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リングワールド  作者: seisei
序章

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23/29

若様はバカ様?

五つ目の投稿です

 俺とメルは迷宮都市リランテストの道具屋筋に来ている。ここにはありとあらゆる道具類が揃っていると言われている。フェルンスト王国でも有数の商業地区で年中お祭り騒ぎのような賑わいだ。前世のアキバをイメージしてくれれば良い。


 ここで迷宮を攻略する為の魔道具や魔法薬を買おうと言う事になったのだ。ちなみに魔術と魔法とは別物であるとグラッドやソフィアからは口を酸っぱくして言われているが世間ではその辺の区分は曖昧だ。魔法薬は本来は魔術薬と称するべきかもしれないがなぜか魔法薬だ。


 俺はメルの案内で初めてこの通りに入ってきたのだ。前世の借金体質が抜けきれずどうしてもお金を使うという事に罪悪感が伴ってしまうのだ。俺はこう言った繁華街が苦手だ。一言で言えば貧乏性なのだろう。


 俺は貧乏性の上に臆病だからできるだけ安全マージンを取っておきたい方だ。なので弱い魔物としか戦った事が無い。そんな訳で魔法薬とはほとんど無縁だ。


 一方でメルは買い物が楽しいのだろう。何しろ俺のお金で買い物をしているからだ。これはドロップ品や宝物、アイテム類を俺の所有にする事への原価と言う事で俺から申し出た。実のところはメルがとてもお金に困っている事が何となく分かったからでもある。


「まず迷宮の準備として最重要なのは日持ちのする食べ物だけど、あっ、若様にはマジックバックがあるから要らなかったっすね。しかし暖かい食べ物も直ぐに調達できないっすから普通に買っときましょう」


 と言うことで乾物屋に入った。干した肉や果物、キノコ類、魚の日干それと乾パンなどを買った。お代は全部で大銀貨スマック十二枚と小銀貨バッティー八枚(全部で十二万八千円ぐらい)で三ヶ月分の緊急食料だ。


 続いてテント。メルによると寒い迷宮の層もあるらしくテントは必需品だそうだ。迷宮内では雨も降るらしい。想像するだけで過酷な世界のようだ。


「二つ」


「一つでいいっすよ」


「いや。二つ買う」


「そんなのは無駄っす」


 何を言い合いしているかと言うとテントをいくつ買うかで揉めているのだ。俺は可愛い女の子のメルと一緒にテントで安眠できる気がしないので二つ買う事を主張しているがメルは一つで十分だと主張しているのだ。


「迷宮内で本当に深層まで目指すんならテントを分けるなんて無駄以上に危険度を上げることになるっす」


「でもずっと一緒に潜ってたら俺も男だから変な気分になっちゃうかもしれないし」


「そんときゃ二、三発殴ってやるっすよ」


 俺は精神年齢は普通の十七歳では無いがかと言ってこんなに可愛い女の子と一つのテントで寝るなんて悶々として眠れなさそうで嫌だ。それよりもセーラ様の嫉妬が怖い。


「いや、絶対に二つ買おう」


 俺は断固言った。セーラ様の機嫌を損ねて『セーラ様の親愛』の折角のプラス補正が逆にマイナス補正になったら大変だ。


 俺はそれをメルの耳元に正直に小声で説明した。メルはなんだか俺の説明に納得していないようだったがそこに助け船が。


「お客さん。そんな人達にはこのセパレートテントってのが有効ですよ」


 俺達の言い争いを聞いていた店員が嬉しそうにそうに言って来て大きなテントを広げて持ってきた。


「このテントは五人用だが真ん中から二つに分けて仕切りを作ることができる。これなら男女混合のパーティでも大丈夫。仲良くなったら仕切りを取り払うだけだしね。しかもこの素材が優れている。危険度Cランクの大蛇の皮をなめして作った頑丈な皮で作っているから弱い魔物も近寄らない」


