第54話〜鉄壁〜
そういえばこいつが言っていたんだっけ?鉄島がどうのこうのと。
俺はその場に居る小柄な女とは対照的にやたらと身体のでかい牛面を見ながら以前鬼ヶ島でこいつと相対したことを思いだしていた。
「こ、こ、こ、こ、こ、」
?目の前の牛面が口をすぼめて言うが、こいつは何を言っているんだ?
「タウラッ!てめえは牛の分際でいつから鶏の泣き真似をするようになりやがったっ!」
ああ。そういやこの牛面はタウラ、とか言ってたっけ。にしてもあのミスミとかいう奴の言うとおりこの牛面は前に会った時は普通に喋ってたような・・・
「こいつだーっ!我を以前斬り捨てたのはーっ!」
と、思っていたら牛面・・・タウラが俺を見ながら急に叫んだ。
「あぁ!?てめえはそんなに小さい人間の子供にやられたのか?情けねえな!」
ミスミは俺とタウラを交互に見ながら言う。ていうかお前のほうが小さいだろ!と俺は思わず突っ込んだ。
「ぬぐぐっ。貴様またしても我に暴言を・・・!全く貴様という奴は他者への敬意というものが欠けている。それに我や我の一族は貴様の大得意の取引相手にも関わらず礼儀も何もあったものではない。いずれ貴様には我の有り難みを分からせてやらねば・・・!いや今はそれどころではない!おいっ、人間!」
「・・・何だ牛面?」
タウラがミスミのほうを向き何やらぐちぐち言っていたが、此方を向いて話しかけてきたので俺は答えた。どうでもいいがこいつは相変わらず牛みたいな見た目なのにべらべらとよく喋るな・・・
「貴様が何故こんなところにいる!?」
「何故って言われてもな・・・逆に俺が聞きたいんだが」
「戯けたことを!だがこれは千載一遇の好機!あの時の借りをここで返してくれる!」
と、牛面が此方に対して身構えた。背負っていた二丁の斧を両手に掴んで。
「お前も懲りない奴だな?まあ、俺が此処に居てお前が何故か目の前に居るっていう状況よりもよっぽど分かりやすいが」
武器も何も持っていないが、こいつぐらいなら素手で何とかなるんじゃないかと思い俺は徒手空拳での構えを取った。こんなことなら炎で焦げたサラマンドラに水渇刀を渡すんじゃなかった、と軽く思いながら。
「ぬっ?貴様あのカタナはどうした?」
「ああ。今は知り合いに預けてるんだ」
目敏く俺の無手に気づいたタウラが指摘した。
「けど、これぐらいで丁度いい戦いになるんじゃないか?」
「なっ!・・・貴様っ!殺すっ!」
ブォンブォンブォンブォン
俺の挑発に乗ったタウラが両手の斧を振り回してきた。
武器を持ってない今の俺はそれを避けるぐらいしかできない。以前よりも多少腕を上げたのかこいつ?
「はっはっはっ!大口を叩いた割には手も足も出せないではないかっ!我にしたように貴様も真っ二つにしてやろう!」
斧を避けるだけで防戦一方の俺の動きを見てタウラは調子に乗って喋っていた。
「ああ。お前の攻撃は相変わらず単調だな、と思ってただけでな。それにただ避けてるだけでもないさ」
「何を!」
さらに俺の挑発に乗ったタウラの攻撃、斧の軌道はますます単調になった。上下左右上下左右の繰り返しって・・・まあ見るからに重そうなあれを振り回したら技も何もなくなるのかもしれないが。
「避けるのも飽きた・・・いくぞ!」
俺はオーラを高めて身体を強化し斧を掻い潜ってタウラに突進し、突き蹴りの連撃を繰り出した。
ドカッバコッ
ドンッ
「っ!?き、貴様!」
ズザザザ
タウラの牛面や土手っ腹に俺の手足が当たり手ごたえはあったが、丈夫なのかさすがの巨体と言うべきかあまり堪えた様子はなく奴は少し下がっただけで踏み止まった。
「グハハハ!非力なり!以前我が斬られたのはやはりあの武器のおかげだったか!」
自分のほうが優勢と見たのかやたらと上機嫌にタウラは言う。
「・・・まあ俺の武器が良かったっていうのは否定しないけどな。はぁぁぁぁぁ!」
俺は今の一連の動きで隙を見つけて拝借した洞窟の壁に掛かっていた一本の剣にオーラを込めた。
「なっ?貴様いつの間に剣を!?」
「たった今さ!はあっ!」
ブシュッ
俺は踏み込んで一瞬で近づいたタウラの右腕を斬りつけた。
「ぐわぁぁぁっ!」
「また、俺の勝ちか?」
しゃがみこみ右腕を押さえるタウラを見下ろしながら俺は言った。
「くそっ!貴様ぁ!」
「まあお前は、」
「新・二丁板斧を見くびるな!形状回復!」
!?
