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第7話〜異変〜

〜首都カグツチ〜




当代の第16代スサノオ王の居城の一角のとある部屋では一人の男が手元の書類を見ながら馬鹿でかい声で怒鳴っていた。



「これはどういうことだ!何故警備兵の被害報告がこんなに多いのだっ!

警備の者は何をやっておる!他に被害は!」


この方はシバ・ウチカネと言い、『宰相』(さいしょう)という王を武力・経済共に補佐する立場にある、王に次いで地位の高い者である。

年の頃は65ぐらいで、白髪で細く小柄な体格ながらも昔取った杵柄というか、武力官僚出身という経験に由来するのか、よく日に焼けたその皺の多い顔は険しくその怒鳴り声は時に王ですら怯ませることがあるというほどの厳しい御仁だ。

私も今より小さい頃はよく叱られたものだ。主に悪戯で・・・

その凄まじいまでの大声で怒鳴られながら、



「はっ!事に当たった警備部隊長からの報告によりますと1隊と2隊の警備部隊を総動員して、魔狼の群れを何とか倒し、街の結界内への侵入は防いだとのことですっ!」


と顔以外を全て保護できる鎧を身に付けた男が答えていた。

こちらの男は名をガロウ・サイハと言い、年は23、高い背丈に引き締まった体格、黒い長髪を真ん中から無造作に分けた髪型、その下にある整った凛々しい顔立ちから、城内の給仕の女の子、首都内の女の子から大変な人気がある。

また、この若さで首都の警備部総隊長を務めるほどの武力の腕を持っていることもその人気に拍車をかけているのだろう。私はあんまり好きじゃないが。


その人気者がそう答えるとシバが、


「戯けっ!!街中への被害が出ないようにするのは警備隊として当然じゃっ!

儂が言いたいのは、何故たかだか魔狼の群れ15頭程度に2部隊48人のうち怪我人が10人も出たかと言うことじゃっ!ましてやその内の重傷者が2名じゃとっ!

最近の警備兵は烏合の衆かっ!!!」


と、さらに怒鳴りつけていた。

すると、ガロウが若干気まずそうに、


「それに関しては面目次第もございません。

今後は今まで以上に訓練に励むように全部隊へ通達致しますっ!」


と答えた。

すると、シバは


「ふんっ!まったくっ!儂の若い頃の警備部は・・・・・・・」


と長々と説教し始めた。ガロウも可哀想に。



だが、と私は考える。

確かに魔狼はそれなりに手強い。手強いが警備部とは日頃から対魔物用の鍛練をしており、魔狼程度なら並みの警備兵1人でも2〜3頭程度なら倒せる実力があるはずだ。それこそ1部隊24人なら魔狼15頭に対して余るぐらいの戦力だ。にも関わらず第1部隊のみならず第2部隊まで投入して、さらに怪我人まで出るとはどうも納得がいかない。

シバとて、そのへんの警備兵の実力などは把握しているはずなのに、頭に血が昇っているのか、その事には触れずに結果だけを見て説教している。どうもおかしい。そう思った私は説教がうざいということもあり、声をかけてみる。



「シバッ!説教はもうそのへんでいいんじゃない?

そんな昔話よりも今の問題は魔物が街近くまで侵入してくる現状をどうにかすることだと思うんだけど。警備兵の訓練にしたっていきなり強くなるものでもないしね。」



するとシバは


「確かにそうかもしれんがのぅ、姫。じゃが最近魔物に襲われることなく、弛んどった警備兵にも責任はあるじゃろう?なにより今の若いモンは実践経験が少なすぎる。

儂らの若い頃は今よりも危険な任務ばっかりじゃったぞ。」



姫と呼ばれた私は、

「でもねぇ。私もお父様と何回か警備兵の訓練見たことがあるけど、お父様も別に訓練内容に文句なさそうだったわよ。ねぇ、ガロウ?」


と横のガロウに話を振ってみる。

ちなみに私の名前はシエル・スサノオ、年は15のうら若き乙女だ。

父は現国王の第16代スサノオで、一人っ子の私は第一王位継承者となる。

(まあ、婿を迎えればそいつが王にるのだが、私より弱いやつと結婚する気はさらさらない。

自分で言うのもなんだが私の容姿はそれほど悪くはない・・・と思う。

今は亡きお母様譲りの栗色の髪を短くまとめた髪型にそれなりに整っている・・・と思う顔、贅肉のない引き締まった体、あまり大きくない胸・・・

だから高官の息子とか親族が私を見て怯えるのは見た目の問題じゃなく小さい時から剣術の実験台でボコボコにしてきた結果だ・・・と思う・・・)

なので、今年元服を迎えた私は政務を覚えるために、宰相であるシバに付き合って、ここ執務室でガロウの報告を聞いていた。



「はっ!ありがとうごさいます姫!しかしシバ殿の言われる通り警備兵達にも弛んだ部分もあるかと思いますので、訓練は増やそうと思いますっ!」

と言うので私は、


「うん、それはそれでいいんじゃない?

