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第97話〜鬼神〜


今年になって噂を聞いた。それは毎年首都で開催されている格闘大会で隣村出身の方が優勝した、というものだ。そのこと自体はさして珍しいことではない、というのもその隣村のカリュウ村では以前にも優勝者を輩出したことがあるということを聞いたことがあるからだ。だから本来ならばあまり興味を覚えないことなのだが、しかし私は今年に限ってはその優勝者がどのような方か興味を持った。それはその優勝者の方が女性という話を聞いたからだ。そもそも格闘大会は武器の使用を禁止されており己の肉体のみを駆使するものなので、噂を聞いてどのような女性が優勝したかということにとても興味を覚えたのがきっかけで、大方の方が想像するようにわたしも余程屈強な方が優勝したのだとばかり考えていた。

しかし、


優勝した女性の人相風体を聞いたところ、見目麗しい年若い女性だということだったので驚いた。もし機会があるのならばお知り合いになりたいところだ。何故ならば、もしかしたらその女性なら私の長年の悩みを解消してくれるかもしれない、という期待を込めて。


鬼神・・・見た目とは裏腹に人ならざる動きそしてその強さを見せつけた女性、ニルナ某という人物は格闘大会においてそのような異名で呼ばれたそうな。


・・・行動を共にしている少女に頼み込み、とある人物を探し求めて移動してきたこの場所・・・この島で私は以前に聞いた火の大陸格闘大会のその噂を思いだしていた。

・・・喚起されたのだろう、その場で行われている力のぶつかり合いを見せつけられたために。



ーーー其処、鬼ヶ島では2人の人物が凄惨なまでに斬り合っていた。片や悪魔の如く。片や・・・鬼神の如く。




〜〜〜





「やるっ・・・!!」

「うぅあああああっ!!」


ガガガガガガ、と連続する衝撃が私を襲う。おそらくそれは動きが捉えられぬ程に凄まじい速さを見せる目の前の女の攻撃だろう。おそらくというのはこの私の()を以てしても残像ぐらいしか見えないからだ。先程から時折耳にする叫びを聞いて女だということは判断できた・・・どうやらこの女、並々ならぬ使い手らしい。


「・・・それほど私が憎いか?」


一瞬で目の前を通り過ぎた影のようなものへと問い掛ける。


「っ!!!」


しかしその影は私の問いに応じる気はないようだ。さらに感じる威圧が上がった感覚を受けたところを見ればこの女は・・・ヒノカ流の使い手であるこの女はどうやら本気で私を殺そうとしているらしい。


「ならばっ・・・!」


「!?・・・身体がう、動かなっ!?がっ!」


「・・・ようやく捉えたぞっ!」


魔眼を使うつもりではなく一連の技の動作の1つとして組み込むことで、その効果は即座に表れる。その理由は分からないが色々と試した結果、それが魔眼の最も扱いやすい方法だった。

・・・推測だがこの眼がそのようにしか発現できぬのは多分私の心情に因るのではないだろうか。

それにしてもこの女、


「こ、このっ!」


「中々の、ものだっ!」

今、薙ぎ払いと同時に繰り出した魔神の眼はしかし、効力としては然程ではない。精々が数瞬程動きを止めるに留まっている。しかも、あの男の弟子だけあってこの女は薙ぎ払いのみでは討てない程度には頑丈だ。オーラでの身体強化を施しているのだろう。

・・・その上、


『・・・いつまで遊んでいる。早く片をつけろオルレアン・・・!』


「黙れ!」


『・・・・・・くっ』


余計な口を挟む輩へ一喝する。ようやく興が乗ってきたところで、この者は何を焦ったように言うのだろうか。暫しこの女との戦いを楽しみたい。


「速度だけならば貴様に分があるようだ・・・来い、ヒノカ流」


大剣(・・)を女へと向けた。


『・・・・・・我にはヒトの思考は分からぬな・・・』


以前闇の大陸にて斬った私のかつての仲間であろうあの男、それが持っていたこの剣もその見覚えのあった顔と同様にやけに私に馴染みの深いものだった。この大剣を使い魔剣を敢えて使わぬのは然したる理由もないが、強いて言うのならばあれ(ヘルヘイム)では威力が強すぎるので戦いを楽しめない、といったところか・・・


