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第61話〜従う者〜

ローブの下に軽鎧を身に付けた一見すると華奢に見えるその人間、(おそらく20代半ばあたりぐらいか?)はよく見ると、



「どのようにして城へ侵入したかは知らんが私を侮辱したことを後悔させてやるぞ亜人!」


背中に大きな剣を背負っていた。それを抜いてこちらへ向けながらその人間は何やら好きなことを言っているが。



「ふう・・・侮辱したことは、まあ謝らないでもないわ。何せこうして見事に・・・」


踊ってくれたから、と私は胸中で呟いた。


「・・・?とにかく排除する、行くぞ!」


律儀にそう声をかけてきて、その黒髪黒瞳をした人間は両手持ちにした大剣を降り下ろしてきた。


「てやぁぁぁ!」

キィン!


私は頭上に降り下ろされたそれを杖で受け止めた。

だが?・・・緩慢、とも言えるその剣速にある意味では意表を突かれた。


「むっ?幼いと言えどさすがに怪力で知られる鬼の種族だな。大剣(クレイモア)をそのような杖で受け止めるとは・・・!」


しかも私の今の動作について妙に感心している?

いや、速さもないしその上剣の大きさの割には衝撃も然程無いので無造作に受け止めただけなのだけれど・・・


「しかし!」


!?

このプレッシャー?

私は鍔競り合いをしている只中の人間から突然強大な圧力を感じた。


「これならば耐えきれまい、聖剣技(せいけんぎ)破重(はじゅう)!」


人間がそう叫んだ瞬間大剣が私へ倒れかかるほどの重みを持った?特別力を込めているようには見えないのだが・・・


「くっ!」


私は此方へ倒れかかろうとするそれを左に跳んで避けた、



「甘いな!閃軽(せんけい)!」


が、今度は軽々とそれを右手だけで振り回し私に追撃してきた。

速い!


爆裂(バースト)!」



バァン!

カラン


しかし私に当たる直前に私が放った爆裂(バースト)の衝撃で剣を弾き人間の手から離れた。


「魔法だとっ?オーガの身で?・・・・・・成程、益々見た目通りではなさそうだな」


右手を押さえながら人間は此方を睨み付けている。


「貴方もね?ただの種族主義者かと思えば中々の腕ね。オーラ、そして光ならではの技能、聖剣技を扱えるなんて」


「貴様何故そこまでの知識をっ!?・・・いや、そうか。亜人の年齢を見た目で判断するのは誤りだったな。・・・そう言えばかつてこの地で暴れ回った亜人も年若かったとか・・・いいだろう、侮りはやめだ」


「侮り?貴方にそんな余裕があるとは驚きね」


「なんだと、ぎっ!?」


私に気を取られていたその人間の足にロランが噛みついた。


「き、貴様っ?」


背丈が170㎝程度のその人間は並の犬より一回りは大きいロランを振りほどこうとするが、ロランは噛みついた口を離さない。


「ロラン、離していいわよ」


私が言うとロランは人間から離れ跳んで下がった。


「貴方はあれを拾ったら?」


「くっ、余裕のつもりか!・・・いやそれよりも、その狗族を従えているだと?亜人が亜人を使役するとはますます・・・」


思ったよりも私を御し難いと思ったのか、その人間は、


「貴様はいったい・・・?」


私を若干怖れるような目で見てきた。


「いったい、とはどういう意味かしら?私の見た目はそれこそ貴方達ライトニング教の者が好んで使う蔑称、亜人以外の何者にも見えないと思うのだけれど・・・」


額の角を触りながら私はその人間を冷やかに見た。


「・・・それは確かにそうだ。だが私が言いたいのは亜人が意思を持ち亜人同士で意思の疎通ができるということだ。尚且つ貴様は力押しぐらいしか取り柄のないはずのオーガの身でありながら魔族の如く魔法までをも使いこなす。」

「・・・思い込み、というべきかしら、それとも物を知らないというべきなのか・・・」


私はその人間の言葉を聞き呆れた。

しかし、その中に気になる言葉が聞こえた気がする。


「魔族?何故この大陸の貴方がその存在を知っているのかしら。貴方の言葉ではないけれど年若い貴方が・・・?」


光の大陸ではかつて獣や亜人とは共存していたことは確かではあるがそれらが追放された後にこの大陸で今を生きる若者には魔族というその存在自体が知り得ないはずだ。


「何を勘違いしているかは知らんがこの大陸には未だに魔物の巣窟がある。そして其処には一体の魔族が居るのだ。だから此の大陸に住む者にとっては魔物や亜人というのは周知のものだ。排除すべき存在、という意味でな・・・・・・もっとも、」


「・・・?」


私は、人間という種族自体を崇拝するこの大陸の人間が意外にも自分たち以外の種族について詳しいことに興味を持った。


「・・・ただ、話を聞くだけでその存在を確認した者は居ない、というだけだ。聞くところによればそれはかなり狂暴な存在らしいが・・・貴様の口ぶりだとどうもそれとは無関係らしいな・・・」


「そうね、私はこの大陸に居る魔物や魔族とは無関係よ。」


「そうか。だが、どちらにせよ貴様等は我が国の主義に則り排除させてもらう!このライトニング教徒ラゴス・サイモンが!」


?何処かで聞いたような名字ね?

