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諸所諸々のエッセイ  作者: 粘土
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何れ来る終末

なるべく明るく書いて見ました。

 しも世界が明日で終るなら、僕は何をしよう。特別な事は思い浮かばない。実際に、自分に出来る事など限られているのだから。適う事は極ありふれた事だろう。ならば、バーベキューをしよう。友達だけなんかじゃなく、近くに居る人達全員で。駆け込みだってOKだ。最期だと云うのだから、もう殺生はせず家に有る食材を持ち寄ろう。何と云っても肉だ、と、云いたいところだが、本当の終わりに野菜の魅力を感じないのはナンセンスだ。だからして、大きな鉄板を用意して、先ずは野菜を味わおう。純粋な潤いを楽しもう。けれども、其処で腹を満たしてしまっては勿体ない。各家庭に有る肉を持ち寄って最期の合掌をする。死のうが、生きまいが、感謝の念は忘れては不可いかん。そうして、喰う内に現在と終わりを迎える明日と、之まで包み込む様にして呉れた母なる大地、星に感謝を。自身が産まれて来るまで“生きて”呉れた大地と、海への敬意を。

 思えば、此の星の命が之まで続いたのは奇跡である。太陽系と云う言葉が有るが、ならば何時いつまででも無事に済む筈が無い。そんな中、此の星は生き続けて呉れた。生態系を維持し、命を繋いで呉れた。僕等の様なパラノイアに侵食されても。何一つ文句も云わず、偶に“くしゃみ”をする程度で僕等を守って呉れた。此の星は、其れ程の慈しみを持っているのだ。産まれてから本当に長い間生きて呉れた。人の生涯よりもずっと長い年月を只々、静かに過ごして呉れた。今現在に至るまで沢山の命と沢山の出来事が有ったと思う。其れ等は優しい事ではなかった筈だ。軽い出来事ではなかった筈だ。其れでも、懸命に生き、僕等が文明を築くまで待って居て呉れた。と、云えば、もう解るだろう。母なる大地を蹂躙し、正しく自らの『母』と云うき存在を完全に無視し、自分達の欲望の赴く侭に生きて来た人類と云う生物が最も罪深き生を送っていたのである。

 そろそろ終わりにしようかと思っていたバーベキューではあるが、知らん間に寸胴ずんどうに並々と味噌汁が出来上がり、ジャガイモやらタマネギやらニンジンに加え、喰えるかと云う程の野菜と、追加の肉が集まって来ていた。集まると云うと語弊ごへいが有るが、何しろ来る者来る者がほんの少しでも持って来るので、食べても食べても減らないのである。更に酒も加わった為、結局、其処で皆のパーティーは終わらなかった。

 皆が楽しむ中、僕はそらを見上げた。全く、以前と変わらない星空だった。此の星が終わってしまうのが嘘の様に。けれども、現実には嘘は無い。明日の何時いつかに此の星は生涯を閉じる。皆は泣きながら、笑いながら、鉄板の上をつつき飲み干せない程の味噌汁を飲んでいた。不図、僕の袖を引っ張る者が居る。「どうしたの?」 と訊くと「お兄さんも一緒に食べようよ」と純朴じゅんぼくな瞳を向ける。正直腹は満たされていたので断わっても好かったのだろうが、思わず、「うん」と云ってしまった。うやらその子は先刻さっきから僕を気に留めていた様で、僕の返事を訊くととても嬉しそうに微笑んだ。……

 嗚呼ああ有難う。此の星よ。有難う、皆。命とは必ず訪れる死と云う終焉に向かって旅をする様なものだ。だからこそ、凡てに有難う。し次の世界が在ったなら、又、皆寄って楽しく食事をしたいな。知らない人も知っている人も関係無く。有難う、皆。さようなら。

人は少しばかり欲張り過ぎです。

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