第60話〜光へ〜
「・・・で、君は石も見つけられずにその子を連れ出したってわけ?」
イヅナを伴い地上にある鉄の建物まで戻ってきた俺にアサエは冷ややかにそう言った。
「ああ。こいつはあんなところに誰かに無理やり閉じ込められてたからな、かわいそうだろ?結局、石も見つからなかったしな」
「トウヤじゃない人間がいる・・・」
地下の広場を出る前にもう一回確認してみたが、それらしいものはやはりなかった。というかアサエの顔を見ただけでびびるなイヅナ。
「見つからなかった?・・・それはおかしいな・・・」
?こいつの口ぶりだと石が地下にあることを確信しているように見えるが。あの発見器は自分が造った物
だから自信があるのだろう。しかし、だ。
「なあアサエ?本当にこれはその知恵の石っていうものにだけ反応するのか?」
発見器を指さしながら俺は尋ねた。確かにこの小さな箱はあの地下で顕著に反応していた。だが何処をどう探してもそれらしきものは見つからなかったので俺は1つの仮説を立てた。その確認のため尋ねると、
「どれもこれもに確実に反応するかって言われたら自信はないけど・・・でもそれは一応これには反応してたから多分近づけば分かるんじゃないかと思ってたんだよね」
と、手に持っていた拳大の大きさの赤い石を俺に見せてきた。
「それは?お前は知恵の石ってのをもう一個持ってたのか」
「いや、これだけしかないけど?これはボロボに付けていたやつを取り外しただけだよ」
俺はアサエが持つ赤い石を見て思わず突っ込んだが、それは俺が行動不能にしたボロボから取り外しただけらしかった。
「そうなのか。この発見器はあの地下では確かにビービー鳴ってたし今もそれに反応するから発見器自体は壊れてもないんだろうな・・・お前が言う発見器の機能が嘘じゃないかぎり」
「嘘・・・私が君を騙したって言うの、それを持たせてわざわざ?」
そう言って俺を訝しげに見るが。
「言い方が悪かったな。嘘、というよりは無知って言った方がいいかもな」
「へえええ・・・?この天才魔学者アサエ・マガハラ様が無知・・・」
何やらどす黒い嫌な雰囲気を出しているが、俺の言葉が癇に触ったのだろう。まあ学者っていうぐらいだから無知ってとこにひっかかったんだろうとは思う。多分。なので、
「お前は頭はいいのかもしれんが、それは全部実践で培ったものというわけじゃなくて研究や頭の中で考えたものだろう?俺はそれについて言っただけで別にお前がものを知らないとか頭が悪いとか言ったわけじゃないぞ」
「なにその慰め?・・・まあいいや。それで結局君は何が言いたいのかな?」
「ああ。説明するより見せたほうが早いか・・・よっと」
「わっ!?」
俺は言いながら(知恵の石発見器)の釦を入れイヅナに向けた。
ビーッビーッ
「っ!?・・・その喋るいたちに反応を?」
俺の目論見通り発見器は傍らのイヅナに反応している。
つまり、
「そうだ。お前の造ったこれは知恵の石の発見器、というよりは魔力反応器と言い換えることができる、ってわけだ」
つまり俺が立てた仮説とは、自称天才魔学者アサエが造った知恵の石発見器というものは知恵の石のみならず魔力にも反応するのではないかというものだった。今こうして魔力を持つイヅナに当ててみれば反応を示すことからもそれは間違いない。そしてあの地下の広場に近づくにつれて反応が顕著になったのはおそらく・・・
「じゃあ、この建物の地下には知恵の石が無いってこと?」
「そうだ。あれだけ探しても無かったからな・・・だから、この地下には知恵の石じゃなく魔力が充満しているということになる」
最初にこの小さな箱が魔力に反応するもじゃないかと考えたとき俺はイヅナがあの地下の広場を出てからもう一度広場に向けて当てて見た。するとやはりビービーと五月蝿く鳴っていた。だからあの地下には魔石が見当たらなかったのに魔力が充満しているというのは間違いないとは思う。しかもイヅナの話だとあそこに直接転送してきたとか。ということはつまり・・・・・・ただ、そんな場所に何故イヅナが居たのか、というより連れてこられたのかは見当もつかないが。横で鼬じゃない貂だ、と何やら呟いているこいつが何故。
「・・・ちょっと貸して」
俺から発見器を取り上げてアサエは手に持つ赤い石にも当てた。当然それにも反応を示す。
「別に故障してない・・・」
俺の仮説に納得していなかったのかアサエは赤い知恵の石に反応するかどうかを確認をしていた。