 笑いながら店員が言った。


「幾らだい?」


「大銀貨十八枚だが大負けに負けて大銀貨十五枚(十五万円)にしてやろう」


 【心眼】で見ると確かな品のようで適正価格のようだ。少々高いが背に腹は変えられない。俺が買おうとした時、メルが店員と俺の間に割って入った。反対するのかと思ったら。


「店員さん。商人さんには鑑定の力があるんだろ? ならあたい達の可能性に投資しなよ。もう少し安くしてくれんなら今後贔屓にするっすよ」


 メルは店員にグッと近寄って言った。


「いや悪いね。鑑定の能力も無いし、これ以上負けられ無いんだよ。オーナーを呼んでくるよ」


 店員はそう言いながら店の奥に入って言った。


 店員の残して行ったテントを見ていると。


「君らが将来有望なパーティなのでしゅか?」


 細い女性の声がそう尋ねてきた。俺は声の方を見たが誰もいない。


「下を見るでしゅ」


 俺達は視線を下げた。


(おおお。可愛い)


 俺は足元に佇む究極に愛らしい少女に一目で魅惑された。あまりの可愛さに抱きしめたくなる。もちろん可愛いとい言う意味だ。俺には幼女趣味は無い。


 俺の足元に立っていたのは身長一メートル前後の小さな女の子のような亜人だ。ピンク色の髪の毛と緑色の大きな瞳が特徴的だ。彼女はビビットと言う亜人。見た感じは二、三歳の女の子にしか見えない。体形も五頭身くらいでその愛らしさと言ったら言葉にできないくらいだ。


「いやぁ、可愛らしいですね。お持ち帰りしたくなりますね」


「「「きゃ。ロリ少年」」」


 彼女が怖がって俺から離れて行った。


「冗談ですよ。すみません。ビビットの方ですね?」


 亜人を差別するフェルンスト王国でもビビットだけは別格だ。何しろあまりにも可愛いので虐めたり差別したりしたく無いからだろう。


「こう見えても私は百六十歳なのでしゅ。ミリアムと言いましゅ。あなた達が将来の出世を代価にテントを安くしろと言ってるお客さんでしゅか?」


「ああそうっすよ。可愛いオーナーさん。あたい達を鑑定して欲しいんだよ。将来有望なあたい達に安くテントを譲ってくれたら今後贔屓にしてやるっすよ」


「鑑定しますよ。なるほど。あなたは虎さんでこちらは人。レベル25にレベル19でしゅか。ほう。しゅごいでしゅね。確かにお二方はそれぞれのレベルに比して相当高い能力アビリティでしゅね。それに特にメルさんは凄い数のスキルを持ってましゅね。しかもとても高ランクスキルでしゅ。ラークさんも不思議な高ランクそうなスキル【分割払い】やパッシブスキル【心眼】におおっとそれにもう一つ凄いスキルをお持ちでしゅね。これは口では言っちゃいけないスキルでしゅね。良いでしょうあなた方が気に入りました。大銀貨十枚で良いでしょう」


 ミリアムと言う名前の可愛らしいオーナーさんがそう言った。


「ミリアムさん。俺の【分割払い】が結構高いランクだって分かるの?」


 俺はその事に食いついてしまった。何しろカーラ教会の司祭の鑑定でダメ出しをされたスキルだったから不安が有ったのだ。ちなみに俺の【奪スキル】についてはその性質から名前を言わず誤魔化してくれたようだ。配慮が有難い。


「ははは。分かりましゅよ。私のスキルは【上級鑑定】でしゅから。ラークさんの【分割払い】は神様の特別な恩恵によって授かった特別なスキルでしゅね」


 このミリアムと言うビビット種族のオーナーさんは確かな鑑定能力を持っているようだ。信頼が置けそうだ。


「ミリアムさん。一つ聞いても良いすか?」


 何を思ったのか俺達の間に入って来たメルが尋ねた。


「良いでしゅよ」


「このラークさんの言っちゃいけないスキルは、本当にラークさんのレベルよりも低い者にしか効果が無いっすか?」


「え? ラークさんを鑑定するのでしゅね。まぁ良いでしょう。テントを買ってくれるって事でサービスしておきましゅ。ラークさんは鑑定した結果をメルさんに説明しても良いでしゅか?」


