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10 決戦の刻
アリシアの気持ちにはお構いなしに、リングアナの選手紹介が始まる。
「赤コーナー、アリシア・ストーンーー!」
観客の歓声が沸き起こる。いつもならここでアリシアはTシャツとショートパンツを脱ぎ捨て、赤色のリング・コスチュームになって、ポーズを決めるところだ。
しかし今日のアリシアは動こうとしない。棒のように突っ立ったままだ。
「青コーナー、桜井美和――!」
美和はお辞儀をした。
「ちょっとごめんあそばせ」
リングの隅に下がり、髪飾りを外そうと手を伸ばした瞬間だった。
「あ~、わたし~、ニッポンのイケメンとデートの約束があるの、思い出した~。だか・ら~、帰るわ~‼」
突如、リングの中央から、突き抜けるような甘ったるい女の子の声が響いた。
三冠王、烈火の女王と恐れられていたアリシア・ストーンから発せられたものだった。
会場全体が固まる。
次の瞬間、アリシアの身体が弾ける。
リング中央からコーナーまでを一気に向かう。
トップロープを飛び越える。
着地。
そのまま、出口に向かって全力疾走。
速い。
とにかく速い。
数秒後。