タウラがそう叫んだ瞬間、パァァァッ、と奴の持つ二丁の斧が光りだし、俺がつけた傷がみるみる塞がっていった。
魔法ってやつか?
「お前?そんな能力があったのか?」
「グハハハハ!そうだ!と言っても別に我の力ではない!我の持つこの新・二丁板斧の新たなる力のおかげだ!」
新・何とか?つまりこいつの持つ斧は新しくそういう能力が身に付いた、ってことか。武器に新しい能力が付くなんて、そんなことがあるのか?
「それはこの私が造ったものだぞタウラ!そんなことよりもちょっと待て!」
俺が感心しながらタウラが掲げている2つの斧を見ているとそんな怒鳴り声が聞こえた。
「むっ、何だミスミ!これからが我の反撃、」
「うるせえ黙れ!私はそいつに聞きたいことがあるんだ!」
勝手におっ始めやがってこの単細胞とかこのぼけ牛とか何とか、ミスミという奴がタウラに文句を言っていた。
何だこいつら?仲間かと思ってたが仲が悪いのか?
「おい、お前!」
先程まで上機嫌だったのに何故か急に項垂れたタウラから目線を此方に移し変えたミスミという奴が今度は俺に怒鳴ってきた。
「何だ?えーと、ミスミ?」
「!?だ、誰が気安く私の名前を呼べと言った!殺すぞてめえ!」
「ええっ!?」
俺もタウラに倣って呼んだだけなのに何でこいつは急にキレたんだ?しかもこいつはさっき自分で名乗ってたからそう呼べということだったと思ったんだが・・・
「ごほんっ・・・まあいい次に勝手に私の名前を呼んだら殺すとして・・・・・・おい人間!お前に聞きたいことがある!」
「何か聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが・・・それはともかく何だ、聞きたいことって?それに人間ってお前も人間じゃないのか?」
俺が言うとミスミは僅かに目を見開き、
「お、お前!?私が人間に見えるの、か?」
と聞いてきた。どう見ても人間に見えるぞ、小さな・・・と言いかけたがこいつのキレやすそうな性格を考慮して何となく思ったことを言うのは止めておいた。
「あ、ああ。違うのか?」
「人間にも変わった奴が居るもんだ・・・・・・」
ミスミという奴が何やら考え込んでいるが。
「で?お前が聞きたいことっていうのは何だ?」
話が進まないので尋ねてみた。
「はっ、違う!・・・私を陥れようとするとは恐ろしい奴だ!」
「いや・・・何もしていないんだが・・・」
「私は騙されん!人間!お前に聞きたいのは、お前がーーーーーー」
俺はようやく本題に移ったその質問を聞いて、暫く考えた。
・・・こいつの話から分かったことは俺は素の大陸に来ているらしい、ということだった。素の大陸の中にある島、鉄島か。
それにこいつは、
「どうした人間!私の質問に答えないか!いや、人間というのも呼びにくいな・・・お前の名前は何だ?」
「俺の名前はトウヤ・ヒノカだ。火の大陸出身でさっきまで水の大陸に居た・・・筈なんだが。それとお前の質問なんだが、」
俺は未だに項垂れているタウラを横目で見ながら、名前を呼ぶと何故か怒りだすミスミの質問へと答えてやった。
〜〜〜
「ーーーーーーというわけだ」
「・・・つまりトウヤ・ヒノカが目の前で消え去る直前に魔力の高まりを感じた、というわけね?」
あたしは遠くに見えていた、何処からともなく現れた人物と共に忽然と姿を消したトウヤ・ヒノカの行方を近くに居合わせた羅義神人に尋ねた。何故かサラマンドラはやけに興奮しておりガロウに聞いてもいまいち要領を得ないからだ。
「それにしても目の前で人が消えるなんて・・・」
龍巣みたいなものがあれば瞬間的に移動は可能だとは思うが、こんな平原でどういう力、現象が働いたのだろうか・・・
「・・・遠目で確信は持てないがおそらく私はあれと似たようなものを見たことがある」
と、あたしが先程起きた出来事を考えているとそんな言葉が聞こえた。
「ええと・・・貴方はいったい誰だっけ?」
先程あたしが話を聞きそびれたその金髪の青年に尋ねると、
