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リングワールド  作者: seisei
序章

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15/29

ええええええ? 婚約ですか?

 セーラ様は微かに微笑んで消えた。アンパロと俺の二人となった。


「おい。大変な事をしでかしてくれんじゃねぇかお前」


 セーラ様が消えた途端、本気で怒っている事が分かる声でアンパロが言った。先程までの馬鹿にしたような茶化すような調子ではなくむしろ淡々とした静かな物言いだがそれだけにアンパロが本気で怒っている事が伝わって来た。


 やはり俺は高望みをし過ぎてセーラ様に多大な負担をかけてしまったようだ。


「す、すみませんでした。あれほどお疲れになるとは」


「ふん。お前ごとき屑がよくもセーラにあんな望みを言えたもんだ。私はセーラが断ったらお前を殺すつもりだったぞ。しかしセーラの物好きにも程がある。何の取り柄もないお前のような屑を選ぶなんてな」


 アンパロの怒りは凄まじいものがあった。歯ぎしりの音が聞こえて来そうだ。


「そうですね。もしセーラ様に転生の儀式をつかさどって頂けなかったらと思うと……」


「ああ。そんな話はどうでも良い。よく聞けよ。【婚約儀】って神技は結婚する二人を制約で結びつけるとても強い神技だ。セーラほどの神格の高い女神ですらあれほど疲れる。


 効果はたった一つ、制約が外れるまで何者もこの制約を無効化できないって効果だ。


 制約が外れる条件もたった二つある、制約の対象の二人が添い遂げる事。または二人のうち一人が死ぬ事だ。


 そしてこの制約が一方から破られた場合はそいつが破滅する。強い制約だ」


 俺はアンパロの説明に違和感を覚えた。婚約? それ何? 誰と? まだ見ぬセーラ様に似た女性とまだ会って無いのに婚約? 訳が分からない。


「へ? アンパロ様。すみませんが俺は誰と婚約したって?」


 俺が間の抜けた声で尋ねたら、呆れた顔でアンパロが大きな大きなため息をついて空を仰いだ


「ああ。やっぱりそう言う事か。セーラめ。早とちりしやがって。それよりもラーク。お前も紛らわしい頼み方すっからいかんのだ。お前は取り柄は無いが馬鹿ではなさそうだと思ってたからな。まさかいきなり女神に求婚する馬鹿とは思わなかった。