「できたらそうお願いします。何も隠さなくても良いですので」


 俺もむしろここはお願いしたくらいだ。ここでメルの信頼を勝ち取っておきたいからだ。


「分かりました。メルさんのお知りになりたいラークさんのそのスキルは一日一回だけしか発動できません。そしてラークさんのレベルよりも低い者からしか効果を発揮出来ません。更に成功率は二パーセント以下と低いと言う制約があるみたいでしゅ。しかし制約がそれだけって事はとても有用なスキルですね。Sランクスキルですよ。そして……」


 ミリアムは俺の全てのスキルや能力値アビリティステータス、恩恵などを説明して行ってくれた。


「ちなみにラークさんは冒険者なのにどうして職業欄が空白なんですか?」


「はい?」



☆★☆




 俺は重大な勘違いをしていた事にこの時初めて気付いたのだった。と言うか俺はリングワールド世界の人族がどの様にして職業に就くのか誰も教えてくれなかったからだ。


 俺はギルドに所属すると就職したのと同じ状態になり職業欄に職業が明記されるようになるのだと勝手に誤解していた。俺がそう言うとミリアムが詳しく教えてくれた。


「いえいえ。それは違いましゅ。職業の神アルシゴス様の教会に行って神様から恩恵を頂くのです。どのような職業を頂けるかは人によって分かりかませんが保有するスキルによって選べる職業が違うと言われてましゅ。職業を持つと様々なスキルや称号を獲得しステータスへの補正もあると聞きます。是非就かれる事をお薦めしましゅ」


 と言う事だった。なぜ誰も教えてくれなかったのか不思議だったがどうやらスキルが無いと就ける職業がないからのようだ。


「若様はそんな事も知らなかったっすか?」


 メルも呆れていた。


 何と。自分でも驚きの世間知らずだ。俺は買い物が終わったら取り敢えずアルシゴス教会に行って職業をゲットする事にした。


 ちなみにミリアムさんの俺の【鑑定】結果を聞いたメルは心底安心したようだった。


「メルは奪スキルの事を調べたから今日来てくれたんじゃなかったんだね」


「セリカには尋ねたけどそんなレアスキルの詳細はよく分からなかったっす」


 メルはそう言いながらへへへと笑っていた。どうやら俺の態度で俺を信用するつもりになったのだろう。しかし俺の色んな現実味の無い話をするので次第に不安になってきたのだろう。安心できて良かったね。


 俺達はミリアムさんがおまけしてくれて安くなったテントを購入。その後に魔法薬を買った。俺が【心眼】で魔法薬を見ると次のように見えた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

種類:魔法薬

名前:普通の魔法薬

説明:回復力小の魔法薬。薬草と魔核の粉に水魔術の『治癒(小)』を込めて溶かした水溶液。

価格:大銀貨三枚(三万円)

効果:傷を塞ぎ止血。小部位欠損の復元。単純骨折の快癒。痛み止め。熱冷まし。軽い感染症の快癒。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 魔法薬のこの店での価格は大銀貨二枚と小銀貨八枚(二万八千円)だった。俺は五本を購入した。しかしこのレシピが分かっちゃえば自分で作る事が可能かもしれない。薬草はたくさん採取してマジックバックに仕舞ってあるので迷宮で試してみようと思う。もしうまく作ることが出来ればこの店で買ってくれるかもしれない。


