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第53話〜転送〜

闇の大陸で初めて会い尚且交戦した見知らぬ人間、フェン・クレアス。その少年が何かを呟くのを私は聞いた。



「今貴様は風がどうとか言ったか?」


私が尋ねるとフェン・クレアスは、


「き、聞こえてたんだミシルさん?」


「ああ」


「えっと、俺がそう感じただけで根拠はあまり無くて俺の主観的なものなんだけど、」



風が哭いているように聞こえた、と言う。



「ふむ?」



それがどうしたのか分からない私はそう答えるしかない。



「つまりね、」



クレアス自身もよく分かっていないのかその説明はいまいち理解し難かったが、要約するとこうだろう。

曰く、このフェン・クレアスのように風の大陸の者は自身に感じる風の感情らしきものを感じ取ることができるということ。その感情らしきものの種類で天候や近付くものの気配を感じ取る、と。そして奴が今感じた風の感情らしきものは、


「嘆きみたいなもの、か?それだとどうなる?」



「い、いやどうなるってほどでもないんだけど、あまり感じたことのないものだったから、」



良くは分からないと、クレアスは言う。



成程、大陸が違えば文化や人が持つ能力とやらも差異があるものだな、と私が何となく納得していると、



「面白そうな話ね?」


傍らに居た少女が話しかけてきた。



「貴様は、」


「あたし?あたしはシエル。シエル・スサノオよミシル」



少女が笑みを浮かべながら私に言った。

「そうか。先程からの話を聞く限り貴様がこの場で一番権限があるようだな?」


「ええ。それよりも貴方は以前アズト・ミタラと共に行動していなかった?」


「何を知っているかは知らんが、その通りだ」


「そう。彼は今何処に?」

「奴は商売熱心な男だ、と言えば分かるか?」


「?・・・ああ。つまり此の大陸で、」



私はアズトの現況をシエルと名乗った少女に話した。


「そう。では貴方達と一緒に居れば彼に会えそうね」

「それはそうだ。私が言えた義理ではないが合流する手筈になっているからな」

「じゃあ、」



と、少女が言いかけた時に、



!!?



私はあたりに満ちる凄まじい魔力を感じた。





〜〜〜





「ってわけだ」



俺がガロウに説明したのは魔力や魔石についての大まかなことについてだ。



「そんなものが・・・魔力を生み出す石・・・」



「まあ、聞いた話だと誰にでも扱えるものでもないらしいけどな。それに神人やミシルがそれを手に入れたのは偶ぜ、」



俺がそこまで言いかけたとき、あたりに生暖かい風が吹いた。




『やあ!初めまして!』



そして、気づけば見知らぬ青年が目の前に立っていた。



「お前は・・・?」


俺はその青年から発せられる嫌な雰囲気に疑問を覚えた。



『僕のことかい!君に会えて光栄だよ、トウヤ君!』


「!?何で俺の名を?」



というか、こいつの嫌な雰囲気は魔力か!



『あれ!知らないのかい!一部では有名だよ、君の名は!というより、』



火ノ牙という名は、とその見た目は人間の青年は言う。



「いや、一部って何処だよ?それにお前はいったい何者なんだ?」



『僕かい!僕の名は、』



青年がそこまで言いかけたとき、



ゴォォォォッ



紅い炎が青年の後へと迫っていた。そして青年は為す術もなくそれに呑み込まれた。


俺は呆然とそれを見ていたが、



『其処から離れろ!』



いつの間にか俺達に近づいていた子供、サラマンドラが俺とガロウに向かって叫んでいた。



「サラマンドラ?どうし、」



獄炎(ヘルブレイズ)



俺が尋ねようとしたら紅い炎の中から真っ青な炎が現れて今度はサラマンドラを呑み込んだ・・・!


「「サラマンドラ!」」


それを見た俺とガロウは同時に叫んだ。

サラマンドラが青い炎に包まれて、



「そうだ!」


俺は思いついて腰に差していた刀を振った。


シュバッ



案の定サラマンドラにまとわりついていた青い炎が消えた。水渇刀の力で。


「でも今の炎は?」



俺は身体が焦げたサラマンドラを見ながら後を振り返った。



『ふーん?ドラグノフ君が言ってたこともあながち外れてはいないのかな!』



すると、突然現れた青年が妙ににやついていた。

こいつもさっき炎に包まれてたような?炎が何処かに消えた?