「貴様はシエル・スサノオ、だったか・・・私は今は亡きウォルス国王宮護衛騎士ミシェール・オルレアン。もっとも、現在はミシル・タイナと名乗っているがな・・・」
「そう・・・それで貴方が見たことがある、というのは?」
「そうだな・・・それはウォルス国が崩壊した日に遡るのだが、ーーーーーー」
ミシルという大柄な金髪の青年は数ヵ月前にこの国と自身に起こった出来事を語りだした。
・・・その内容は苛烈、としか呼べないものだったが・・・
「一夜にして消滅・・・・・・でもつまり、その日貴方が此の国から火の大陸のイグナあたりまで一瞬で移動したのはその、」
「転送魔方陣、と奴は言っていた。同じものならばトウヤも私と同じく何処かの大陸に飛ばされたとみるべきだろう・・・」
成程・・・魔導というものは凄まじいものらしい。人が一瞬にして遠くへ移動するなんて・・・
「じゃ、じゃあトウヤは無事なのねミシルさん!」
と、それまで黙って話を聞いていたネク・カナワがミシル・タイナの胸ぐらを掴む勢いで詰め寄った。
「あ、ああ・・・死んだわけではない、という意味ではだが。そ、それより離せカナワ・・・」
勢い余って実際に胸ぐらを掴まれていたミシル・タイナが苦しそうに言っている。
「どういうこと!結局トウヤは無事なのっ?」
「ふう・・・サラマンドラ、と言ったか?その者は今何を持っている?」
掴まれていた手を離されたミシル・タイナが未だに興奮しているサラマンドラを指し示した。
それを見たあたしは、
「・・・ああ。そういうことねミシル・タイナ?」
「そうだ。つまり今、トウヤはほぼ丸腰だ。何処の大陸に居るかは知らんがその状態で竜に相対するのは厳しいだろう・・・」
ミシル・タイナはつまりこう言いたいのだろう。
仮にトウヤ・ヒノカが何処かの大陸に転送の魔法とやらで飛ばされたとして、此処に帰ってくるためにはその大陸の龍巣を見つけ尚且其処に存在しているだろう竜を説得、もしくは倒して龍巣を使うためには丸腰では厳しい、と。もっともさっきまでガロウと試し合いをするために木剣ぐらいは持っているだろうが。
あたしはトウヤ・ヒノカの得物である赤い鱗のようなものと刀を持っているサラマンドラを見てミシル・タイナの言に納得した。
〜〜〜
「・・・聞きたいことは大体聞いた。だからもうお前に用はない。と言いたいところだが、」
俺は目の前のちびっこが偉そうに俺に言うのを何とはなしに聞いていた。タウラはようやく立ち直ったのか?俺と同じくちびっこの話しに耳を傾けている様子だが・・・ちなみにこのちびっこは鍛冶師らしい。
「気が変わった!お前には私の作品を呉れてやる!」
ちびっこ・・・ミスミ・デンタはだが何を思ったか急にそんなことを言い出した。
しかも何でこいつは笑顔なんだ?
「な、何を言っているミスミ!?そいつは我の敵だぞ?それに貴様の嫌いな、」
「うるせえタウラッ!これは私が決めたことだっ!」
タウラが慌てて言ったが俺もそう思う。タウラは俺が前にぶった斬ったのでまず間違いなく俺を恨んでいるだろう。何で今ぴんぴんしているのかはよく分からないが・・・それでもさっきの戦いはミスミが介入してきて気づいたらうやむやになっているが、俺を恨んでいるのは変わらない筈だ。そのタウラと仲間っぽいミスミが自分が鍛えたものを俺に呉れるのは何でなんだ?わけが分からない・・・
「というわけだトウヤ。此処にある物からどれでも好きな得物を選べ!」
ミスミが壁に掛けてある大量の武器を指して俺に言うのだが、
「・・・まあ、呉れるっていうんならもらうけど。でも何でだ?その牛面、タウラ・ミノスの言葉じゃないが俺はお前らの敵になるんじゃないのか?」
いまいちこのちびっこの変心が腑に落ちずに尋ねてみたが、
「いいんだ。私はお前が気に入った!それに今の戦いを見たからな。お前の腕なら私の作品もよりその力を発揮できるってもんだ!だからお前ならあるいは・・・」
何故か機嫌が良さそうに言う。こいつが急に機嫌が良くなったのは俺がこいつの質問に答えてからぐらいからだから、さっきのあの話の中で何か思うところがあったのか?
