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第6話〜仕事〜

目の前にどんどんお皿が積まれていく。

確かにうちの店の料理は地元の人にも観光客にも評判が良く、イグナ温泉街一の料理屋と言われることもある。でも、いくらなんでもこの量は・・・


そんなことを思いながら、給仕の女の子はボーっと目の前の状況を見ていた。

目の前には、



「うん!これは美味いな♪イグナ地鶏だっけ?肉の歯応えも最高だし、甘辛い味付けも肉に合っててやたらと箸がすすむな!」


と、箸を休めることなく料理を片付けていく少年が居た。


「あ、あんた!少しは遠慮ってものをしなさいよ!もう何皿目なの、イグナ地鶏の丸焼き?ひー、ふー、みー、・・・もう10皿いってるじゃない!」

と連れの少女が叫んでいた。


「えー?もうそんなに食ったか?美味すぎてついついおかわりしちまったよ。まあ、腹八分が健康にいいって話だし、このへんにしとくか!ごちそうさん!ありがとう、マーミ!」


と私、給仕の女の子ことマーミ・ナカヤに少年がお礼を言ってきた。


「い、いえ喜んでもらえて私も嬉しいです。それにしてもトウヤさん、よく食べられるのですね?」

ちなみに私はイグナ地鶏の丸焼きは、一皿の三分の一ぐらいでお腹がはち切れそうになるのだが・・・



「そうか?何ならちょっと食い足りないぐらいだぞ?まあ、それだけ料理が美味かったってことだろ」

と、恐ろしいことを言った


「ま、まあこいつの食べ物にの量に関してはいつものことだから気にしないで?」

と、連れの少女ネクさんが言った。

さらに、

「何かごめんなさいね。大したこともしてないのにこんなにご馳走になって・・・」

と謝られた。


私は焦って、

「いえいえ、とんでもない!本当に助かりました。お礼ができて嬉しいです!あと、色々お話ができて楽しかったです!」

そう、お二人の出身地のカリュウ村の話や、女の子同士の話ができて、私はとても楽しかったのだ。年も私より一つだけ上なため、話も合ったし。



すると、厨房のほうから、「そうだぞ、姉ちゃん!

あいつらは、イグナでも有名な質の悪いゴロツキどもだ。丁度俺が出かけてた隙に店に来て、マーミにちょっかい出してやがったんだ!俺が居る時は全然そんなことしねぇのによ!」

と、この店の店主兼料理人兼私の父親、ガシュウ・ナカヤは言った。



(店主は見た目がいかついから、それを怖がっていつもはマーミに悪戯ができないんじゃないか)

俺は密かにそう思った。








(まあ、俺達も飯をご馳走になったから、結果的には良かった、と思うことにしよう)



俺達は食事のお礼をいって料理屋を後にした。


翌日、俺達は町の中心地である場所を探していた。

(昨日は結局、温泉宿屋には行かなかった。だって飯をご馳走になったしなぁ。俺の目的の九割は飯、残り一割が温泉だ。そのことについて連れは何か言いたそうだったが、めんどくさいので無視した。)


それで、今探している場所というのは口入屋(くちいれや)だ。

口入屋というのは、平たく言えば職業斡旋(あっせん)所で、日雇いの仕事から短期、中長期の仕事を紹介してもらう場所だ。

また、自分で仕事の依頼、人足(にんそく)の紹介を頼むこともできる。まあ、依頼料に加えて、口入屋への口利き料も必要なので、とりあえず今は関係ないが。えーっと、今の手持ちはと・・・795(がん)か。

もう、何日かは宿屋に泊まれるが、あんまり余裕はないな。

ちなみに、(がん)はこの大陸唯一の共通貨幣で、大陸の初代覇王スサノオが、大陸を探索中に見つけた、数百年程度経った朽ちかけた遺跡から、恐らく貨幣ではないかという数種類の丸い貨幣らしき物を基に作成されたとされている。

作成場所は、これもまた鋳造所らしき遺跡を手本として建てた首都の貨幣鋳造所しかなく、一目見て分かる見た目の緻密さと材質の稀少さからそこ以外では作るのは可能とされているため偽物は作れないはずだ。


材質は一番小さい物から、1丸、5丸、10丸、(銅製)

50丸、100丸、500丸(鉄製)1000丸、5000丸、(銀製)

10000丸(金製)


