第4話 行方を知るために
翌朝、私はイルルドともにお父様の部屋を訪ねていた。
夜の間は捜索が中断されていたため、当然お母様はまだ見つかっていない。恐らく自発的に帰ってはこないだろうし、私達はなんとかしてその居場所を突き止める必要がある。
「お父様、私もお母様とリビルト様を探しに行きます」
「ア、アルメア、なんだか昨日までとは様子が違うな……」
「姉さん、かなり怒っているみたいなんだ」
お父様は、私の態度が変わったことに驚いているようだ。
ということは、お父様の方はまだ落ち込んでいるということだろうか。いや、こんな風に切り替わっている私がおかしいだけなのかもしれないが。
「あの二人がやっていたことは最低です。今現在も含めて、その愚かな考え方を悔いてもらう必要があると思います」
「う、うむ、お前の怒りはもっともだ。よく理解した。しかし捜索に参加するというのは、賛成しかねる。別に我々が動く必要はないだろう。使用人達に、任せておくべきだ」
お父様は、私の変化には納得してくれた。
しかしながら、捜索への参加は断ってきた。確かに侯爵令嬢が、使用人に混ざって捜索するのはおかしいかもしれない。ただ、私は元々別で捜索をするつもりだ。
「お父様、私は使用人達が行っているのとは別のアプローチをしたいと思っているんです。ただ闇雲に探しても見つからないでしょうから、手がかりを得たいんです」
「手がかり?」
「まずは、お母様の部屋を調べます。それは使用人に任せられることではありません。家族の誰かがやるべきことでしょう」
「それは確かに一理あるが……」
「そこで何も見つからなければ、リビルト様の部屋を調べるようにエルヴィー侯爵と交渉しに行きます。そうやって手がかりを得たいんです」
お母様とリビルト様の情報を得ることによって、二人の居場所がわかる可能性はある。私は、それを探りたいのだ。
それは私が、やるべきことである。他の人に任せられない私にだけできることだ。
「なるほど……どうやら、止めても無駄なようだな?」
「ええ、私は行くつもりです」
「イルルド、アルメアのことを任せてもいいだろうか?」
「もちろんです、父様。元々、姉さんと一緒にいくつもりでしたから」
「すまないな……アルメア、ではお前は手がかりを探してくれ。何かあったら、すぐに連絡するのだぞ?」
「はい」
お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして私はイルルドとともに、二人の行き先の手がかりを探すことにするのだった。
◇◇◇
私は、イルルドとともにお母様の部屋に来ていた。
その部屋は、見慣れた部屋である。娘として、ここには何度も来ていたからだ。
「さて、それでは早速物色するとしましょうか」
「少し気が引けるけれど、仕方ないことだね。それじゃあ、僕はこっちを探すよ」
「ええ、お願い」
私とイルルドは、二手に分かれて捜索を始めた。右半分が、私の担当だ。
こちらには衣服などのタンスがある。故にイルルドは、こちらを私に任せたのだろう。
とりあえず私は、手当たり次第にタンスを開けていく。しかし、そこに入っているのは衣服だけである。特に手がかりになるようなものはなさそうだ。
「いえ……よく見てみると、この衣服は奇妙ね」
しかし私は、そこでとある事実に気付いた。
タンスの中に入っている衣服は、私が見たことがないものもある。それらの衣服はなんというか、いつものお母様らしくないものなのだ。
「この辺りも含めて、お母様の秘密ということだったのかしら? あ、これは……」
そこで私は、タンスの中からあるものを取り出した。
それは、かつらである。恐らく、これは変装の道具なのだろう。流石に人の目は気にしていたということだろうか。
「でもそう考えると、このタンスはかなり怪しいわね。もしかしたら、中に何かあるかも……」
変装の道具が入っていたため、私はそのタンスの中にまだ浮気関係の何かしらが残されていると思った。
故に私は、とりあえずタンスの中身を外に出していく。すると残ったのは、中身が何もないタンスだけである。
一見すると、それはただのタンスだ。しかしながら、私はすぐに見つけた。そのタンスの底が盛り上がっているということに。
「どこかに仕掛けがあるのかしらね……まあでも、それは私には関係がないことね」
私は、こういう時のために持ってきていた工具箱の中から金槌を取り出した。
普通に取り出す方法を見つけてもいいのだが、それは面倒だ。ここは強引な手段を取らせてもらおう。
「えいっ!」
「え? 姉さん、何してるの?」
「イルルド、見つかったわ。これはきっと、手がかりになるのではないかしら?」
「それは……日記?」
タンスの底は、二重になっていた。恐らく、後からお母様が付け足したのだろう。
そこに入っていたのは、一冊のノートである。恐らくイルルドが言っている通り、日記か何かなのだろう。
「お母様はマメな人だったけど、まさかこんなものまで残してくれているとはね……」
「まあ、隠していたということは何かしら書いてあるんだろうけど、浮気のことなんてわざわざ書き留めておくかな?」
「それは中身を見てみればわかることよ。えっと……え?」
「姉さん?」
私は、意気揚々とノートを開いた。
しかし、そこに書かれている内容に固まってしまった。
そこに書かれていることは、リビルト様とのことではない。だがその記述は、私にとってとても重大な事柄だったのである。




