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第82話〜顔馴染み〜


この場に留まっていても何の解決にもならない。と、そう思った私はその場に居た皆さんに声をかけ離れようとした。

しかし、



「いったいどうされたのでしょうか?」


先程からずっと呆然としている女性を見て思わず呟いた。


「むう・・・あやつのあのような姿は拙者も覚えが無い。気絶しているときに何かがあったとみるべきだろう。本懐を果たした、というわけでもなさそうだが何故あの存在が退いたのかも不明なところだな・・・」


暫くの間気絶していたハンスさんはそう言うが、災厄の王という存在を討ったのならばジズさんがあのように呆然としているのはおかしい。それに、ミシルさんはいったい何処へ・・・?


「だが、お主の言う通りだな。このまま此処に留まっていても不毛だ。それにあの女性・・・竜も何処かへと行った。ここは一旦戻り対策を練るべきだろう、なあアルス?」



『レヴィアタンは他の(もの)に会いに行くと言っていた。おそらくは預言に従って』


「預言?」


『そうだ。龍族に伝わるーーー』



ハンスさんの剣が語りだすのを尻目に私はジズさんへと近づき声をかけた。


「ジズさん」


「・・・私の失敗・・・責任を・・・」



虚ろな目でぶつぶつと何かを呟いているジズさんはしかし、こちらの呼びかけに何の反応も見せない。



「ジズさん?」


「・・・そうよ・・・・・・あれを使えば・・・でも・・・魔力の・・・」


「ジズさんっ!」


「っ!?・・・・・・リシナ殿・・・」



いくら呼びかけても答えないジズさんにしびれを切らした私はつい咎めるような言い方で叫んだ。今の今まで私には気がつかなかったようだ。余程何かを思いつめていたのだろうか?

それに、ようやくこちらに向き直ったジズさんのやけに悪い顔色は困ったような表情をしている。



「リシナ殿・・・私は失敗、しました・・・」


「ジズさん・・・」


申し訳なさそうにジズさんは言う。私達を置き去りにして自分たちだけで挑んだからだろうか。


「勝算はあったのです・・・私と剣聖殿だけでも」


・・・ということはつまりは災厄の王に敗れた、のだろう。


「貴女の考えは私には分かりませんが、失敗したのはしょうがないことだと思います。ですが命は無事だったのですから、」


結果としてはともかくこうして無事だったのでそのことを私が慰めようとして言うと、座ったままのその女性はゆっくりと(かぶり)を振った。



「違うのです・・・」


「違うとは?」


いったいこの女性は何が言いたいのかと訝っていると、


「1人の若者を・・・人外へ・・・」


・・・?

言い難そうに言うが意味がよく分からない。


「どういうことでしょう?」


その後にゆっくりと答えたジズさんの言葉を聞いて、失敗の意味を理解した・・・





〜〜〜






このやり取り何か懐かしいな?


俺は何処からか響いてくる声に答えながら昔を思い出していた。



「クソバ・・・ニルナ、お前はその中なのか?」



声が聞こえた方向、銀色の山へと尋ねた。



・・・そうよクソガキ。わたしはこの銀牙二式の中に居るわ。



クソガキって。たかだか三歳上で歳上ぶるなよ。しかも銀牙二式ってなんだよ。



「・・・じゃあお前は天を使ってその銀牙二式っていう銀色の中に取り込まれたのか」



・・・ええ。誤算だったわ・・・余りにも順調に事が進むものだから、つい。



「どういうことだ?」



・・・過剰吸収



「何だって?」



・・・つまりね・・・トウヤ・・・あの石はーーーーーー



それからニルナは今のこの状態に至るまでの経緯を語りだした。




▽▽▽





「プラーナを、ですか?」


「そう。命令したら言うことを聞くんだから、試しにやってみてもいいんじゃない?可能性はあると思うわ。勿論技を使えるからという理由もあるからなのだけど、ヒノカ流の技を使うには前提として自身を強化する力、力の形状を変化させる術、それに空間に干渉する必要があるんだけど、銀牙二式には全て備わっていると思うわ」



ノルエルが驚いて訝っているが、先ほど銀牙二式の実力を目の当たりにした私にとっては何を気にしてるのか分からない。だから、つい思わず諭すような言い方にはなったが私は成功の可能性を示唆して根拠を並べ立てた。


「成る程・・・その話を聞くと貴女の強さの理由が何となく分かったようなような気がしますね・・・勝算はあるのですか」


「勿論よ。見ていて」


そうして、ようやくノルエルを説得できた私は銀牙二式を手元に呼び寄せた。


「いい子よ銀牙二式・・・さて、始めますか」



しかし・・・?

