表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/241

第9話〜大砲〜

少し間が空きました

それは唐突に起こった。



転覆こそしなかったものの乗っている舟は大きく傾き水飛沫が波となり舟を覆ったため、最初は何が起こったのかは一瞬分からなかった。

ただ、先程聞いた音と現在の状況を鑑みるに、乗っている舟そのものではなく、すぐ傍の海に何らかの攻撃を受けたのだということは分かった。

俺は舟の周りを見渡して、凡そ数百m後ろのほうに僅かに白煙を上げている舟が一隻見えた。




火の大陸では火の神剣の恩恵によるものか硝石がどの大陸よりも多く採掘される。

硝石はそのまま使わずに加工をすることによって火薬となり使うことができる。暦が始まる前ですらもほぼ全ての集落で加工方法は確立されていたのはこの大陸ならではの特性だとも言える。加工された火薬は様々な面で人々の生活に活用されている。

それは、日常生活において調理や風呂焚き、鍜冶などの火を使う作業の際に燃焼を促進するためというのが最も普遍的な活用方法であるが、一部の者にとっては別の利用方法がある。


例えば首都や街、大きな町などにある技術研究所では、過去の文献資料や遺物を基にした様々な研究、開発を行っているが(場所によって規模や求める内容の違いは勿論あるが)、その研究の中でも最も急務とされるのが燃料、武器、この2つの確保、開発である。


まず燃料の研究の必要性とは何か?

それは移動の効率化、新たな移動手段の開発にある。

現在でも馬車などの移動手段はあるが、舗装がされていない山道等が各集落を繋いでいるため移動速度は決して早くない。辺鄙な場所にある村へ行く際にはその手前の村に馬車を預けることもあるぐらいだ。

それゆえ一部の富裕層を除いて馬車の使用方法はあまり好まれていない。

そういった現在の状況により燃料を優先的に研究するのは必然とも言える。

そして、かつて数千年前にあったとされる文明においては移動について驚くべき記録が遺されていた。

それはこの広大な大陸を僅か2日程度で縦断していたというものだ。

現在でこそ約二十年前に確立された蒸気船の移動速度により海上の移動においてのみ、大陸の端から端まで約10日程度でたどり着くことができるが(海上で運よく魔物に遭遇しないことを前提として)かつては陸路を通って大陸を縦断するには最低でも半年はかかるとされていた。

なので、各村や町の交流、非常時への迅速な対処などの理由から陸路においての新たな移動手段の確保、移動手段への燃料の開発は最も急いで確立すべき分野だとされている。

(ちなみに実物や絵こそ遺ってないものの文献から推測された移動手段の形は、車輪が2つないし4つある本体に動物を利用せず燃料を利用した数人ていど運べる無機物、車輪を利用せず移動手段用の専用通路が確保された数百人が一気に移動できる燃料を利用した大きな無機物が検討されている。

前者は普遍性はあるものの移動手段である本体の開発における途中過程が行き詰まりまた燃料の確保開発方法に検討もつかない状態であり、後者は蒸気船の応用により移動の原理や燃料は解析可能なもののようにも思えるが実は、現在ある道の整備且つ移動用の専用道の確保が先ずは先だという、大きな問題点を抱えている。


武器の開発については、新たな移動手段の発展と同じく大きな規模で研究が進められている。

基本的にこの大陸で武器というのは、魔物との戦闘用のもののことを指す。

倒しても倒しても絶滅することのない魔物、その発生源や発生要因は魔物の分布図を作成する際にも不明だったという話だが、人を襲ってくる以上はそれに対抗する手段を得なければならない上に素手の格闘のみでは限界があるので、より効率の良い武器の開発というものは必須となる。

対抗手段の主流としては剣術だが、遠距離からの攻撃ができる弓、石や刃物の投擲(とうてき)も戦法としてよく使われる。(鉄鉱石の採掘、鍛治屋、警備兵、等は安定して職が得られるためなろうとする者は少なくない)

なので、剣や弓等の武器屋は大抵どこの村にもある。だが、戦いの手段を持つもの自体は、人口の多い街ならばともかく人数が少ない村などは少ない、もしくは1人も居ないというところがあるため、例えば大量の魔物に襲われたり不意に襲撃を受けた際の対応等が懸念されている。

そんな状況の中、20年程前に火薬を利用した武器の開発をしてはどうかという声が上がり、数年前試作品とも言えるものが完成した。それが大砲である。

大砲が現在の形となった経緯は(まあ、実物を見たことはなく村に来た行商人に話を聞いただけだが)首都近くの沿岸に置いてあった奇妙な形の彫像を調べていくうちにその用途が推測され、昔の文献を調べるとその彫像、弾の作成、使用方法が載っていて火薬や鉄を使用し、それを基にして完成にこぎ着けたという話である。

