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第43話〜人と竜と魔〜



真なる魔力の始祖・・・三界に分かれた世界の一つ、魔界を統べる者・・・その姿巨躯にして無数の魔導を扱う、無尽蔵の魔力を持つ者・・・強さに際限無き者・・・その姿を見た者は魔に染まることとなる魔界の統括者・・・だが、その生まれや存在意義、目的を知る者は世界の何処にも居ない・・・



・・・かつてサラマンドラが龍神界という場所に居た頃に龍神という名の竜から魔界に存在する者のそんな話を聞いたことがあるらしい。そしてサラマンドラが3万年程前に自身を闇の檻に封じ込めた見た目が人間のような者がそう名乗っていたらしい。それがデュカストテレスという名の魔族だと。


あたしがその話を聞いて思ったこと。

それは、



『魔界が実在したの!?』


ということだ。


『うむ。何を驚いているかはわからんが魔界は実在するぞ。この世界よりも、』


さらに地底深く太陽の届かぬ場所に、とサラマンドラは当たり前のように言うが。


『本当に・・・?』


『本当じゃ。そもそもこの世界は現在こそ容易く行き来出来ぬように、龍神界、人間界、魔界、と3つの世界にわかれてはおるが元は1つの世界じゃったらしい・・・大昔、我ですらまだ生まれていなかった頃ではあるがな。その分かれる前の世界では龍も人も魔族も共に暮らしておったそうじゃ』


『え?何で世界は分かれたの?』


『さあ・・・我も龍神様からそこまでは聞いてはおらんかったからの・・・とにかく我ら7体はこの人間界を脅威から護るという使命を授かって龍神界より落とされたわけじゃが、』


『?・・・ちょっと待って我ら[7体]?』


『む?何かおかしいか?』


『ええ。貴方の言い方だと竜が7体この世界・・・人間界に居るように聞こえたのだけど』


『ああ、知らんかったのか?我以外にも6体この世界には竜がおる。各大陸にな・・・』


『そうなんだ・・・確かに他の大陸や国との交流はそこまで多くはないからそんな話を知らないだけなのかもしれないけど、』


七神剣物語から考えれば確かにそうかもしれない。火の竜が造った剣が神剣の1つなら他の大陸の竜が造った剣も神剣。それを全て合わせれば7つ、か・・・

実際にあるかどうかは分からないけど。


『じゃが・・・・・・・・・・・・』


『・・・?』


あたしはサラマンドラが何かを言いにくそうにしているので言葉の続きを待った。


『現在はもう1体、竜がおる・・・!我が予期せぬ者が・・・!』


『?つまり、この人間界には8体の竜が居るってこと?それに貴方は何故そんな口調なの?』


サラマンドラは口惜しそうにもう1体竜が居る、と言うが。仲間・・・いや家族みたいな者ではないのだろうか?


『我は・・・我等は奴を止めねばならん・・・かつて同族を喰い殺し龍神界を追放されたあの者を』


『それが先程貴方が言っていた優先すべき事柄なの?』


『そうじゃ。暴食の邪龍ラドン・・・どうしてかは分からぬがあ奴は魔界よりこの人間界に顕現しておる・・・』


『その竜も魔界に居たの・・・?それにしても、貴方は何故それが分かったの?確か外部と交流する手段がなかったはずじゃ?』


『・・・我がこの3万年の間、唯一外部の事を知りえたのは我が造った武器、破焔斬・・・それに与えられる力から魔力や闘気オーラ精気プラーナ等の状況を感知していたのじゃが、』