今の動き、先ほどよりも動きが速くなったような・・・


気のせいか。



「よし、それじゃあ・・・銀牙二式!九天奥義、天を始めなさい!」


そう命じると銀牙二式はほんの一瞬だけ動きを止めた。



「ゴシュジンサマノメイレイジュダク・・・システムサドウ・・・クテンオウギ・・・・・・テン」


そして私の命令に従い技を行使し始めた。

瞬間、銀牙二式の身体へ膨大なプラーナが集まっていくのを感じた。


「やはり可能か。大したものね・・・」


私は感心しながらそれを見ていた。通常ならば大気中にあるプラーナを感じる感覚だけでも短くはない時を要するものであり、しかもそれを自身に取り入れるとなれば年単位で修行が必要となる。そのように繊細で複雑な術をこの銀色の金属は誕生してから僅かの間でここまで躓くこともなくできるというのは本当に大したことだと思う。

・・・というよりも、この技術はいったい何なのだろうか?金属に石を嵌めると動き出す、その石というものは精石と呼ばれる謎の物質だが、金属に嵌められたそれにプラーナを注ぎ込むと動き出すとは・・・



「ニルナッ!?」


「焦らなくてもいいわノルエル。私でも全力を出せばこのくらいはできるから」


やけに焦燥した声で叫んだノルエルを私は宥めた。そしてプラーナを際限なく取り入れる術、天というものは使う者にその適正があり尚且吸収する場所のプラーナが濃密な場であればあるほどその吸収が早いということを説明した。ノルエルは他者の取り入れたプラーナ量を感知する能力を持っているので焦ったのだろう。だが、確かに初めと比べると銀牙二式の体内のプラーナ量は尋常ならざる量にまで増えてはいるもののまだ私の限界に及ぶほどではない。それにその体格に見合った許容量を越えると自動的にプラーナの吸収を自己判断で打ちきるものだ。



ーーー人間ならば。

その力に振り回されたくないという矜持で。

身体が崩れるかもしれないという恐怖で。

自我を失いたくないという感情で。



・・・そこに私の失敗があった。失敗というよりも判断の甘さ、と言うべきか・・・・・・私も剣技と併せて10年以上人の持たざる力、人の扱える力であるところのプラーナについて学んでいるが、それでもある程度扱えるという域に達しているだけでその本質を十全に理解しているかと言えばそれは甚だ怪しいと答えざるを得ない。

師にも言われたことではあるが、プラーナとは大気中に漂う力であり、訓練を積めば自らの力として扱えるようになる、という以上のことは解明されていない。プラーナを扱うことを前提とした術の使い手、かつて妖術師と呼ばれ現在では退魔師と名を変えている人々ならばもう少し詳しい知識があるのかもしれないが、現在その力について判明していることと言えばそのくらいだ。



ーーーだから、想像もしていなかった。このような事態が起こることは。



銀牙二式は先ほどから際限なくプラーナを取り込んでいる。遂には私の許容量よりも遥かに上の量にまで達したそれを。

その銀色の面には焦りも恐怖の色も無い。と言うよりも銀牙二式には感情自体がまるで存在していない。それもそのはずだろう、動き命令に従うという造りなだけで、そもそもが金属なのだから。それを利用することによって作用する石が組み込まれているだけなのだから。魔物や獣のように自分の身体を守ろうとする自衛の本能というものが内在していないというのも道理だろう。

しかもその上、



「・・・膨張している?」


プラーナを吸収する前に比べて明らかにその体長が膨張・・・肥大化しているように見える。高い温度によって起こる金属の熱膨張というのは確かにある。が、眼前で起こっている光景はそのような生易しい膨張の仕方ではない。見るからに大きくなっていくそれは色合いや硬度、材質すらもそのままにどんどん大きくなっていく。


「どういう理屈で・・・」


「ニルナッ!もう止めて下さい!」


「分かっているわ。止めなさい銀牙二式!」


さすがにこの状況は良くない、(プラーナを吸収し過ぎたらこの島で言うところの稀少な物質である銀や精石が破裂して損なわれるかもしれない)と判断した私は天を止めさせるべく命令を下した。


「上がり続けて、いる・・・?」


しかし私の制止の声は意味を為さず、私の命令に背いて吸収されているプラーナ量は一向にその吸収が終わらない。

私の声が届いていない?

