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リングワールド  作者: seisei
序章

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24/29

鍛治の心得

六つ目の投稿です

「職業クラスってどうして知らなかったんすか?」


「俺はカーラ神の救済日までスキルが無かったのは説明したよね。父さん達はスキルの無い人が職業クラスにも就けないって事を伏せておきたかったんだと思う。それで説明しなかったんだと思うよ。俺は農耕スキルが無いから国法で農業に従事できないとやんわりと職業のことを教わっていたいたけど、本当はそう言う意味だったんだね。冒険者ギルドも何らかのスキルが無いと入れないとしか聞いてなかったよ」


「冒険者ギルドはどんなスキルでも入れるって規約ですね。これって職業クラスに無関係にギルドに入れるって意味っすけどこの規約じゃ何らかのスキルが無いとダメとも読めますよね」


「両親は多分冒険者ギルドにも問い合わせてくれたんだと思う。全くスキルが無いと冒険者になる事をお勧めしませんって感じで断られたんだと思うよ」


「はあ。確かにその通りっすね」


「俺は食うには困らないし、カーラ様の救済で一つはスキルが得れると思っていたからそれほど悩まずに調べもしなかったんだよ」


 今考えるとグラッドとソフィアとの隠遁生活のような五年間は外部との情報が隔絶していたし、特に両親が無くなってからは完全に隠棲しているような状態だったから。


 何とその影響で世間知らずになってしまったらしい。しかし田舎の農家なんてそんなもんだろう。


「はあ。なるほどっす。まぁ、深窓のお坊ちゃんなら仕方無いっすか……」


 メルが大きな誤解をしてため息混じりに呟いていたが俺は疲れてスルーしておいた。


「で。職業クラスの事っすよね。あたいも脳筋系なんで詳しくは知らなっすけど、遥かな昔は誰でも自由にどんな仕事でも就くことが出来たらしいっすよ。でもいい加減な仕事しかしなかったり詐欺のような者もいたそうっす。

 そこでアルシゴス神がステータスに職業クラスって欄を作って人々の適正を判断して職業クラスを授けるようにしてくださったそうです。

 それに職業クラスは一種のアルシゴス様の加護なんだそうっす。職業クラスを授けてもらうと職業に必要なスキルが貰えたりステータスの補正をしてくれたりととても有効なので皆就職するのが当たり前って思ってるっす。農業もそうっすが職業クラスはそのまま本当の就職と直結してるっす。鍛冶屋になるには鍛冶の職業クラスが必要だとか、少なくとも鍛冶スキルは絶対に必要っす」


 前世の許可制度や資格制度みたいなものだろう。それにスキルシステムも加味して神が管理監督しているのだ。よほどこちらのシステムの方がよく出来ていると俺は感心した。


「俺は職業はギルドに入ると冒険者にでもなるんだと思っていたよ」


「でももうギルドに入っているのに職業欄が空白なんて【心眼】を持ってておかしいとか思わなかったんすか?」


「そうだよね。まだ迷宮に挑戦していない素人だからと思ってたよ。でも商売ってそもそもギルドが仕切るもんじゃないの?」


「それも間違いじゃないっすね。ギルドは商売を独占する組織っすよ。商人ギルドに入らないと大きな商売はできないし、もしそれを破ると商人の神バイヤー様に見放されて儲けられ無いというっすよ」


 なるほど。リングワールドでは単なるギルドって訳では無く神の加護とセットな訳だ。


「つまり、職業クラスを持つと場合によってはその職業の神様の加護を受けることがでしるってこと?」


「その通りっす。職業の神はたくさんいるっすよ。若様はやっぱり頭良いっすね」


「やめてよ、茶化すのはさ」


「いいえ。あたいは本気っすよ。職業クラスは適正さえあればいつでも何回でも転職ができるっす。でも前に就いていた職業クラスの守護神の加護が無くなり新しい守護神の加護を受ける事になるっすけど神様とも相性があるっすから賭けではあるっす」


