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第62話〜守護の果てに〜

俺はイヅナの声を聞くと同時にオーラを一気に高めた。

だが、


「あいつ・・・?」


その魔力を持った獣は臨戦態勢のまま動こうとはしない。

光り輝くそいつの姿を見ながら穂先を向け警戒を解かずに俺はイヅナに尋ねた。


「あいつは何なんだイヅナ?お前は何か知っているみたいなことを言ってたが」


「あれはエンキドゥ・・・・・・前にこの鎧を着てた人間を倒したやつなんだ」


エンキドゥ?

イヅナのその口ぶりだとさっき話そうとしていたこの大陸の有名な話に関係ありそうだが・・・


「でも!あたしも見たのは二回目で、しかもあいつがなんでこんなとこにいるのかわからないよ!」


「?あいつがここに居たらおかしいのか?」


「おかしいよ!ここは人間たちが光の戦士のお墓を建てた場所なのに!光の戦士を殺したあいつが、エンキドゥがなんで・・・」


光の戦士?


「光の戦士ってなんだ?それもさっきお前が話そうとしてた話に関係あるのかイヅナ?」


エンキドゥという魔物は俺達の様子を窺っているのか、その場から動いてはいない。プレッシャーが凄まじいことはともかく・・・


「そうだよ・・・人間にもあたしたち亜人にも伝わる話だと、」




▽▽▽




光の戦士の活躍により、我等は一体の荒れ狂う獣を大陸の奥深くへと追い落とすことに成功した・・・だが、その犠牲は余りにも大きかった。我等が王、光の戦士・・・その尊い命はもう返ってはこない・・・獣の牙にその身を貫かれ・・・闇に故郷を持ちながらも長年光のために尽力してきた戦士の安らぎのため、その生に報いるため非力な我等は剣をとった・・・二度と同じ悲劇を繰り返さないために他の人外をも追い出さねば我等に明日はない・・・我等は・・・



ライトニング教典聖剣の章より抜粋




△△△




我等ってのは光の大陸の人間なんだろうな、と俺は思った。しかし大陸の奥深くって言われると此処は端だから確かにイヅナの言うとおりあの獣がこんな場所に居るのはおかしいな。

と、イヅナの知っている話を聞きながらそこの違和感にはひっかかったが。


「だから逃げようトウヤ!」


「でもなイヅナ?逃げきれそうか?」


「うっ」



俺が諭したのは別にイヅナへの嫌がらせじゃない。あのエンキドゥはおそらく俺達の存在をここに感じたから急いでやって来た、のではないかと思う。何処かからか此処までわざわざ。だから明らかに敵意を持っていると考えるべきだろう。

ただ、そう考えると1つ腑に落ちないことはある。


「なんでだろう・・・?」

「お前も気づいたかイヅナ」


何故あいつは身構えたまま襲ってこないのだろう、と。

俺達がここに居るから来て魔力を高めたのに何でだろう、と。

そして、金ぴかの鎧を触ってたら・・・・・・!まてよ?


「もしかしてこれか?」


「トウヤ?」


俺は思いついてイヅナを抱き抱え、鎧を触ってみた。



『ブルルルアアアアアア!』



ドドドドドドドッ!



するとそれを見ていた獣の全身からすかさず数十はある光弾のようなものが放たれてきた。


「っ!?読み通りだなっ!」



俺は左手で抱えたイヅナを庇うようにオーラを高めて槍からオーラの盾を張った。鎧に近づけばエンキドゥが襲うんじゃないか、と思った俺の予想通りではあるが、



「ぐっ!これはまずい、か?」


ドドドドドドドッ!

耐えきれるかと思いきや獣の光弾が途切れる気配がない・・・!

その攻撃力はともかく遮断されない持続性は俺の予想以上だった。



『ブルルルアアッ!』


ついでに雄叫びも止める気配がない。いやそんなことよりも、この状況をなんとかしないと。


「えっ!?」


と、俺が何とかエンキドゥの隙を突こうと考えているとイヅナが突然叫んだ。というか、こいつはいつのまに鎧の陰に?



