表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第六章 幼女と信頼
160/812

160 幼女、対策を練る

「自己嫌悪……」

 ロケ車で一人になったことで、しっかりと落ち着きを取り戻した穂乃香は、盛大に溜息をついた。

 実験に浮かれていたせいでやらかした自覚がある分、自分に対する落胆が大きい。

 それに加えて、窮地での自分の対応力の無さは問題であるし、最終的にゆかりに助けて貰った始末で、穂乃香としての人生最大の汚点となった。

『大丈夫かの、主殿』

 普段見せない弱った姿に、ユラは心底心配そうな顔を穂乃香に向ける。

 一時は、穂乃香の精神が不安定になったことで、遠かったユラの声がとても近く感じられ、穂乃香は苦笑した。

「精神的に追い込まれるとは思わなかったわ」

『主殿にしては珍しく失策であったの』

 自虐的な穂乃香の評価に、いつものペースに戻ったと理解したユラは、率直な気持ちを言葉にする。

「全く、否定できないわ」

『で、あろうの』

 ユラとの軽口のような言葉を交わし合った後で、おもむろに立ち上がった穂乃香は、深々と頭を下げた。

「改めて、心配と迷惑をかけて、ごめんなさい」

 主である自分の精神の不安定は、精神生命体ともいうべき存在であり、眷属でもある彼女らには深刻なレベルの悪影響を与えたであろう自覚が穂乃香にはある。

 それに加えて、しっかりとは聞き取れていなかったものの、ユラや青葉、蜜黄、黒華が必死に声をかけてくれていたことを穂乃香は知覚していた。

 ただそれに答える余裕すらなかっただけである。

 ゆえに、一段落した今、申し訳なさと情けなさで、下げた頭はなかなか上げらないほど重かった。

『主様、心配してくださってありがとうございます。私達は大丈夫です』

『元気出して欲しいでし、主様~』

『姫しゃま、げんきになってなのれす』

 わらわらと穂乃香に纏わりつくように空を飛ぶ人形姿の青葉、蜜黄、黒華の三人だが、しかしその無邪気で明るいふるまいに反して、空中では姿勢を保てずふらついている。

 それでも穂乃香に対する思いに溢れる言葉と行動が、胸を熱くさせた。

「三人とも、ありがとう」

 素直に胸に浮かんだ気持ちのまま、青葉、蜜黄、黒華と順番に抱きしめてから、穂乃香はユラに向けて両手を開いて見せる。

『な、何のつもりじゃの?』

 不意打ちに動揺を見せたユラに、穂乃香は開いた腕をわずかに動かして「ん」とだけ声を漏らした。

 そうしてしばし見つめあったところで、立場的には下であるユラが折れる。

『ほ、ほれ……』

 目の前の主と同じ様に両腕を開いたユラは、視線を落としてから穂乃香から逸らした。

 それが、ユラの譲歩の限界と察した穂乃香は、一歩踏み込んでユラを抱きしめる。

「ユラ、ありがとう」

 人と精霊、本来は触れ合えないお互いが、契約という絆で結ばれ触れ合うそれは、まさしく奇跡であるが、当事者の二人はそんなことを思いはしなかった。

 ただ、お互いが思い合っている事実だけが、二人の間にある。

 やがて、束の間の抱擁を交わした後で、ユラが照れを隠すように、小さな主に問うた。

『それで……主殿、実験はどうするのだの?』


「いくつかアプローチは考えているのだけど、根本を言えば、魔力を維持する事に尽きるわね」

 運転席の後ろに3列のシートが並ぶロケ車の最後列に腰を下ろした穂乃香は、今後の方針を示し始めた。

『ふむ。道理であるの』

 穂乃香の前の席の上に浮かびながら、ユラは頷きつつ応える。

 対して穂乃香も、一つ頷きで応えてから、自分の考えを言葉にした。

「つまり、対策は三つ」

『三つもあるのですか?』

 青葉の疑問に穂乃香は笑みを浮かべるとコクリと縦に頭を振って見せる。

「まずは、私自身の魔力の総量を増やす」

 魔力切れが生じるならその総量を増やせばいいというのは単純にして明快な解決策であった。

 だが、それには当然ながらすぐに対応できない事情がある。

『でも、主様は既にとてつもない力をもっているでし、これ以上はその小さな体には無茶でし』

 慌てた様子でそう訴える蜜黄に、ユラが続いた。

『確かに蜜黄の言う通り、能力や技術は申し分なくとも、その幼い体にはおのずと限界があるからの……というか、今の時点で崩壊が起きていないのがおかしな程だからの』

 穂乃香は二人の指摘がもっともだと同意する。

「まあ、純粋に魔力総量を増やすのは、言う通りリスクが高いわ」

『では、どうするのれすか、姫しゃま』

 コテンと首を傾げる黒華に、穂乃香はピンと人指し指と中指を立ててみせた。

「それが残り二つの方法、一つは外部に魔力を蓄積する方法で、もう一つは魔法が再現している現象を詳しく解析して、科学的な物理現象に当てはめて必要な魔力量を減らす方法よ!」

 会心の感触を覚えつつ、多少ドヤ顔で対策を披露した穂乃香だったが、青葉たち三人はコテンと小首を傾げたまま揃って視線をユラに向ける。

 そのキレイに揃った動きに苦笑しつつ、ユラはその視線に応えた。

『要は何かに力を貯めておいて必要に応じて使うか、使う術をより力を使わないものに改めるかという事だの』

『『『おーー』』』

 ユラの説明に同時に理解したとばかりに上下に頷きを繰り返す青葉たち三人に、穂乃香は少し唇を尖らせる。

 そうして首を傾げながら呟いた。

「納得できないわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