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第75話〜その二文字は〜

男として、否武人として生きてきたからには誰しも一度は目指した二つの文字がある・・・




〜〜〜





「ミシルさん?いったい何が起きたというのですか・・・」



私は前々からミシル・タイナという人物から感じる雰囲気に違和感を感じていた。最初に行動を共にした時とは変貌した雰囲気に。

最初は鬼ヶ島、正式な名称は火喰い島というところへ一緒に行った時だ。その時は別に何の変哲もない人物ではあったが、次に此の闇の大陸で見た時は違っていた。その身体から発散されるものはまるで魔物のような、妖魔とも言えるようなものになっていた。そうなった理由を尋ねると魔石というものを使い、魔力を扱えるようになったとのことだった。ーーーそして今、


「・・・ワたしハドウしたノだダ?」


どうしてか理由は分からないが酷く歪んだ(おもて)へと変貌した、ミシル・タイナという人物はしかし自身に何が起こっているか分かっていない態度を見せた。


「何が、起こったのでしょうか?」


私は繰り返した。繰り返すことしかできなかった、変貌した理由が分からずに。・・・先ほど大司教という人物はミシルさんの力を奪ったはずだ。そのことにより気絶したミシルさんが目を覚ますと、


変貌していた。しかも、


「貴方の雰囲気は・・・」


感覚的に判断した。目の前の方から発せられる雰囲気は魔物、というよりは妖魔の類いといったほうに近いと。


「ワタしはドウしタとイウのだ・・・」


その顔は凶相とでも言うほどに歪んでいる。そのせいか喋る言葉も所々聞きづらい箇所がある。あの整っていたミシルさんの顔が・・・



「・・・?ヤツラは、ドこへ」


「ジズさんたちは災厄の元へ向かいました。それより今は、」



私はミシルさんに手を向けて治癒術を行使した。



パァァァァ



「・・・?」



しかし何も変わりはなかった。駄目元でやってはみたが治癒術は傷を癒すものだからやはりと言うべきかミシルさんの顔は元には戻らない。

人と魔物の・・・

それが先ほど力を全て奪われて無意識にこの闇の大陸の力を取り入れたのではないだろうか?だとすれば、


「強だいな力を感じル・・・災厄とヤラはあちらダ・・・」


考えているとミシルさんはその方角を指した。



「分かるのですか?」


「アア・・・溢れるチカラ、感覚も研ぎ澄マされるヨウだ・・・」


気持ち言葉も落ち着いてきたようには聞こえる。



「力の元へ行ク・・・!」


「・・・分かりました」



分析は後にしようと決めて私はミシルさんの言葉に従った。




〜〜〜




凄まじい負の感情。

私はこの大陸に来た瞬間まずそれを感じた。決して人では持ち得ない悪意とでも言うべきか・・・人や獣、否この星で生きとし生ける万物の対称とでもいうべき存在、生物の天敵それが災厄だということは身に染みた。

・・・だが、そんなものを地の底から蘇らせた一因が己にあると知ったあの時の絶望感・・・あれは生涯で2回目にあたるものだった。1度目の絶望は家族が突然居なくなったあの日・・・



「大司教よ・・・あれに勝てるのか本当に?」


私がその責任を取るべく召喚した・・・・・・私の人生の復讐に巻き込んだ人物は僅かに震える声で言う。あれ、というのは眼前でこちらを睨みつけ、


『・・・火炎の牙ではない・・・?しかしこの光・・・?』


訝っているあの背から翼の生えた者のことだ。


「分かりません・・・災厄、まさかこれほどの者だとは・・・」


体に受ける寒々しい感情のようなものは別にしても、アンリ・マユの体から放たれる魔力は凄まじい。まるで世界がねじ曲がるような禍々しい魔力だ。



「今さら頼りないことを言ってくれるな。だがお主が何と言おうとあれは止めねばなるまい・・・魔力とやらはよく分からんがそんな拙者ですら凄まじい威圧を受けている」



ハンスは言いながら剣を抜いて上段に構えた。



『・・・火炎の牙ではない・・・が、得体の知れぬその光は・・・』


ハンスの剣を見た災厄の王は自身とは異にする力を目の当たりにしたことで警戒し、こちらを攻めあぐねている・・・ように見える。ならばこれは好機!



