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第50話〜解放〜

私たちが外に出る際に一緒に来なさいと命令したら精気兵は思い通り付いてきた。

・・・素直ね。

私は子供の時周りに素直な奴が居なかったのでこの素直ぶりにうっすらと感動していた。私の生まれた村というのが子供が少なかったので周りには年下しか居なかったが、妹や通っていた剣術道場の子供は、それはそれは聞き分けがない奴らだったし。しかし、と私は思った。これはどういう仕組みで動きまた音声を発するのか、と。精気兵というだけあって燃料は私の予想通り精気(プラーナ)ではあったが、そもそも誰が何の為に造ったものなのか・・・前に動いていたものはかなり昔から稼働していたらしく、それなりの性能を持っていたという話だし。具体的には総合的な戦闘能力は鬼族のロナン・サタクに匹敵するほどだったらしい。まあ、私には及ばないだろうがそれでも無機物なのに大したものだとも思う。



「ニルナ、この辺りでよろしいでしょうか?」



ノルエルが声をかけてきたので辺りを見ると広場のような場所に出ていた。



「ええ、此処なら充分よ。」


ざっと見て50㎡ぐらいはありそうな広場、庭?を見て私は満足した。



「じゃあ、始めましょうか。貴方の力を見せてもらうわよ精気兵(プラーナマシン)。かかってきなさい」


精気兵と模擬戦を行うため私は新たな命令を下した。



〜〜〜





▽▽▽



遠い昔、とある大陸に一人の隻眼の男が一本の剣を持って何処からともなくやってきた。

その男は持っていた剣をおもむろに手近にあった木へと突き刺し、何処かへと立ち去っていった。

それを見ていたその何処かの大陸の者がその剣を引き抜いて自分の物にし、それを使って戦に赴いた。その者は戦で生涯負けることなく無敗だったらしい。

ある日その者が理性を失った魔物、(伝説では龍だったと言われているが)に出逢った際、持っている剣でその龍の心臓を貫いた。

通常、龍の皮膚というのは生物の中で最も硬度が高く鋼よりも硬いと言われており並の剣や武器では倒すどころか傷一つつけることすらできないと言われている。

だから、その者が龍を倒した際に使った剣はその強靭な破壊力に畏敬の念を込めて、滅竜剣(ドラゴンスレイヤー)と呼ばれている。


△△△




俺はグラムという剣について聞いた話を思い出しながらロランから受け取った刃を見ていた。

これが神々の武具と言われるものか・・・見た目は他の剣より少し刃先が尖っているぐらいでそんなには変わらないが、この感じは何だろう?

何というか、炎斬や水渇刀とも違う何だか妙な迫力というか、魅入られるような雰囲気というか、とにかく俺はこれなら炎斬にもひけを取らないように感じた。


「ちょっと借りるぞ黒竜(ニーズヘッグ)



俺はそう言いながら黒い花へと近づいた。ある程度の距離を置いて。


黒い花がラドンが変わった姿というのであれば、この(グラム)邪龍(ラドン)へと攻撃できる筈だ。たとえあいつの封印に罠を施されているとしても。



「本気でやってみるか・・・・・・でも、もし壊れたら悪いな黒竜(ニーズヘッグ)



奥義(あれ)を使えば武器が保たない可能性があるので俺は剣の持ち主である黒竜に先に謝っておいた。



「はぁぁぁぁぁっ!」



気合を溜めて剣にオーラを込め、



「九天奥義、(つらぬき)っ!」



奥義の中でも貫通力の高い技をラドンに向かって繰り出した。

要は剣の切っ先を前にし目標に向かって突進するだけの技だが。





〜〜〜




己はいつ攻撃に転じるかを考えていた。

己が編み出したこの魔法、ブラックサレナはいつの間にか己が気づかぬ間に仕掛けられていた封印解除防御の呪いが発動しこの状態の己に手を出す奴や封印を解除しようとする奴に対して牙を剥く魔法なので、このままの状態で待っていても己に手を出そうものなら目の前で話している奴ら程度は殲滅できるだろうが、ただ待つだけというのも己の性には合わない。それにこの状態になると身体の硬度が上がり防御力は上昇するものの動きは鈍り此方から仕掛けるには向いてはいない。いっそのことこの魔法を解除してやろうかとも考えてみたがこの身体に同居する奴が僅かな力と意思を持って己に逆らうのでそれも得策ではない。


