色々ありまして………え? もう成人?
【四年が経過】
この四年間、色々有った。俺はグラッドとソフィアの二人の土地神から剣法と魔法を教わって過ごしたが、この間に俺の優しかった父さん母さんが流行り病で呆気なく死んでしまうなどの悲しい出来事も有った。
グラッドは俺の両親のためにわざわざ薬法の土地神に特効薬をもらいに行ってくれりしたが両親は発病して三日と言う速さで死んでしまったので薬も間に合わなかった。
俺の見るところ両親の病気は黒死病、つまりコレラと同じようなパンデミックと言っても良い伝染病にかかったようだった。俺も死を覚悟したが両親を火葬したり、良く煮沸した熱湯で家中を消毒したり、前世の記憶をフル活動した事が良かったのか難を逃れる事ができた。
この病で村も街も大きな被害を受けた。一時は世の終わりかのような終末論まで出たようだが死者の数は次第に少なくなって行った。
そんな悲しい経験を経て俺は十七歳の誕生日を迎えた。
結局スキルは発動せず無能力者のままだった。ソフィアの予言通り俺はカーラ様の救済日までスキルは得ることができないようだ。
この間に俺はグラッドの剣法とソフィアの魔法をほぼ習い終えていた。
それがどれほどの事なのか俺には分からない。
二人は口を揃えて俺を褒めちぎってくれるが二人は俺に甘々なのでどうも親の欲目ってやつのような気がしてならない。
この四年で分かった事だがグラッドはやはりカエルの妖精だった。カエルの妖精の王子様が人間の剣士に憧れて剣の修行をして剣法の神様になったのだ。
そしてソフィアは美しい蝶々の妖精だった。古い妖精王で今でも妖精達の守護神として活躍している神様だ。
人族とはかけ離れた存在だった二人だが、両親が死んでからはソフィアの山荘に三人で一緒に暮らすような感じになり、ソフィアとグラッドの二人は俺にとって親のような存在になった。
俺は妖精達から眷属とみなされるようになった。色々な種類の妖精族がソフィアを訪ねて来る。俺は最近では人族よりも妖精の方が知り合いが多いくらいだ。
「じゃあ行ってくるよ。ソフィア。グラッド」
「たまには顔を見せなさい。ラーク」
ソフィアが俺を優しく抱き締めながら言った。
「お前ぇは凄いゲコゲコ。格好良い。良いやつだぞラーク」
グラッドが訳の分からない事を言いながら俺の背中をどやしつけた。
「ありがとう。ソフィア。グラッド。じゃあ俺は父さんと母さんの墓に寄って父さんの正装を着てからカーラ様の祝祭に参加するよ」
「おお。やっとお前も冒険者ギルドに登録できるなゲコ」
グラッドが嬉しそうにそう言ってくれた。無能力者の俺はギルドに登録さえできなかったのだ。
父さんが亡くなった俺は正式な職業にも就けず、結果として冒険者ぐらいにしかなれない。両親はそこそこの地主だったが農地関係のスキルが一つも無い俺は農家にもなれないのだ。
冒険者ギルドでさえ無能力者では登録できないのだからこのリングワールドは何から何までスキルが中心で回っている。
今日、俺もカーラ様の救済を受けて晴れてスキル持ちになる。農業スキルを持っていない俺は農地を触ってはならないという国法なので仕方が無いので冒険者ギルドに入り冒険者兼狩人として生計を立てるつもりだ。
剣法と魔法をマスターした俺はグラッドやソフィアの二人の親の欲目を差し引いても初級の冒険者程度の実力はあるだろう。一人で生きて行くくらいなら何とかなるだろう。
「じゃあ。二人ともありがとう。お世話になったね。また遊びに寄るよ」
俺はグラッドとソフィアにそう言ってソフィアの山荘を後にした。
☆★☆
【ソフィア視点】
今日はラーク坊やが旅立つ目出度い日。しかしどんな別れでも寂しさは拭いきれるものではない。
前途のある若者を明るい笑顔で見送るのが今日の私の役目だ。
この四年でとても成長したラーク坊やを見つめた。その光輝く若さが眩しく感じられて目を細めた。
数々の思い出が自然と優しい笑みを作ってくれたので労せずして笑顔が作ることができた。
思い起こすと四年前。グラッドがこの子を連れてきて魔法を教えろと言う。話を聴くとこの坊やは無能力でスキルがどうしても発現しないので私の魔法を修得させてやって欲しい。そんな話だった。
私も可哀想になって教えてあげることにした。しかし驚きは直ぐにやってきた。この子は信じられないくらいに物覚えが良いのだ。
確かにこの子は不思議なほど高いDEX値を持っていたがそれだけではないだろう。
グラッドにこんな事を言うと怒るかもしれないが剣法ごときは脳筋だろうとDEX値が高ければ強くなれるだろう。
しかし魔法はそんな単純な物では無い。器用さの他に法則を理解し応用できる頭脳が必要だ。
最初私は頭脳の面では私達妖精族よりも高等種族のラーク坊やと言えども田舎の村人に過ぎないこの子が早々に難解な魔法の理論を理解できるはずが無いと思っていた。
しかしラーク坊やには前世の記憶があるらしい。その事例はとても珍しいものだ。そしてどうやら前世の記憶が幸いしたようで私の難解な魔法理論を乾いた砂漠が水を吸収するかのように吸収して行った。
最近では私が思い付きもしない理論を考え出すほどになった。
ラーク坊やはスキルは持たないがある意味魔術系のスキル持ちと比較してもそうそう引けを取らないと思う。
本人はその辺の自覚は無いがグラッドも私も最大級の魔法や剣法を軽々しく使わないようにと口を酸っぱくて諭したから賢いラーク坊やなら大丈夫だろう。