故障はしていない。俺も確かめたからな。そして、この小さな箱は知恵の石にも魔力にも反応を示す。ということは、
「なあアサエ?その知恵の石っていうのにはもしかして魔力が込めてあるんじゃないか?」
「魔力が?・・・状況から判断すればそうかもしれないけど、それがなに」
「実はな、俺は以前にーーーーーー」
鬼ヶ島へ行ったときのこと、そしてこの建物の地下にあるものに類似したものについてアサエに説明してやった。
その話を聞いたアサエは、
「鉄じゃなくて銀と鋼の合金も・・・それに龍巣・・・私が知らない技術がそんなに・・・・・・」
何故こいつは落ち込んでいるのだろう。
俺はただ鬼ヶ島で戦った銀色の奴に知恵の石みたいなものが埋め込まれてたことと、各大陸を繋ぐ竜の拠点、龍巣について説明しただけなのに。この建物の地下、イヅナが居た場所には知恵の石こそ無かったものの広場の半ばあたりには文字のようなものが描かれている場所があった。あれは水の大陸の祠にあったものに似ていたので龍巣とやらではないだろうかと俺は考えた。試しに使っても良かったのだが、イヅナも居たことだし、アサエにも説明したほうがいいと判断して俺は地上に上がってきた。そして、もう1人この島から出たがっている奴にも説明を。
「トウヤ!やったな!」
もう1人、ミスミにも教えてやらなくちゃなと思っていたら当の本人が現れた。
「やった?どうしたミスミ?」
いきなりこの建物に入ってきて尚且つ興奮したように息を弾ませているちびっこに俺は尋ねた。
「どうしたってお前?お前がやったんじゃないのか。鉄壁が無くなったのは?」
!?
あの鉄の壁が無くなった?正直俺は何もしていないが。
ミスミにそのことを聞いた俺はとりあえず自分の目で確かめてみようと思い外に出た。
「ほんとだ・・・」
俺がこの鉄の建物に入る前までは確かに存在していた島を取り囲むあの壁が綺麗さっぱり無くなっている。
「貴様が何かしたのではないのか?」
「いや、何もしてないんだがな。お前も此処まで来てたのか?」
外に突っ立っていたタウラに俺は答えた。
「そうだ。貴様が出たあとにやはり貴様1人に任せてはおけないと考えミスミと我も此処を目指したのだが、」
来る途中に鉄壁が消えたと、牛面を歪めてタウラは言う。何がそんなに悔しいのだろうかやけに機嫌が悪いが。
「これでようやくこの島から出られるな!」
まあ理由は分からないが邪魔なあれが無くなったので良しとしよう。
それに、
「そうだなミスミ。それともう1つこの島から出られるてっとり早い手段があるかもしれないんだが聞くか?」
俺が龍巣の話をするとミスミだけでなくタウラも目を白黒させていた。
~~~
・・・それにしても手薄な城ね。
城の中を進みながら、門番以降は城中に誰も居ないことに私は疑問を持った。
以前とある獣人の城を攻めたときには城内のそこかしこに警備の兵が居たものだが、この城の主は警戒心が薄いのだろうか?・・・もっとも、あの獣人は人一倍小心者だったので比較する対象としては相応しくはないのだが。
「城っていうのは誰も中に住まないものなの?リーナちゃん」
「いいえロラン、通常はそんなことは有り得ないの。誰かしら居なければね」
とは言ってもこうして人目を憚らずに普通に声を出して話している。これならと不可視の魔法も解除した。魔力の消費を抑えるため。
警戒を怠っていたわけではない。やたらと広い見通しの良い廊下なので誰かが居ればすぐに姿を認めることができる。余程のことがない限り。例えば結界が張ってありその中に侵入した際はそれを張った術者には存在が判明する。しかしそれこそない話だ、この光の大陸では。元来魔力を扱うことのできない人間しか今は居ないこの・・・
そこに油断があった、のかもしれない。
『ようこそラズマ城へ、鬼族と狗族の若者よ!といったところかな』
!?
突然そんな声が聞こえた。
姿を見られた?しかも何処から声を?かなりの声量でとても近くに聞こえたのだが・・・
『鬼族の少女よ無駄だ。私は其処には居ない』
此処には居ない?それなのに私達の姿は見られている?キョロキョロと見渡した今の私の姿を見ていなければ今みたいなことは言えないはずだ。
「貴方は何処に?」
「り、リーナちゃん、近くには誰も居ないよ?」
ロランの鼻でも嗅ぐことができない場所に居て尚且私達だけが見え、その上声が近くに居るように届く。
それはどういうことだろうか?遠視魔法?