そうこうするうちに新たな獲物が目の前にやってきたがそいつらはこの場所に来る前に見た奴らだった。

魔力や闘気を扱うかなり強力な人間の奴らだ・・・だが、そんな奴らですら今の己の状態を突破することは叶わないだろう。例えその人間のうちの1人がかつての眷属の力を持つ特殊な物を持っていたとしてもだ。


己はそう高をくくっていた。



「九天奥義、つらぬきっ!」


だからその特殊な物を持つ人間が己に近づき、そんなことを叫んでも何も恐れることはない。



ズシャッ!




・・・なかった。

己の通常時の数倍硬い皮膚を貫かれるまで己はそう思っていた。




~~~





ズシャッ!



手ごたえありだな。

俺は黒い大きな花の中心を剣が貫いたのを確認した。これが神々の武具の威力か・・・

というよりこのドラゴンスレイヤーの特性か?

前にラドンと戦ったときに剣で攻撃しても傷1つつかなかったことを俺は思いだした。



「グオオオオオッ!」


その黒い花を貫いた瞬間それから叫び声が聞こえた。

そしてその身体から鈍い光を発しながらみるみるうちにその姿を変えていった。


「お前は・・・?」


俺は魔力らしきものを感じるその姿を見て怪訝に思った。


「ぐっ、くそっ!まさか己の皮膚を抜けられるとは!」


「お前は誰だ?」


「己はラドンだ!預言の人間め!やってくれたな!」


目の前の奴はそう言うが・・・


「ラドン?お前は羅義神人じゃないのか?」


先程セフィロトの前で見た額に角が生えた顔の人間に俺はそう言った。


「はっ!何を莫迦なことを!お前は己とやり合っただろう!もう忘れたのか!」


「お前はそう言うけどな、どう見ても・・・」


「何を・・・・・・・・・!!?お、己の龍鱗が、無いっ!?」


自分の身体を確かめるように触っていたそいつが不意に何かとても驚いていた。


「龍鱗?お前はどう見ても人間にしか見えないぞ?」


「ば、莫迦な・・・お、己の身体は何処に・・・?」


滅竜剣ドラゴンスレイヤーっていうぐらいだからな。これでお前を攻撃したもんだから、消滅したんじゃないのか?」


「なっ!それは、グラム!何故お前がそれを持って、いや使えるんだ!?」


「いや何故って言われても。普通に使っただけだしな」


そんなことを言われたら俺のほうが逆に困惑する。


「・・・!お前はまさか・・・?」


?こいつは何を驚いているんだろう?

まあ、そんなことよりも、


「じゃあ、お前は見た目は羅義神人なのに中身はラドン、ってことか?」


「・・・そういうことになるな」


「羅義神人は何処に行った?」


「・・・忌々しいが奴はまだ己の中で生きている・・・筈だ・・・」


「曖昧だな?これがお前の目論見通りか、デュカ・リーナ?」


俺はいつの間にか後ろに立っていた金髪の少女に声をかけた。


「・・・」


しかしその少女デュカ・リーナは喜ぶでも悲しむでもない微妙な顔をしていた。あれ?


「デュカ・リーナ?」


「・・・まあ、良しとしましょうか」


