第47話〜仕込〜
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つまり魔物が現在活性化している理由を知りたくて、そして活性化をする原因を断つために何かしら手がかりを求めて、私達の探索結果を元に鬼ヶ島に神官を伴って赴いた結果、王家に伝わる宝刀の特殊能力を知り、その能力を試すため火の大陸に伝わる伝説の竜に会いに行きあわよくば魔物の活性化の原因が突き止められないか、と。そしてその甲斐あって原因が判明したのでそれを解決するため今度は火の大陸の竜と一緒に他の大陸の竜に助力を頼みに行こうとした矢先の出来事だった、らしい。私達と会ったのは。
(ついでにニルナ・カナワ、私の姉は今鬼ヶ島に居るらしい。目の前の鬼族と交換で。)
私はスサノオ姫が今に至るまでの一連の流れを一気に捲し立てるのを聞いていた。
「ーーーーーーと、いうことなの」
スサノオ姫が説明し終わったのか話をまとめた。
「はぁ。そうですか」
説明されたもののスサノオ姫が何故トウヤ達の行方を気にするのかはよく分からない。
「ふぅ・・・それでね、あまり大っぴらにしたくはないことなんだけど、トウヤ・ヒノカそれにリシナ・トゴウはね、」
何だろう?
「あの三大英雄の末裔なのよ!」
と、姫は胸を大きく反らして言う。
そのことか。
「そうらしいですね」
前にリシナさんがそんなことを言っていた。
「反応薄っ!?・・・・・・どうやらそのことは知ってたみたいね。もっとも今のことはまあついでに言ってみただけで、どちらかといえばトウヤ・ヒノカに会えないかと思って行方を尋ねたのだけど」
「?どうしてトウヤを?」
「今会ってもあまり意味はないらしいんだけど、このサラマンドラがね、」
傍らの少年を指して言うが。サラマンドラ?
『うむ。我の破焔斬を盗った者、子孫のそのトウヤ・ヒノカという者が今それを持っている筈なのじゃが、邪悪な龍に我が込めておいた力が吸収されたため』
剣としては使い物にならない状態になっておるじゃろうと、少年は言う。
「えっ?言っている意味がわからないんだけど?」
「つまりねーーーーーー」
少年の言葉を補足するように姫が説明してくれた。
永年封印されていた火の大陸の竜・・・造った剣・・・反逆した龍・・・等
この少年はどう見ても私より年下の人間に見えるのだが、永年生きた竜なのか・・・
「ーーーーーーということなの。だから行方を尋ねたのだけど」
「そうですか。今トウヤ達は、」
私はトウヤ達が龍巣というものを使って闇の大陸に人を探しに行ったことを説明した。
「成程ね。でも何故貴女達は龍巣の存在を知っていたの?あたしもこのサラマンドラに聞くまでは聞いたこともない代物だっていうのに」
「ああ、それはトウヤが、」
レヴィアタンに聞いたからそれを利用しようと考えた、というと、
『なっ!?レヴィアタンじゃと?レヴィアタンに会ったというのか?』
少年が何故かとても驚いている。
「え、ええ。トウヤはそう言ってました」
何故こんなに驚いているのかは分からないが私はそう言った。
『ふーむ・・・・・・我のものをあっさり抜いたことといい、レヴィアタンに会ったことといい、彼の者の血筋はいったい・・・?もしや・・・?」
「何か問題でもあるの?」
姫が少年に尋ねたように火の大陸の竜?がここまで悩むのは何か事情があるのだろうか。
『そうじゃな・・・もしやそのトウヤ・ヒノカという者は龍神様が言っていた・・・』
預言の者かもしれん、と少年は言った。
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三界に分かれた星・・・星が闇に覆われし時、我らを従えし人間の姿をした最も強き者が闇を斬り裂くだろう・・・そしてその者、星の加護を携えし者がやがて魔を討ち滅ぼすだろう・・・
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龍神様とかいうやつが持っている特殊な能力、何でも未来が見通せる予知が可能なその能力によってそんな預言めいたことを言ったらしい。まだ黒竜が生まれて間もない時に。
その預言にある人間の姿をした者というのがもしかしたら俺じゃないかとかいうのだが・・・
「いや、違うだろ」
『む・・・何故だ?』
「第一にその預言とやらがいまいち意味は分からん・・・・・・そもそも何でその人間の姿をした者が俺になるのか、世界は闇に覆われているとか、魔を討ち滅ぼすとか、何を意味しているのかがさっぱりだろ?」
『・・・我らを従えし、というところを考えてみれば汝にそれが当てはまると思うのだが・・・?』
「つまり、サラマンドラやレヴィアタンの力が込められた刀を持っているからってことか?」
