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第51話〜再来〜

あいつは何をしていたんだろう?

ロランが急に羅義神人の傍に駆け寄ったかと思えば、前足で足元をぐりぐりと踏みつけていたのを見ていて俺は怪訝に思った。あそこに何かあったのだろうか。

そう言えば黒い蜥蜴のような小さい生き物が居たような気がしたが。

まあいいかと思い、



「草薙?お前は羅義神人じゃないってことか?」


俺は草薙神人と名乗った人物へ尋ねた。



「そうだ。今の私はただの騎士、草薙神人だ。だが別にお前が言ったことも間違いではないぞ、ヒノカ」



「間違いではない?じゃあやっぱりお前は羅義神人なのか?いったいどういうことなんだ?」



俺が尋ねると草薙神人がその身に起こったことを説明してくれた。


・・・・・・三万年前、か。気の遠くなるような話だな。いや、こいつにとっては大した時間じゃないのか。それに、



「ようやくゆっくりと話せるわね神人」



親であるデュカ・リーナとこうして再会できたんだからそれはそれでよかったのかもな。


俺は目の前で再会を喜び合う親子を見ながらそんなことを思っていた。まあ見た目はどちらかと言えば親子というよりもきょうだいと言ったほうが近いけど。


しかし、ラドンは完全に消え失せたんだろうか?

俺はデュカ・リーナの造り出した魔法とやらの効果がいまいち分からずにそんな心配をしていた。


あいつの説明によるとあのリバースという魔法は元々何処の大陸からか鬼ヶ島へと連れてきた人へと力を与えるためのものだったらしい。まあ、そもそも何故あいつが鬼ヶ島に人を連れていったのかは分からないが・・・

そうして様々な場所から集めた人達は当初は鬼ヶ島に適応できなかったらしいため特殊な力、魔法を使えるようにとあいつがリバースの魔法とは逆の効果、つまり魔力と人を合成するようにしたものらしい。それを果実の力を使って対象物に与える効果を変えた、というわけだ。

もっとも、あいつも最初からその魔法を完全に使いこなしていたわけではなかったらしいが。ともあれ今鬼ヶ島に居る鬼族の祖先はそうして魔力というものを使えるようになったとのことだ。

俺はデュカ・リーナの説明を聞いてその作戦に乗ってみたのだが、あいつが嬉しそうに喋る顔を見ればこれは成功したと考えてみてもいいのだろう。羅義・・・草薙神人も先程からやたらと落ち着いたような安心したような表情をしている。そうだ、俺はこいつに聞いてみたいことがあったんだ。



「なあ、草薙神人?」


何事かを笑いながら話していた2人が話すのをやめて俺のほうを見てきた。



「どうしたヒノカ?」


草薙神人は俺をヒノカと呼ぶが。


「トウヤでいい。何かヒノカだと俺以外のことを言われてるようで違和感があるし。そんなことよりも、前に聞きたいのは、」



俺は草薙神人へ疑問をぶつけた。それは、



「つまりだ。貴様が聞きたいのは私がかつて三大英雄として行った戦いについてか」



「ああ。お前は正に生き字引ってやつだからな。折角の機会に聞いておこうと思って」



特に俺のご先祖の話や鬼ヶ島に居た時の話とかは面白そうなので俺はそのへんを重点的に聞いた。いつの間にかリシナやフェンも傍に来て耳を傾けている。

ミシルは・・・恨みを持っているデュカ・リーナを目の前にしているからだろう、憤った表情をしている。しかし、さすがのこいつでも草薙神人が居ると迂闊には仇を襲えないのか他の奴と同じく黙って話を聞いていた。ロランもデュカ・リーナの傍を離れないしな。


