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第8話〜島〜

「いやー、予定人数には少し足りませんでしたが、それでもこれだけの方々に参加いただけるとは思いませんでしたよ!」


ワハハハ!っと走行中の蒸気と帆を動力にした船の先頭に座っている男が上機嫌にそう言った。

名前をアズト・ミタラと言い、一昨日口入屋に言ったときに面白そうな仕事の依頼をしていた男だ。20代後半ぐらいで意外と若い。聞いた所によると商人兼探索屋で様々な場所で取引しつつ、未知の場所や財宝などを探しているらしい。


あのあと口入屋で受付のお姉さんに他の依頼書をいくつか見せてもらった俺たちは軽く相談し、最初に見せてもらったアズトの依頼を受けることにした(一つ依頼を受けると依頼を完遂するまで重複は不可なため相談した。)

資格も依頼条件に合ってたし、中々稼げそうだし、なにより鬼族(きぞく)っていう言葉にとても興味が沸いたからだ。

どんな姿をしてるか、とかどれだけ強いのか、とか。まあ、そもそも旅の目的が色んなものをみたり、強くなったりすることなんでそこは仕方がないと思う。

それにしても当初の予定より数が少ないらしいが、これで大丈夫か?とも思う。募集は10人程度とは書いていたのに俺とネクとアズトを入れても9人しか居ないぞ?予定人数に足りなくていいのか?まあ、依頼内容は調査ということらしいが。それとも、人数が揃うまで待ってられない何らかの事情があるのか?


と、アズトの言葉を聞いて参加者の中で一番年嵩の男が口を開いた。


「ふん、お主のその口ぶりだとよほど参加者の応募が少なかったとみえる。

報酬の嘉多は兎も角、内容はそれほど尻込みするほどのものではないと思ったがなあ?」


と他の参加者を見回しながらいう。

最初の自己紹介のときもこのおっさんは文句を言ってたな。この程度の依頼内容で人が集まるのが遅いだのなんだの。

たしかこのおっさんの名前は、レンジ・ミタノ、等級は甲の下だったか、見た目は色んな戦いを経験してきたみたいな傷がいくつかある顔に髭を無造作に伸ばした坊主頭、うちの親父ぐらい大柄な筋肉質の身体を鋼の大鎧に包んだ大体40歳前後ぐらいか。

得物はそばに置いてある槍だろう。

と、おっさんの連れらしき男が慌てたように言った。


「い、いや、そうは言いますけどねレンジさん。僕たちみたいに依頼が始まってすぐに偶々口入屋さんに言った方は少ないんじゃないでしょうか。

それにレンジさんだって丁度運よく中期の仕事が見つかったって喜んでたじゃないですか?」



この男はおそらくレンジという男と今までに何回か一緒に仕事をしたことがあるのだろう。気安い感じで喋りかけている。

こちらの男は名前をリクオ・シクラと言い、レンジよりも5〜6歳は年下に見える。見た目は短めの黒髪に浅黒い顔、多少小柄で引き締まった俊敏そうな身体に動きやすそうな革の鎧を見につけている。

確か俺と同じ乙の中の等級でこちらは得物が左右の腰に差した二刀か。



アズトが、

「いや、私も募集期間は長いかとは思ったんですよ。ただ、以前別口で似たような依頼をした時に募集期間を短くしすぎて人が集まらなかったので。

まあ、今回は募集期間をあまり長くしすぎても機を失なったら元も子もないので、早めに募集を打ち切りましたが・・・」

と尻すぼみに答える。



すると

「まあ、良かったんじゃないの?予定人数はほぼ集まったんでしょう?この子達は見た目以上に役にたちますよ?

それにこれだけ屈強そうな殿方たちが居るんだから充分だと思いますよ♪」


と同じ顔をした2人の少女に挟まれた妙に色っぽいお姉さんが言った。

このお姉さん名前はリシナ・トゴウと言い、年は20代半ばぐらいで、見た目は肌の白いやたらと整った小さな顔に、色素が薄いのか茶色いさらさらの髪を肩まで伸ばしすらりと高く細い身体にでかい胸と尻を包む上が白く下が黒い羽織袴のような服で雰囲気がとにかく色っぽい。

等級は乙の上で得物はまあ見たまんま弓だろうな、あと手元の分厚い本も何なのか気になるが・・・


お姉さんの言葉を聞いた、傍らの右側の負けん気の強そうなほうの少女が


「そうよ!私たちが居るんだから何も心配しなくていいよ、ね!師匠!

おじさんもそんなにくよくよしないで大丈夫だよ!私たちが居るんだから!」


と、朗らかに答える。

二回言わなくても・・・

ちなみにこの少女は名前をアリナ・クロカゲと言う。ネクと妙に気が合って話してたみたいなんで年を聞いたら俺達の一つ下らしい。見た目は黒髪をおかっぱにし程よく日に焼けた目元のパッチリした美少女と呼べる顔、ネクより僅かに低い背丈に細い身体にリシナさんと同じような羽織袴を着ている。身体の凹凸はリシナさんに比べると少ないもののそれなりに出るところが出ている。等級はネクと同じ乙の下で得物はリシナさんと同じ弓か。


「わたしはまだギリギリ20代なのですが・・・おじさん・・・はぁ、頼りにさせていただきますよ、クロカゲさま。」


アズトが軽く落ち込んだように言う。

すると、リシナさんの傍らのもう一人の少女が

「・・・うん・・・がんばる・・・」


とボソっと言った。

こちらはアリナの双子の妹でユリナ・クロカゲという。見た目はアリナとほぼ一緒で等級も一緒だが見た感じ性格はアリナと比べて大人しそうだ。得物は・・・ないな。いや、腰に差した短刀か?それとリシナさんが持ってるような本と似たような本が手元にあるが?あの本は・・・?