『そうだ』
「いやそれだけじゃ何の証明にもならないだろ?」
『しかし・・・人間が竜族のものを複数持てる、ただその事実のみを考えてみても汝が預言の者とも思えるのだが・・・』
「でも俺が2つその剣を手に入れたのはたまたまだぞ?一つは家に伝わってたものだしもう一つは偶然出会ったレヴィアタンにもらっただけだし」
『それが重要なのだ・・・そもそも我等竜族に出会えるというのは余程の強者か余程の強運の持ち主か、その何れか、両方かを備えていなければ叶わぬことなのだ・・・』
「だからって、なあ?」
俺はどうしても俺をその預言の者とやらに仕立て上げたそうな黒竜の口調に辟易しながら、他の奴の顔を見回した。
「純粋な強さだけで考えれば、私はトウヤさんがその預言の者とやらでもおかしくはないと思います。ただ星が、つまりこの世界が闇に覆われるという状況にもなっていないし、我等、つまり竜族の皆さんを従えているというのもいまいちよく分からないし、なにより星の加護とはいったい何なのかが全くわかりません。だから、龍神様という方には申し訳ないのですが、私もトウヤさんと同じくそれは別にトウヤさんの事を指しているわけでもないと思うのですが」
「だよなあ!さすがリシナ」
『確かにその預言を聞いたのはもう数万年前になる・・・』
「・・・つまりだ。貴様ら竜族がその預言の者とやらを求めて永い年月が経つわけだが今までそんな者は現れなかった。それで偶々出会ったトウヤが預言の者に近しい状況だということで黒竜は先程からやたらとそれを推してくる、というわけか」
「俺もそんなところだろうと思うぞミシル」
『今までに預言の者に出会えなかったのも事実・・・』
「そもそもトウヤより強い奴なんていっぱい居るだろ?」
「そうそ・・・てフェン!そこは聞き捨てならないぞ?」
「いや、だってさ。俺も強さならトウヤとそこまで変わらないだろうし、このミシルさんだってかなり強いじゃないか。それに頭領も・・・」
「ぬうう。まあいいか・・・ということだニーズへッグ。俺はたまたま剣を持っていただけでその預言の者とやらじゃないぞ」
『・・・汝がそれでよければ別に我はよいのだが』
「それよりも、ニーズへッグはこれを直せないか?」
俺は懐から赤い鱗、炎斬のなれの果てを取り出して黒竜に見せた。
『サラマンドラのモノか・・・彼奴の力が素になっているものだからな。我にはどうしようもない・・・』
「そうか・・・同じ竜ならひょっとしたら何とかなるかもと思っていたんだが、どうするかな。やっぱり火の大陸に帰ってサラマンドラを探してみるべきか」
『だが、もしかするとあの者ならばあるいは・・・』
「!?誰か心あたりがあるのか?」
『うむ。1人の、否1匹の鍛冶師がな・・・もっともそれには魔力が込められておるからな。いくら此の大陸一の優秀なその者と言えど過度な期待はせぬことだ・・・』
「鍛冶師が居るのか・・・魔力の問題ならしょうがないが、可能性があるならちょっと行ってみるか。
・・・・・・1、匹?」
『そうだ・・・此処からそう遠くない村に集落がある。それにもし汝がそこに行くというのなら問題が1つある』
「問題?移動手段か?それなら、」
「分かってる。俺にまかせろ」
俺がフェンの顔を見るとフェンが頼もしくそう言った。
『そうではない・・・その者、達は人間を恨んでいる。だから汝の頼みを聞くかどうかは』
「恨んで?何かあったのか」
『そう・・・その者の祖先は人間にかつて別の大陸より此の大陸へと追いやられた者なのだ・・・』
「追いやられ・・・?何かがあったのか?」
『その者自体には何の責任もない。おそらくは』
信仰というものだろう、と黒竜は言うが。
「信仰?つまり自分勝手に何かを崇めたやつが自分の大陸からその鍛冶師の祖先を此の闇の大陸に追いやったっていうことか?」
『そう・・・人間以外の亜人と呼ばれる種族をその大陸から排斥したかったのかどうか・・・我にはヒトの考えはよく分からないが』
「人間至上主義、ってやつか?」
「ではその元々居た大陸というのは光の大陸になるでしょうね」
光の大陸の人間至上主義・・・それは人間以外の魔物や亜人、家畜用以外の獣を大陸から全て無くそうという偏った考え方のことだ。光の大陸ではかつて魔物が人間の数よりも多い時があったらしいがそれを外部の大陸から人間の兵を投入し駆逐していくことで自然と人間だけの国家を形成していく流れになっていったらしい。光の百年戦争、という書物で読んだだけだが。
今リシナが言ったようにおそらくそこだろう。
「ということはその鍛冶師は亜人か?」
俺は剣を直してもらえるのなら誰でもいいのだが。直せるかどうかは別の話でちょっと会ってみたいし。