「師の仇を討ちたくはないのか・・・?」


つまりはあの男に比べてこの女のほうが、


「うわぁぁぁっ!」


「未熟ぅ!!」


形振り構わずオーラの剣を振り回してきた女を力任せに斬り払った。

・・・この女の持ち味としてはその速度だろうに、我を忘れて真っ向勝負を挑むとは・・・逆撫でし過ぎたか。


「拾え」


女の手を離れ只の木の棒と化したものを指して女へ促した。

その威圧や殺気からすればまだまだ楽しめそうな相手だ。このまま斬り伏せては勿体無い・・・


「・・・殺して、やるっ!」


「その意気だ・・・来るがいい!」

私は()を全開にしないように調整しつつ更に女との戦いを続けた。

だが本気を出さないのは決して楽しむためだけではなく、またそれほど女を侮っているわけでもない。


「あ、あんたはっ!」

「・・・貴様ではないだろうが、」


『・・・気を逸らすな・・・近づいているのだぞ・・・!』


待ち人のために。この、それなりに大きな魔力の持ち主であるアンリをしてここまで警戒させる火炎の牙とやらに備えているのだ。


「待ちわびているのだっ!」


プレッシャーをかけるべく私は指向性の殺気を放った。しかしその程度では意にも介さぬのか女は更にオーラを高めて、木の剣は再び凄まじいオーラを纏っている。


「音!牙!」


「・・・っ!!」


その剣が大きな圧力となり此方へ振り降ろされた。


「九天の技を!」


「・・・!連続技だと!」


更に女の圧力は跳ね上がる。


「舐めるなぁっ!!」

その右上段から振り降ろした剣を更に左の下段からかちあげた今の一連の技、圧力からするにオーラを巨大化して飛ばしてくるものだろうが、思った以上に凄まじい威力のようだった。


何故なら、バキィッと音がして私の構えていた大剣が中ほどから圧し折れたからだ。

・・・この技。武器破壊を・・・


「ふん・・・大したものだ・・・」


「はぁ、はぁ、はぁ、」


かなりの力を使い果たしたのか女の連撃は止まった。

・・・ふとアンリのほうを見てみるも未だ火炎の牙とやらは此処には居ない様子だが・・・


ところで、



「奴等はいったい・・・?」


戦いに興じている最中に気配を感じた。そちらのほうを見てみると、その者達も遠巻きにこちらを見ていた。




〜〜〜




凄い、の一言に尽きる。

私はただただ驚いていた。

闇の大陸に居る筈のミシルさんらしき人がどうしてか此処に居ることにも驚いたが、何よりそのミシルさんらしき人と互角に渡り合えているあの女性にも驚いた。あの方は何者なのだろうか?場所が場所だけにもしや鬼族の?

・・・目にも留まらない程の速度で戦いを繰り広げていたあの女性のような方がきっと格闘大会で優勝するような強さを持っているのだと思えるぐらいに圧倒的な実力に見えた。


「ねえリシナ・・・あれが、」


「ええ、ミシル・タイナという方です」


「やっぱりね、見覚えがあるもの・・・というよりも、体が覚えてるのかな・・・?」


私の頼みを聞いてこの鬼ヶ島に魔法で転送してくれたイルさんはミシルさんらしき人を見て僅かに震えていた・・・私の提案はこの年齢の少女にしてみれば酷なものだったかもしれない、がまさか、


