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リングワールド  作者: seisei
序章

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12/29

はい? ギャグスキル?

【ラーク視点。ラル街。スキルの女神カーラ教会。救済の儀式】


 教会に入ると俺は神父補助の男の子に救済のために来たことを伝えた。そうすると神父補助の男の子から横柄な態度で列の後ろに並ぶように言われた。


 俺は言われた通り同い年らしい少年少女達の列の後ろに並んだ。


 見ると誰もが期待に瞳を輝かせている。それはそうだろう。ここにいるのは俺と同じ無能力者と言われ馬鹿にされてきたような人達だ。


 救済日に参加できる者は事前に招待状が届いている。俺も三ヶ月前に招待状が来ていた。差出人は教会の信者の組織からだった。


 噂では保有スキルが五つ以下の者や持っているスキルのクラスがEランク以下のスキルしか持っていない者が呼ばれると聴いている。


 ラークと同じように一度もステータスを鑑定してもらった事が無い者がほとんどだろうから教会がどのようにして参加者を特定しているのかは不明だ。


 俺がそんな風な事を思って列の最後尾に立って待っていると司祭様らしい立派な衣装を纏った初老の男が奥から現れて優しい笑みを浮かべて俺たちの前に立った。


「こんにちは。本日カーラ様の御誕生の祝祭日です。カーラ様はスキルの神様。人族に神々の恩恵を授けてくださる尊い女神様です。皆さんは生まれながらにスキルに恵まれず辛い少年少女期を過ごして来られた気の毒な人達です」


 そこまで言うと司祭様は穏やか仕草で一旦俺たちに向かって祈りを捧げる仕草をした。何か意味があるのだろうが俺には何をしているのか分からなかった。


「今、皆さんのためにカーラ様にお祈りをさせて頂きました。皆さんは列の順番に一人づつ女神像の前に跪いて祈りを捧げてください。そうすればカーラ様からスキルが授かります。その後私の前に来てください。私がスキル名、スキルのランク、使い方などを鑑定して教えて差し上げます」


 何と聖職者とは偉いものだ。何の得にもならないのにスキルを授けたり鑑定してくれたりするのだと俺は感動して優しそうなその司祭様の姿を見つめた。鑑定代は結構高額なのだ。


「では最初の……ああ君だね。いつもお父上に多額の寄進を頂いているよ。こっちに来てカーラ様にお祈りを捧げるのだよ。カーラ様に感謝し今後もその信仰心を大切にするのだ。そしてお父上によろしく伝えて欲しい」


「司祭様。ありがとう。ご親切に。今後も心ばかりの寄進をさせてもらように父に伝えておきます」


 先頭の少年が丁寧に礼を言ってからカーラ神の像の前まで行ってお祈りをしているようだ。


 俺はこの二人のやりとりを聞いていてこの救済日のスキル授与の儀式がカーラ神の教会では大きな宣伝になる事に気付いた。教会ではこの活動を通して熱狂的な信者を得る事ができるかもしれないからだ。このような地道な活動が教会への多額の寄進に繋がるのだろうなと改めて思った。


 俺がそんなくだらない事を考えているうちに一人目の救済が終わったようだ。司祭様はその子の鑑定をしている。


「うむ。君が授かったスキルは【三段跳】と言うスキルだ。競技の神エレス様の跳び技だな。効果は三回まで連続して【跳び】スキルが使えると言う優れたスキルだ。Eランクと認定しよう。足に力を込めて何回飛ぶかを意識して『我、エレス様の恩恵によりて技を放つ。競技の最高神エレス様の御技よ発現せよ』と唱えるが良い。広い柔らかい場所で試すと良いだろう」


 司祭様はにこやかに説明した。しかしスキルを授かった子は何とも微妙な表情だ。スキルが気に入ら無かったのだろう。この子は見た感じそれなりの身なりで裕福な家柄を思わせた。教会もこの子の父親から多額の寄進をしてもらっているようだ。


 それらの状況から想像するとこの子は『なんちゃって無能力者』に違いない。俺の様に惨憺たる無能力者ではなく無能力者のふりをして更なるスキルを獲得しようとする偽物の無能力者だ。


 カーラ様の教会に多額の寄進をするとそれなりのスキルが貰えると言うのは有名な話だ。


 彼は少し肩を落として気落ちしているようだがそれでも恭しく司祭様に礼をしてから先程案内してくれた神父補助の男の子にお布施を渡している。あの生意気な神父補助の男の子とは思えないような恭しい態度でお金をもらっている。