『いくら探しても無駄だよ。私は其処には居ない。それによしんば器具を見つけたところで亜人の知能ではホウソウキキがどのようなものかは理解できまい』
器具?ホウソウキキ?
・・・ああ。
嘲笑うようなその声を聞き私は理解した。
「放送機器ね・・・喋っている貴方、貴方はモニターを通して私達を見ているの?それでスピーカーを通して喋っている、というわけかしら?」
『なっ!?・・・・・・ふ、ふふふ、何処で知りえた知識かは知らないが亜人にしては高い知能を備えているようだな』
「しかも亜人を見下すその口調、それも城中で最新の器具を使えるほどある程度以上の権限を任されているところを見ると貴方は・・・ライトニング教の敬虔な信者、それも上位の司教に近い立場、といったところかしら?」
『っ!?・・・・・・亜人、貴様はただの鬼族ではないようだな。子供のような見た目に似つかわしくもない』
「・・・人間以外の種族を見れば口を揃えて亜人と蔑む貴方達ライトニング教の人間はただの人間以下でしょうけどね」
「り、リーナちゃん?どうしたの?」
私の挑発的な態度にロランが何やら驚いている。
『・・・ふふふ、いい度胸だ亜人。追い出そうと思っていただけだったがいいだろう、貴様は私が直々に殺してやる!』
「殺すですって?貴方のように高みの見物ぐらいしかできない脆弱な人間がこの私を?やれるものならやってごらんなさい・・・!」
私は憤っているかのような口調を続けた。
『所詮は人外か。強さの尺度というものを肉体的にしか判断できないとは』
「へえ?そう言う人間の貴方の強さには何があるのかしらね。知恵?それとも知識?肉体的に及ばない貴方程度なら精々そのあたりかしら?」
「リーナちゃん・・・?」
『亜人風情が言ってくれる。其処を動くな・・・!』
それきりスピーカーからの声が途絶えた。読み通り今の人間が此処へ向かっているらしい。頭上に備え付けられているあの茶色い箱から此方の姿を認めて話しかけていたのだと思い、
「ファング」
その箱を破壊した。
「リーナちゃん何で怒ってたの?」
ロランが先程の私のやり取りや口調を訝しんで聞いてきた。
「挑発よ。ああやって感情を逆撫でしてあげればプライドが高そうなあの人間ならば自ずと此処へ来るでしょう?だから今みたいに場所も分からずに目的無く城をさ迷うよりは、そうやって出迎えに来るように仕向けたほうが楽じゃない」
何処からか姿を見られた時点で隠密に行動することは難しくなったので、私は方針を切り替えた。つまりはこの城について詳しい者を、
「亜人ども、覚悟はできているだろうな!」
誘き寄せるという。
だから、廊下正面に現れた、黄色いローブを身に纏った人間を見て私は僅かに口の端を上げた。
〜〜〜
『我が地、せせらぎとなりて彼の地に生きる者を癒し、我が地、激流となりて彼の地に生きる者を護り、
我が地、先駆けの一滴となりて、彼の地に生きる者を進めん・・・
きたるべき災厄を討ち滅ぼすために・・・』
〜レヴィアス国聖書神託の章より抜粋〜
〜〜〜
「・・・つまりは魔界より魔の者がこの大陸へやって来るということか?」
あたしはセシリー様より聞いた話を客間で説明した。羅義神人はそんなことを言ったが、
「ううん、そうじゃないと思う。この大陸に来るかどうかは定かじゃないという意味ではね」
あたしはその言を部分否定した。というのは、
「地の底より来るっていうのはこの7大陸のある世界、地上を指してるという意味なの。そうでしょ?」
同意を求めて目配せした。
『まず間違いなくそうじゃろう。つまりこむす・・・火の王が言わんとしておるのは災厄の王とやらは地の底、魔界より地上、今居るこの世界へ訪れるので顕れる場所は定かではないということじゃろう・・・』
小娘って言いかけた?・・・火の王、っていう呼び方もどうかとは思うが。
それはともかくサラマンドラはあたしが言おうとしていたことを理解しているようだ。確かにこの国、(レヴィアス)この大陸、(水の大陸)で占いを行った結果が、(来たる)というものだったため此処に来るような印象を受けるが、別にはっきりとそうとは言っていない。まあ、祈祷師のアパデンさんは間違いなくそう思っていたのだろうが・・・