「そうか・・・」


人にやらせておいてやたらと偉そうなのは気になったが、良いんならいいか。


「で?このあとはどうするんだ?」


「本来は自分で使おうと思っていたのだけどね。でも成功するかどうかも分からなかったから結局は使わなかったのだけれど。元の姿に回帰させる魔法を使うわ・・・」


「元の姿に回帰する魔法?そんなことができるのか?それに成功するかどうかも分からないって、お前?」


「結局はやらなかったけど成功する確率としては高いとは思うの。逆は成功したからなんとかなるのじゃないかしら・・・」


「いや、それは結構な賭けだろ?・・・逆ってなんだ?」


「・・・魔力によって、姿を変え能力を進化させたの」


それが火喰い島の鬼族の子たち、とデュカ・リーナは言った。


「・・・・・・成程。お前が鬼族の始祖っていうやっと意味が分かった。人智を超えた力ってやつだな、新しい生命を創るなんて・・・」


「ええ。それもこれも全部息子に会うため、寂しさを紛らわすため・・・」


そういやこいつも元々は火の大陸の人間だと言っていたな・・・


「そうか。じゃあどうあっても成功させなきゃな。ほら」


俺は果実を1つ渡してやった。


「有難う。じゃあやるとしましょうか」


そう言いながらデュカ・リーナの身体が輝き出した。




「なっ!何だ!何をする気だっ?」


「・・・お前には悪いけどなラドン?今から羅義神人を取り戻す・・・!」


慌てるラドンに対して俺は言った。


「取り戻すだとっ?この身体は己のものだっ!己自身の身体を失った己にはもうこれしかないっ!」


「お前のものじゃないだろ。諦めろラドン!」


「ふざけるなっ!何の権利があってお前らは!」


「権利も何も元々お前のものじゃないだろ?」


「この人間、ラギ・シンドには今まで散々いい思いをさせてやった!消えるのなら奴のほうだ!」


「だってさ。どうなんだ?羅義神人の親は?」


俺がデュカ・リーナに尋ねると、


「私は神人を取り戻す」


「ということなんで、さよならだラドン」



「い、いやだ!己はまだまだ喰いたいっ!」


そう言いながらラドンは駆け出した。


「準備ができたわ・・・・・・人生回帰リバース!」


輝くデュカ・リーナから白い光のようなものが駆け出していたラドンに向けて発せられて当たった。



パァァァァァ



「いやだあああああああ!!!」



光に包まれたラドンからそんな叫び声が聞こえ、

そして、光が晴れた。



「お前は羅義神人か?」


俺は光の中から現れた人物にそう声をかけた。傍らには黒い蜥蜴のような奴が居るが。


「違う」


!?

こいつ失敗したのか、と思いデュカ・リーナのほうを見てみるとこいつは何故か微笑んでいた。


「じゃあ、お前は誰なんだ?」


ラドンにしては魔力のようなものを全く感じない。感じるのは・・・オーラ?


「私の名は神人。草薙神人だ」


その人物はデュカ・リーナのほうへ微笑みながらそんなことを言った。





