表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第七章 幼女と前世の影
198/812

198 幼女、言葉責めにあう

『なんで? だって、穂乃香ちゃんは穂乃香ちゃんでしょ?』

 茉莉の言葉に、いつの間にか俯いていた穂乃香はゆっくりと顔を上げた。

「え、えーと」

 穂乃香は茉莉の言葉をどう解釈したらいいのか戸惑い、説明を乞うように声を出す。

『んー、別に、穂乃香ちゃんは少し頭が良すぎて、運動もすごくて、演技もできて、魔法……うん、超人だなって思うけど、それ以外は普通に女の子じゃない?』

「う、え……」

『ウィッチが好きで、わざわざ変身しちゃったり、あーそれに、ズボン系の服着ないし』

「それは、ゆかりさんが……」

『なにより、仕草とか、喋り方は完全に女の子だしー、いまの、何々じゃーって喋り方ですら、ロリババアっぽくて可愛かったし?』

「ろ、ろりば……」

『あー、仕草とか表情も女の子っぽいよ、というか、むしろ、男要素を探す方が……』

 考え始めたのか、茉莉の言葉が途絶えたことで、顔中を真っ赤に染めてしまった穂乃香が、言葉を詰まらせながら「そ、それは、それで、なんか……恥ずかしい……かな」と胸の中に浮かんだ思いをそのまま言葉に変える。

『ほらほら、もうその言い方が可愛いんだよ。千穂がおかしくなるのもわかっちゃうよ』

「うぇっ!?」

『どんな顔をしているのか、見られないのが残念だなぁ~』

 インカムを通して耳に伝わってくる茉莉の言葉が、一言ごとに穂乃香の体温を上げていった。

 そうして、ゆでタコのようになったところで、穂乃香は「もう、ゆるしてぇ~」と敗北の白旗を上げた。


「たぶんだけど、その穂乃香ちゃんの中にあるお爺ちゃんだったときの記憶のせいで、可愛さが増してると思うよ」

 茉莉がインカム越しにそう告げると、反応をしたのであろう穂乃香の胸に付けたブローチの捕える映像が大きくブレる。

 どこか、掌の上で転がされていたイメージのある穂乃香が、自分の一言で狼狽する様子は、茉莉のテンションを上げてしまうには十分だった。

『ま、茉莉お姉ちゃん!』

 抗議の念を込めて、必死に自分の名前を呼ぶ穂乃香に、茉莉はその先を言うか少し迷う。

 その間にも、穂乃香は魔法陣の置かれた機械室を後にして、侵入した時と同じ様に潜みながら外を目指して移動していた。

 一言も発すことなく、灯りの少ないスタジオ内を素早く移動していく画面は、しかし、侵入時よりも速度が出ているようにも見える。

 茉莉の言葉責めから、逃げ出したいという無意識の欲求が、穂乃香の行動を、移動速度を後押ししていたのかもしれない。

 そうして、最後の難関であるガードマンの詰め所をするりと抜けたのが映像に映ったところで、迷っていた茉莉が結論を出した。

「自覚があるかはわからないけど、穂乃香ちゃんには遠慮というか……私達からのスキンシップに微妙に、本当に微妙に距離を取ってるんだよ」

『ふぇ!』

 既に終わったと思っていた会話が再開されたことに、穂乃香は驚きの声を上げる。

 一方、恥ずかしいことは一気に終わらせてしまった方がいいだろうと結論付けた茉莉が、穂乃香の反応などお構いなしで、思ったことをそのままマイクに向けた。

 穂乃香の為という大義名分の下に、珍しい反応を堪能したいという己の好奇心を潜ませた茉莉は、まるで容赦がない。

「それが、恥ずかしがってるように見えるのよね。そして、もっと照れてる姿を見たくなるわけですよ」

 おそらく千穂の執着のきっかけもそんなところだろうなと思いながら茉莉はそう結論付けた。

「んで、仲良くなると、今度は頭の良さ、考え方のかっこよさ、演技のうまさに、身体能力の高さ、いろんなカッコイイを見せられちゃうわけだから、もう穂乃香ちゃんに惚れちゃうのは仕方ないよねぇ」

 言葉にしたことでより強く納得できた茉莉だったが、言われている張本人はそうではない。

『もうやめてええええええええええええええええ!』

 泣き出しそうな声で、インカムを震わすほどの絶叫が、聞こえてきて、茉莉は我に返った。

「あ、ごめん、千穂の考察に集中してて……穂乃香ちゃんに聞こえてるの忘れてた」

『忘れないで、忘れないでえええええ!!!』

 グルングルンと地上と空が入れ替わり、あっという間に後方へ飛び去っていく映像に、茉莉は絶句する。

 恥ずかしさのあまり高速できりもみしながら空を飛んでいる穂乃香に、申し訳ないと思いつつ、思わず「酔いそう」と感想を漏らしていた。


「ホント、酷いよ……」

「ご、ごめんね、穂乃香ちゃん、とりあえず、お茶飲んで」

 自分のマンションに突撃してきた穂乃香をなだめることしばらく、ようやく落ち着いた様子に茉莉は冷たく冷やしたお茶を差し出す。

 突入してきた時の全身真っ赤になった穂乃香は、思わず抱きしめたくなるほど愛らしかったのだが、茉莉はこれ以上刺激しないように気合と根性で理性を発揮し続けた。

「んく、んく……」

 コクコクと喉を鳴らしてお茶を飲み込む穂乃香に、茉莉は静かに声を掛けた。

「大丈夫だよ、穂乃香ちゃんの何を知っても、私は絶対に穂乃香ちゃんを嫌いにならないよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