第49話〜封印〜
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己は龍神界から魔界へと堕とされて何もできなかった。持てる力を取り上げられて。その身を無機物に変えられて。龍神に封じられた所為で・・・しかも奴は剣になった己の封印を解除できないようご丁寧に封印滅防御まで併せて行っていたらしい。竜の呪いを。
だが。
封印された己が唯一奴から学んだこと、それは感覚だった。封印魔法を食らったときの感覚・・・己の特性に関係あるかどうかは知らんが己は一度食らった技や魔法すらも己の糧として応用することが出来る。己に施された封印魔法の感覚を思い出し、尚且それを自らに都合の良いものに仕立て上げる方法。己はそれを使いこの魔法を造り出した。龍神や他の竜共、それに魔物や人間に対する怨念と己の魔力を込めて、誰も破壊することのできないこの黒百合の魔法を・・・
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デュカ・リーナ?
俺はミシルが叫んでいた人物を何処かで見たことがあるような気がしたが、確かにそんな名前だった気がする。あの金髪の少女は。
しかし、
「何故だ!何故貴様が生きている!!私に斬られ消滅した筈の貴様が!!」
ミシルからそう聞いてたのに何でそいつは生きている?
「・・・殺したと思ったのに生きていたですって。貴方は腕は上がったけれど物事を自分の都合の悪いように考えるのは苦手みたいね?初めて会ったときのように。
簡単な話じゃないかしら、つまり私は殺しても死なない、ということよ」
「貴様!?」
その少女の言葉を受けてミシルが困惑していた。
「なあトウヤ?あの金髪の女っていったい誰なんだ?トウヤも知ってるのか?」
俺が今にも金髪の少女に飛びかかりそうなミシルを止めるかそれともこのまま見ているか考えていると、フェンが俺に尋ねてきた。
「ああ、ミシルに聞いたけどあいつは、」
俺はフェンにミシルとあの少女の因縁を手短に話してやった。その間に止める間もなくミシルが少女に詰め寄っていたが。
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これはいったい誰だろう。リーナちゃんに対して急に叫びだしいきなり襲いかかってきた生き物、人間?という生き物を見て僕は考えていた。
「相変わらず貴方は私が憎いのね。たとえ殺しても・・・」
「当たり前だ!貴様は、貴様だけは・・・!それに何故生きている!何故・・・!」
リーナちゃんとリーナちゃんを知っているらしいその人間が話している。
しかしリーナちゃんを殺したとはいったいどういうことだろう?
「・・・!もしや貴様が生きているのは、」
「魔石に因る恩恵と思っているのなら違うわよ。あの時点で私は満足していたから・・・正直に言うと私も何故私が生きているのかは分からないの・・・」
「!!・・・だが、どちらにせよ生きているのなら貴様は私が、」
そう言って人間は背負っていたもの、剣?に手をかけた。
「・・・一度私を殺したぐらいでは貴方の激情は鎮まらないというわけね・・・」
「当然だ!私は貴様に踏みにじられた記憶も鮮明に残っている!幾度貴様が私の目の前に現れようとその度に憎き貴様を葬り去るっ!」
「復讐か・・・計算違いばかりね。貴方がそこまで強くなったことも、」
?リーナちゃんは先程から動かない黒い生き物を見ながら、
「神人が、ああなったのも・・・」
哀しそうに言った。
「!?あれは何だ?・・・それにこの魔力は?」
