キレイゴト
紅に染まる町が綺麗だと言い張る彼女に 僕は笑う
僕の眼に映る汚濁まみれの街を 彼女は知らない
朝日が綺麗だと言い張る彼女に 僕は失笑する
舗装された道の下に埋まる白骨を 彼女は想像しない
明日を夢見て 明日を知れなかった人々の無念さを
その腕に抱けぬ未来を
彼女は知らないのだ
世界は今日も定時に回って
世界が何不自由なく繋がって
大小 いざこざがあり
不幸と不平等が同じくらいの比重を持つこの地球で
自分がおおむね平和なのは そういうカテゴライズを受けていないからだと認識しない
いっそう 清々しいほどに 周りを顧みない
僕はどうにか
例えば 拡大鏡とか
例えば 寝物語とか
そういう哀しみの技術で
彼女を説得しようとするのだけれど
どうしたって無駄なのだ
檻の中の動物は
排水管の向こう側なんて考えない
安全に 清潔に暮らす彼女は
塀の向こう側に見向きもしない
隣の芝生は青くて
水平線の彼方は美しい
世界の常識と彼女の常識はまったく一致していて
僕の常識は何一つ認められはしない
いつの日か
遠い宇宙の果てでビッグバンが再び起こって
太陽系が膨張をやめて
終息して 収束して
そうして一点の黒に成るその日
僕は死にながら笑うだろう
ああそうさ、盛大に笑ってやる
アスファルトの下で盛大に笑ってやる
お前が埋め立てたゴミの中で踊り狂ってやる
そうしてある朝、僕は生まれるのだ
今度こそ、幸運のカテゴリーに
嘲笑うな
それが人間だろう?