「何者だ、貴様!」



『えーと、君は?』



横からガロウが青年に怒鳴った。



「この魔力は?お前は魔物なのか?」



見た目は人間だがミシルみたいなこともあるかもしれないと思い俺はそいつに聞いた。



『魔物と言えば魔物かな!僕は、』



『火焔竜っ!!』



と、その時横からそんな声が聞こえたので見ると、



グォォォォォォッ!



凄まじく巨大な赤い炎が青年に向かっていた。竜みたいな形?をした炎が。



『火竜君は全く!』



青年が言いながらその両手を自分の前に突きだし、


シュバッ!!



「なっ!?」



その巨大な炎の竜が消えた。まるで水渇刀を使ったように。



『ぬう!やはり炎では通じぬか・・・!』



「サラマンドラ?あいつを知ってるのか?」



『奴こそが、真なる魔の始祖・・・!』



「えっ?それってさっきサラマンドラが言ってた、」


『デュカストテレスじゃ!』



青年を睨みながらサラマンドラは言った。




〜〜〜




私はその魔力を感じた瞬間、無意識にヒノカ達のほうへと駆け出していた。

それはまるで私の中にあるかつての記憶に導かれるように。

私よりも先に駆け出した少年に倣うように。



そして、近づきその魔力の主を視認した瞬間、嗚呼やはりなと得心した。

この存在は、



「何故此処に?」



私は見た目だけは人間のその青年へと尋ねた。


『勿論!君に会いにだよ神人君!』



その青年、デュカストテレスは私にそう言い放った。


「私に?何故?」



青年がそんなことを言ったからだろう、その場に居た他の者はきょとんとしている。



『ふふん!僕が分からないとでも思ったのかい!君が』



力を失ったことを、と言った。



「・・・確かに私は魔の力を失っている。だが、それでは私の質問の答えになっていない・・・!」



『おや?君は取り戻したいとは思わないのかい?君自身の力を?これで!』



言いながら青年が何処からともなく黒い石を取り出した。



「っ!?」



あの時・・・あの闇の大陸にて身体を乗っ取られた私に向けて放たれた魔法、その何らかの作用により私と邪龍の身体は分離した。その際に体内に存在していた魔力という魔力が全て消え、おそらく魔力によって形成されていた邪龍の身体のみ消滅した。と同時にそれまで扱えることができていた魔力すら私の身体から消え去った。つまり今の私はオーラの闘法以外は並程度の実力しか持っていない。

だから、強さに拘る私にとってその青年の言葉ははまさしく悪魔の囁きと言えるものだった。



「魔石、だと?」



『そうさ!君には馴染みの深いものだよね!さあ!』


青年は此方に手を差し伸べて、何故か顔を歪めてそんなことを言うが、



「・・・私はもう二度とそのようなものに頼らんと誓った!力は手に入るが大切な何かを失うものには!」


そう。失った人の心、その所為で失った欠けがえのない友・・・

そう思い青年の申し出を突っぱねると、



『そっか。なら!』



と私からそっぽを向き、



『君はどうかな!』



別の者へと声をかけた。その者の名は確か、



我郎砕刃(がろうさいは)君!』



そんな名前の火の大陸の者だった。





〜〜〜





ガロウ?


俺は突然現れた青年と気づけば俺達の傍に近づいていた神人が何やら話しているのを警戒しながら見ていた。

あの青年、サラマンドラはデュカストテレスと言っていたが、青年とサラマンドラがいきなり互いに炎を撃ち合う状況はいったいどういうことかを考えていた。先程のやり取りを思い返してみるとサラマンドラが不意討ちで攻撃をしたように見えたがあいつに対して何か恨みがあるのだろうか?世界の平和のために止めなければならん、とか言っていたがそれにしても今も憎々しげに睨んでいるのは、それだけではなく個人的な恨みがあるのではないか、とも思える。



しかし今はそんなことを考える前にあいつが何故かふらふらとデュカストテレスに近づいていったことを気にしたほうがいいかもしれない。

あいつというのはさっきまで俺と力比べをしていた、


「やめろガロウ・サイハ!」



神人が今、叫んだ人物だ。


『我郎君!君は力を欲しているね!強くなりたくないのかい!』



「あ、ああ・・・こ、これが力を授けて、くれる石・・・」



ガロウが先程した俺の話から判断したのかどうかは分からないが、あいつが今デュカストテレスから受け取った物がどうやら神人の言っていた魔石というものらしい・・・



『そうさ!それさえあれば君の願いは叶うよ!君の夢じゃないのかい、最強になるのは!』



「乗せられるな!」



神人が言いながらガロウへと飛びかかった。



『今良いところだから邪魔しないでくれるかな!』



バンッ!