「そうかもしれませんね。・・・ですがあの方達が此処に居る、というのは誤算でした。ハンスさんやジズさんが居ないこの状況では・・・!」


私とイルさんだけでは太刀打ちできないだろう。

あのミシルさんらしき人の傍らに立っている禍々しい雰囲気のあの人物、あれが災厄の王ならば・・・


・・・だが光明はある。ミシルさんらしき人と斬り結んでいるあの女性と協力すればあるいは、


『・・・邪魔をするな・・・!』


「いつの間に!?」


作戦を練るべく思考していると、突然あちらに居た筈の禍々しい雰囲気の女性・・・ジズさんの話による特徴と一致する、災厄の王らしき者が目の前に居た。


『死ね・・・爆発(プロージョン)・・・!』

獄炎(ヘルブレイズ)っ!」


ドンドンドン、と近くで何かが爆発するような音がした、と同時に災厄の王が青白い炎に呑み込まれた。

イルさんの手から放たれた炎に。


「やりましたかっ」

「いや!効いてないっ!」


『・・・・・・地獄の火炎、このような地で見られるとは・・・!』


何事もなかったかのように災厄の王が炎の中から現れた。


「やっぱりあなたが災厄の王ね!」

「どうやら戦うしかなさそうですね・・・!」


・・・つまり、私達は期せずして災厄の王と相対することとなった。


『・・・?・・・お前達は』


「リシナ!」

「分かっています!」


『・・・!!』


私達は同時に同じ構えを取った。


「「はあっ!!」」


両手を災厄の王に向けて突きだし、魔力と精気で造り出した結界内に閉じ込める。


『・・・小賢しい真似を・・・!』


「くっ?」

「こ、この力?」


・・・だが2人がかりで形成した強力な結界てあるにも関わらず打ち破られようとしている、力ずくで。


『・・・何者かは知らぬが、所詮は人の業・・・・・・我には通じ・・・っ!!?』


今まさに結界が破られようとしたときにあちらのほう、つまりミシルさんと女性が戦っている辺りに気配が増えるのを感じた。

このオーラは、


『・・・か、か、か・・・』


見てみるとそれは、女性のような方を抱き抱えている見覚えのある少年だった。その少年を探すべくこの地に来たのでそれ自体は別段驚くことではない。

・・・一つ気になったのは何故かその姿を見た災厄の王、らしき存在が何やら非常に驚いていたことだ。





〜〜〜





なんか人やけにが増えてないか、と地上に上がった瞬間に思った。遠くに何人か見えるけどあいつらは誰なんだ?抱き抱えているノルエルに目で問うても首を振りるばかりで何も答えない。しかも無理やり俺の手をふりほどいて俺から降りた。こいつは何を怒ってるんだ?


・・・そして何より、さっきまで居なかった奴が居るのに驚いた。

何でかというと、


「ミシル?」


此処に居る筈のない知った顔の奴が居たからだ。

・・・いや?


「ミシル、だよな?」


似たような雰囲気のそいつだがよく見ると顔つきが違うような気もする。あの体格とか鎧とか剣とか、ミシルみたいには見えるんだが・・・?


「と、トウヤ」

「トウヤ・ヒノカ・・・」


やっぱりミシルか、と俺の顔を見て僅かに安堵したような表情を見せたミシルを見て俺は納得した。

ただ、


「どうしたんだニルナ?」

ニルナがやけに消耗している。こいつのオーラがかなり減っているのは何でだろう。


「こ、これは、」


「私がやった」


「・・・へぇ、なんでだ」


俺は僅かに目を細めてミシルを見た。


「・・・!ほう・・・貴様、以前とは違うな?」


「それはお前もだろ。そんなことよりも答えろミシル。なんでお前はニルナと戦った?」

話しながらふと視界に入るものがあった。


「ガロウ・・・?」


見ればガロウが地面に倒れている。


「ガロウ・サイハもだ、その男も私が倒した」


「・・・・・・そうか」


「それもこれも只の暇潰しだがな!・・・ようやく貴様と戦えるっ!!」


こいつは何を興奮してるんだ。俺と戦う?