その人間はリーナちゃんの目線で初めて黒い生き物に気がついたのか驚いたようにそんなことを言った。
「・・・あれは魔の罠が仕掛けられたもの・・・」
「?それはどういう・・・?」
「そして私の最愛の息子でもある」
「貴様の、息子?・・・・・・!!この魔力はラドン!あの黒い塊はラドンか!」
「ラドン?」
「ラドンが貴様の息子?貴様は何のことを言っている?」
「・・・・・・貴方の口振りだとそのラドンというのは、おそらく魔物のようね?」
「貴様に答える必要はない!・・・だが、そうか。あのときラドンが言ったことと今貴様が言ったことで漸く奴の言っていた意味が分かった。つまりラドンへと変貌した闇騎士、シンド・ラギは貴様の息子というわけか」
「・・・ああ、そういうこと・・・私も大体理解したわ。奴、ラドンというのはあれのことなのね。それにしても貴方は頭が回るようになったものね・・・」
リーナちゃんは悲しそうな、それでいて僅かに嬉しそうな変な顔をしている。
「貴様?何がおかしい?」
その人間もリーナちゃんの顔を見て怪訝に思ったのかそんなことを言った。
するとリーナちゃんは、
「いいえ?別に。ただ因縁というのは不思議なものだと思ってね・・・貴方が今この時この場所に居るというのは」
「貴様の言うことは分からんな。貴様はいつもそうだ。私を見下しあまつさえ意味の分からないのことをほざく・・・!」
と、その時
「ミシル!」
新たに現れた別の人間がそう叫んだ。
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俺はその場に居た少女と話していたミシルの会話に待っていられず声をかけた。
デュカ・リーナとミシルが呼んでいたこいつの正体は確か、
「お前は魔神って奴だろ?鬼ヶ島に居た」
「引っ込んでいろトウヤ!こいつの相手は私だ!」
「でもな、ミシル?こいつはお前が倒したんじゃなかったのか」
「確かに倒した。だが現にこうして目の前に居る!」
「まあ、そのウォルスの生き残りのミシル?が言っていることは事実よ。私はセフィロトの前で確かにその子に斬られたわ」
俺がミシルに声をかけているとその少女、デュカ・リーナがそんなことを言った。
「やっぱりそうなのか。でも何でお前は無事なんだ?」
「さあ?私にも分からないわ」
「それにその腕はいったい?」
前に見たときはこいつはこんな腕じゃなかった筈だ、ラドンみたいな腕じゃ。
!!
あっちにある黒くでかい花みたいなものは何だ?
妙に禍々しい雰囲気が・・・!?
というより何だこの感情は?
「腕?ああ、これね。罠、というか執念というか・・・」
デュカ・リーナは言うが。俺があの黒い物体から感じる恨みみたいな感情に関係があるのか?
「それにしても、ミシルと言ったかしら?貴方はその火の大陸の少年のことを憶えて、いや思い出したの?」
「・・・貴様があの戦いの際に何のことを言っていたかは今の私なら果実のおかげで全て理解できる。トウヤ達は私の仲間だ!」
「果実?・・・・・・成程、生命の樹の実を食べた、というわけね。あの伝説の物がよく手に入ったものね?下手をすると国が一つ傾くぐらい貴重とまで言われるあれを、」
「あれはそんなに大した物だったのか!?」
俺はデュカ・リーナの話を聞いて驚いた。いや、よく考えたらそうだな。
余程強くなければあの黒竜を倒してセフィロトまで行けないだろうし、そもそも果実の採り方が分からないからな。
「あれ、とは?・・・トウヤ?だったかしら。貴方もセフィロトの果実を見たような口ぶりね?」