 へぇ。神様とも相性ね。それはそうだろう。女神と婚約している身としては納得する話だよ。


「転職と違いサブ職業クラスを持つってことは新たに職業クラスを得る事ができるって事っす。これは新たに神の加護が増えるって事なのでとても有利で美味しい話っす」


 メルは脳筋系だが意外な事に説明が分かりやすい。武闘家がどうだとか商人がどうとか職業の事を長々と説明してくれるよりもシステムの本質を教えてくれて分かりやすかった。


 つまり職業クラスは職業の神アルシゴス様の恩恵が貰える上に職業の神の恩恵まで貰えるって事で二重にお得感があるようだ。


 セーラ様やアンパロの加護は恐らく特別製の恩恵だろうから比較できないかもしれないが神々の恩恵ってのは小さく無い事は承知の事実だ。


「ところで若様は本当に錬金やアイテム作りってできるんすか?」


 メルが違う話題を振ってきた。なんだか若様って呼び方が定着しそうで怖くなってきた。


「ああ。大した事は無いけ素人技ならね。それよりもその若様って言うのは誤解されるからやめた方がいいよ」


「でも若様って本当にどこかの若様なんでしょ」


「いやいや、自己紹介でも言ったと思うけど俺は単なる農家の一人息子だよ。確かに食べるのに困った事はないけど」


 俺の実家は村の地主だったが、所詮中世的な農園の地主だ。自分達も泥だらけになってあくせく働くだけの農家に過ぎない。俺は農耕スキルが無かったから国の法律で農業に従事できない穀潰ごくつぶしだったけどね。どちらにせよ大した事は無い。


「農家ってどれくらいの土地の農家すっか?」


「どれくらいって土地の広さの事?」


「そうっすよ。庄屋さんとか大地主とか色々あるっすよ」


「うちの農地は確かに村では少しばかり広かったけど俺ん家程度の規模ならやらねばならない事が増えるだけで実質の裕福さとは全く別だよ。俺の家なんて貧乏農家さ」


 俺は実情を分かりやすく説明してやった。


「地主さんってだけでも大したもんっすよ。けど村でも広い方ってどれくらい有るんすか?」


「ああ。俺は農耕スキルが一切無かったから持っていた土地は小作頭のアルターさんに管理してもらっているよ。アルターさんの報告では最近新田が増えて三人小作人を増やしたらしい。今は小作人が十二人と農奴何十人かいたはずだけど……」


「ふーーん。なんで広さじゃなく人数を説明するっすか?」


 メルがジト目で尋ねて来た。


「ごめん。興味が無かったから広さが分からないんだよ。ずっと増え続けているらしいし」


「はいはい。広さも分からないほど広っすね。若様は全然若様じゃないっすか」


 メルが怒ったように言った。


「いや。若様ってもっと偉い貴族様なんかに使う奴でしょ。坊っちゃまって言うのは小作さん達が言っていたけど……」


「はいはい。じゃあ坊っちゃまって呼びましょうか?」


 メルが意地悪く尋ねてきた。俺は大きなため息をついた。


「やめてくれ、まだ若様の方がましだよ……」


 こうして俺の呼び方は若様決定した。しかし本当にたくさんの小作や農奴がいても大して儲かっているわけでは無いのだ。中世的な人力による畑作の取れ高なんて高が知れている。


 小作さん達は皆、自分達が食べて行くのがやっとの量しか収穫できないのに俺に無理して小作料を支払ってくるているのだ。大したお金が取れるわけが無い。


 なのでメルが想像するような豪農とは全然違う。


「そう言えば俺の錬金術がどうとか言っていたよね」


「そうっす。錬金術で金は作れないのかなぁって思ったんすが」


「ああ。面白い質問だね。金は鉱脈から掘り出して抽出したり錬成したりするのは可能なんだ。でも石を金にかえるなて事は出来ないんだよ。

 昔々あるところにとても強力な錬金魔術師がいたそうな。その錬金魔術師が金をふんだんに創る事を考えて魔術を使ったんだ。そうしたら何が起こったと思う? 金に変えようとした物体は白い塊になっていたそうだ。それは何と塩だったらしい。神の怒りに触れたんだね。しかも塩に変わったのはそれだけじゃ無い。その魔術師が持っている全ての財産も塩に変わり最後には本人も塩の柱になったそうだよ。

 それ以来本当の意味の錬金術は禁忌魔術になったんだよ」


「ふーーん」


 メルは納得がいかないみたいだ。


「魔術って言うのは神々の加護によって効果が発生するってのはメルも知ってるでしょ? つまり神々の持っている資源を使って効果を発揮していると思うんだ。だから金を創るって言うのは神々の資産を横取りするって事なんだと思う」