 本当にセーラのドジが」


 そこまでアンパロは言うともう一度ため息をつきながら天を仰いだ。


 俺はこの瞬間とても恐ろしい寒気に襲われた。


「わぁはははは。しかしラークさんよ。お前。面白い奴だな。本当。見ていて飽きないわ〜」


 俺はアンパロがニタリと笑ったその顔を見て何もかもが分かった。


「もしかしたらセーラ様は俺が求婚したと?」


「あはははははははは。本当。お前。面白いなぁ。わぁははははははははははははハハハハハ………苦しいィ。笑い死ぬ〜」


 アンパロが腹を抱えて笑った。


 俺は顔が青ざめた。セーラ様は俺と婚約の儀式を結んだのだろうか。そんな事が許されるのか。


「え? はい? せ、セーラ様は何を考えてらっしゃるのです? こんな俺みたいな……どうしてそんな? は?」


 俺は目を見開いてさぞかし馬鹿面で呆けていたはずだ。あまりの衝撃に俺は呆然としてしまった。


「わぁはははははははははははははははははははははははははははははははははは」


 アンパロはまだ腹を抱えて笑っている。


「お前なぁ。わぁはははは。はははは。ふー。ははははは。ふー。死ぬぅぅぅぅ。ふー。へー。本当。疲れる。お前なぁ。ふー。ふー。ふー」


 アンパロはとことん笑い転げた。


「お前。本当に面白い奴だな。わははは。セーラも言ってたがあいつには予知能力があるだよ。でもな予知能力って言っても微妙なもんだ。


 ああ言う高級な女神様は、言ってみれば現実の世界を半分未来を見ながら生きているんだよ。セーラはお前と結婚した未来を感じていたんだろうさ。


 女神はそう言った未来予測を相手を見た瞬間に感じるもんだ。セーラはお前の事をそんな未来を見せてくれた初めての男って言っていたよ」


「え? 初めての男ってそう言う意味だったんですか?」


「あ? まぁそう言うこった。お前は【婚約儀】を完遂させるか死ぬかの二択を迫られているわけだ。ちなみに【婚約儀】には期限があるからな。


 今日から三年以内に【婚約儀】が成立しなければお前は婚約を破棄したとみなされて……」


 そこでアンパロは首を切る真似をして見せた。


「はぁ。その三年で何をしたらいいのです?」


 俺は困惑して尋ねた。


「まぁ、そうだなセーラの父親ってぇのはお前の世界の主神様だ。その方にセーラをくださいって許しをもらわにゃならんだろうな」


「し、主神? 野球の主審じゃ無いですよね」


「馬鹿な事言ってんじゃねぇ。ゼウズ様はおっかねぇぜ。しかもセーラを溺愛してるからな。セーラが今まで一度も求婚されなかったのはあの石頭親父のせいだろう。まぁ頑張りな」


 アンパロはどこか冷めたような顔で言った。


「どうやったらゼウズ様は俺を認めてくれるんです? 教えてください」


「はっきりしたことは分からんな。しかし一般的に言やぁお前はセーラを嫁さんに貰うのにふさわしい奴でなければならいだろうな。例えばあっちの世界の十神で戦神のセイート様よりも強くなるとか、あるいはお前なんかは十神で賢神のライオーネ様よりも賢くなる事の方が向いてるかもしれんな。


 どちらにせよセーラは美と愛の女神であっちの世界の十神だ。それと釣り合うって言ゃぁ他の十神ぐらいのもんだろ。


 セーラは私のような神成りしたような中途半端な半神じゃ無いからな。まぁ精々頑張りな」


 アンパロは気の毒そうに俺の顔を覗き込むようにして言った。


「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」」」」」


 あまりの話に俺は叫んでいた。三年以内に神様にふさわしいほどの実力を付けて前世の世界の主神であるゼウズ様にセーラ様をくださいとお願いに行かなければ婚約破棄とみなされて……消滅だよね。もしゼウズ様に気に入られなければそれでも消滅だ。


「セーラ様と駆け落ちなんてのは?」


「お前なぁ。女が男と駆け落ちするってのは相当な覚悟がいるんだよ。そんなにお前が魅力的だったらセーラも【婚約儀】なんてまどろこっしい事をせずにお前のところに嫁いでいただろうよ。


 【婚約儀】の三年の猶予の意味は三年以内に私にふさわしい人になってくれたら必ず結婚しますって言う意味だよ。


 甲斐性無しがゴタゴタ言ってねぇで甲斐性付けて来いや」


「し、しかし誤解したのはセーラ様だし」


「まぁ、そうだが【婚約儀】はお互いが本当にその気が無ければかからない神技だ。つまりお前ら二人にはその気が有ったてこった。


 お前はあんな可愛らしい女神に好かれて男冥利じゃねぇか。三年で神々の仲間入りしろって言うのはさすがに厳しいがお前は土地神に剣法やら魔法を仕込まれたんだろ。【分割払い】は強くなりたい奴には持ってこいのスキルだし。このスキルをうまく使うと絶対に強くなれる。


 どっちにしろ一度かけられた【婚約儀】は例えあっちの主神のゼウズ様にもこっちの主神のゼファー様にも解けない。これはセーラが無理矢理他の男神に嫁がされるのを避けるって意味もあるんだ。セーラの決断や勇気も考えてやれ。


 しっかり頑張ってセーラを迎に行ってやれ。


 今後セーラもお前の事を贔屓してくれるだろう。それと私から婚約のお祝いとして一方通行になるがこちらからメッセージを送れるようにしてやるよ。それと【分割払い】が少しでも良い働きをするように私からも加護授けてやろう。セーラの加護ほどじゃ無いが少しはマシになるだろうよ。


 ちなみにお前のことは天上界から眺めてるから浮気するなよ。一人エッチの時もセーラをオカズしろ。あいつはああ見えてちょっと嫉妬深いから。じゃ」


「じゃじゃねぇよ」


 しかしその言葉は目の前のカーラ神殿の司祭様に吐かれていた……チン。

金曜日なので連載しちゃいます、

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