暫くの間、俺達は草薙神人の話を聞いていた。まるで今起こったことのように話す臨場感が溢れたこいつの話はとても分かりやすい。


そして、話を聞き終えた俺達は今後について話し合った。


「取り敢えずは水の大陸に戻るのでしょう、トウヤさん?」



「そうだなリシナ。この闇の大陸に来た目的はミシルを探すことだったから、もう用事は・・・あっ!」



俺は重要なことを忘れていた。



「なあロラン?お前に聞きたいことがあるんだが」



俺はデュカ・リーナの傍らに居る大きな犬へ声をかけた。



「なんだいニンゲン?」



「ニンゲンってお前。俺はトウヤ・ヒノカって名前があるんだが」


「そう。分かったよトウヤ。それで?聞きたいことって?」



俺は黒竜から聞いたこの闇の大陸の鍛冶師バラン・オオガミと同じようにロランが鍛冶が可能かどうか、今は鱗になっている炎斬は元通りになるのかどうか、を尋ねた。



「ううん、僕は長老・・・父さんみたいなことはできないよ」



しかしそんな答えが帰ってきた。



「そうか・・・それならしょうがないな」

「でも、その刀なら再び魔力を込めれば復活するのじゃないかしら?鍛冶というよりも」


デュカ・リーナがそう言うようにそれは俺も考えたことなんだが、


「だけどな。その魔力の持ち主、サラマンドラって竜が何処に居るかも分からないから、此処を頼って来たんだが」


「サラマンドラ?ああ、それなら」



私と召喚契約を結んでいる、と言う。



「えっ、本当か?」


「ええ。あっ、でも今あれは魔力が減少しているからどうなのかしら?」


「魔力が?じゃあ今は無理なのか?」


「そうね。分からないけれど、一応呼んでみましょうか・・・・・・召喚(サモン)!火竜!」



前に牛を呼んだ時のようにデュカ・リーナが召喚の魔法らしきものを唱えた。



・・・?



「何も起きないぞ?」



「・・・召喚魔法が使えない?というより・・・」



召喚の契約が全て切れている、とデュカ・リーナは言った。




・・・・・・よし、帰るか。

俺は慌てた顔を見せる金髪の少女を見ながらそう決めた。





〜〜〜





意味がよく分からない。というよりどこが当てはまるのかしら?

あたしはサラマンドラが預言の者とやらについて説明するのを聞きながらそんなことを思った。

いや確かに「我等を従えし」というくだりのところでは、竜の力を持った刀を持っているということで当てはまる気がしないでもなかったがその他はねえ・・・その預言の者は別にトウヤ・ヒノカじゃないような気がする。


『む・・・?どうしたのじゃ?』


あたしが納得のいかないような表情をしていたためか少年、サラマンドラが尋ねてきた。


「いえ、色々と腑に落ちないところがあるものだから」


「そうですね姫。確かに私もその預言の者とやらの内容に納得はいきません」


「へえ?貴方はどうしてそう思うのガロウ?」


やけに憤った口調で言うガロウにあたしは尋ねてみた。


「まず1つにはこの星・・・つまり世界が闇に覆われるというところです。確かに魔物が横行し人々が完全に安全な暮らしをできるかと言われたら断言はできませんが、それでも闇に覆われるという表現は相応しくないと私は考えます。そしてもう1つ、此方のほうが大事なのですが、人間の姿をした最も強き者という箇所ですがこれは要は世界で1番強い人間、という意味でしょう?そう考えると何故他の者を差し置いて、その預言の者を指すのがトウヤ・ヒノカになるのかそこが私には到底納得できません!」


「えーと・・・?要は貴方が言いたいのは、竜族に伝わる預言は、現在の世界の状況に合っていない、ということと自分のほうがトウヤ・ヒノカよりも強い、ということ?」


「そ、そうは言っていません!ただ最強の者というのは誰かが勝手にきめるものではなく実際に戦ってみなければ分かるものではないので早計な決めつけは危険ではないか、と私は申し上げたいのです!」


口ではそう言うものの強さに拘るガロウにとっては何処かで勝手に決められた最強、という言葉だけで自分が無視された形になったのが納得できないのだろう。竜を従えているわけでもないガロウにとっては。まあ、あたしも実際にトウヤ・ヒノカという人物を見たわけではないので強さに関しては何とも言えないが、先程から見るにトウヤ・ヒノカの知り合いである3人の少女は最強というところには納得しているので実際に彼は強いのだろう。多分ガロウよりも。