「なんで!?」


「ど、どうしたイヅナ」



オーラを更に高めながら何やら驚いているイヅナへと尋ねた。


「護るって、自分が護るってどういうことっ?」


「おいイヅナ?」


ドドドドドッ!

エンキドゥの攻撃はまだ続いている、少し光弾の数は減った気はするがそれでもここから動けないことに変わりはない。

というかさっきからイヅナは何を独り言を言っているんだ?



『ブルルルルルルッ!』


と、急にエンキドゥの攻撃が止んだ。

今度はこっちから行くぞ!

俺は盾を解き槍の穂先をエンキドゥへと向けた。


「行くぞエンキドゥ!九天奥義、」


「まってトウヤ!」


牙、と槍を伸ばそうとしたらイヅナに止められた。


『ブルルルルルル?』


「うんうん、それはしょうがないけど。でもあたしたちは、ていうかトウヤは違うよ。この大陸の人間じゃないよ?」


「イヅナ・・・?」


イヅナは独り言を言っているふうではなくまるで誰かと話しているようだった。


「違うってば!あんたが嫌いな奴らとは!トウヤは優しいんだよ!」



ボンッ

と音がしてイヅナは何故か本来の鼬みたいな姿へと変化した。



『ブルルルッ!?』


「ねっ?分かったでしょ?あたしもあんたと同じなんだよ」


「お前もしかして・・・」


俺は気づいてイヅナへ聞いた。


「えっ?ああ、ごめんねトウヤ。何でかわからないけどあいつと喋ることができたんだ」


そう言いながらイヅナはエンキドゥのほうへと目を向けた。


「お前、そんなことができたんだな?」


獣や魔物と喋ることが。

いやまあそもそもこいつも獣だし変化したりできる不思議な能力を持ってるからできても不思議じゃない・・・のか?


「え?いや、あたしは人間の言葉は分かるけどそんなことはできないよ?」


いや、今話してたじゃないかブルルルとしか言わない獣と!

と、俺は突っ込んだ。


「できないってば!」


そう言うと何故か怒ったようにイヅナは言うし。しかも鎧の陰に隠れたまま。



「まあいいや・・・で、あいつと何を喋ってたんだ?」


できないって言ってるのに、とか何とかぶつぶつ言っているイヅナに話していた内容を尋ねると、



「え、ああ。つまりね、エンキドゥは、」



光の大陸の人間が大嫌いなんだって、とイヅナは言った。

・・・勿論それだけでは何のことか分からないので俺はイヅナに今話していた内容を包み隠さず話させた。





〜〜〜





血縁ということかしら?私はサイモンという名を聞いて先程出会ったリビングデッドのことを思い出した。


「亜人、覚悟しろ!」


言うや否やラゴスから感じるプレッシャーが上がった。これは確か・・・オーラ、というやつかしら?


「覚悟?何のかしら?」


「無論滅せられる覚悟だ!十字光(じゅうじこう)!」


シュシュッ!


ラゴスの持つ大剣が縦横にと煌めいた、と思ったら、

ズシュッ


「っ!?」


目に見えない衝撃が私を襲った。その思わぬ衝撃に私はたたらを踏んだ。


「隙ありだ亜人!聖剣技、斬魔大剣(ざんまだいけん)!」


目で視認できるほどの光?

御大層に技名を唱えているがあれに凄まじい量のオーラが込められているだろうことは感じた悪寒で覚った。


「ウォォォォォ!」


「でもやらせない・・・!ファング!」


私は嘆きの杖に魔力だけではなく自身の想いを込めた。負けたくない、という想いを。



ガギィン!



「なっ!?私の全力の一撃が?」


「そこで怯むのは致命的ね・・・爆裂(バースト)!」


バンッ!