何故。

今ではそこらに生えている木々よりも数倍背丈が上に延び、数十mはあろうかというその胴廻りを持つその銀色の巨体を見上げながら疑問に思った。

巨大になったために、その肉体を起動させた者かの命令を聞いて行動を司る部分であるだろう精石は肉体届かないのか。見れば身体の中心にあるはずの精石は、身体が巨大に膨れ上がった所為か何処にも見当たらなくなっていた。


「こうなったら相殺するしかないか・・・九天奥義、天!」


身体まで巨大化するとは思っていなかったが、おそらくはプラーナの取り込み過ぎで身体まで巨大化したと判断した私は自身も同じくプラーナを吸収して銀牙二式への流入量を抑えようと天を行使した。



ーーーそして、異変が起こった。



「っ!?引っ張られ」



私が天を放った瞬間前方の巨大な山へと身体ごと引っ張られる感覚を味わった。


あああああああああ!

身体中が引きちぎられるようなこの感覚は!?



「ニルナッ!!」



私の名を叫ぶこの声はノルエル・・・

そう思ったところで私の意識は遠退いた。




△△△




そして気付いた時、つまり今現在はこの銀色の山と同化している、ってわけか・・・

要は俺が知っている (正しくは話に聞いたことがある)プラーナの過剰吸収による大気との精気融合そのもの、ではなく銀牙二式とかいう銀色を媒体としてプラーナを取り込んでいた結果、同じく天を使ったニルナと同時にプラーナを吸収したことによって、おそらくはニルナまでもがその中に取り込まれた、そして銀牙二式とニルナが合わさったとみるべきか。


「あほだなニルナ」


話を聞いた俺は簡潔に突っ込んだ。


・・・うるさいわね!わたしもこんな結果になるなんて思ってもなかったんだから・・・


言葉が尻すぼみになっていくニルナの声?を聞きながら、俺はこいつはよっぽど落ち込んでいるのだろうと思った。前までならばこいつは年上ぶって傲岸というか偉そうというか弱みみたいなものを見せない奴だったからな。


「でも?プラーナを取り入れ過ぎてそうなったんなら、余剰分を弾きだせばいいんじゃないか?」


万一に備えて九天の技の中にはプラーナを吸収した身体から追い出す術がある。まあ、こういった状況ではなくて戦っている同門とか相手から戦力を削ぐためにある技だから使い方としては違うけど。



・・・それは意識が戻ったとき真っ先にやったわ・・・でも精々身体に流入するプラーナを拒絶するぐらいだった。


どうやらやったらしい、あの技を。


「ふうん。あ、他の銀色の奴もお前がやったのか?」


・・・他の銀色?さあ・・・


鳥やらガトウが出会った別の銀色のことを訊いてみたが何故かニルナは知らなかった。



「違うのか?・・・まあいいや」


・・・それより私はずっとこのままなの?


「うーん・・・俺が聞いた話と違うな。呼び掛けたら元に戻ると思ってたけど、声が届いただけでニルナがその中に居るっていうのは変わらないし」


あの話通りなら吸収したプラーナ自体は消失し使った本人は無事に元の状態に戻るはずなんだが・・・


・・・トウヤ・・・


「何とかしてみる。待ってろニルナ」


珍しい・・・というよりも今までに聞いたこともないニルナの弱々しい声を聞きつつ俺は打つ手を考えた。と言ってもやれることはそんなにはない。

できることと言えば2つ、3つってところだ。

1つはさっきやってみた使用者への呼びかけ。だけど結果はニルナと話せるようになっただけで銀色の山はそのままそこに存在している。というか呼びかけってのは失った自我を思い出させるためのものだろうからある意味では成功したとも言える。会話はできてるしな。

じゃあ2つ目、と言えばこれは先刻軽くやって失敗したものだ。即ち精気融合した奴への攻撃。オーラのみで放った牙とはいえ刃は通らずに弾かれたから仮に全力でやったとしても斬れるかどうかはあまり自信がない。それに銀色・・・銀牙二式っていう奴とニルナが同化しているとはいうもののどういう風に同じなのかは分からないので、例え斬れてもニルナ諸共になるのは拙い。