俺が驚いているとデュカ・リーナはそんなことを聞いてきた。
「ああ。見たも何も今持ってるしな」
「・・・そう。ならそれを私に」
呉れないかしら、と言ってきた。
「?何でお前にやらなきゃいけないんだ?」
こいつ図々しいな。
「それはね、」
シャキィンッ
デュカ・リーナが口を開きかけるとそんな音が聞こえた。
「こいつの話に耳を傾けるなトウヤ!どうせ何かを企んでいるに決まっている!」
ミシルが剣を引き抜きその切先をデュカ・リーナに向けている。
「まあ落ち着けよミシル。お前の気持ちも分かるが、こいつの話もどんなのか気になるだろ?それにこいつに聞きたいこともあったしな」
「しかし!」
俺は聞きたいことがあった魔神とかいうやつと話せる機会を折角得たので何とかミシルを宥めた。
「聞きたいこと?何かしら?」
「ああ。前にお前が俺達の前から消えたときに牛を連れてきたろ?」
「牛?・・・ああ、牛鬼のことね」
「やっぱり牛鬼なのか、あいつは。で、だ。俺はあいつを斬ったんだがその時にあいつが消えたんだ。俺が聞きたいことというのはつまり」
あの牛が生きているかどうかだ、と尋ねると、
「ええ、勿論生きているわよ。あれとは召喚魔法の契約を結んでいるから斬られたぐらいでは死なないわ」
「そういうものなのか?俺はてっきりあいつも鬼族の一種で鬼族ってのは死んだら消滅するものだと思っていたんだが」
ミシルが目の前のこいつを倒したときも消えたっていう話だったし。まあ実際今もこうして目の前に居るわけだが。
「違うわ。鬼族は別に死んでもその肉体が消えることはないの。そもそも鬼族と召喚魔法の契約をした魔物とは、」
俺はデュカ・リーナが鬼族と召喚した魔物について話すのを聞いていた。横を見ると手に持った剣を持て余したのかいつの間にかミシルが剣を鞘に納めていた。
「・・・成程な・・・元は火の大陸で」
そして俺はこのデュカ・リーナという少女の正体を知った・・・・・・子供に会うための魔の石、か
「ちなみにそいつは?」
あと先程から気になっていたやたらとでかく毛がふさふさした犬がデュカ・リーナの傍に居たのが気になった俺は尋ねた。
「ああ。この子はロラン・オオガミ。狗族の子よ」
「ロラン?バランじゃなくて?」
「ええ・・・バランは、」
「殺された。あいつに!」
「うぉ!お前喋れるのか?」
俺はロランという犬がいきなり喋ったので驚いて聞いた。
「そうか。あいつ、っていうのはあの黒い」
「そうだ。僕はあいつが黒い炎を撒き散らすのを見た。その炎で長老は、村のみんなは・・・・・・」
ロランは大粒の涙を零しながら先程此処で起きた惨劇を話した。
・・・俺は犬の涙というものを初めて見た・・・見たくはなかったが・・・
「そうか、大変だったなロラン。やはりあいつは此処で倒しておくべきだな」
俺は黒く大きい花を見ながらそう言った。
「ええ。それで先程の話に戻るのだけれど私に1つ呉れないかしら、セフィロトの果実を?」
「何か理由があるのか?」
「理由というか、まあ賭けみたいなものだけれど。試したいことがあるの」
デュカ・リーナもまた黒く大きい花を見ていた。
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ご主人様?今これは確かにそう言ったわ。この精気兵は。
「ニルナ?どうしましょう?」
ノルエルもこんな状態になることは予想してなかったのだろう、困惑した口調で私に聞いてきた。
「そうね・・・とりあえず外に出ましょうか」
『ハイ、ゴシュジンサマ』
!?
これは今の私の声に反応したの?