そんなことよりも俺は倒れているガロウに駆け寄り脈を見た。

・・・生きているな。


「どちらが強いか決着をつけ」


ミシルの言葉の途中であちらに見えていた奴等、のほうへ俺は移動(・・)した、今度はガロウを抱き抱えて。




「トウヤさん!」


「リシナ、こいつを看てくれ」

俺は腹に刀が刺さったままのガロウをリシナに預けた。こっちに来たのは何故か此の島に居るリシナのオーラを感じたからだ。


「は、はい!」


「・・・あなたは?」


「あれ、イヅナ?お前あっちに居なかったか?」


急いで治癒の術をしようとするリシナの横に何故かイヅナが居た。・・・こいつはロランと一緒にあっちに居たと思ったんだが。


「イヅナ?」


しかし俺の問いかけに対して首を傾げるこいつは何を言われたか分からないという顔をした。


「・・・?もしかしてお前は、」


『火炎の牙ぁぁぁぁぁっ!!!』


「っ!?なんだっ!」


そいつに違う質問をしようとしたとき、やたらとでかい怒号が聞こえた。

驚いてその声の主のほうを見てみると、


「誰だお前?」


知らない女が居た。


『・・・その、チカラ・・・忌まわしき想念・・・お前が・・・お前が・・・!』

その女は何やら俺に怨みでもあるかのように呪詛のようなことをぶつぶつと呟いている。いや誰だこいつ。


「なあ」


なんか少しの間穴の中に居ただけでやけにこのあたりの様子が変わっていた。

ニルナやガロウはミシルにやられてるみたいだし、リシナやイヅナ・・・じゃなく多分デュカ・リーナ(の体?)が来てるし、知らない女も一人居て何故かそいつが俺に怨みを持っているような・・・何だこのわけの分からない状況。


『・・・この我を・・・我は、お前を・・・!!』


殺気?


『殺す・・・!』


「はっ!」


『・・・っ!!!』


いきなり俺に向けて両手を翳してきた見知らぬ女に向けて俺はプレッシャーをかけた。

・・・あれ?


『・・・こ、この威圧感・・・!』

「なんかしっくりこないな」


今知らない女にプレッシャーをかけようとオーラを高めた、と思ったけど大して上がらなかった。と思ったのに女がやけに驚いていた。


『くっ・・・!やはり、強力な者也・・・・・・こうなれば・・・!』


「俺はお前に会ったこと」


『・・・召喚(サモン)腐蝕王(デッドライ)・・・!』


「っ!召喚ってやつか!」


俺の問いかけを無視した女が叫んだ途端、目の前に巨大な魔物のような奴が現れた。その身体は今にも崩れ落ちそうなほど、所々がどろどろと腐っている。


爆裂(バースト)!」


パンッ、と音がしてその腐った身体の上部分、頭が弾け飛んだ。

今の魔法みたいなのを使った、ってことはやっぱりこいつはデュカ・リーナなのか、イヅナじゃなくて。


『・・・無駄だ・・・腐蝕王に魔導は通じぬ・・・!』


「あらら」


「へえ、タフなんだな」


俺は女の言葉を聞いてどろどろと頭が元に戻っていく魔物を見ていた。


「お手上げかな?」


「あれ?お前」


『ぐるぁぁぁぁぁぁ!』

何か変だな、と思ってデュカ・リーナ(らしき奴に)訊こうとしたら魔物がその巨大な手を振り回してきた。


「ちっ、厄介ね!」

「凄い力だな」


俺とデュカ・リーナらしき奴は同時にその巨大な手をかわした。どごん、と音がして地面が抉れている。


『・・・そのまま朽ちろ火炎の牙・・・!』


やはり俺に何かしら怨みを持っているような女、よく見たら翼が生えているそいつの言葉を聞きながら俺は、


雷牙(らいが)!」


槍を巨大な魔物に刺した。その穂先からは、バリバリと音を立てながら雷が四方八方に飛び散っている。


『「!?」』


そしてその身体が腐っているような魔物はさらさらと音を立てて消えていった。


『・・・ま、まさか・・・腐蝕王が一撃で・・・?』


「いや、そんなに大した奴でもないだろ」


やたらと驚いている女へ突っ込んだ。


「それよりお前はだれ」


っ!?

ガキィ!


「・・・難なく防ぐとは、貴様はやはり以前よりも強くなっているのか」


ミシルの不意討ちを槍で受け止め、女への質問を中断した。

・・・この剣は?


「おいミシル!なんだってんだ!」


「・・・ミシルではない。我が名はオルレアン・・・」


「はっ?」


人違いか?いやそんなはずは、


「貴様を・・・・・・倒す者だっ!!!」


ミシルの目が妖しく光った、と思うのと同時にその持っている剣が肥大化しその大きな切っ先が俺に向かってきた。


「っ!大した重さだ、けど!」

「なっ!?・・・動ける、だとっ」


まるでのように肥大化した剣を斬り払うとミシル?は何故か驚いていた。余程今の一撃に自信でもあったのか。

でも、取り敢えずは、


「お前を止める必要がありそうだな!」

「・・・貴様のそのチカラ・・・?」

「いくぞミシルっ!!」


ふと横を見ると翼が生えている女は手を止めてミシルを見ている。

・・・いや、ミシルじゃなくて女は俺を見ている?


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