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第49話 疑惑のタイミング

遅くなりました。第49話の更新です。

「現在の状況を聞きたい?」


 キイナの話を聞いた理香は、怪訝そうな表情を浮かべて聞き返す。


「そうメールが届いたのですよ」


 キイナがスマホを操作して画面を見せようとするのを、理香は制する。

 ここは演劇部の部室。すでに活動は終わっている。後は帰るだけなのだが、酒挽(さかびき)とキイナ、そして理香の3人は残っていた。

 昨日までなら、この後一旦解散の上、理香の家に再集合。ミーティングをしてから童話裁判に臨む、という流れなのだが、今は検察側の証拠収集のため、休廷になっている。

 なので、文化庁の課長が童話裁判の現状を把握するために、会いたいと言ってきていることについて、話をしているところだった。


「つまりキイナは、裁判の状況を報告していないわけか」


「する必要性を見い出せないのです」


 理香の問いにキイナは即答する。


「どういうこと?」


 思わず酒挽が聞き返す。


「報告を聞くというのなら、黙って聞いて欲しいのです。なのに向こうは、途中でこっちの話を遮って『それは違う』とか言い出すのです。こっちは、あったことを伝えているだけなのに、聞いてもいない自分の価値観満載の感想を聞かせてくれるのです。そんなものが、一体何の役に立つというのですか!?」


 珍しく一気にまくし立てるキイナだったが、前にそういった経験があるのだろうと想像するに難くない。


「つまり、今回の件は一度も報告をしていないわけか」


「なのです!」


 理香の再確認にキイナが答えると、理香はイスの背もたれに体を預けて、天井を見つめる。


「気に入らないな」


「ま、そうだろうな」


 理香の呟きに酒挽が相槌を打つ。


「え? え?」


 付いて来られていないのは、キイナだけだった。


「向こうに童話裁判の現状を報告していないのに、()()()()()()()()報告を求めてきたわけだが?」


「別におかしなことではないのです。自分たちが関わっているからこそ、中身を把握したいのですよね?」


 確かにそれは事実なのだろう。

 だが、問題の本質はそこではない。


「では聞くが、人間界の行政機関に過ぎない文化庁が、異世界人である君の報告なしに、どうやって異世界の裁判が休廷であるこのタイミングで、呼び出しをかけられるのだ?」


「……あれ?」


 キイナが首を捻る。

 彼女は昼休み、酒挽に、()()()()()()()()()()()()()()()から一緒に来て欲しい、と要請をした。


「まるで放課後、キイナの時間が空いていることを知っていたように思わないか?」


「むぅ……言われてみれば確かにそうなのです」


「ということは、だ。文化庁は、キイナ以外からの情報で、童話裁判の進捗を把握している、ということになる」


「文化庁が、童話世界の誰かと繋がっていると言うのですか?」


「文化庁、というより……日本政府が、だな」


 結論的に、文化庁が今日は休廷、という情報を入手できる環境にあるかどうかが問題となる。もしかすると、他の省庁が絡んでいる可能性も捨てきれない。


「目的は情報収集だと思うか?」


「その可能性も低くないが……」


 理香は天井に向けていた視線を酒挽へと移す。


「こちらの裁判戦略を探るため、かもな」


 理香の推論は、今日の呼び出しに至った情報を提供した側の立場を明確に指し示している。


「まさか……テールさんなのです?」


 童話裁判『白雪姫』を担当する検事。キイナ曰く『勝つためには手段を選ばない』。そんな彼女であれば、人間界まで来て情報収集を行っても、さもありなん、と感じる。


「あの写真の幼女か。ならば、ボクは同席しない方が賢明だな」


 理香がそう言いながら立ち上がる。


「何故ですか?」


「キイナは、今回の童話裁判、弁護人が当利だと言うことは、文化庁に教えたのだろう?」


「です」


 そうでなければ、キイナがこの学校へと転校してくるための工作で、酒挽ではなく、理香のクラスへと編入されていなければおかしくなる。何せ文化庁が把握しているのは、図書館で白雪姫を探した『平理香』という人物なのだから。


「結果、文化庁は弁護保佐人としてのキイナ、弁護人としての当利を把握した。では、ボクは文化庁にどんな認識で見られているのか」


 最初こそ、弁護人の候補だったに違いない。話だけを聞けば、理香が白雪姫を知っている、という情報がトップへと上がっているのだ。弁護人と思われて当然だっただろう。

 しかし、最終的には、そうならなかった。

 キイナが転校してきた後、理香に電話がかかって来たことは、酒挽も聞いている。その際言われたのが『キイナをよろしく』だったと言う。


「キイナ絡みでは、ボクと当利を探し出すため『文化庁』が、転校のために『文部科学省』が関わって来ていることがわかっている。

 だが、いずれの省庁も、ボクがここまで童話裁判に絡んでいるとは認識していないだろう。まぁ、せいぜいが『世話係』と言ったところか」


 とはいえ、キイナは理香の部屋を起点として活動をしている。つまりは、童話世界とのやり取りは、すべて理香の部屋を経由している。

 それを踏まえると、重要度は決して低くはない。

 だが、それは、童話世界とのゲートキーパーとして、である。


「今のところボクは、童話裁判に表だって関わっている印象は持たれていないはずだ。だから、ボクは今日、その呼び出しには同行しない方がいいだろう」


 童話裁判に直接かかわっているのは、キイナと酒挽だけだという認識があるのなら、それに全力で乗っかるのが最も効率的だ。理香の存在を薄くしておけば、別働隊としての運用も可能なのだから。


「そうだな、それがいいかな」


 そう言いながら、酒挽はホッと胸を撫で下ろす。それは無意識で無自覚な所作だった。

 しかし、理香はその些細な変化を見逃さなかった。


「むしろ、キイナという異世界人の存在をネタに脅すような奴が会合の場にいたら、気が散って話を聞くどころの騒ぎではないだろうからな」

勝手を申し上げて申し訳ありませんが、都合により、明日の更新はお休みさせていただきます。

次回の更新は、木曜日の23時前後の予定です。

あらかじめご承知おきくださいませ。

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