大砲の利点としてはその大きな威力、非力でも使い方が解れば誰でも使えることにあるが、欠点としてはその重量により持ち運び、移動が困難なことにある。

また、技術的、予算的な問題により現在のところ首都にしか製造場所がなく、他の町への移動には時間がかかるため完成した数個は未だに首都にあるはずだが、

とそこまで考えて声がした。


「ね、ねえ今のって・・・」

ネクが不安そうに言うので「大砲だろうな。」

俺が簡潔に言うと、

「やっぱり!でも、どうして!?」

このどうしてには2つの意味があると思う。つまり

「どうしてっていうのは、どうして海上に大砲があるのか。どうして俺達を、おそらくこの船を撃ってきたか、だな」

もう1つ疑問はある。

聞いた話じゃ大砲ってものの射程距離は最大で数十m、つまり視認はできるがあれだけ離れた距離から届いたのはどういう理由だ? 技術が進歩した?短時間で大幅に?あり得ないだろ。首都にある最先端の技術で漸く固定式、車輪式の大砲が完成したというのは、結構最近の、ここ数ヶ月程度の話だったはずだ。あり得ないだろ。

いや、そんなことよりも、



ドーーーン!!!


音がして今度こそ船に直撃したか、と思ったとき、

船より約20m程手前で、砲弾らしき塊が空中で爆発した。見えない壁でもあるように。


「えっ、何今の?途中で止まった?」

「止まったな。どういうことだ?」


ネクと同様俺も全く意味が分からなかったので、だれか説明してくれないかとあたりを見回してみると、


「出来れば使いたくなかったんだけどね。流石にこの状況がしょうがないか。」

リシナが船の後ろ側、もう一隻の船の方向に両手をかざしながらそう言った。

よっぽど皆怪訝な顔をしていたのだろう(双子の姉妹は妙に嬉しそうだが)

慌てたようにリシナが続けた。


「つまり、大砲に狙われてると思ったので対衝撃用のの不可視の壁を作ったんですよ。」

と照れくさそうに言った。と言われても・・・


「結界術の応用ってことよ!師匠は凄いんだから♪」

双子の姉アリナが胸を張って言う。


「結界術?つまり妖術か?」

俺が疑問に思い聞くと、


「古いなぁ、言い方が。

昔は確かにそういう風に言われてたけど、師匠は退魔師なの。だから厳密には退魔術って言うべきね!」

偉そうに言われた。


「成る程。どういう理屈か分からんが、その退魔術とやらを使って砲弾を途中で止めたわけか。凄いな。でも退魔術つまり結界術は昔にその技術が失われたんじゃなかったのか?使い手が居なくなって」


と言うと、リシナが


「ええ。確かにそうなんだけど、うちの家系は代々魔物退治を生業としていてね、様々な技法を研究していてその過程でかつて妖術と言われてたものの技術を確立したの。」


と言うが、そんなに簡単なものだろうか?


「まあ、とにかく助かりました。ただこちらへ攻撃した輩はまだあそこに居るので、取り敢えずどうしましょうか?逃げきれるかどう・・・」


アズトがそこまで言ったところで、


ブオーーーンッ!!

ドルルルルッ!!!


と言う音がした。



ネクと俺が、

「なんかあの船、どんどん近づいてない?」

「ああ、凄い早さだな。」


見ると先ほど変な音がしてから、船がこちらへ物凄い早さで接近している。


距離凡そ300m、200m、100 m、50m、・・・


乗っているやつの姿が視認できるようになったので見ると見たこともない格好をしていた。派手な色合いの服、身軽そうな格好だ。

それに細長い筒みたいなものを手に持っているが、あれは・・・?

距離30m、20m、・・・

そこまで近づいたとき、

ミシィ!

という何かが軋むような音がして接近が止まった。

乗っているやつらが慌てたようだが、おそらく先ほどリシナが張った対衝撃用の壁にぶつかったのだろう。しかし結構な早さでぶつかって船に傷がないのはよほど頑丈な作りなのか?それにとんでもない早さだった。


あいつら(ざっと20人ぐらいか)が手に持った筒を此方へ向けた瞬間、

パンッパンッ!

という音が鳴り、見えない壁のあたりに小さい塊が一瞬止まり十数個の塊が海へ落ちた。

あの筒はつまり飛び道具か!火薬を利用した小型の大砲みたいなものか?

威力はいまいち分からないが・・・


「ダメね。そろそろ限界みたい・・・」

という声ががした。

見るとリシナが青い顔でつらそうにしていた。


「やっぱり、規模の大きな結界を張ると妖力(ようりょく)をかなり使うみたい。」

と、しゃがみこんでしまった。つまり壁がなくなったということだ。

あいつらは間違いなく敵だろうな。しょうがない。



「ネク、俺ちょっとあっちに行ってくるわ。」


と言いながら、オーラを全身に纏わせて身体の強化を行う。


そして20m程跳んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