻ったショーコはシロを胸に抱えて街を目指す。
まだそこそこの距離があるようだが、何かいないかと周囲を見渡しているとシロの耳がピンと立った。
そして、ある一点にシロが顔を向けたことにつられてそちらを見ると一頭の猪がショーコを見据えていた。
『危険:エリアボス出現』
突如現れたそのメッセージを見てショーコは踵を返して走りだした。
しかしそこは素早さ:5のテイマー。
その気になった猪にかなうはずもない、そう思ってあきらめかけていたがなぜか猪からの攻撃はなかった。
よく見ると猪はショーコには興味がないようだ。
正確に言うならば、初心者がいきなり死んでしまうような事を避けるための措置なのだろう。
「……助かった? 」
そう言いながらも逃走に成功したショーコは、肩で息をしながらへたり込んだ。