「ミリアムさん。俺は簡単な錬金ができるんだけどこの魔法薬を作って来たら買ってくれるかい?」


「迷宮から持ってきた物なら何でも我がミリアム商会に御売却ください。高く引き受けましゅです」


 ミリアムがうまく答えてくれた。恐らく俺が錬金で作った物をこのミリアムで仕入れてはいけないのだろう。魔法薬ギルドとか錬金術ギルドなんて組織でも有るのだろう。


 ミリアムはそんな組織と独占取引の契約でもしていて俺の作った魔法薬を仕入れられないのだろう。しかしミリアムは俺が迷宮の素材で作ったものを迷宮で手に入れたとしてここに売却するなら冒険者ギルドの資格でも問題無いと暗に示したのだ。もちろん冒険者ギルドへの申請や手数料の支払いなどの必要があのだろうがその辺はセリカさんと相談すれば良さそうだ。まぁどちらにしてもその時に考えれば良い。


 俺は魔法薬だけでなく魔法を使って色んな物を作るつもりだ。強い武器や道具が開発できればレベリングに役立つだろうし消耗品をふんだんに使える事は安全マージンを底上げしてくれるだろう。


 作った物の在庫がダブつくほど作れるなら売却することも考えたら良いと思ったのだ。そしてミリアムの言葉で俺が作った物の売却方法のヒントを貰った。



☆★☆




 ミリアムのお店を出ると今度は武器屋に入った。メルが武器を新調したいと言い出したのだ。


 店に入ると陳列棚が所狭しと並んでおり様々な武器が並んでいた。俺はメルが目的の武器を探している間に武器を見て回った。


 家の貯えや三ヶ月間の薬草採取で貯めたお金は今までの買い物で底が尽きそうだ。


 もともと実力は高いが所詮グニッチ過ぎないメルはほとんど貯えなど持たなかった。


 メルは迷宮からそこその大きさの魔核を持ってきているらしく(実は違法だ)その売却を俺にさせることで資金を作るつもりだったようだ。


 俺が物資を調達してやったので武器が欲しくなったようだ。


 しかし魔術が付加エンチャントされた武器は高価過ぎてメルの手持ちの魔核を売却した程度では買えそうにない。


 メルにこっそりと俺が魔法を付加エンチャントしてやると言ったらその時のメルの目の輝きと言ったら無かった。


 メルが武器を選んでいるうちに俺も武器の陳列を眺めていた。


 このリングワールドには色んな武器があるようだ。俺は【心眼】のお陰で武器の性能が大体分かる。そしてその武器の本当の価値も分かる。しかし【心眼】で分かるのはその物の価値であって店の値段ではない。


 なのでどの武器がお得なのかまでは分からない。


 陳列されている武器は数え切れないほどだ。剣だけでも凄い数だ。安い鋳物製の剣。ちゃんと鍛錬された剣。ロングソードを始めサーベル。バスタードソード。クレイモア。レイピアなどの大小のオーソドックスな形の剣から蛇がうねったような波型のフランベルジェ、片刃に無数の出っ張りがありそこに剣を挟んで折るソードブレイカーなどの変わり種まである。


 磨き抜かれた刀身はキラキラしていてとても綺麗だ。俺は宝石を見る女の子のように目を輝かせて武器の美しいホルムに見とれていた。


 【心眼】のお陰で色んな武器の効果や価値などが分かってとても楽しいし自分で鍛錬する時の参考になった。俺はこの世界で十七年暮らして来たがまだまだ知らない事ばかりのようだ。先程の職業クラスの事もそうだけど。


 この世界はゲームじゃ無いのに俺はてっきりこの世界をスキルシステムのゲームと同じでスキルのクラス分けでゲームが進む形式の世界だと思い込んでいたわけで思い込みとは恐ろしいものだ。


 もしかしたら職業クラスも重要な意味があるのかもしれない。何事も思い込みはいけない。


 そんな事をあれこれ考えているとメルが手ぶらでやって来た。


「武器は買わないの?」


「そうっす。若様が職業クラスの恩恵を授かりに行くならあたいも一緒に行って転職をするっす。もしかしたらセカンドジョブが貰えるかもしれないっすから」


「転職。セカンドジョブ。ああ。メル。申し訳ないけどその辺の事を教えてくれないかな?」


「ふーー。若様は本当に世間知らずっすね」


「「「だから馬鹿様って聞こえるって!」」」

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