黄色いローブを脱ぎ捨て再び剣を構えた人間の名乗りを聞きながらそんな疑問を持った。




〜〜〜





あたしたちはあれから2日かけて再び水龍の祠にやって来た。全員で。

しかも、


「本当に此処に守護神様が居られるのですか?」


「まあその疑問は分からないでもないけどね。・・・間違いないんでしょ、サラマンドラ?」


レヴィアタン探索団、団長つまりガルディアさんは今も疑わしい顔をしているが、それはそうだろう。今までさんざん自分達があらゆる方法で探してきたレヴィアタンについに会える、というのだから。それというのも、


『当然じゃ。我等が此処を離れた後に奴は舞い戻ってきたのじゃろう。あの城からは確かに此処に魔力を感じた』


少年の姿をした火の大陸の竜は自分の言葉が疑われるのは心外とばかりにそう主張した。魔力、というのは竜や魔物が持つ特殊な力のことでサラマンドラはレヴィアタンのそれを感じることができるらしい。いくら同じ竜の血族とはいえどこの広い世界の何処に居るとか場所まで分かるものかと懐疑的なあたしたちをよそに、自信を持っているらしいサラマンドラに、じゃあ他の竜の居場所も分かるのかと尋ねたらそれは分からないと言われたので、その理由を聞きその根拠によって確信を得たあたしはレヴィアス国に取引を持ち掛けようと考えた。そしてその結果は概ね成功したと言っていいだろう。


「それにしてもそれは便利ね」


『まあそうじゃな。ただし我が持っているのもおかしな話ではあるが』


あたしがサラマンドラが持っている刀を見ながら話しかけるとサラマンドラは僅かに目を伏せた。


「でも此処は改めてよく見ると・・・火の大陸の龍巣もそうだったけど何というか」


殺風景な場所にあるものだとあたしは思った。確かにあまり人目につかない場所にあるほうがいいのかもしれないが。

と考えていると、


「これは・・・!」


ミシル・タイナが祠のほうを見ながら何やら驚いている。



『久方ぶりじゃのレヴィアタン』


そしてサラマンドラもまた祠を見ておりさらに祠に向かって話しかけた。


『そうね・・・貴方は少し見ない間に随分と、』


幼くなったわね、と祠から出てきた女性はサラマンドラに親しげに話しかけた。




〜〜〜





いや何というか。

俺は軽く驚いていた。こいつは変身できる、ということは聞いてはいたし実際に岩になっていた姿も見ていたから疑ってはなかったんだが、


「トウヤ?どうしたのジロジロ見て?」


その女の子は俺に話しかけてきた。あ、声は変わらないのか。

まあ女の子というかイヅナなんだが。こいつは光の大陸に着いた途端何故かあの本来の姿である鼬、じゃなくて貂の姿をやめて変身した。人間の女の子に。(何で女の子?と思ったがそう言えばこいつは雌だったから変身してもさすがに性別までもは変えれなかったんだろう。思い出してみれば人間の姿に変わっていたニーズヘッグはおっさんだったしサラマンドラは男の子だったしレヴィアタンは何故か大人の女だったからな)

俺がそんなイヅナをジロジロと見ていたのは上手く化けるもんだな、と感心していたのが理由の1つだ。もう1つは、


「なーんか見たことがあるような奴なんだよな、その顔は?」


イヅナの人間の姿というのは、髪と瞳は黒く肌は白いという火の大陸や風の大陸の人間と同じような特徴をもつものだった。それはまあいいとして、俺が気になるのはその背丈といい顔つきといい何処かで見たことがあるようなものだということだ。


「なあイヅナ?ひょっとしてその姿って見たことがある奴を元に化けてるのか?」


岩になっていたときは周りにあったものと色や質感が全く一緒に見えていたことを思い出して俺は尋ねた。ただあの時は他の岩に比べてやたらと出っ張っていたから一緒に見えるとは言えど違和感があったが。