「がっ・・・!」



どさっ、という音とともにラゴスはその場に倒れた。


「ふう・・・どうやら然程実戦経験はないようね」


べらべらと喋ることといい自身の決め手らしきものが止められた際の反応といい。


「少し休みましょうか、ロラン?」


この好戦的な人間が目を覚ましたら聞きたいことがあるので私は連れにそう尋ねた。


「それはいいけど、他の人間が来ないかな?」


「大丈夫よ」


言いながら私は周囲に結界を張った。

魔力で造り出した結界は、術者が自ら解くか結界を造り出した術者を上回る魔力の持ち主が結界内に侵入するか、その何れかを行わない限り解けることはまずない。なので休憩がてら私は結界を張った。


「それにしても人間ってやっぱり人間以外には優しくはないね」


ロランが寂しそうに呟いた。


「そうね・・・それにそれはこの大陸に限ったことでもないわ」


「そうなのリーナちゃん?」


「ええ・・・」



私はこの大陸に来てからひどく嫌な気分に陥っていた。先程の会話の中で敢えて挑発したのもそのせいだ。やはり人間というのは異形は弾くものね・・・


かつて大昔に人の身を捨てたばかりの時のことが頭を過った・・・





〜〜〜





それにしても強い人間が居たものだな・・・まさかあの邪龍(ラドン)を討つとは・・・我ですら僅かに及ばなかった我が血族を・・・自身は否定的だったがそれほどの強さの持ち主ならばやはりあの人間が預言にあった・・・否・・・それとは別のあの・・・伝説のグラムをも扱うことを鑑みると・・・もしやあの人間は・・・



闇の大陸セフィロトの樹の前で黒竜はそんな物思いに耽っていた。



・・・あの日以来この場所を訪れる者は居ない。もっとも、弱き魔物風情では此処に立ち入ることすら不可能だが・・・

黒竜(ニーズヘッグ)は自身の得意な技である魔導結界には絶対の自信を持っていた。


此処に入ることができるのは自身に近い強さを持つ者ぐらいだ・・・あまつさえそれを打ち破ることができることなど余程魔導に長けた者か、あるいは・・・



!?

この魔力はっ?


樹にもたれかかるように考えていた黒竜は突然自身の結界内に魔力を感じて飛び起きた。



『魔物・・・なのか?』


そして目の前に現れた1体の生き物の姿を認めて怪訝そうに呟いた。


『・・・やっと見つけた』


自分の姿を見ながらその突然の闖入者はそんなことを言う。

だが?


『見つけた・・・だと?汝は我を探していたのか?』


まるで見覚えの無いその生き物の姿を見ながら黒竜は尋ねた。その小さき生き物に。体長としては先日此処を訪れた人間程度しかないが、


『っ!・・・その魔力・・・?』


その小さな体からは想像もできないぐらいの強大な魔力の波動を感じて黒竜は慄いた。


『我を封じた憎き、』


『・・・樹の実を奪いに来たわけではなさそうだが・・・!カアアッ!』



ゴォォォォッ!


敵意を感じた黒竜は先手必勝、とばかりにその生き物に向けて黒焔の息吹(ブレス)を放った。



『・・・・・・違う?』


しかしその生き物・・・背から翼の生えた人間の少女のような生き物は、その息吹に為す術もなく呑み込まれた。

『我の(はや)りすぎか・・・?』


それを見た黒竜は感じた魔力のわりに、その生き物があっさりと自身の攻撃を喰らったことに疑問を持った。



だが、



『効いていない・・・!もしやこの威圧感は魔族か!』


不意打ち気味だったとはいえ自身の息吹をまともに喰らって何ら意に介することもなく其処に立つ生き物を見て、黒竜はかつてないほどに警戒心を高めた。


『これではない・・・』


『・・・汝は?』


自身を見ながらそんなことを呟く生き物に黒竜は警戒心と同時に疑問を持った。

『汝は何かを、』


探しているのか?