それならば3つ目。実はこの3つ目の手が一番可能性が高い気がする。これは俺はまだ試してはいないがニルナが既にやったという九天の中でも天に対抗する技だ。つまりはプラーナを弾くというものでそれをニルナは既にやっているのだが結果は目の前の通り。なので一見俺がやる意味はあまりなさそうにも思えるが、それでもやはりやってみる価値はあるだろう。それは自分の身体に技を打ち込むというのはどうしても躊躇いが生じるのでニルナはその技を自分に放つときには多分だけど手加減したのではないかと思う。聞くと、一応は無制限に流入するプラーナを拒絶できるという効果が表れているらしいのでそれよりもまだ強力なものを放てばおそらく・・・


そこまで考えて俺はオーラを高め銀色の山へと触れた。



「じゃあやるぞニルナ・・・・・・失敗しても恨むなよ?」


・・・・・・まかせる。あんたはクソガキだけど腕は・・・


「・・・?やけに素直だな。まあいいか・・・いくぞ!九天奥義、はん!」


反・・・通常使うオーラとプラーナの複合ではなく方向性が真逆の技。つまりオーラを以てプラーナを制す!


「ウォォォォォォォォォォ!」


・・・ぐっ、あ、あんたは前よりもオーラが増えて・・・?


「ああ。三年前よりは上だ!」


苦しそうなニルナの声を聞き反がその身体に作用しているのを確信した俺はさらにオーラを高めた。


・・・あ、あ、あ、ああああああああああああああ!


ニルナの叫び声が聞こえ銀色の全身が光り輝いている。



「身体が!?」


そして光りながらその形を維持できなくなったのか銀色が縮みだし形が崩れていく。



「プラーナが消えた・・・っ!ニルナ!」


銀色の山はどろどろと崩れ落ちていき輝きを残したまま周囲にその銀色の液状のものを撒き散らせている。まさかニルナも一緒に・・・?



「ニルナ!」


それを見て焦った俺は眩しいその中に目をこらしてみた。



「・・・・・・戻った、みたい」


するとそこには三年ぶりに見る、以前よりも大人になった顔なじみが立っていた。

素っ裸で。



「なっ!貴様!」


後ろから何やら慌てた声が聞こえたが同時にその声の主の呻き声も聞こえた。


「どうしたんだガロウ?」


振り返るとガロウが何やら蹲っていた。



「うぐ、ぐ・・・き、貴様カナワ、それは私の所為ではないだろう・・・」



「・・・貴方という優男がどういう人間か分かったわガロウ・サイハ・・・!」


「うぐぅ・・・理不尽な・・・」



「えーっと?ニルナ、いったいどうしたんだ」


突然目の前に現れたように見える顔馴染みの顔を見ながら首を傾げた。



「あんたもよ!」



転がっていた石ころを投げつけられた。



「危ない!・・・・・・ああ、そういうことか」



何故か投げつけられた石ころをかわしながら両手で身体の前を覆い隠すニルナの真っ赤な顔を見てようやく俺は合点した。



「俺は見馴れてるから別にいいんじゃないか」



つまり今こいつは一糸纏わぬ姿で目の前に居る。それで羞恥から俺達に見られまいと攻撃してきたのだろう。

前は一緒に風呂に入ったりしてたから別に隠すもんでもないと思うんだが・・・いや確かに前に見たときこいつはネクぐらいだったが今は完全に大人な体になっている。見る気はなかったのだが全部見えた。



「そういう問題じゃない!」



がるるる、と今にも噛みつきそうな顔つきで涙目になりながらニルナが怒鳴ってきた。

いやなんでだ。俺が悪いのか。



「分かったよ。分かったから、ええと何か着るものはないか?」



しかしネク同様にこいつも怒らせたらめんどくさい奴なので俺はニルナを見ないようにしつつ後ろの奴に声をかけた。しかし半数の奴らは何処か余所の方向を向いていた。ジンとサタクの2人は。