それに込めていた自身の魔力が全てそのラドンに奪われたのを感じた、とサラマンドラは言った。





~~~





人間?

巨大な何かが降った跡のような大きな凹みに近づき、その中心で動くものを一目見ておれはそう思った。

だが、


「・・・微かな魔力を感じる・・・?」


ミシルの言う通り見た目が人間のそいつからは魔力のようなものを感じる。


「ラドン・・・羅義神人じゃないよな」


最初、羅義神人からラドンへと変貌したあいつがまた元の羅義神人に戻った姿なのかとも思ったが。


「・・・魔力の種類が違う・・・奴ではないようだ」


じゃあ、いったい誰なんだと俺はそのぼろぼろになった奴を見ていた。


「そんなことよりも!あの方は瀕死じゃないですか!」


リシナがそんなことを言いながら倒れているそいつに急いで近づき手を翳した。


ファァァァッ



そんな音が聞こえてリシナの手が光り出した。あれが退魔術の治癒ってやつか。

俺が感心しながらリシナの姿を見ていると、



「・・・なあ、トウヤ」


フェンが俺に話しかけてきた。


「なんだ?」


「あのさ、あの人・・・ミシルって人なんだけど」


「ミシルがどうかしたのか?」


「うん。あの人も一緒に風の大陸に連れて行くのはどうかと思って」


「?あいつが行くと言えば行くが。でもあいつはまだ記憶が戻ってはいないぞ?今は俺達と行動を共にはしてるけど下手したら此方に斬りかかってくるかもしれないぞ?」


俺はリシナと倒れた奴を見ているミシルを見ながらフェンに言った。

俺の話を聞いてもミシルは他人事のような顔をしていた。

記憶が無い、っていうのは厄介な話だ。どうすればあいつの記憶が元に戻るのだろうか?


「それはそうだけど。でもあの人もかなり強いよな?あの闘気・・・」


「まあ、そうだな・・・そこまで言うのなら、フェンが上手く説得すればいいんじゃないか?」


「そうか。そうだな。ちょっと聞いてみる!」


俺がそういうとフェンはミシルに近づき何かを話し始めた。

・・・そういやミシルはラドンに恨みをもたれていた様子だったな。あれは何と言ったっけ・・・確か親が殺されたとかなんとか・・・どういうことだ?

・・・それに、今倒れている奴はいったい何なのだろうか?ラドンの魔力を追ってこの場所・・・あたりに何もない此処まで来てみたら人が倒れていて・・・

考えても答えは出なかった。



そして、


「取りあえず治癒は施しました」

リシナは治癒が終わったのか、そんなことを言いながら此方に戻ってきた。


「もう治ったのか?」

俺が尋ねると、


「ええ。おそらくですが・・・あの方は生命力が凄まじいのでしょう」

「あいつはもう起きたのか?」


倒れていたあいつを見ていると動いてなかったからな。気絶していたのだろう。



「いえ、まだ起きてはいないです。息があるのでそのうち目覚めるとは思うのですが」



「そうか・・・見つけた以上は放っておくわけにもいかないから、そいつが起きるまでこのあたりで待つか」


俺は何やらまだ話をしているフェンとミシルを見てからリシナにそう言った。





〜〜〜






『黒竜同士の戦いとはね!中々珍しいものを見せてもらった!』



人の青年の姿をしたその者、デュカストテレスは上機嫌そうに言った。



『まったく!肉体が無くなっても色々とやってくれるな神人君は!嬉しい誤算、というやつかな!』



まさか邪龍の姿になってもあの人間特有のチカラを使えるとは思ってもみずにデュカストテレスは顔を歪めていた。

そして、



『黒竜君は永年闇の大陸で戦ってきただけのことはあるね!・・・龍の眷属というのはみんなどれもこれも大したもんだな!』



自分でもその封印を行ったことを忘れていた、かつて適当に封じ込めた火の大陸の竜の封印が解けたことも鑑みて、そうひとりごちた。



『それにしても、邪龍とまで呼ばれるあのラドン君は何故黒竜君に止めを刺さなかったのかな?』



先程まで覗き見ていた黒竜同士の戦いの決着についてふと疑問に思ったが、



『ああ!もしかして血族だったことによる情、というやつかな?』