それはともかく、
「そうか。まあ俺も今は丸腰だから武器をくれるってのは願ってもない話なんだが、」
「そうはさせるか!我は貴様に借りを返す!」
やはりこいつは納得がいかないのかタウラが俺に突っかかってきた。
「やめろ、タウラ!お前と違ってトウヤなら可能性があるだろうが!」
「!?・・・・・・ミスミ、貴様それは本気で言っている、のか・・・?」
「当たり前だ!私が冗談でそんなことを言うか!・・・それに、もし上手くいけば私だけではなくお前や他の奴のためにもなるんだぞ!」
「ぬうう・・・・・・確かに我では及ばなかったのは紛れもない事実だが・・・」
「だろ?だから私の言う通りにしろ。トウヤに手を出すんじゃねえ!」
?こいつらは何を言っているんだろうか?話の意味が分からん・・・
「なあ?お前らは、」
あまりにも意味が分からなかったので俺はミスミに尋ねようとした。
「・・・私のことはミスミでいい。そう呼べ」
!?
何だこいつ?さっきは名前を呼んだら殺すとか言ってたくせに、どんな心変わりだ?やはりそれも先程こいつの質問に対する俺の答えによるものだろうか・・・兎に角、
「分かった。それで、ミスミ達は何のことを言っているんだ?俺なら可能性がどうのとか、いったい何の話なんだ?」
「そうだな。何から説明するか・・・・・・まずトウヤ、お前が此処にいきなり現れたことがそもそも通常ではあり得ないことなんだ・・・というのはな、」
ミスミが何やら説明しだすとタウラは何か苦いものでも食ったような顔をして頷いていた。
▽▽▽
鉄島・・・素の大陸の東部に位置するその島は純度の高い良質な砂鉄が採れる場所で名を知られており、そこに住む者は全部で約1万人程度だと言われている。またその島の地面を構成する物質は他の土地に比べ比類なき硬度を誇り、その硬度により鉄のように硬い島、通称鉄島と呼ばれるようになったと1説には言われている、らしい。そしてその島の外周には・・・
△△△
「鉄の壁?」
ミスミの話によると脱出・侵入が不可能なようにこの島の周りを取り囲むように鉄の防壁に覆われているらしい。その防壁は途切れ目がなく長さは五百km以上、その高さは百m以上はあるとか。
いや、どんな規模の壁だ。それに誰が何の目的でそんな大仰なことをやらかしたんだ。
「もっとも以前このぼけ牛は召喚契約とやらを結んでいたらしく気づくと居なくなったり、勝手に戻ってきたりしてはいたがな」
ミスミがタウラを見ながら言う。確かに前にこいつはいきなり現れたような・・・そう言えば!