「行きます剣聖殿・・・!」

「応っ!」



『・・・!光を向けるな・・・死ね・・・!』


「「!!」」



だが災厄の王は私達が近づいた途端さらに警戒を強め、その両手を此方に向けた。


地殻歪曲(アースブレイカー)


「ぬおっ?」

「地面が?」


彼の者が何かを唱えた途端地面が波打って膨れ上がった。それだけでなく地面がまるで生き物のようにうねり続けている。

今のは地属性の魔法のようだが、並の魔導士が使うそれとは位階、というか次元が違うほどの広範囲に制御をしている。



「ぬう、これではきゃつに近づくのもままならん」


「・・・剣聖殿、私があの者の隙を作ります」


「隙?」


「ええ。その後に続いて下さい」


「・・・何か手があるのだな?」


「ええ・・・闇の魔法で」


「闇の?それはきゃつには通じないのでは」


「直接攻撃ならば、の話です・・・浸食の波動!」

私は両手を前に突きだして魔法を唱えた。これによりあたり一帯の空間は私の支配下におけることができ相手の動きを一定時間封じることができる、闇の支配系統の最上位に位置する魔法により彼の者の動きを止め、地面の鳴動をも止めることができる・・・・・・はずだった。並の魔物ならば。



『温い・・・!』



バァンと言う音とその言葉共に私の放った魔法は掻き消された。



「・・・相性、の問題ではないらしいですね」


今されたのはただ単にその圧倒的な魔力で私の魔法を消されただけだったようだ。


「ぐおおおおおおっ!」


「剣聖殿!」



だが結果として私の行動に気を取られて対処をした彼の者に僅かながら隙が生じた。その隙をハンスは見逃すことなく自身の力を高めた。その身体と剣は、持っている聖剣の影響なのか自身の体内から発するものなのかは区別できないが目が焼けるほどの目映(まばゆ)い光を放っている。



「そのまま。そのままに剣を振るって下さい・・・!」


「応っ!風来剣(ふうらいけん)絶招、牙風月輪(がふうげつりん)!」



叫びと共にハンスは上段に構えていた剣を前方に降り下ろすようにし、自身も数m前に間合いを詰めた。

彼の者との距離は一足飛びで詰めることができる程度にしか離れていないその場所でハンスの身体から、いやその剣の切っ先から巨大な光の球が生じた。災厄の持つ強大な魔力とは異なる方向性の力・・・これならば倒せるという予感すらあった。


たった今ハンスの持っている聖なる剣の先から解き放たれた光ならば・・・!




だが、





『・・・召喚(サモン)死灰王(グレイザル)・・・!』



翼の生えた者が何かを呟く素振りを見せた瞬間その小さな体躯の目の前に巨大な身体を持つ何かが現れた。白い・・・灰?


その巨大な身体がまるで光の球を受け止めるように立ち塞がり、



『牙・・・我には通じぬ・・・!』


災厄が吼えた。



ずしゃあ、という音がし巨大な灰は空中で飛び散った・・・ハンスの繰り出した光の球とともに。

まるで今の攻撃が来るのが分かっていたかのような反応を見せた姿に私は疑問を覚えた。



「彼の者は戦ったことがある・・・?」

ハンスのような闘気を操る者と。一度でも見たことがなければ、いくら強大な魔力の持ち主と言えどあのような対処の仕方は思い付かないはずだ。

ーーー召喚した魔物に攻撃を受けさせるなどと。

通常の魔物の思考ならば受けるか避けるか、だがあの存在はそのどちらもせずに・・・?その方法は必要以上に攻撃を警戒しているように見えた・・・




〜〜〜





風来剣・・・風の大陸に伝わる剣技で自身の力、闘気そして大気に流れる風の力を得物に取り入れて絶大な破壊力を生み出すもの。それは威力が大きすぎる故に通常ならば扱う得物がその負荷に耐えきれず破損することがままある。

そして、風来剣の中でも絶招(ぜっしょう)と呼ばれるものは得物への負荷だけではなく体内の闘気をも著しく消耗するため滅多に使われることはない。

自身でも使ったことは数えるしかないこの技を躊躇いなく使ったのは、共に行動している者から眼前に立つ存在がいかに危険な者かということを事前に聞かされていたことと併せて、相対した瞬間に感じた翼の生えた者が持つ異様な雰囲気に自分の勘がかつてない程の警鐘を鳴らしたからだ。若かりし頃に故郷の近くにある魔物の巣に行って無数の魔物に襲われたときもこれほどまでに身の危険を感じることはなかった、ということを鑑みれば災厄の王という存在がいかに強大な強さを持つかというのが推し測ることができる。

それ故風の力を取り入れ闘気を殆ど全て使うつもりで放った全力の一撃だった・・・のだが、



「召喚とは!」



頭上から降り注いでくる白い粉に触れないようにしながら吐き捨てた。彼我の距離は5mと離れていない絶招には必中の間合いであったがきゃつは思いがけない方法でその自分の攻撃を防いだ。

当たりさえすれば仮に倒せないまでも、聖なる力により何らかの異変がきゃつへと生ずるだろうと思ってはいたが、まさかあのように防ぐとは・・・

それにより此方の状況が追い詰められたものになった。それは、



「闘気切れか・・・」



闘気(オーラ)とは人が持つ体内の秘めたる力・・・言い換えれば生命力とも言えるもの。それを無くすほどの勢いで先の一撃に込めたことにより体内からその大半が失われた。時間が経てば徐々には回復するものではあるが、これが一時的にでも完全に体内から枯渇すると意識が飛ぶ、というのは体内の闘気を無理矢理にでも回復させるため体が本能的に休みたがりそのような状態になるという理由による。