そして形は呼んで字の如く丸く、大きさは数値が大きくなるたびに一回りずつ大きくなっていく。

1(がん)は親指の先程度の直径だが、10000(がん)は手のひらぐらいの直径であり、しかも金製なので重い。

物価は、この町で料理屋での定食が一食50〜60丸、宿屋に一泊すれば200〜300丸といったところだ。


旅立つときに親父から1000丸ほど餞別にもらったが、このままでは宿屋に泊まれなくなってしまうので、こうして豊かな生活のために口入屋を探しているわけだが。



「ああ、あった。あれでしょ、この町の口入屋。やっぱりカリュウのより大きいね。」


とネクが左前方の建物を指していたので見ると


「ああ、あれだな。よし、入ってみよう」

俺は言いその建物に入った。



「いらっしゃいませっ!」

口入屋に入ると、正面の受付らしき木の机に座った20代ぐらいの目もとのパッチリした髪の短い綺麗なお姉さんが笑顔で元気よく言った。

俺は、愛想よく笑いながら

「元気いいね、お姉さん?あんまりきつくなくて稼げる割りのいい仕事を探してるんだけど、何かいいのある?」

と常連っぽく言ってみた。するとお姉さんは怪訝そうに、

「えっと?お客さまは以前こちらをご利用されたことがありますか?」

と言うので、


「ないですっ!」

とこちらも元気よく言ってみた。するとお姉さんは若干顔を曇らせながら、


「あ、あのー。それなら初期登録を先にお願いします。

それと大変申し訳ないのですが、初期登録の方の場合は(へい)()からの仕事しか受注ができないのですが・・・」


と本当に申し訳なさそうに言ってきた。するとネクが

「ごめんなさいお姉さん!このバカの言い方が悪くて。確かにこちらにお世話になったことはないんですが、別の村の口入屋で登録して何回か仕事をしてきてますんで初期登録は必要ないです。」

と横から言ってきた。

バカってお前・・・



「あ、あーそうなんですか。妙に慣れた感じがしたのはそのせいなんですね。では、登録証を見せて頂いてよろしいでしょうか。」


お姉さんが言うので俺とネクは其々の登録証をお姉さんに見せる。



「ほうほう、お二人はカリュウ村のご出身なのですね。お名前はトウヤ・ヒノカ様とネク・カナワ様。

えっ!トウヤ様は等級が乙の中なんですか!?ネク様も乙の下!。

ほうほう、登録証を見る限りお二人は今までにかなりの仕事をこなされてますね?」


何か軽く驚かれていた。

まあ、三年ぐらい前に登録して、色んな仕事をこなして来たからな、それなりの等級にもなるってもんだ。

ちなみに等級とは、下から(へい)()、丙の(ちゅう)、丙の(じょう)(おつ)の下、乙の中、乙の上、(こう)の下、甲の中、甲の上、甲の特上(とくじょう)

と、十段階に区分されており当然上の等級になるほど難易度が上がってくる。等級を一つ上げるにはその等級の依頼を最低3つは成功させ、なおかつ口入屋の責任者の許可が要る。まあ、魔物退治とか最低限の強さは必要なので、そのへんを見極めるために不可欠な仕組みだとは思う。ネクが俺より等級が一段階低いのは倒せる実力があるのに見た目が可愛らしいという理由で兎(毛皮を採るため)を仕留めそこなったり、変な失敗を何回かしたせいだ。


大まかな仕事の内容といえば、丙の下などは草むしりとか家の掃除とかで、大したことはないが、乙の下とかになってくると、魔物退治や獣を何頭か狩る、などと難易度がはね上がってくる。


俺は手っ取り早く稼ぎたいので

「ええ、まあ。数は多くこなしてきたんで、少々きついのでも期間が長いのでも大丈夫ですよ?」

と丁寧に言ってみる。

ちまちまやって報酬が安いのは嫌だしな。

横を見ると俺の言葉に賛同したのかネクもうんうんと頷いている。



お姉さんは少し思案して、

「うーん。そうですね。仕事に慣れてらっしゃるようですし、こちらなんかは如何でしょうか?お二人の希望に沿うことができるかと思われますが。」

と、受付机から一枚の紙を取り出した。



その紙には、


鬼族(きぞく)の村、探索隊募集!

集え強者(つわもの)

未知の種族を調べてみよう!

参加資格:乙の下以上の等級者十名程度

参加期間:最短1ヶ月

報酬:お一人最低3000丸、但し成功報酬等は別途ご相談。

依頼人:アズト・ミタラ』

と書かれていた。



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