「ま、まあとにかくみなさんよろしくお願いしますよ!もうそろそろ島が見えてくると思いますので!」


と、アズトが大きな声で言った。

そのとき一番後ろに離れて座った男が口を開いた



「・・・漸く島か。漸く鬼と戦うことができるのか・・・」

その男は低い声でそう言った。

見た目は、頭から顔まで覆う兜を被っており、身体もすべて覆いかくすようなこの大陸に伝わる鎧とは意匠の異なる銀色に輝く鎧を身に付けている。

名前はミシル・タイナって言ったか。背丈は大柄でおそらくレンジより少し高いぐらいではないかと思う。兜を取ってないので顔と年はいまいちよくわからんが、声の感じからおそらくそんなに年はいってないと思う。20代半ばから後半ってところか。

等級は乙の上で得物は背中に背負った大剣だろう。

それはともかくこいつは今鬼と戦うって言ったか?

確かに全員武装してるがそれはあくまで島に生息する獣とか魔物とかへの備えだろ?仮に鬼が居ても調査が前提の依頼でこいつは何故戦うことが前提なんだろう?



そんなことを考えているとネクが


「ねぇ、ホントに鬼族って居るのかな?」


と言ってきた。依頼を受けてからずっとこの調子である。楽しみにしすぎだろ、こいつ。


「多分な。会えるかどうか分からんが。

古い本で読んだことがあるが、かつて、それこそ250年前か?には実際に鬼を見たこともある人が居るらしい。その当時の記録はあるからな。

ただ気になるのは、その当時からかなり文明が発達して今みたいに大して時間もかからずに行ける距離なのに何故今まで誰も行っていないのか。行く価値すら無いと判断したのか?

いや、もしかしたら行った人も居るかもしれないが鬼族に会ったという記録もない。何故その記録がないのか?それが分からん」


と俺の話しを聞いていたのかアズトが、


「ええ、もちろんヒノカさまの言う通り過去にも何回か行ったという記録はありますよ。

ただ、それは海の途中で断念して引き返したりだとか、予算の都合上だとか、島内の地理が険しいとか、様々な理由があるらしいです。それで結果としては悉く鬼族に会えなかったということです。

かつて鬼族に会えたのはスサノオ王率いる妖術師を含む優秀な調査団だけでスサノオ王や妖術師が居たから何らかの特殊な力を使って鬼族に会えたのでは、というのが今現在の最も有力な説です」


俺は、

「じゃあ、アズトさんは何故今回はこの計画を実行しようと思った?過去に何度も失敗してるなら今回も失敗の可能性が高いと思うが?スサノオ王も居ないし、妖術師も居ないのに」


疑問に思って聞いてみる。リシナさんが何か言いたそうにしたがアズトが、暫く何かを考えるようにして、

「そう思われるのはごもっともだと思います・・・・・・・ここまできたら正直に白状します。実は今回の依頼に関しては政府が大元の依頼者なのです。

そして依頼書には便宜上、鬼族の調査依頼と書きましたが、実際の目的は違うのです。」


と言うので俺は


「目的が違う?

じゃあ何のためにアズトさん、いや政府は結構な予算まで使ってこの依頼を行ったんだ?」


微妙に納得できないので聞いてみた。するとアズトは

「それは島に到着してから話そうと思っていましたが・・・いいでしょう。今からお話しします。隠すことでもないですしね。

実は今から約1週間前の夜に、これから行く鬼ヶ島で大きな光が観測されたそうなのです。一番近い町であるイグナの観測所から見られたので光った場所は鬼ヶ島に間違いないです。それに何か不吉なものを感じた政府つまり王ができる限りその光が何かを早く迅速に調査すべきだと判断し、イグナに拠点のある商人の私にイグナで人を募って調べろと私に命じたのです。

首都から調査隊が来るまでは時間がかかりますしね。何があるか居るのか分からないので本当はまだ人数が欲しかったのですが、そういった事情により募集の延期が不可能だったので、募集を希望人数以下で打ちきったのです。」


と教えてくれた。するとネクが、


「えっと、じゃあ鬼族に関しては何もしなくていいということですか?」


と尋ねた。するとアズトは

「いえいえ、そもそも島のどこが光ったか分からないため結局は島全体を調べてもらうことになります。その過程であわよくば鬼族に遭遇できたら何かしら結果を残したい交流をしてみたい、とは当初から考えています。最低期間の1ヶ月とは島を調べながら回るのにそのぐらいはかかるだろうとのことで設定しました。」


ネクが、

「わかりました。教えていただきありがとうございます。

別にやることは変わらないようだし、何故急に鬼ヶ島へ行くのか理由がわかったのですっきりしました。」


と言う。アズトが、


「みなさま、そういう事情ですので、よろしくお願い致します。っと、見えてきました。あのうっすら見えるのが鬼ヶ島です!」


と進行方向を見ながら行った。感覚的にはあと20〜25分ぐらいで着くだろうと俺は見当をつけた。

それから適当に雑談しながら15分少したった頃、俺達が乗っている舟は鬼ヶ島まで数百mの距離まで近づいた。


アズトが、

「あと5分ぐらいで島に着きます!みなさん!準備はよろしいでしょうか!」

というので、参加者が各々返事をしたり身支度をし始めたりした。


「では、みなさま。島に着きましたらくれぐれもはぐれないように・・・」


と、アズトが注意事項を言おうとしたとき、


ドーーーーーンッ!!!

という大きな音がし、それとほぼ同時に、舟のすぐ傍の海が大きな衝撃に襲われた。

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