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9/11

10 決戦の刻

 アリシアの気持ちにはお構いなしに、リングアナの選手紹介が始まる。

「赤コーナー、アリシア・ストーンーー!」

観客の歓声が沸き起こる。いつもならここでアリシアはTシャツとショートパンツを脱ぎ捨て、赤色のリング・コスチュームになって、ポーズを決めるところだ。

しかし今日のアリシアは動こうとしない。棒のように突っ立ったままだ。

「青コーナー、桜井美和――!」

美和はお辞儀をした。

「ちょっとごめんあそばせ」

リングの隅に下がり、髪飾りを外そうと手を伸ばした瞬間だった。

「あ~、わたし~、ニッポンのイケメンとデートの約束があるの、思い出した~。だか・ら~、帰るわ~‼」

 突如、リングの中央から、突き抜けるような甘ったるい女の子の声が響いた。

 三冠王、烈火の女王と恐れられていたアリシア・ストーンから発せられたものだった。

 会場全体が固まる。

次の瞬間、アリシアの身体が弾ける。

リング中央からコーナーまでを一気に向かう。

トップロープを飛び越える。

着地。

そのまま、出口に向かって全力疾走。

速い。

とにかく速い。

数秒後。

出口の扉が勢いよく閉まる音だけが響いた。挿絵(By みてみん)



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