と思い至った。

かつて龍神界で龍を喰い殺したというあの邪龍君がそんな甘い感情を持っているだろうか?

それとも、



『まだまだ完全に乗っ取りきれてはいないということかな?』



だとしたら付け入られる隙はあるな、と他人事なのに要らない心配をした。



『人間界か。僕が前に赴いた時よりも大分楽しそうな場所になったね!まだ魔の割合は少ないけど、ここまで来たらそろそろ出番かな!』


顔を歪めきったデュカストテレスは、



『君もそう思わないかい!』



突然後ろを振り向きすぐ傍に居た者に話しかけた。



「・・・」



しかしその者が答えることはなかった。



『あれ!まだご不満かい!まあ君が行くにしてはまだあの世界の魔力は少ないかな!』



「・・・」



しかしその者・・・その翼の生えた者は答えずにデュカストテレスの顔を見つめているだけだった。





〜〜〜





『うっ・・・』



俺とリシナが雑談していると倒れている奴から呻き声が聞こえた。



「起きたみたいだな」



俺は体を起こし周りを警戒するように見回しているそいつに声をかけた。

その姿は黒い長髪に黒い瞳をしており、日によく焼けているのかついでに皮膚も黒い。



『・・・汝等は誰だ?』


その黒い男、多分親父と同じ年齢ぐらいか40歳前後の中年は俺達の顔を一頻り眺めて尋ねてきた。



「誰と言われてもな。此処を目指して来たらあんたが傷を負って倒れてたんで治してやった者だが」



実際はリシナが治したわけだが。


『そうか・・・我は負けたのだな』


何か落ち込んだように黒い中年が言うが。

負けた、というのは



「ラドンにか?」


と思い、


『!?汝は何故その名を?』


尋ねると黒い中年が何故か驚いていた。

どうでもいいがこいつの声は妙に頭に響くような気がするな。



「何故って言われても・・・あいつと会った時に自分で名乗っていたからな」



『会った・・・汝は奴に喰われなかったのか?』


「ああ。何とかな。苦戦はしたが何でか途中であいつが撤退したからな」


『?汝は見たところ人間のようだがよく奴を退けたものだ・・・』


「これのおかげかもな」



俺は見せびらかすわけではないが水渇刀を抜いておっさんに見せた。



『それは・・・!レヴィアタンの魔力?汝はいったい?』


「・・・大したもんだな。そのことが分かるおっさんは何者なんだ?俺はおっさんに聞きたいが、あんたは何で魔力を持っている?何で魔力を感じることができる?」



俺が警戒して聞くとおっさんは僅かに躊躇う素振りを見せたが、



『まあ、よいか・・・話してやろう・・・我は黒竜(ニーズヘッグ)。この闇の大陸の中心に存在する生命の樹を守護する者だ・・・しかし、ラドンがこの世界に顕れる可能性を考え、此処の上空で網を張っていた。そして、先程まで奴と戦っていたのだ・・・』



先程のラドンとの戦いを語りだした。




▽▽▽





『さらばだ、ラドン・・・』



我はラドンの胸に突き刺さった(グラム)を見てついにこの手にかけた、と思った・・・


本音を言えば殺したくはなかった・・・



「な、何が起こった・・・何故、己の・・・」



ラドンが驚愕の眼差しで我を見つめていた。



『・・・伝説の滅竜剣(ドラゴンスレイヤー)を持った人間形態で唱えれば使える魔法、龍心貫(シグルズ)・・・それは強さや場所に関係無く最も近くの龍の心臓を目掛けて貫く・・・』


「・・・そういう、ことか」



徐々に(ラドン)から感じる魔力が減っている。

生命力が・・・



『もう眠れ・・・』



「・・・ふんっ!」


ズシャッ


『・・・!』


剣が自身に突き刺さった状態から無理矢理後ろに跳びラドンは剣を抜いた。



「・・・ど、どうやら一度心の臓をつ、貫けば終わりらしい、な」


心臓を貫かれたにも関わらずラドンは動き、喋っている・・・

「はあ・・・はあ・・・お、己の肉体が己だけの、ものならば、終わっていたかもしれんな・・・」



『!・・・そういう身体の仕組みか・・・ならばもう一押し・・・!』