「お前はデュカ・リーナと召喚契約ってのを結んでるんじゃなかったのか?」
思いついたことがあったので俺はタウラに聞いた。
「ああ・・・我はあの方と契約している、していたと言うべきか・・・」
何やら落ち込んだようにタウラは言うが。
「だよな?少し前にデュカ・リーナに会った時もそう言ってたんだが、あいつが召喚の契約が全て切れているとか言っていたのにまだ召喚っていうのはされるのか?」
「いや、一度契約が途切れたので召喚は・・・!貴様?今何と言った!?」
「えっ?だから召喚の契約が切れているって聞いたって、」
「そうではないっ!会ったと言ったか、デュカ・リーナ様に?い、いつの話だっ?」
「あ、ああ。何でお前が驚いているかが分からないが会ったぞ。あれは、今日じゃないな・・・もう昨日か?」
闇の大陸で別れてそれから水の大陸に戻って、今此処に俺は居るがあれから1日は経っているだろう。
「昨日だと・・・我との召喚の契約が切れた後ではないか・・・」
タウラは何故か呆然としているが、
「あと、あいつは別れ際に言ってたな。これから召喚の再契約をしにいくとかなんとか」
「再契約・・・・・・つまり生きておられたのだな?」
「逆に何故あいつが死んだと思ってたのかが分からないが・・・」
「フンッ。貴様には関係ないことだ!」
「てめえ!話の邪魔をすんじゃねえ!」
「それよりミスミ?この島の外周の抜けられない壁って誰が何のために造ったんだ?」
「ぼけ牛が、てめえの話なんぞ・・・ん、何だトウヤ?」
ミスミが何やらまたタウラに文句を言っていたが、それを気にせずに俺は尋ねた。
「だからな?その高くてやたらと長い鉄の壁ってやつの目的はいったい何なんだと思って。それにそんなことをやろうと思ったら膨大な人手と年月が必要になるんじゃないのか?」
「まあ普通はそう思うよな・・・でもトウヤ、あの壁は気づいたら島の周りにあったんだ」
「?気づいたら?つまりいきなりその壁が現れたってことか?」
「そうだ。だから私にもこの島の住民にもどういう目的で誰があれを造ったのかは分からない」
「・・・?ミスミの話だと物理的な侵入や脱出は無理っぽいが、何で俺は此処に来れたんだ?」
実際に見てはいないが、要はこの島は隙間のない鉄の壁で空からも海からも地上からも外と遮断されているらしい。俺はどうやってこの島に来たのだろうか?デュカストテレスが転送魔方、とか何とか言ってたから龍巣みたいな感じで移動した、のか?
「まあ、忙しないこのくそ牛のおかげで1つの仮定はある。そしてトウヤ、お前が現れたことでその仮定は確信に変わったのさ」
「分かった。つまり魔法でならその壁とやらを抜けるのは可能ということだな?」
「そういうことだ。それでトウヤ?お前にやってもらいたいことがある。それは、」
と言ってミスミは俺の強さを見込んであることをしてくれないか、と頼んできた。
「・・・成程な。それで俺に武器を呉れるっていう話になるわけか」
「そういうことだ。あっ、だけどお前が信頼できそうな奴っていうのが分かったから話すんだぞ!別に強けりゃ誰でもいいってわけじゃないんだからな?」
何故か慌てたようにミスミは言うが、要は俺と話して害意がないということが分かったからだろう。自分の味方になる、みたいな雰囲気を感じたとか。それだけのことで、そんなに慌てなくてもいいと思うのだが・・・
「まあお前の言いたいことは分かった。じゃあ俺はその(テツジンノマ)っていうところにいる奴をぶっ倒せばいいんだな?」
「そうだ。だが気をつけろよ?この弱牛では1分と持たないほど強い奴だったっていう話だ」
「・・・・・・」
何かを言いたそうなタウラを尻目に俺はその作業場にある使えそうな武器を調べてみることにした。
・・・どうでもいいがミスミのタウラに対する呼び方がどんどん変わっている気がする。
その作業部屋で俺は暫く壁に大量に掛かっている武器を眺めたり触ったりしていた。
うーん・・・・・・どれもこれもカリュウ村にあった万屋に置いてあるよりは良い物だとは思うんだけどな・・・何かしっくりこないな。
そこにあった剣やら槍やら斧やらはいまいち手に馴染むような物が無かった。
よく見れば布団とか机とか生活用品もあるな。
「此処で暮らしてるみたいだけどミスミはいつから此処に居るんだ?」
ふと興味が湧いたので俺は黒い髪がやたらと長いちびっこに尋ねた。
「私か?そうだな・・・・・・30年ぐらいか」
「えっ!?ミスミって何歳なんだ?」
こいつは何なら俺よりも若いと思うぐらいの見た目なので俺は思わず聞いた。
「そうだな・・・50歳をいくつか過ぎたぐらいか?」
!?
どう見ても50過ぎには見えないんだが・・・?
「何を知りたいのかは知らんが私はドワーフだからまだまだ若いほうだぞ?」
「ドワーフ?」
「そうだ。身体が衰えて老化するのはあと100年ぐらいだから心配は無用だ」
?何の心配かはよく分からないが・・・
それはともかく、俺はミスミが最初俺を見て人間という種族で俺を呼んでいた理由がやっと分かった。