 だから『魔術』ではなくて神々の恩恵とは無関係な『魔法』なら可能かもしれないとは思った事はある。しかしそもそも魔法そのものがチート現象だと言う事を俺は前世の記憶から知っている。魔法だって何かの恩恵の上に成り立っているはずなのだ。


(いやいや。科学だって少しも違いは無かったな)


 石化資源を無造作に使って異常気象と言うしっぺ返しを受けていた前世を考えて俺はそう思った。


 俺は自分のお金儲けのために錬金する事は無いだろうと思っている。


「そうっすね。強い奴が金を独り占めするのは当たり前っすもんね。神々が金を独占するのは当たり前か」


(おいおい。バチが当たるような事を平気で言うなよ)


 俺は心の中で突っ込んでいた。


「でも若様。あたいの武器に魔法をえんちゃん(!!!!!)するのってできるんすよね」


「ああ。付与エンチャントする事は出来るよ。でも素材の特性なんかも有ってどれくらいの魔法が付与できるか実物を見せてもらえないと何とも言えないけどね。確か『熊鉄アイアングリズリー』って武器だったよね」


「そうっす。やはり知ってたんすね。【心眼】ってミリアムさんが言ってたけど凄い能力なんだってね」


「なかなか重宝しているよ」


 俺がそう答えている間にメルはバックから『熊鉄アイアングリズリー』を取り出した。


「これっす。頑丈なのは良いんだけど重過ぎっす。それにぶかぶかなんすよね〜」


 俺は『熊鉄アイアングリズリー』を手に取った。確かにかなりの重さだ。両方で三キロを超えているだろう。リングワールドでは一キロぐらいの重さをギッカと言う。ちなみにギッカの下の位はプッキだ。重いのはグドンって言っている。プッキがグラムでグドンはトンだろうか。前世の重さと比べられ無いのでよく分からない。


 熊鉄アイアングリズリーを【心眼】で見てみる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

種類:グローブ

名前:熊鉄アイアングリズリー

説明:鋼鉄製の武器。

価格:三大銀貨(三万円)

性能:ATK(攻撃力)+7、DEF(防御力)+5、AGI(俊敏性)−2

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 なんの変哲もないグローブのようだ。ただグローブなので籠手こてが守られるようでATK(攻撃力)だけでなくDEF(防御力)も加算されるらしい。武器と防具が兼用という利点はあるようだ。


 ただし重いためAGI(俊敏性)が2も落ちてしまう。


 この武器の弱点はそれだけでは無い、鋼鉄製の爪の先が欠けているところがある。良く見ると全ての爪の先が丸くなっていてそのせいでATK(攻撃力)がかなり落ちているようだ。


 メルのATK(攻撃力)が高すぎて武器に負担がかかり過ぎていることが伺える。この武器は買い変え時のようだ。


 俺ならこの武器は先端を鋭利に尖らせた鉤爪かぎつめではなく刀の小太刀の様な物を三つ並べて付ける。それも長さはそれなりに長くする。先の方を扇のように少し広げる。


 爪は刀のように袈裟斬りの攻撃ができるようにするだけでなく突いて刺さるようにする。日本刀の形は突いて刺さっても突き抜けるような事がなく直ぐに抜く事ができるという利点がある。


 メルのグローブの先につける刀は今付いている爪の形とは異なるが使い勝手は相当上がるはずだ。


 しかし何よりも重さをうんと軽くする事が重要だろう。何しろメルは軽量級の闘士なので早さが命なのにその利点を殺すなんて有り得ない。


 手甲部分が鋼鉄製なんて重くて使い物にならない。皮を漆で固める日本古来の鎧と同じ作りにするのが良いだろう。皮はオーガの皮をなめしてマジックバックにいれているのでそれを利用したら良い。


 それだけでも手甲の先に三本もの刀を付けた籠手こてを片腕で操るのは大変だろう。だから刀は出来るだけ薄く細いものにする。しかしそれでは頑丈さが犠牲になるのでほどほどにするとともに魔法で重さと硬さを補強する事にする。


 さらにフィット感を増すために空間属性魔法を付与してグローブをはめると自動的に大きさが小さくなって手に完全にフィットするように魔法を付与エンチャントしよう。


 何だか最初の面影がほとんど残らないがそれで良いかメルに尋ねてみよう。


「メル。この素材を利用して……」


 俺は自分が考えた武器の形や大体の性能を説明するとメルの目がハート型に変わった。


「あたいのこの魔物の魔核をあげるっすから是非、武器を作って欲しいっす」

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