「しかし、ガロウ・サイハ。私も実際に戦ったわけではないが奴は少なくとも私よりも強い、筈だ・・・・・・これは私の意見ではなく我等の始祖の判断によるものだがな・・・」


アズト・ミタラ率いる火喰い島探索の際に実際にトウヤ・ヒノカを目の当たりにしたらしい鬼族のジン・ガトウが落ち込んだように言った。落ち込むぐらいなら言わなければいいのに。


「しかし、私は納得いかん!」


「そこまで言うのなら実際に模擬戦でも何でもやってみればいいじゃないですか?ええと・・・ガロウさん?」


ニルナ・カナワの妹がガロウにめんどくさそうに言った。ガロウに対してうざそうに。

・・・ネク、って言ったかしら?この子とは仲良くなれそうね。



「そうねガロウ。この子たちの話だとトウヤ・ヒノカ達は近いうちに此処に帰って来るらしいからその時にでもお願いしてみれば?」


「・・・・・・ええ。私もそうすることが一番納得ができると思います」


『むう・・・思いつきで預言のことを言っただけじゃったのじゃが、まさか汝がそこまで強さに拘っていたとはの・・・我も軽率な発言じゃった』


サラマンドラは言うが別にガロウ以外は大体納得していたことなので、


「いや、貴方は別に悪くはないわよ」


あたしは少年をフォローしておいた。

その後暫くあたしたちは話をしていた。最初はやけに畏まってあたしやガロウに接していた少女たちだったが話をするうちにやがて打ち解けた。

意外と火喰い島の話で盛り上がったり、好きな食べ物の話をしたり、と小一時間ぐらいした頃だろうか。



『・・・む?』


サラマンドラが急に何かに気付いたように言った。


「サラマンドラ?どうし、」


たの、と尋ねようとした時、泉の底が光り出すのが目に映った。


パァァァァァァ


泉の底から光が立ち上りその光の中に数名の人影らしきものが見えた。



「これは龍巣を?」


『通って此処に来たのじゃろうな』


「まあこれの存在を知っている人物は限られるから、ほぼ間違いなく・・・」



やがて光が晴れてその人物達の顔が視認できるようになった。



「トウヤ!無事にミシルさんを見つけたのね!」


ネク・カナワが龍巣から現れたその5人の人物の中で一番年若い人物へとそう言った。




~~~





誰だこいつら?

俺達が水龍の祠へ戻ってみると、ネク達と一緒に見知らぬ奴等が居た。1人は子供?で1人は俺やネクと同い年ぐらいの年の女、1人はミシルやリシナぐらいの青年で、もう1人は何処かで見たような?このでかい奴は・・・!



「お前は鬼族の?」


「ジン・ガトウ!?何故貴様が此処に居るっ?」


ミシルもその大男に気づいたのだろう、叫んでいた。剣を抜きながら。


それを見たジン・ガトウというその鬼族は、



「・・・私は故あって此の者達と行動を共にしている。貴様等と敵対するつもりはないが、やるなら相手になるぞ?」



そんなことを言った。



「私は貴様に傷を負わされたことは忘れていない・・・!今此処であの時の借りを返してやる!」



ミシルはこの大男と戦った時のことを思い出したのかそんなことを言った。



「はい、そこまで!」



と、その時その場に居た知らない女が2人を止めた。


「ジン・ガトウ?貴方は約束を忘れたのかしら?」


その女にそう言われ大男ジン・ガトウはたじろいだ。

「・・・勿論憶えている」

「そう。なら挑発に乗らないことね・・・それと貴方!」


その女が今度はミシルへと詰め寄った。



「・・・何だ?」


「貴方とジン・ガトウとの間にどんな因縁があるのかは知らないけれど、国交の邪魔をしないでもらえるかしら?」



「国交?何の話だ?」


俺はこの女の言うことがよく分からず、近くに居たネクに尋ねた。


「あのね、トウヤ。この人達は、」



俺はネクの話を聞いて、草薙神人の顔を見た。やはりというかあいつも微妙な表情をしていた。おそらくあいつも俺と同じことを思ったのだろう。


