第25話 それは『ゲーム』などではない
遅くなりました。第24話についての解説回です。
注意喚起用なので、短いです。
2020.01.22 誤字を訂正。(「寄りよく」→「よりよく」)
「失神ゲーム?」
理香が説明で用いた単語を、酒挽が鸚鵡返しする。
「ゲームと謳われてはいるが、脳への酸素供給を人為的に遮断させて、意識を失わせるものだ。実際はもっと簡単に再現ができてしまう、脳に酸素が届かなくなるため、死ぬ可能性が決して低くないものだ」
理香によれば、失神して倒れてしまうため、頭を強打して死亡することもあるし、脳死に至る場合もあるという。
「キイナにそんな危険なことさせたのかよ!?」
理香の表情が暗く沈む。
失神ゲームはゲームと呼ばれているだけあって、条件さえ揃えれば、小学生でも簡単にできてしまう。
そして、命の危険があるにもかかわらず、『ゲーム』という言葉だけを信じ、気軽に行ってしまう。
命の危険は単なる可能性として捉えられ、自分は、自分たちは大丈夫、と何の根拠もなく信じてしまう。
百パーセントの確率でない以上、確かに、可能性なのだ。
動画投稿サイトにその様子は数多く投稿され、そのほとんどが何の問題もなく意識を取り戻しているように見えるし、周囲でその様子を見て、動画を撮影している人間は、その様子を笑っている。
一見すると、楽しいゲームと錯覚させられる。
それが『失神ゲーム』であり、確実に死と隣り合わせのデスゲームだという意識は薄い。
「そう、だな。今さら何を言っても言い訳にしかならない、か」
理香は、意識を失うことを前提に、倒れて怪我をしないよう、前後左右に人を配し、かつ、最初から体を支える、という対応策を取ってはいた。
しかし、だからと言って、実行したことが許されるわけではない。
これは、過去に逮捕者が出たこともある、犯罪行為の一つなのだ。
「理香を責めないで欲しいのです」
未だ競泳水着にSMチックなボンデージビスチェという格好のキイナが、酒挽の真下から声をかける。
彼女は失神後、30秒も経たずに意識を取り戻していたが、理香に『そのまましばらく横になっていろ』という言葉に、忠実に従っていた。
キイナの口から『後で』という、小さな声が届いた。
他の演劇部員もいる中では、話せない、ということだろう。
「でも、平。あんな簡単に意識を失うんなら、やり方を考えるべきなのは事実だよ?」
キイナを脇で支えていた脇田が問いかけてくる。
「そうですよ。僕も思わず力が入ってしまいましたし」
キイナを締め上げた園田も追従する。
「そうだな。本番は、役者のテンションも上がる。稽古でいくら軽めを指示をしても、芝居をよりよく見せたいという役者の願望のせいで力が入り、結果、芝居の継続が困難になる可能性がある」
姫役のキャストが失神してしまえば、公演は継続不可能となり、中止である。
「キイナ、すまなかった。今日はもう、帰ったほうがいい。脇田、着替えの手伝いを。当利、キイナを送っていってやってくれ」
キイナはゆっくりと体を起こすと、理香から指名された女子生徒に連れられて移動する。
「ボク抜きで、話をしてくれ。ボク自身、のめりこみ過ぎているようだ。少し、冷静になりたい」
第24話は、特殊なシチュエーションで再現ができないように条件もいくつか外して書きましたが、ネットで調べると、すぐにヒットします。決して実行しないでください。