という黒竜の問いに、


『だがおまえは()の血族・・・消えてもらう』

『!?血族だと・・・汝はもしや!・・・我が竜族が怖れし、』


腐食化(コロージョン)


黒竜が喋りかけた途中を遮るかのように生き物がその人間のような両手を上に掲げた。



『・・・なっ!?』



そしてその生き物が何事かを唱えると、



・・・生命の樹がみるみるその生気を失っていった



『な、汝がやったのか・・・!』



黒竜は焦りながら尋ねた。しかし尋ねるまでもなかった。

その生き物の身体より放出される何かに触れる度に生命の樹が弱っていく姿を見れば・・・



『我は赦すまじ・・・この世界に生きる・・・』


『答えよ・・・!汝は何故このようなことを!セフィロトを失うということは地上に生きとし生ける万物へと影響を与える!それを知ってのことか・・・!』


激昂した黒竜はそう言いながら生き物のその行動を止めるべく再び息吹(ブレス)を放った。


『・・・・・・』


だが先程と同じく生き物は意に介せずに両手を掲げたままだった。



『ブレスが効かないとは・・・!こうなれば人化して・・・』


黒竜が戦法を変えようとしたその時だった。


『うっとおしい・・・!』

言いつつ黒竜に向けて両手を掲げた。




『ぐおおおおお・・・!』

黒竜は自身の身体から生命力が失われていく感覚に陥った・・・



『死ね・・・牙の・・・』


・・・そして黒竜の意識は遠ざかった。





〜〜〜





ここは、どこだ・・・?

我は樹の前で・・・


何故あたり一面真っ暗な闇に覆われた場所に居るのか・・・?



黒竜(ニーズヘッグ)は自身が今置かれている状況に理解できなかった。



『・・・ッグ』



今声が・・・



『・・・ヘッグ』



やはり!

誰だ、我を呼ぶ者は


『ニーズヘッグ、そなたは永年よくやってくれた』



!?

その声はまさか・・・



龍神様?



『ニーズヘッグよ、そなたにはつらい役目を与えた・・・だがもう良い・・・』

良い?何が良いと言うのです。



『そなたの兄ももう居ない・・・・・・永年ご苦労だったな』



・・・その言い方はまるで惜別のような、


『そなたは役割を全うした・・・もう良い』


龍神様・・・我は、



『災厄でその身を失い・・・』



!あれはやはり魔界の・・・では我は・・・



『もう良いのだ・・・休むがいい』


しかし生命の樹が!

預言の者が!



『形を失ってもそなたの想いは残る・・・預言の者も未だに・・・そなたが気に病むな・・・』


我は消えたのですね・・・地上から・・・


『そうだ・・・ニーズヘッグよ・・・最後に何か思い残すことはあるか』


龍神様の言葉により我は1つだけ思った。

我の残したモノを・・・

我が唯一見つけた絆を・・・



『分かった・・・あとは他の(もの)に任せて眠れ・・・』



・・・そして我は思考をやめた





〜〜〜




「?」

「?」



私の中を何かが通り抜けた?

驚いたわ・・・・・・

そして同じタイミングでロランも驚いていた。



「ロラン?」

「リーナちゃん?」



これまた同じくお互いに何があったのか、と尋ね合った。



「私は別に・・・?」

と、ロランに言いかけたところで懐に違和感を感じた。すると、



「・・・どういうことかしら?」



懐を見てみるといつの間にか失われていた筈の短剣(ダガー)がいつの間にか懐に入っている?



「おかしいわね?」



前に一度あの騎士に滅せられた時にこれも失っていた筈だが?まあ耐熱性が並みの武器よりも遥かに上のこの短剣(ダガー)はあると便利だから別にいいわね、と疑問は置いた。

そのことで驚いたのだとロランに説明すると、



「ふーん。不思議なことがあるんだね」



特に疑問を持ってはいない様子だ。



「僕は誰かに呼びかけられた気がしたんだけど、」



気のせいかもしれない、とロランは言う。



「そう。大したことではないのね」



それにしてもこの人間は中々目を覚まさない。

少しやり過ぎたかしら?と私は未だに起きないラゴスの顔を見つめていた。




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