今までの経験から完全に使いきり意識が飛ぶという状態を避けるため僅かながら闘気は残しているがもう一度絶招を放てるほどではない。

さてどうするか、と目前の敵から目線を離さずに思案していると、



『・・・牙に似たような術を扱う、この人間は・・・』


やけに此方を警戒する素振りを?それに、先ほど白い塊が突然飛び出してきたときほどの威圧は感じない。


・・・そう考えれば聖なる剣の力、きゃつには当たらなかったものの通じると見て間違いはなさそうだ。が、問題は・・・



「生気供給・・・!」


「むっ!大司教よ、これは?」



後方で何かをしていたジズの体から淡い光のようなものが発せられており、それが自身の体を包んでいる。


「・・・このような事態のためではないですがここで終わるわけにはいきません。先ほど手に入れた備えを使います・・・!」


「備え?・・・・・・そういうことか。騙し討ちしたあやつには後で謝らねばな」



自身の闘気が急激に回復していく感覚を覚えジズの言葉の意味を理解した。

先ほど金髪の若者から奪った闘気を、どういった方法かでジズが留めておきそれを今拙者へと譲渡しているらしい。



「・・・あの方には悪いとは思っています。ですが生気を奪ったのはその為だけではないのです」


「大司教よ、何のことだ?」



闘気を回復させながら敵の動向を見ていると、その場から動かずになにやら上方を見ている?



「・・・強大な魔力を持つ存在へは魔を以て魔を制すことはできません。いえ、それどころか下手をすれば操られ傀儡と化す怖れもあります。その体内に秘める魔力によって・・・」

「そのような状態になるものなのか?」



だとすれば厄介な話だ。下手に魔の性質を持つ者と共闘するならば却って邪魔になる。

・・・む?



「お主も魔を持つのでは?」


「確かに私は魔力を扱います。ですが、これさえあれば・・・」



そう言ってジズは杖を僅かに掲げてみせた。あれがあれば自分を失わない、ということなのだろう。



「・・・よし、もう充分回復した!再度絶招を・・・!」

「ええ。今度は召喚できぬように私が抑えます・・・!」

「頼む」


次こそ防がれないようにと連携して攻める。次を外せば勝機を逸するだろう・・・



「ぐおおおおおおおっ!」

再度絶招を撃つべく己の闘気を高めた。

だが?やつは、災厄は先ほどから何をやっている。此方を警戒はしているのだろうが、それでも上を見ている。

何かがあるのだろうか?



魔詠封唱(ロードオブサイレンス)!・・・・・・これで召喚魔法は使えません、今です!」


「ああ!牙風、月輪っ!」


先ほど繰り出したものよりも若干動作を速くし再び絶招を解き放つ・・・!

これならば避けられまい!




〜〜〜





身体から溢れる力。しばらく気を失っていて起き上がったときに感じたものはそれだった。自身の肉体を強化するためのものであるオーラ、精気、そして魔力。今自身から溢れる力としては精気も含む魔力、といったところか・・・自身の体内からではなく大気にあるモノを無尽蔵に取り入れている感覚がある。どのような力が私に作用したかは知らんが、思ったことはただ1つ。これならば私が、私が一番強い・・・!他の誰にも、そう奴にも劣ることはない。


私が最強だ!




この力を使いこなし、どちらが上かを分からせてやる・・・だがその前に、世界を混沌に陥れる存在、災厄とやらを片付けなくてはな・・・私の邪魔はさせん!


溢れる力のおかげかどういう理由かは分からんが、その者らしき力も感知することができるようになった。

私の新たに目覚めた力のおかげで大気に同調し宙に浮遊することも可能になった。共に居たニンゲンに行くべき方向を指し示し、私はすぐに災厄の元を目指した。空より・・・




そして辿り着いた、と思った瞬間眼前にとてつもない破壊力を持つ攻撃が迫っていた。もしその攻撃を喰らえばこの身体ですらあっさり引き裂くだろうと推測できるほどの凄まじいプレッシャーだった。


だから私はその輝く球に全力を以て応えた。

私の全力、即ち絶斬を撃ったのだ。





〜〜〜






何が、起こった・・・?

あの間合い、タイミング、位置、全てが必中のものだった。一撃目は思いがけない方法で防がれたものの二撃目に放ったのはその防御法を考慮し召喚を事前に封じた。だからきゃつはあの場で光の球を喰らうしかなかったはずだ。



それが、何故解き放った月輪が跡形もなく消えた?



・・・何故、拙者の身体は引き裂かれ、て・・・い、る・・・



『・・・闇の牙、ついに我は手に入れた・・・』



「・・・私が最強ダ!」



最強。

薄れゆく意識の中、生涯で自分が追い求めていた、そんな2文字の言葉が聞こえた、気がした・・・

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