それよりも私が言いたいのは何故精鋭の警備隊が魔狼相手にそこまで傷を負ったってことなんだけど。

シバ?報告書にそのへんの所見はある?」


するとシバは、


「まあ、実は儂も最初そう思った。いくらなんでもそこまで苦戦するとはのう。だが報告書には魔狼の数、出撃人数、襲撃してきた日ぐらいしか書いてないのぅ。何か追記はあるか、ガロウ?」



と言い、ガロウは

「はっ!自分は事後報告しか受けていないので実際にその魔狼を見てなく、各部隊長の言い訳かとも思うのですが・・・」


と歯切れ悪くなったので、私は


「いいから、どういう風に言われたの?」


と促すと、


「はい、報告の際に、第1第2部隊長が口を揃えて、「今まで戦ってきた魔狼よりも数倍強かったです!」と言っておりました。

日付は報告書に書いてある通り4日前です。まあ、今まで魔物の襲撃を経験したことなく不意をうけたところもあるでしょうが・・・」


と言った。私は、


「ふーん。数倍強いねぇ。言い訳にしてもおかしいわね。でも、あの真面目な2人がそう言うなら、冗談とか言い訳でもなさそうだから、それこそ実際に強かったんでしょう?」


と言った。するとシバは別の報告書を見ながら、


「ふむ、偶々魔物が襲撃したのも4日前か・・・直接は関係ないとは思うが、4日前に大陸の南のほうで何か大きく光ったという報告も入っておるな・・・こちらは何が起こったか見当もつかんのう。」


と何かブツブツ言っていた


「シバ?光ったって何が?どこが光ったの?」


気になったので聞いてみると、シバは


「まあ、魔物の襲撃云々とは別の報告なんじゃが、大陸の南、イグナ町に治安の管理者として置いておる者からの報告でな、4日前の夜にある場所・・・これは島じゃな、島から大きな光が見られたという報告じゃ。ふーむ。」


と言うので、その話が気になった私は、


「とある島?どこなの、その場所は?」


と聞いてみるとシバは、


「ああ、結界外の場所じゃな。イグナの町から数10㎞離れた場所にあって直接近くで見たわけではないらしいが、その方角にはその島ぐらいしかないのでおそらくその島に間違いないじゃろうという報告じゃ」


と言うが私は場所にいまいち見当がつかないので、


「ふーん?結界外なら人は住んでないんでしょ?何なのかしら、その光?」


と疑問に思って言うと


「ああ、人は住んでおらんじゃろう。ただ大陸平定当初にスサノオ王が結界を張れなかったというその場所には、ある者達が住んでおるという話じゃよ。

儂も見たわけではないから詳しいことは言えんがのぅ。」


と言うので、私は


「結界が張れなかった?

ある者たち?どういうこと?」


と言うとシバは、

「ああ、結界はある強大な力を持った者たちに阻まれて張れなかったと、文献で見ただけじゃ。

255年前、当時大きな力をもった妖術師と呼ばれた者たちの力を持ってしても、それは叶わなかったらしい。

その時島に居たのが人語を解し、人の形に近い人在らざる異形の者、亜人(あじん)だったという話じゃ」


と言うので私は、


「えっ!?それってもしかしてお伽噺とかに出てくる鬼とか、妖精とか、あの?」


と言うとシバは、


「そうじゃ。まあ、若干種別が違う気もするが・・・ともあれ、魔物と違いそれら亜人(あじん)などは滅多にお目にかかれんが当時の書かれた文献には絵入りで書かれておったよ」

とシバが言うので、私は興奮し、目を輝かせながら


「へえーっ!!亜人って実在したんだっ!!

すごいね!!

そこにはどんな亜人が住んでるの!?」


と言うと、シバはこう言った。


「その島のことは、こう書かれておったよ」




鬼族(きぞく)の住まう島鬼ヶ島(おにがしま)

と。

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