「!?」



デュカストテレスが手を軽く振ると何故か神人が吹っ飛んだ・・・?

ほぼ同時にガロウへと近づいていた俺も同じく吹っ飛ばされた。



「剣鬼殿!トウヤ君!」



『さあさあ!そんなことよりも早く願うといいよ!簡単なことさ!』



「く、しかし・・・」



ガロウは怪しんでいるため躊躇っている。



『また君か!しばらく眠っていると良いよ!』



ブワッっという音がしていつの間にか近づいていたサラマンドラも吹っ飛ばされた。今何が起こった?

それよりもあんな怪しい代物を、



「取り敢えず壊す。牙!」


バキッ!


俺はガロウが手に持つ黒い石を持っていた木剣を伸ばして叩き割った。



「あ・・・」



ガロウは呆然としているが。



『あーあ、さっさとしないからチャンスが無くなっちゃったよ!』



「チャン、ス・・・?」



『そう!君が最強になれるチャンスさ!実に残念だ!でも、』



と、デュカストテレスは俺のほうを向き、



『そんなことを嘆くより僕のデュカストーンを壊してくれたお礼をしなくっちゃね!』



デュカストーン?あの魔石のことか?



「へえ?あの石はそんなに大事なものだったのか、デュカストテレス?」



俺は挑発的に言ってやった。というか魔物みたいなこいつと普通に喋れているのは何故なんだろう?



『僕の名を?ああ火竜君か!いや、そうでもないさ!あんなものはいくらでも造れるからね!重要なのはあれを壊された結果よりも、壊すという行為に至るその思考のほうだからね!』



「いや、あんな怪しいもん誰でも壊すだろ?」



こいつは何を言っているんだ。



『ふふん!人の身でそれを・・・まあ、いいや!兎に角僕のお礼を受け取ってもらおうかな!』



「それも怪しいから断る」


あんな人の心が無くなるようなものを造る奴のお礼なんて要らないので俺はそう答えた。



『まあ、そう言わずに!うーん、どんなお礼がいいかな!』



俺の言うことなどお構い無しにデュカストテレスはそう言った。顔をぐにゃりと歪めているが笑っている、のだろうか?



『そうだね!君に恨みを持つ存在に会わせてあげるよ!』



!?

デュカストテレスが言うと同時に俺の足元に光る文字が浮かび上がってきた?



「何だこりゃ!?」



『転送魔方陣さ!じゃあね!』



「転送魔方じ」



フォンッ



それは何だと尋ねようとした瞬間身体が何かに引っ張られる感覚を味わった。





〜〜〜





「ヒノカ!?」



私は眼前で突然消え去ったかつての友の末裔の名を思わず叫んだ。見れば奴が居た跡形もない・・・



「貴様いったい何をした?」


私はかつて私を闇に堕とす切欠になった存在へと尋ねた。



『んー?そうだね。彼には期待してるってところかな』



「何を言っている?まさか消滅した・・・殺したのか、奴を!」



『まさか!僕は基本的に人間界の生物は殺さないよ!因果の理が狂うからね!それにあの人間を殺すのは勿体無いでしょ!』



「何を・・・?」



『まあ君には分からなくて良いことだよ!本当の強さを手に入れた君には!それよりもデュカストーンが壊れちゃったから用事が無くなったな。帰ろうっと!』


「なっ!?待て!貴様はいったい何をしに、」



『ベストは君にまた役割を果たしてもらおうと思ってたんだけど、もういいや!代わりも見つかったし!じゃあね!』



魔力の奔流?

転送する気か?