「貴方は・・・・・・ふぅ。何でもないわ・・・」

「トウヤって人間だよね?」

「リーナちゃんあの銀色はなに?」


デュカ・リーナとイヅナに何やら呆れられていた。ロランは特に興味なさそうだったが。



「・・・取り敢えず神殿に行きましょうか」



皆がその提案に頷いたが、俺はガロウを介抱するためにその場に残った。


「いくら裸だからって、なあ?」


「理不尽だ・・・」



どうやら石ころが顔面に直撃したらしいガロウは肉体的な傷こそはないもののニルナに罵られたことが堪えているようだ。



「まあ後で合流した時に謝ればいいんじゃないか?・・・それにしても石はないな。この銀色、直らないかな」



俺はガロウを宥めつつ辺りに散らばっている銀色の破片を指した。もしかすると赤い石も同じく融合して砕け散ったのかもしれない。


「ふむ・・・これらは元々あの鳥と同じような材質だったのだろう?何故柔らかくなっているのだろうか?」


「そうだな。融合して膨張したからプラーナで材質が変化したとか」


ガロウの疑問に答えるべく考えてみたがそんなことが起こるのだろうか。それに飛び散った銀色とニルナ以外に赤い石があるはずだがそれも見当たらない。やはり砕け散ったと考えるべきか・・・



しばらく考えていると生暖かい風が吹いた。



「・・・石はあったかしら?」


「いや。それより悪かったな、あいつの我が儘で」



神殿に行って戻ってきたのだろうデュカ・リーナは開口一番石について訊いてきた。



「いえ・・・当然でしょう」



「それで、神殿には誰か居たのか?」


「え、ええ・・・」



俺が訊くとデュカ・リーナは気まずそうな顔をした。


「鬼族の奴らだろ?何かあったのか?」



怪訝に思い訊いてみるとデュカ・リーナは苦笑いしながら、



「・・・何もなかったわ。防御の結界を張れる子が居るのだけれどその中で皆が蹲っていたわ・・・」



自嘲するように呟いた。



「ふうん?結界か。でも蹲っていたって何で?」



「ノルエルちゃんがどうにもできないと判断して結界を張れる子、フェニスにそう進言したそうよ・・・はぁ」



「そうなのか。ノルエルって奴はニルナと一緒にプラーナで色々やってた奴だよな。それで、お前は何で落ち込んでるんだ?」



「そんなにやわに育てたつもりはないのだけれど・・・ここ最近の鬼族の子達の弱体化は目に余るものがあると思ってね・・・あれならばまだ貴方や貴方のほうが・・・」



デュカ・リーナが俺とガロウの顔を見て再度溜め息を吐いた。



「まあそれは仕方がないんじゃないか。それよりも石がないぞ、どうするんだ?」



「そうね・・・サラマンドラから連絡はあったかしら」


「いやまだだ」


「そう・・・どうしても1つ欲しいのだけれど」


「聞いてみるか」



話しながら炎斬を抜いた。

その時、再び辺りに生暖かい風が吹いた。

何だ?と思いデュカ・リーナのほうを見るもこいつはこの場に居る。

生暖かい風はこいつが転送の魔法を行使する時におこる現象だと思っていた俺は見当が外れたと思い周囲を見渡した。

すると其処には、



「狼、なのか?」



二本足で立つ狼が居た。

しかもその狼は剣を携えている。



「ミツケタゾ・・・!」



見つけた?

最近よく出会うので喋る獣自体は珍しくもなんともないが、この場に旧知の奴が居るような狼の言葉に引っ掛かった。

この場には俺とガロウとデュカ・リーナだけだ。他の奴はこの島の神殿に連れていってもらった。



「・・・ワンちゃん?貴方生きて・・・・・・いえそんな筈はないわね」



どうやら口ぶりからしてデュカ・リーナの知り合いらしい。しかし狼の顔を見るデュカ・リーナの顔は何か信じられないものを見るかのようだ。



「コロシテヤルゾ!キフジン!」



その狼はデュカ・リーナに向けて強大な魔力と殺気を放っていた。キフジン、というのはよく分からないが多分デュカ・リーナの呼び方とかそんなところだろう。剣をデュカ・リーナへと向けている狼は今にも斬りかかりそうだ。



「蘇りが流行っているのかしら・・・」



何処か怪訝そうにしながらも杖を狼に向けたデュカ・リーナは応戦する構えだ。だが?



・・・この状況については大体分かる。要は狼が転送の魔法を使ってこの場に現れて恨みを持つデュカ・リーナに対して攻撃を仕掛けようとしているということだ。

不思議なのはその狼が持つ剣がミシルの持っていた剣とそっくりなことだ。

というよりもあれは・・・


「シネ、キフジン!」



狼が凄まじい速さでデュカ・リーナへと襲い掛かった。

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