『うむ。犬のような見た目、と言えば分かりよいか。その鍛冶師の者バラン・オオガミは狗族と呼ばれる種だ。かなりの魔力を誇っておる』
犬のような見た目か・・・
犬好きの俺はまだ見ぬそいつの毛並の感触を想像してつい顔がにやけた。
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あの時、己は食欲以外何の感情も持っていなかった。そんな己が自らの本能に従って目の前の竜を喰らったのは自明の事だ。幼い己は己より幼い竜を喰らったことはつまり己にとって正しいことだと思っていた。だが、龍神界の掟だかなんだか知らんが己は叱責された。憎むべきあの龍神に。
そして、持てる力の殆どを召し上げられ尚且つ魔界へと堕とされた。あの魔や邪が蔓延る悪魔の巣窟へと。魔力もなく力もない己は堕とされてすぐに全精力を振り絞って己の形を変えた。可能な限り硬く可能な限り目立たぬようにと、1本の黒い剣へ。
永い間、己は魔界のとある場所へと転がっていた。時たま剣を扱える魔物が己を手に取り使っていくが己を使いこなせるやつは居なかった。しかし己の特性・・・他者を喰らいそのチカラ、魔力を吸収することは可能だった。口内からその肉体ごと咀嚼して取り入れる量に比べればほんの僅かな量ではあったが。
しかしそのうちに・・・ある日絶大な魔力の持ち主が剣の形をしている己を手に取った。そいつは己を使おうとしてみたり魔法を討ちこんでみたりと滅茶苦茶なことばかりをしてきたが、己はその甲斐があって魔力を大幅に取り戻した。だが、何の反応も示さない己に飽いたのかそいつは、その魔界の統括者というやつは己を此の世界へと転送した。此の人間界へと。
・・・人間界で己は碌な目に遭わなかった。ある者は己を魔剣だといって遠ざけ、ある者は叩いたり打ったり加工しようとし、ある者は1握りの食料のために己を売り捌いたり・・・己は自らの意志ではどうしようもないためそんな人間共の為すがままになっていた。だが、己はついに巡り合えた!己を持つに相応しい人間と。
その人間は強さを渇望していた。それだけに竜や魔物に比べて取り込み易い、乗っ取りやすい、と己は考えていた。そして今まで剣の状態で蓄えていた力を使いその人間が死なないように気をつけてきた。だが人間の生は短い・・・そのことを知っていた己は頃合いを見てその人間から離れようとも考えていた。
しかしある日、その人間が膨大な魔力を手に入れた。かつて魔界で己を散々弄ったやつの手によって・・・そのことは己にとって嬉しいことでもあり面倒臭いことでもあった。それは何故か?
嬉しいというのはいつの日かそいつの身体を乗っ取ろうと考えていたため、己としてはより強靭な肉体になり魔力が使える素養がその身体にあるということは己にとって非常に都合がいいからだ。面倒臭いというのはそいつが肉体的、精神的にあまりに強くなりすぎれば中々肉体を乗っ取る隙がなくなるためだ。
だが、短いと思っていたその人間の寿命が魔物並に伸び常日頃からそいつの力をほんの僅かずつ吸収していくうちに己はかつての魔力をほぼ取り戻していた。それほど強力な人間が己を使うことの幸運を噛みしめながら。
そして・・・その人間は己のかつての弟、黒竜へと挑んだ。莫迦な人間だとも思ったが己にとってそれは結果的に都合がよい出来事だった。何故なら弟・・・ニーズへッグが己の姿を認めた際に何を思ったかこの人間にセフィロトの果実を与えたからだ。己と出会う前のこの人間に何があったかは知らないが結局この人間、羅義神人は果実を食ったことにより記憶を取り戻し、己が取り入る隙を作った。だが、己はこいつを完全に乗っ取りきれていなかった・・・
餌を求めてこの場所を見つけ適当に餌を喰らう。此処まではよかった、しかし何故か此の場所に羅義神人の心を乱した存在であるこいつの親が姿を変えて居た・・・己の目を通してそいつの姿を認めた己の中の羅義神人は己を身体から追い出そうと己の頭の中で暴れ回った。己はそれを鎮めようと魔力消費の大きな殲滅魔法を撃ち無差別に回りに居る奴らを殺そうとしたがそいつは・・・羅義神人の親とやらは死んでいなかった。そして再度そいつの姿を見たために先程よりも強烈な頭の痛みが己を襲った。
それを抑えるため膨大な魔力を使う危険な賭けではあるが己は己の姿を固定する魔法を使った。外敵や内面からこれ以上己を侵食させないために・・・己を堕とし虐げてきた奴らに復讐の花を咲かせるために・・・
~~~
僕はその姿を見たとき何故か綺麗だと感じた・・・まるで水辺に咲く1輪の、
「花?」
まさにそんな言葉が当てはまる姿を、さっきまで黒い生き物だったあいつはしていた。
「神人・・・?」
!?