「何処に顕れるかは不明だということですね姫。火の大陸にも顕れる可能性はある。その対策の話も併せ、軍事技術のお話などもありますし、やはりここは一度カグツチに帰るべきではないかと存じます」
うん、愛国忠心は素晴らしいとは思うけどねガロウ、
「え?え?さっきの光の大陸にトウヤを探しに行くっていう話はどうなったんですか!」
「大丈夫よネク。あたしはカグツチに帰るとは行ってないから。ガロウ、先走らないで」
あたしはガロウをたしなめた。
それに、仮にネクが言わなくてもトウヤ・ヒノカを探しに行くのは必須だと思うのであたしが言っていただろう。何故なら、
『災厄、ということは大規模な・・・それこそ世界を巻き込むほどの強大な何かじゃろう。確定はできんがあやつが預言の者の可能性がある以上は放っておくわけにはいかんな』
そういうことだ。
あたしも竜の預言を完全に鵜呑みにしているわけじゃないけど、どちらにせよ戦力は必要な予感はする。ことによってはニルナ・カナワも呼び戻す必要があるかもしれない。
「光の大陸か・・・数十年前になるか、そう名乗った人間の者達が火喰い島に訪れたのは」
「ジン・ガトウ?その人達は何をしに来たの」
あたしはかなり長生きの鬼族へと尋ねた。聞いたらこの大男は500歳ぐらいらしいので驚いた。
「侵略だ。勿論そんな不届きな輩は排除してやったがな」
「・・・そう。もっとも、それとは関係なくても貴方はないとして、」
誰が光の大陸に行くかを考えなければならない。
「私は行くぞ。奴にはいくつか借りがあるからな」
ミシル・タイナはそう言ったが、借りというのは自分が以前龍巣を使って行方不明になった際にトウヤ・ヒノカに探しにきてもらったことを指しているのだろう。いくつか?というのはよく分からないが・・・
「私も行きます」
リシナ・トゴウも行く、と。
「わたしも」
「貴女は無理なんでしょネク?」
「うっ」
あたしがネクを止めたのは別に嫌がらせではなく以前龍巣を使おうとした際の話を聞いていたからだ。使おうとして何らかの存在に止められた、という話を。
ということは自ずとアリナとユリナも無理だということになる。
となるとここはやはり、
「姫、もしや?」
「分かったガロウ?」
あたしの目配せに気づいたのかガロウは嬉しそうな顔をした。
つまりはガロウにトウヤ・ヒノカの探索を命じようと思ったことを。
「はっ、このガロウ・サイハ身命を賭してことに当たらせて、・・・!お待ちください!それでは姫の御身を警護する者が!?」
居ない、と言いたいところだろうが、
「大丈夫よガロウ。あたしの心配は」
あたしはそう言いながら、三名の顔を見た。
『うむ。まかせておけ。余程のことでもない限り我は小娘の傍に居る』
サラマンドラはそう言ってくれる。
・・・やっぱり小娘って言うのね。
「私も約束だからな、闘神の末裔の命には従うぞ。」
「ありがとジン・ガトウ♪それと、」
あたしはもう1人の人物の顔を見た。
「・・・心配せずともかつての友の子孫の身ぐらいは護ってみせるさ」
羅義神人はあたしを見ながらそう言った。
「私は、違うのでしょうか?」
微笑みながらリシナ・トゴウは言う。なんか表情が怖い気がするが。
「む・・・トゴウの、貴様なら大丈夫だ。闇の大陸にすら訪れた貴様ならば。それにその者がついている」
羅義神人は若干気まずそうに言った。ミシル・タイナを見ながら。その言い方ならば彼はミシル・タイナの実力を知っているのだろう。
「そ、そうですか。心苦しいですがそれならば・・・行って参ります」
これでトウヤ・ヒノカを探すための人選は決まった。ミシル・タイナ、リシナ・トゴウ、ガロウ・サイハの三名で。
・・・しかし、と占いについてあたしは疑問を1つ覚えていた。(目覚めた)とはどういうことなんだろうか、と。
災厄の王アンリ・マユという魔界に居るはずの存在は眠っていたのだろうか?