試しに、
「そこで回りなさい」
「ニルナ?いったい、」
『リョウカイシマシタ』
ノルエルの声を無視して、私はその場でぐるぐると回り出したそれを見ていた。
「これは・・・ニルナの命令に従っている、ということでしょうか・・・」
「おそらくね。止まりなさい!」
ぴたっという音がしそうなほど勢いよく止まったそれを見て私も確信した。
「何故私の命令を聞くかというと、」
「ニルナが集めたプラーナを使って動いているからでしょうか?」
「そういうこと。あとは精気兵がどの程度のことまでできるか、というところね」
「守護者になり得るでしょうか?」
「さあ・・・ともかく、色々試してみる必要がありそうね」
私はわくわくしにやりと顔を歪めた。
「二、ニルナ?」
?にやけているだけの私の顔を見たノルエルが何故か怯えていた。
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「果実に魔力を?」
俺はデュカ・リーナが今からやろうとすることを聞いて驚いた。
「そう。半端に解除をしようとすればこうなってしまうから」
そう言って自分の黒く変貌した腕を見せる。
「それが封印に施された呪いってやつか?」
「ええ・・・迂闊だったわ。この黒い鱗の皮膚は徐々に身体を侵食し最終的には魔物の身体になるでしょうね」
「えっ?だったらお前は不味いんじゃないのか?」
「これを受けたのが私以外だったらね。・・・・・・呪術印滅!」
パァァァ
デュカ・リーナが叫んだと思ったらその身体が輝いた。
「並の魔導士程度ならともかく私にはこの程度の呪いなんて解呪するのは造作もないことよ」
人間のような見た目に戻った自分の腕を見ながらそう言うが、こいつはかなり特殊な技を使うな。
「で?それほど強力な技の使い手のお前が果実を使って何をしようっていうんだ?今言っていた果実に魔力を込めるってどういうことなんだ?」
魔力って人が持つオーラみたいに魔物とかが持っているものなんじゃないかと思い俺は聞いた。それに、
シンド・ラギからラドン、そしてあの姿になった黒い花に知識や記憶の源をどう使うのか見当もつかない俺は聞いた。
「そうね。どう言ったら分かりやすいのかしら・・・つまりねーーーーーー」
俺はその説明を聞いて成程と思った。が、
「でもお前が言うその作戦は、誰かがそこまでラドンを追い詰めなきゃいけないんじゃないのか?」
俺が聞いた説明とは、今はラドンに取り込まれているだろうシンド・ラギの肉体をラドンと分離させるために、何とかシンド・ラギだけに果実を食わせられないか、というものだった。シンド・ラギが果実を食えば体力や精神力が回復し呪いの素であるラドンを身体からはね除けることができるかもしれないという可能性に賭ける、と。
自分の魔力と果実の力が合わさった効果に自信があるのか、デュカ・リーナはそう言うが。
そもそもラドンの奥深くに眠っているだろうシンド・ラギだけにどうやって果実を食わせるのかを尋ねたら、ラドンを瀕死に追い込めればシンドの感情が多分出てくるだろうって話だった。多分ってお前。
「それにあいつは普通の魔物よりもかなり強かったぞ。竜だからなのか?」
ラドンの強さを実感した俺がそう聞くと、
「まあ、そのへんの魔物よりは強いでしょうね。でも魔力といい体格といい他の竜に比べたらあれは大した強さじゃないわ。封印の魔法を使ったことに関係あるのか貴方達と戦ったせいで消耗しているのかは分からないけれど本来の姿をしているわけじゃないと思う」
いや、充分強かったんだが・・・
ちなみにこいつが自分で戦わないのはもしもの時に備えて魔方陣を準備したいからと言う。
もしもの時って何だ?と思ったが、あくまで備えだからとそれは何なのかは言わなかった。
何か上手く利用された気がしないでもないが・・・
「そうか。どっちにしろ俺はあいつに逃げられたからな。それに炎斬をこんなにしてくれたお返しもしたいし、俺がやるよ」
「トウヤ、私はやらんぞ」
ミシルはやはりデュカ・リーナの言うことに従いたくはないのだろう。こいつもラドンと戦いたいと思ったが。
「ああ、分かった。俺一人でやる」
ミシルの言葉に納得した俺は答えた。
・・・久々にあれを使ってみるか。いや、そうか炎斬は今使えないな。じゃあこの水渇刀で・・・
さて、どうするかと俺が今からの作戦を考えていると、
「あれは?」
ロランが何かを見つけたのか走っていった。
そういえば黒竜が言っていたバランってやつはラドンにやられたんだったよな。
会えると思っていた犬が殺されたのが悲しい、という気持ちはあるがそれと一緒に炎斬をどうしようという考えもある。あとでロランに聞いてみるか。
考えているとロランが息を弾ませながら戻ってきた。
「あいつが持ってたんだ!」
口に咥えていた物を地面に置いたロランが言った。
「これは、剣か?」
「そうだ。あの黒い奴があんな姿になる前にこれを使っていたんだ」
ラドンが使っていた?
!!
ということは、これが黒竜の言っていた、
「グラムってやつか」
初めて目にする滅竜剣を見て俺はそう呟いた。