「へ?うんそうだよ。これはね、前に会ったことのある強い人間の姿を真似してるの」


「へえ。この光の大陸の奴なのか?」


「ううん。アヅナ・・・あたしの兄ちゃんと契約?っていうのをしてた人間なんだ」


「契約?」


「うん。なんかね召喚の契約とか言ってたかな?」


「ふーん」


召喚の契約か。あの牛面みたいだな。イヅナとかみたいな特殊な力を持った奴は結構やるもんなのか?それに光の大陸の奴は召喚の魔法ってやつを使えるのか?俺は召喚とか言われてもあまり良く分からないが。

そう言えば、前にあいつが召喚の契約が全部切れてたとか何とか・・・


「ああ、そうか!」


あいつで思い出した。イヅナの姿は髪や瞳の色こそ違うがあの女に似てるんだ。

ってことは、


「イヅナ?お前の兄ちゃんの契約の相手ってのはデュカ・リーナって言うんじゃないのか?」


俺が聞くとイヅナは小首を傾げて、


「あれ、言ってなかったっけ?」


聞いてはいない、と俺は答えた。こいつはいまいち自分の発言を覚えてないな。

・・・確かあいつは別れ際に今まで召喚契約を結んでた奴に会いに行くとか言ってたから、もしかしたらいつかどこかで会うかもな。と、俺は闇の大陸でデュカ・リーナが言っていたことを思い出していた。

あと、どうでもいいが此処は眩しいな・・・

と思って周りを見渡した。


そして俺は光の大陸の龍巣を出てすぐの場所、つまりこの場所に妙に光量がある理由に気づいた。


「これは・・・」


「トウヤどうしたの?・・・ああすごいよねこれは」


俺が目を奪われていたモノを同じく見たイヅナが何やら訳知り顔をしていた。


「知ってるのか?」


「そりゃあね、有名だもんこの大陸じゃあ」


「ふーん」


この金ピカの鎧がねえ。何で高級感を醸し出しているこれがこんな辺鄙な場所に飾って立ててあるのかは全く意味がわからないんだが・・・

しかもよく見るとそのやたらと金色に眩しく輝く鎧の中心あたり、装着すればおそらく胸のあたりになるあたりには、


「壊れてるな」


折角の見事な装飾なのになぜだか穴が開いていた。わざと開けたのか?とも思ったがこんな意匠のものには似つかわしくない歪な形の穴が開いているので、それはないかと思い直した。

そう、その二つの穴はまるで・・・


「有名な話だよ、これを着てた人間やその穴がなんで開いたのかは・・・」


「そうなのか?この光の大陸に伝わる話なのか?」


「・・・うん。でも」


俺がその話に興味を持って尋ねると少女の顔をしたイヅナは何故か言いにくそうな顔をした。

その顔を見て俺はもしかして、と1つのことを考えた。


「ひょっとして、その話っていうのは亜人や獣を排斥したことに何か関係があるのか?」


俺がそう思って聞くとイヅナは、


「そうなんだ。あのね昔の話になるんだけどこの大陸に居た戦士っていうのが、」


と、イヅナが話を続けようとしたとき、



『ブルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』


凄まじい雄叫びのような声が聞こえた。



「なんだっ!?」


俺は何かでかい獣でも居るのかと思い辺りを見回した。・・・ん?そういえば此処は光の大陸だったよな?魔物を含め獣とか大半は大陸から追い出されたんじゃなかったか?

と、俺は結構今さらなことも思っていた。イヅナもそうと言えるがこいつやこいつの家族は人の姿に変化してひっそりと暮らしていたそうだ。

ということはまさか今の声はイヅナの、


「ひいいいいい」


・・・兄貴ってわけじゃなさそうだな。怯えて蹲るイヅナを見ながらそのことは分かった。

じゃあ、今の声は、



『ブルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』


っ!?またかっ?何処からだ?


「な、な、なんでアレがここに居るのぉ・・・」


「アレ?イヅナ知ってるのか?」


「し、知ってるけどこんなところに居るのは・・・」


雄叫びのしたほうを見てみると何やら巨大な獣が居た。今のはこいつの叫び声、だったんだろう。

そしてその身体からは、


「おいおい、こいつは・・・」


俺が感じることのできる嫌な雰囲気、つまり魔力を持っている。しかも前に会ったことのある竜とかに匹敵するぐらいのプレッシャーを感じる・・・


『ブルルルルルルルッ!』


そんなことを考えているとその巨大な獣・・・魔物は今にも俺達のほうへと襲いかかるような雰囲気だ。


「ちっ!やるしかないか!」


俺はミスミに返し忘れていた槍を持って身構えた。


「に逃げようトウヤ!」


しかしそんな俺へ怒鳴るイヅナの声が聞こえて、逃げたほうがいいのか?と思った瞬間その巨大な獣の身体が光り出しそいつから感じるプレッシャーが上がった。





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