横でそんなことを呟く声がしたので何か知っているのかと思いりいなちゃんのほうを見てみると、
「りいなちゃん?その姿は?」
先程まで1m程度しかなかった筈なのに今のりいなちゃんはその1・5倍ぐらいの背丈になっている。
「姿?・・・・・・ああ、成程ね。どうやら私は、」
蘇ったようね、と言う。どういうことだろう?それに口調が、
「りいなちゃん?君は本当にりいなちゃんだよね?」
妙に大人びたというか先程とうって変わったその喋り方に僕はつい尋ねた。
「ええ、そうよ。私はリーナ・・・先程まで記憶がなかったの。貴方はだれ?何故私は此処にいるの?」
?先程まで記憶が無くて今はその前の記憶が戻って、今度は僕のことも忘れている?
そのことに気付いた僕は少しがっかりしながら、
「・・・僕はロラン・オオガミ・・・君は突然この村にやってきたんだ。それで僕は君と友達になろうと、」
「そう・・・御免なさい。そのことは全く憶えていないの。でも私が此処に居る理由は貴方を見て何となく分かったわ」
「此処に居る理由?それに僕を見てって?」
「そう。私は転生して此処に来たの・・・無意識に、バランに会いに。貴方にそっくりな・・・」
!?
「長老のことかい!?」
長老、バラン・オオガミはでも、
「バランの魔力が無い・・・?成程ね。あの黒い神人にやられたのね・・・」
「黒い神人?」
「・・・微かにだけど、あれからは神人のオーラを感じるわ」
そう言いながらりいな・・・リーナちゃんは黒い生き物が変貌した物体を指した。
「神人ってだれ?」
僕が尋ねるとリーナちゃんは、
「私のこども。会うのをずっと待っていた・・・」
顔を歪めてそう答えた。
笑顔?いや、どこか寂しそうな、哀しそうな・・・
僕はリーナちゃんが見せた形容できない表情の顔を見て何故だか息が苦しくなった。
「兎に角、あの黒い中に神人が居る筈なの。黒い繭?花?の中に。だから私はあれを壊すわ」
「?でもリーナちゃん。あれはさっきまであの黒い生き物、竜だったんだよ?いったいどうやって壊すっていうのさ?」
「魔法で」
「魔法?」
たまに村の大人が見せてくれるやつだけど、
「リーナちゃん、君は魔法を使えるの!?」
僕はやろうとして失敗したあれを。
「ええ。それにしてもあれは・・・」
「分からない。黒い竜が叫んだと思ったらあんな姿に」
「いや、そこじゃなくてねロラン?何故動かないのかと思って」
「動かない?」
そう言えばあの姿になってから喋りも動きもしなくなった。あれはあの黒い生き物が変化した姿なのに?いったいどういうこと?
「まあいいわ・・・」
封印魔法の一種でしょう、と言いながらリーナちゃんは黒い生き物に近づいていった。
「魔封印滅!」
パァァァ
リーナちゃんの手が光っ、
ガァァァァンッ!
「っ!?キャンセルガードとはね。しかも余程強力な・・・」
キャンセルガード?
今の一連の動きは何だったんだろう。
黒い生き物に翳したリーナちゃんの手が光ったと思えばその光が弾けとんで・・・
「・・・どうやら一筋縄ではいかないようね」
「リーナちゃん・・・それは?」
僕は先程まで肌が白かったリーナちゃんの両腕の先が何故か黒くなっているのを見てそう尋ねた。