「!何のことだ!?それにまだ聞きたいことが!」



『1つ教えておいてあげよう!君が何故生まれた時代から現在に来たのか、その意味を良く考えてみるんだね!』



「なっ!?それは貴様が私に!」



『おっと、喋りすぎかな?じゃあね!』



生暖かい風が吹いた。


そしてその場に青年、デュカストテレスの姿は無かった・・・



私がこの時代に来た意味・・・私が手に入れた本当の強さ・・・


分からないことばかりを言い残してデュカストテレスは去っていった・・・



『くっ。やはり強力な魔力の持ち主・・・』



「サラマンドラ、とか言ったか。どうやら貴様も奴に因縁があるようだな?」

私は強力な魔力を持った少年へと話しかけた。



『そうじゃな・・・しかしそんなことよりも今は、』


「そうだな・・・」



私は血相を変えて此方に近づいてくる少女の顔を見ながら嘆息した。





〜〜〜





ブワッ


ドンッ!




痛ててて・・・


俺は硬い何かにぶつかった感触を味わい、顔をしかめて呟いた。



此処は?

俺はさっきまでデュカストテレスとかいう魔力を持った奴と話していたと思ったが。


此処はどう見ても先程まで居た平原ではなく、



「洞窟?」



何かだだっ広い洞窟のような場所に居る・・・?



「いや何処だよ!」


辺りに誰も居ないが思わず突っ込んだ。1人で。



「でも、只の岩にしてはやけに硬かったな・・・」



俺は先程味わった感触を思いだし、それから思いついて腰に差していた木剣を抜いた。

・・・そう言えば俺の得物は現在これしかない。破焔斬と併せて水渇刀もサラマンドラに預けている。何でも鱗になった状態には魔力が必要らしいので水渇刀も一緒に預からせてくれ、とサラマンドラが言うものだから。

それはともかく、俺は手に持った木剣を手近な岩に降り下ろした。



ガッ!バキッ!



オーラも込めてなかったせいか木剣が根元からへし折れた。

やはりというか思った通りだ。此処の地面はやたらと硬い。普通ならオーラを込めてない木剣でも俺が叩けば岩を割るかもしくはひびが入るぐらいはするが、此処にある岩は傷1つない。此処の岩は、というより此処は、




カンカンカンッ



!?


俺が辺りを検証している時だった。何か金属を叩くようなそんな音が洞窟に響いたのは。

「?何だ?」



俺はその音がしたほう、つまり洞窟の奥へと進んだ。誰か居るのか?


進んでいくうちにその方向から明かりのようなものが見えてきた。



そして洞窟の中とは思えない拓けた場所に出た。

其処は何やら剣や槍など武器のようなものがたくさんあった。その中心には、



「子供?」



やけに小さい(130㎝ぐらいか?)黒い髪の奴が何か作業をしていた。その髪は妙に盛上がっている。



「あぁん?」



俺の呟きが聞こえたのかその子供?は作業の手を止め俺のほうを振り返り、



「誰だてめえはっ?どっから入ってきやがったっ!」


柄の悪い口調で俺に尋ねてきた。声や顔は女?のような・・・



「いや俺も良くわからないんだけど、此処は何処だ?」



俺は率直に言った。正直俺は何で此処に居るのかが分からないからな。



「てめえ!何をふざけたことを言ってやがるっ?てめえが勝手に此処に、いや待てよ。何かの魔法や魔道具で飛ばされたか?条件付きの。野郎の召喚とは逆に・・・ということはこいつは何かと戦って・・・」



その子供?の女は俺を無視して1人で何やらぶつぶつと言っていたが、



「おいっ!てめえは魔法か何か使う奴と戦っていたかっ?」



再度俺に尋ねてきたので、


「ああ。正確には戦っていた、というか何というか」


微妙なところだが。



「何だ、はっきりしねえ奴だな!」



「悪いな。あの流れになったのは俺も良く分かってないんだ。どっちかと言えばただ見てただけというか。それより此処は何処なんだ?」



「ちっ、まあいい。教えてやるよ。此処は鉄島、そして私ミスミ・デンタの作業場だ!」



いや、名乗られても知らない奴なんだが・・・

ん?鉄島(てつじま)

何か聞いたことがあるような・・・



「ミスミッ!採ってきたぞ!」



俺が記憶を探っていると、誰かがその作業場に入ってきて其処に居たミスミという奴を呼ぶ声がした。その声を発した奴のほうを見てみると、



「お前は!?」



「なっ!?」




何処かで見たことがあるような奴が作業場の入口に立っていた。

俺が胴からぶった斬った筈のそいつは以前と変わらぬ姿で俺を見つめていた。その牛のような顔に付いている目を見開いて。

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