 彼が授かったスキルは確かに微妙なスキルだが金でスキルを買えたのだ。しかも司祭様の話では【跳び】スキルが連続して三度も使えるEランクスキル。恐らく【跳び】スキルはFランクスキルなのだろう。それをスキル後硬直なしに連続して三度も使えるのだ。俺がこれからもらえるくずスキルとは全然違う。


(結構な事じゃないか)


 俺は妙に腹立たしくなってそう思った。


 そして次に救済の儀式を受ける子は女の子のようだ。見るからにみすぼらしい身なりで貧困層の出身である事を知らしめていた。


 この子は多分俺よりもずっと辛い目に会って今まで生きてきた筈だ。密かに俺は少しでも良いスキルが授かるようにこの子ために祈っていた。


 直ぐに女の子は祈りを終えて怖々とした表情で司祭様のところにやってきた。


 司祭様は女の子のあまりにもみすぼらしい身なりに完全に引き気味だ。女の子が側にくるのを汚い物でも近寄ってくるかのように手で制してから少し離れたところから鑑定を始めた。


(おいおい。何だよその態度は。 可哀想だろう)


 俺はプンプン怒ってしまった。何だか最初の司祭や教会に対するイメージがどんどん悪くなって行くようだ。


「お前のスキルは……ふむふむ。おや? これは驚いた。【水属性治癒魔術】だ。希少属性魔術の水属性の治癒魔術を包括するスキルを取得したようだね。良かったね。君」


 司祭は先程の態度を一変させるとつかつかと少女に近いて少女の肩に手を置いて優しく言った、顔がわざとからしい満面の笑みだ。


 俺は呆れて司祭の聖人のような顔を眺めた。


(この司祭。娘が凄く良いスキルを得たと思ったらいきなりお前から君に呼び方変わってんじゃん!)


 俺は調子の良い司祭に無言でツッコミを入れた。


 いつのまにか集まっていた野次馬達がこの司祭の説明を聞いて歓声を上げた。俺も野次馬達と一緒に拍手していた。


「君のスキルはCランクだ。なかなか良いスキルだよ。使い方など我が教会で教えてやろう。アレン。この娘を事務所に案内してやりなさい」


 司祭は神父補助の男の子に指示して女の子をいざなって別室に案内する様だ。


 この生意気な神父補助の男の子はアレンって名前らしい。


 女の子は戸惑った表情で不安そうだ。


「「「嬢ちゃん良かったな」」」


 集まった野次馬の中から少女にエールを送る者までいる。みすぼらしい身なりの女の子に良いスキルが発現した事を祝っているのだ。


 少女とその両親だろう。同じようにみすぼらしい服装の男女がオドオドした仕草でアレンと呼ばれた生意気な神父補助と共に別室に連れて行かれた。


 教会では癒しの治療などもしていると聞いている。彼女は教会で働く事になるのだろうか。あのみすぼらしい身なりの女の子にはその事も含めて良かったと俺は思った。なんともスキル一つで人生が大きく変わる世界だ。


 俺はここまでの儀式を見てなるほどと思った。


 司祭が何故無料で鑑定するかと言うとよい人材の情報を最も早くに知ると言うメリットがあるからだろう。せっかくカーラ女神が授けたスキルなのだから良い人材は最初に唾をつけようって気持ちも有るのだろう。





☆★☆




 ようやく俺の番が回ってきたようだ。


 俺の前の子供達は概ねE〜Cランクのスキルを授けてもらっているようだ。流石にスキルの救済日だからカーラ様も奮発しているのだろう。


 しかし俺は自分のスキルが使い物にならないくずスキルだと知っていた。


 ソフィアが俺のスキルを占った時に本当に申し訳無さそうにしていたのを思い出す。


 俺はソフィアに鑑定してもらってからこの四年間、自分のスキルについてよくよく考えていた。


 しかし俺は自分のスキルが実は凄いスキルだと今では思っているのだ。何故かと言うと『どんなスキルであろうと事前に取得する事ができる』って言うのが凄い事だと気づいたからだ。


 もちろん取得してからが大変そうだ。取得したスキルの『修行』は『二割余計に修行しなければならない』と言う事と修行ができないとペナルティが課せられるらしい。そのペナルティが何かはこの胡散臭い司祭の鑑定を受けるまでは不明なのであるいはソフィアの言う通り本当にくずスキルかもしれない。