デュカ・リーナも一緒に来たほうが良かったのでは、と。



〜〜〜





「再契約をしに?」



闇の大陸でやることが無くなったので俺が帰ろうと提案したところ、デュカ・リーナがやることができたと言うのでそれは何かと聞いてみると前に召喚の契約をしていた奴等へ新たに契約するために会いに行く、と言う。



「まあ、俺はどっちでもいいけど。神人はどうするんだ?」



「私は火の大陸へ行きたい。かなり様変わりしただろうからな・・・」



聞いてみるとこいつは昔に火の大陸を出てから一度も帰っていないらしい。まあ250年も経てば大陸も大分変わってるだろうから興味があるだろうが・・・



「その前に羅義、草薙神人さん?」


「ああ、分かっているトゴウの。奴の墓前に案内しよう・・・」


「そうか。俺達も付き合おうかリシナ?」


俺がリシナに尋ねると、



「ええ、是非。きっとそのほうがご先祖様も喜ぶと思います」



リシナは微笑んで言った。


「待て!」


と、その時ミシルが言った。



「ああ・・・貴方」



デュカ・リーナが何かを合点したように答えた。



「私は貴様は許すことはないだろう・・・!」



「・・・・・・なら、私を此の場で殺す?再び・・・」



「先程まではそう考えていた・・・」



「先程まで?今は違うということかしら?」



「・・・言い方が悪かったな。今でも貴様を八つ裂きにしたいほどに憎んでいる」


「だったら・・・」



「だが!同時に貴様の力を失うのもももったいないと感じている・・・!」



「?もったいない?」



「・・・そうだ。貴様の力、魔導があればーーーーーー」



そのあとミシルは自分の考えを語った。

・・・ミシルがそれをどういう想いで言ったのか俺には分からないが身を切るようなその喋り方からおそらくはかなりの葛藤があったのだろうと思う。


全て話し終えたミシルは、



「・・・だから私は今は貴様を斬らない・・・!」


と言った。



「分かったわ・・・・・・。貴方の話に乗ることにしましょう・・・償いも込めて・・・」



デュカ・リーナはミシルの言うことに納得したのかそんなことを言った。

傍らで草薙神人は神妙な顔をしているが・・・



「じゃあ、全て取り戻したらまた貴方に会いにいくわ」


「・・・ああ」


「じゃあ、またね。あっ、そうだ。もしまた鬼族に会うことがあればよろしく言っておいてねトウヤ・・・」


デュカ・リーナは最後に何故か俺にそう言った。

そして生暖かい風と共に何処かへ消えた。一緒に行きたがるロランと一緒に。



その後に俺達は再び黒竜に会いに行き、ロランから聞いたラドンの顛末を話した。やけに驚いていたが?


そして、草薙神人の案内で斗剛一弥の墓に行き、龍巣を使って水の大陸へと戻ってきた。



〜〜〜




しかし、


「友好を結ぼうとするとはな。あんたは面白いな」



話を聞いた俺は俺と同い年の女、スサノオ姫に話しかけた。



「ありがと。それでトウヤ・ヒノカ?それにそちらはリシナ・トゴウかしら?その2人は誰?」



スサノオ姫はフェンと神人を見ながら俺に尋ねてきた。何で俺とリシナの名前を知っているのかと一瞬思ったがネク達と話していたのだろうとすぐに合点した。


「ええと。どこから話すかな・・・」



ネクや姉妹もフェンはともかく神人を見ながら、誰だ?というように怪訝な顔をしている。



「ねえ、その男の人は誰なのししょう?」

アリナがリシナに尋ねると、


「この方は・・・・・・分かりやすく言えば、火の大陸の三大英雄です」



いや、分かりやすくはないだろ?と俺は思わずリシナに突っ込んだ。普通に考えたらまさか三大英雄本人がそのまま生きているとは思わないだろ?と。

不安に思い他の奴の顔を見るとやはり皆首を傾げていた。


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