我も変化の魔法と龍心貫を使い魔力は減らしてはいるが、まだ黒焔ならば・・・

「させる、か・・・」


バシュッ



『!消えた、だと』


あの傷でそこまで速く動くとは思っていなかった。



ガシィッ

!?



「・・・掴まえたぞ!ニーズヘッグ!」



『なにっ!』



一瞬の隙に我はラドンに羽交い締めにされていた。



「闘気、全開!くらえ・・・!」

ビュウウウッ


ラドンは我を羽交い締めにしたまま頭から垂直に地面へと向かった・・・!



『捨て身だとっ?其処まで勝利に執着するか、ラドン・・・!』


「己は凡てを破壊する・・・!堕ちろニーズヘッグ!」


『ラドン・・・!』


「ハアッ!」


バッ!


地面に落ちる直前のところで背後から掴まえられている感触が無くな・・・?


ズドンッ!




我は地面に激突し意識が遠退いた・・・




△△△




そして目が覚めたら俺達が居た、らしい。



しかし、と俺は疑問に思ったことがいくつかある。



「おっさんは自分のことを黒竜と言っていたが、ラドンとは何か関係があるのか?おっさんの話だと知り合いみたいだが・・・?」



『・・・我の本来の姿は黒い巨竜。今こうして変化の魔法を使い人の姿を借りているのは、』



(グラム)を使うため、だと言うが。


「グラムって何だ?」


まあ巨大な竜ならば剣は小さすぎて使えないかもしれないが。



『竜を滅するための武具・・・大昔、樹に近づいた人間より手に入れた物だ』


「ふうん・・・竜を滅するねえ。もしかしたら神々の武具ってやつか?」


『・・・おそらくはそうだろう。太古の時代に神が造ったとされるものだからな。そして、その威力や特性は、』



おっさん・・・黒竜が補足した説明によると、グラムという剣は扱う奴が相対した竜に対してある魔法を唱えれば絶大な威力を発揮するという、対竜用に特化したものだそうだ。まあその魔法は教えてはくれないが。


「?でもその剣は何処にあるんだ?」



黒竜が倒れていた場所の付近にはそんなものはない。


『・・・おそらくはラドン・・・我が血族、ラドンが持っていったのだろう・・・』


「・・・そうか。おっさんとラドンの関係は何となくわかった」


つまり黒竜とラドンは人で言うところの親子とか兄弟とかそんな関係なのだろう。神々の武具がどんなものか見てみたかったが。


それと俺はもう1つ疑問がある。

それは、



「でも、何でラドンは気絶した黒竜を喰わなかったんだろう?」


ということだ。

今はあまり感じはしないが黒竜はその身体から魔力らしき雰囲気を放っているのに。あのラドンなら魔力を持っている生き物は喰うんじゃないか?



『・・・それは我にもわからん。汝の言うとおりだ。暴食とまで異名を取るあのラドンが何故・・・』



黒竜に聞いてみたが首を傾げていた。





〜〜〜





・・・これ程の傷を負うとは。



ラドンは闇の大陸の何処か森の中を歩いて進みながら先程黒竜と戦ったことを考えていた。



しかし・・・己は何故、黒竜(あいつ)を喰わなかったのだろうか。常ならば敵は倒そうが倒すまいが喰えるときには喰うこの己が何故・・・

もっとも、かなり魔力を消耗していた黒竜(ニーズヘッグ)を喰ったところで大した魔力吸収はできないだろうが。

それよりも先にこの傷を治すほうを優先させたのか?己が無意識に・・・



自身の胸に空いた穴を見ながらラドンは、先程取った自分の不可解な行動を何故か無理に理屈をつけて納得させていた。





「あそこは何だ?」



そしてラドンが考えながらしばらく進んでいるといくつかの建物がある集落のような場所が見えてきた。



「魔力の持ち主、しかも只の魔物でもなさそうだな。餌どもが、居る・・・!」



その集落、というよりも村から感じる複数の強大な魔力に対してラドンは涎を垂らしそうな表情でそんなことを呟いた。




・・・そこは狗族と呼ばれる者達が住む村だった。

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