 俺以外の人なら二割増しもの修行をするのならスキルを使わずに最初から修行した方がマシだと普通は誰だってそう思う。


 確かにリングワールドでは一定の修行をすればスキルは取得する事が可能な世界だ。


 しかし色々調べてみて分かった事だがスキルを取得するには修行だけでは無理で条件をクリアしていなければならない事が多いのだ。


 例えば属性魔術系の魔術スキルは何らかの包括属性魔術スキルを持っていないと修行しても発現しない。


 さっき女の子が授かった【水属性治癒魔術】は水属性の魔術だが、この魔術スキルは完全な包括スキルでは無く治療だけの包括魔術スキルなので水属性の治療以外の魔術スキルを覚える事は無いのだ。


 しかし俺のスキルは包括属性魔術スキルを持っていなくてもどんな属性の魔術スキルでも持つ事ができるかもしれない。これがどう言う事か分かるだろうか。


 しかもその気になれば包括魔術スキルですら持つ事も可能かもしれない。この事を良く考えて見て欲しい。十二個ある包括属性魔術スキルは普通では一つしか持つ事ができない。二つ持つ者は偉人で三つ持つ者は奇跡。ポリーンの様に四つ持つのは神みたいな扱いなのだ。


 俺の【分割払い】で包括属性魔術スキルを順番に取得して行けば凄い事になるかもしれない。ただし俺が今考えている事はそんな方法ではない。


 実はもっと安全マージンの有るやりかを考えているのだ。


 だって下手に強いスキルを取得したら後の修行が大変かもしれないからだ。


 俺が考えたのはまずスキル【奪スキル】を修得するつもりなのだ。このスキル、スキルを奪う事ができる凄いスキルだ。


 歴史的には英雄サラトンがこのスキルを持っていて魔王ザラーンを倒し神になったとされているのをはじめ何人か持っていた者が存在するスキルだ。


 凄いスキルだが制約も半端ない①一日に一回しか使えない②成功率がめちゃくちゃ低い③自分よりレベルの低い者からしか奪えない。と言うなんとも使えない制約が有って俺が読んでいた転生物語みたいにサクサクっとチートな人間になれる要素は低い。


 しかしよく考えてくれ。たとえその制約があったとしても何年にもわたってスキルを奪い続けていたら凄いことになる事は誰だって想像できるだろう。


 俺は自分のスキルでこの【奪スキル】を取得するつもりだ。そうすれば俺のスキルの制約である①後払いで修行をしなければならない。②利息を二割も払う必要がある。③支払いが遅れるとペナルティを払わないとダメ。と言う制約など気にせずどんどんスキルを増やす事ができると気づいたのだ。


 どちらにせよ俺は自分のスキルの可能性の高さを評価しているのだ。


 おっと。俺の番がついに来たようだ。


「やあ。君で最後だね。女神様に祈りを捧げてくれるかな?」


「はい。司祭様」


 俺は丁寧に答え頭を下げながら女神像の前に跪いた。女神像はあのセーラという女神に似た面影の美しい像だった。もう一度あの女神様に会いたいなとふと俺は思った。


 その時だ。一瞬で俺はあの忘れもしない転生の儀式の異空間に立っていた。何だ? 俺は驚いて辺りを見回した。




☆★☆




 もしかしたら俺は急死したのだろうか?


「こんにちは田中一郎さん。いえ。今はラークさんでしたね」


 その声と同時に俺の目の前にはあの言葉にできないほど美しいセーラ様が出現していた。


「あの。もしかして俺。死んじゃったの?」


 俺は尋ねた。


「あ。いえいえ。そうじゃありません。あなたには謝らなければなりません。本当にごめんなさい」


 セーラ様は土下座しかねない勢いで頭を下げた。俺はただ驚いて見ているしかない。


「おう。久しぶりだな楽楽ラーク君。お前の人生を愉快に見させてもらってるぜ」


 そう言いながら現れたのは人の話を聞かない女神アンパロだ。


「あんた。俺の転生は良いようにしてやるって言ってただろう。それがこの無能力者ってこと?」


 俺は思わずアンパロに食ってかかっていた。


「わはははは。お前のその姿。笑える。ほんとにお前は見ていて飽きないな」


 アンパロは俺の怒った顔を見ながら腹を抱えて笑い出した。

投稿が遅くなり申し訳有りません。

明日は午前七時に投稿します。

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