~~~





この動き?こんなことがあるのかしら?

それにしても強力ね・・・


私は持っている木剣で精気兵の攻撃を捌きながらそんなことを考えていた。

私と精気兵の模擬戦を始めたのはいいけど、私が思ったよりも遥かに手こずるのは何故なのかを分析した結果、



「動きを読まれている?」


先程から私の攻撃が当たらないことについてはそう結論づけた。

しかも、この動く無機物は


『ゴシュジンサマヘコウゲキ・・・キバ!』



ズォォォ


その右腕らしき部分を伸ばしてきた。これはヒノカ流剣技?


「くっ!」



ガキィン!



単調なその攻撃をオーラで硬度を強化した木剣で払い受けて、



「これが本当の、牙っ!」


お返しした。



ガキィン!



しかしその左腕らしき部分で私の伸ばした木剣を払い受けた。

まるで私の動きを先読みしているような反応速度で。


「やるわね。じゃあこれはどう?」



私は元の大きさに戻した木剣を腰に納めた。そして精気兵へと近づき一呼吸置いて、



「はっ!」


一動作で木剣を抜き一瞬で斬りつけた。



バコォンッ!



さすがに私の最速の技には反応しきれなかったのか、もしくは知らない技には対応できないのか精気兵の丸太の上部分へと叩きつけることができた。

勢い余った精気兵は地面に転がった。



「ふう。やっと当てることができた」



『ゴシュジンサマへコウゲ、』


「はい、止め!」



倒れたまま攻撃してこようとする精気兵の動作を見た私は慌てて命令した。

すると素直、というか忠実なそれはぴたりと動きを止めた。



「・・・うん、特に傷とか凹みはないようね」



私は自分の木剣が当たった部分を点検したがこれが硬いのか別段問題はなかった。

・・・何となく私が勝ち逃げしたような形になってしまったが、感情らしきものはないのか精気兵は特に何の反応も見せなかった。

まあロナン・サタクやガロウ・サイハみたいにやたらと突っかかられても面倒くさいだけなので良い。

それにこの模擬戦はそもそも勝敗を決するためではなく精気兵の性能を確かめるために行ったことなので当初の目的は既に果たしている。

今の一連の戦いで分かったことは、



「お疲れ様でした、ニルナ」


「ええ。思っていたよりも大分強かったわ」


「そうですね。私も驚きました・・・」


「前に動いていたやつと比べてどう?やはりこちらのほうが性能が高いかしら?」


「それはもう!この精気兵は下手をすればガトウさんよりも強いかも知れません!」


「ガトウ?・・・ああ、この島で一番強いやつね」


「ええ。ですが見ている途中で気になる動きがあったのですが」


「私も気になるところはあったわ。これは使い方次第、というよりは多分プラーナの込め方次第で大変なものになるかもしれない」


「それはやはりあの戦い方に関係が?」


「そうね。何しろこの精気兵は、」



私は凡そ30分程度戦っていたがその間にこの無機物は多彩な技を繰り出してきた。


「私が使える技を全て使うのだから」



つまりは、この精気兵は九天奥義を使いこなしていた。もっとも剣ではなく自身の腕を代用してはいたが。




〜〜〜





・・・時は遡り暦255年より○○○年前・・・


とある場所に1人の男が立っていた。



「グルルルァ!」

「ガルルル!」

「フーッ、フーッ」



その黒髪の男へと今にも飛びかかりそうな数体の猫科の大型の獣、虎が居たが、しかし何故かどれもその男へ飛びかかっていくことはなかった。



「賢明だ。さすがは野性といったところか」



その男は自分の周りで自分に対して警戒している虎を見やり、呟いた。



「しかし・・・」



男が周りの獣に取り合わず何事かを考えていた。

そして、目の前の虚空をじっと見つめていた。



「これはいったい?」


目の前の虚空、そこに存在しているた大きな闇を見て男は不思議そうに呟いた。まるで世界が歪んで映るように見えるその闇を。



「このあたりに居るという話だったが何か関係があるのだろうか?」



男の生業は測量であり現在は1つの大陸を調べるため大陸中を回っている最中だ。その途中に立ち寄った町で気になる話を聞いた。

何でもその町からさらに奥深くに伝説の生き物が居るというのだ。本当にそんなものが居るのだろうか、と思い好奇心旺盛な男がその奥深くを訪ねてみたがそこには何もなかった。荒れ地となっているそこはと何か生き物が居るいうことを感じさせるものが何もなく男は自分があの町の者に担がれているのではないかとすら思い始めていた。


だが、そんなことを考えながら辺りを散策している時に男は見つけた。その闇を。



「いや、よく見ればこれは?」



闇に見えていたそれは一本の剣だった。闇色に輝く一本の剣。


男は獣に襲われたり、険しい道を通ったりする職業柄、それなりに剣の腕に覚えがあった。それだけに地面に突き刺さっていたその剣を引き抜いて手に取ったときは何とも言えない感覚を覚えた。



「これは、凄いな」



闇色に輝くそれを振ると手近にあった木々が一振りで数本薙ぎ倒された。



「折角だ。持ち帰るか」



男は呟きその場を後にした。




〜〜〜




〜暦255年〜

闇の大陸、狗族の村。




己は人間界に来た初めの頃を思い出していた。ようやく剣の状態になっていた己を扱える奴が己を抜き、これから色んな奴の力を吸収できると思った。事実この人間界に居る間に己は様々な人間の手に渡り、持ち主の力を吸収してきた。その最たるものが強さを渇望する1人の男だった。そしてこの人間界に己を顕現させようと計画を練っており、ついにその機会が訪れた。その男の強靭な肉体を利用して実際に首尾よく生身の身体を持てた。そこまでは良かったが、その後己は・・・



・・・己は最期に見た。

大きな獣、先程まで己が虐殺していた種族と同じような奴がその大きな前足で己の小さくなった身体を踏み潰、




ブシュッ!




一欠片ほど残った魔力でどうにか蜥蜴の姿を保っていた、かつて龍神界より堕とされた一匹の龍は若い狗族の前足によってその身体を飛び散らせた。

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