〜〜〜
『時は満ちた!ってやつかな!』
地の底にある世界、魔界にて1人の青年が上機嫌に呟いていた。
その青年はほんの少し前に地上へ出て仕上げ、とばかりにあることをしてきた。
『ようやくだね!ようやく君は自由に動き回ることができるんだね!あの陽の当たるあの場所で!』
青年が何かに話しかけている。何かに、というよりは誰かに、といったほうが似つかわしい口調だ。
あたりには誰も居ないが。
『もっとも、最初に顕現できる場所は選べないから、何処に行ったかは僕にも分からないや!だからこそ面白いけどね!』
青年の独り言は止まらない。まるで永年やってきた苦労が報われたかのようなその口調は青年にとって今この瞬間がどれほど待ち望んだ事柄かを推し測れるほどだった。
『まあ、高みの見物と洒落こもうっと!』
青年が顔をぐにゃりと歪めながら遠くを見るかのように目を細めた。
〜〜〜
「じゃあ言うぞイヅナ?」
「うん。まかせる」
俺とイヅナは再び鉄の建物の地下広場に来ていた。
しかし、
「あいつらはあれでよかったんだろうな・・・」
俺はひとりごちた。あいつら、というのはミスミとタウラのことだ。俺はあの2人に龍巣について説明しイヅナを送るためにそれを使う、と言った。最初は乗り気だったが、行き先が光の大陸と知ったあたりから急に行くのを止めると言い出した。まあ何となく分かるが・・・で、結局あいつらは筏なり船なりを造って地道に島を出る、という結論に落ち着いた。
アサエに関しては龍巣に対抗心を燃やした、というのか、自分が造ったわけでもない移動手段なんかは使わない!と言い放っていて今後も当分この上で研究を進めていくらしい。この島や大陸を全て見たわけじゃないので俺もまだ此処に居たいとは思ったが、イヅナのこともあり俺自身もいきなり消えて他の奴を心配させているのではないか、と思い一旦帰ることにした。近いうちにまた此処に来ようとは思っている。まあその前に寄り道するけど。
イヅナと一緒に、
「龍巣よ、光の大陸へ導いてくれ!」
俺がそう言うと地面の文字が光だした。
「わわっ?」
いつか味わったその感覚に身を委ねながら、俺はしかしと疑問を覚えた。
それはイヅナを此処に閉じ込めた、いや連れてきた奴の目的についてだ。
いやそもそも、こいつを監禁するなら穴だらけじゃないか?自由に歩き回れるし、その気になればこうして転送もできるし、いったい何のために・・・
そこまで考えたところで身体が何処かへ引っ張られる感覚を味わった。
そして、1つ思い出したことがある。それは、ミスミに槍を返して、
〜〜〜
〜???の大陸〜
かつて自分はこの世界に存在していた。
しかし意識的に、また無意識に地形を変えたり生命を奪ったりする自分を見かねた者達が力を合わせて自分を地の底の世界へと追いやった。ほとんど全ての力は自分には通じなかったが唯一自分を傷つけた力があった。その力によって自分は刹那怯みその隙を衝かれて地の底へと追いやられた。光無き世界へと・・・
その世界にて自分はひっそりと漂っていた。漂って漂い続けて、それが永劫続くものとしか思えないほど漂っていた、そんなある日・・・あの者が話しかけてきた。あの世界を統べる存在が。
▽▽▽
『君は戻りたいと思わないの?』
自分に話しかけるそれはしかし、見るからに矮小な存在だった。そう、まるでかつて自分が居た地上世界における大多数の生物のような。だから自分に話しかけられても答えるはずもなかった。
・・・我はもう戻れない・・・
しかし自分でも何の気紛れかその存在へと答えていた。
『へえ!戻れないって、君ほどの存在が何でまた!』
・・・あの場所は薄いもの、しかない・・・
『薄い?・・・・・・ああ、だったら濃くすればいいんじゃないかな!』
・・・何を、言っている・・・
『だーかーらー!魔力のことでしょ!君は地上の魔力が薄いから今の自分の状態じゃ行くことすやままならない、とこう言いたいんでしょ!』
・・・そのとおりだ、だが・・・
『だったら話は簡単さ!魔力を濃くしてあげるよ!』
・・・お前は何者だ・・・
『僕?僕はね、』
△△△
自分があの世界の統括者に話しかけられてどれだけの年月が経ったのか。それは定かではない。
だがこうして肉体を持ち、この地上に来ることができた。それは確かだ。そしてもう1つ確かなことがある。それは自分が意識だけの存在になっていた間、片時も忘れることのない感情だった。
『火炎の牙を持つ存在を赦すまじ・・・・・・』
背から翼の生えたその者はそう呟いた。




