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第41話〜込めた想いを〜

〜〜〜




魔界の統括者によって闇に囚われて幾年月経ったのだろうか・・・あの人間の女、心や感情が同胞の誰よりも豊かなあの人間の女は・・・

あの時・・・油断した我・・・・・・



突然闇の檻に閉ざされた、火竜サラマンドラはその場から動くこともままならずに答えの出ない思考のみを永い間繰り返していた。



だが・・・考えようによっては・・・・・・この闇の中で未だに生きている我の魔力は完全に尽きてはいない、ということか・・・

闇に閉ざされた際に世界との繋がりが遮断された感覚に陥り、魔力も録に使えない上に指先1つ動かすこともできない現在の状態であるにも関わらず・・・

これが・・・失われた魔法、というやつか・・・


では・・・我に残されたこの僅かな魔力を使って何ができるだろうか?

思念波を飛ばし他の竜に助けを求めるか・・・?

いや、それは龍神様の考え、竜同士の接触を禁ずるという考え、に背くことになりその上この魔力の檻、岩の我は外界と一切遮断されているのでそもそも不可能か・・・

第一・・・竜族の中でも上位の強さを誇る我が他のものへそんな真似をするはずもない・・・

ならばどうするか・・・・・・

思えばこうして自問して幾年の月日が流れたのだろうか・・・?それも定かではない・・・

かつて龍神界に存在していたころは、遺憾なく力を発揮できていたものだが・・・目的もなく永年人間界に居たおかげで勘や思考能力などが大分鈍っているようだ・・・この平和な世界で。

以前の我ならばあのような不意討ちをくらうべくもない・・・しかしこの状態、岩になってそれを云っても栓なきことか・・・しかし・・・我にもっと力があればこのような闇の戒めなど破壊するのに造作もないことなのだが。龍神様や剣や黒のような・・・

力が・・・チカラがあれば・・・

!!

・・・そういえば龍神界に自分が存在していた頃龍神様が仰っていたな。三界には太古の昔に神々が造った武具がある、と・・・体が自由に動くときにそれらを真面目に探して手元に置いておけば我はこのような状況になっても何とかして打破できたのでは・・・?

そう考えると・・・

いや、しかし。このような状況ではあるが微かに魔力が残っているので我でも何とかそれらしき武具が造れないだろうか・・・?

・・・・・・ものは試しか・・・


・・・そうして我は自分の皮膚に生えている鱗を魔力を集中させて一枚吹き飛ばした。この鱗は並の火焔程度ならば弾き飛ばす我の自慢のものであり、1枚とはいえ無くすのは惜しいが・・・この状況ではそうも言っていられない・・・これを基に・・・



サラマンドラはそれからさらに永い年月をかけてその一枚の鱗に自身に残っている魔力と自身の想いをほんの僅かずつ込め始めた。



そしてさらに永い年月が過ぎた・・・



・・・漸く形になったか。刀の形に・・・我の僅かな魔力と、此処から出たいという感情、生物の感情を知りたい、という想い・・・


しかし、造ったはいいがこれをどう使うかだが・・・この闇の檻、岩を切り裂けないものだろうか・・・?


サラマンドラは生命を維持できる限界まで魔力を使い自らを取り巻く黒い壁を岩を切り裂くために、自分が造った武具、破焔斬を目の前の闇に向かって動かした。


ズバッ



しかしその後に起こった出来事はサラマンドラにとって予想通りでありまた予想外のことでもあった・・・



予想通り破焔斬は黒い壁を突き抜けて外界に出た。しかし予想外だったのは、



・・・?

我が動けぬ・・・

しくじりか・・・?


闇の戒めの中と外界を繋げれば何とかなる、と考えていたが・・・外の景色こそ見えるようになったものの、魔力の使いすぎか身動ぎ1つも出来ない・・・


だが、その状況でも1つだけ救いはあった・・・外界に向けて声が出せるようになったことだ。おそらくだが・・・先程近くを通った獣に声をかけてみたが我の声を聞いて驚いたのか、はたまた怯えたのか逃げていってしまったが、その挙動を見るにどうやら我の声は聞こえてはいるようだった。

気長に待てば言語を解する魔物なり生き物なり何なりが近くを通るだろう・・・その機会を待つとしよう・・・



数万年かけて漸く一歩前進した(かに思えた)サラマンドラだったが、それから暫く月日を経たある日、またしても予想外のことが起きたのだった・・・




▽▽▽




!?

強大な気配を感じる・・・

だが・・・この気配は魔物ではない・・・?



その日サラマンドラは何らかの強大な力を持つ者が自身の近く、自身の造った刀の近くを通る気配を感じた。



破焔斬だけが外に出てどれ程の時を経たのだろうか・・・外に出てからというもの確かに付近を様々な生き物が通りすぎていった。獣や魔物・・・しかしその何れもが我の言葉を理解できるほど知能の高い者ではなかった・・・知恵ある生き物、この人間界で隆盛を誇る人間という生き物はついぞ通ることはなかった・・・しかし今この気配はその人間ではないか・・・!


我はそんな期待を込めて外界に向けて喋りかけた。

『そ・・・の生き・・・我の、声・・聞こえ・・か?』


「!?・・・何だ?誰だ!」


その生き物は我の呼び掛けに反応した。好機・・・!


『我は・・・う・・・の・・・・み・・・・・・』



馬鹿な・・・!声が出ない、だと・・・?

[我は火の竜、汝のその強大な力を持ってこの闇の戒めを破壊してくれないだろうか]

と、言ったつもりだが・・・



「・・・?空耳か?誰か喋りかけてきた気がしたんだがな」



!?

そうか!・・・此の闇の戒めから外界に声をかけるだけでも今の我の僅かな魔力ならば大幅に消耗するということか・・・!

日頃から獣や魔物に声をかけてきた代償がこの千載一遇の好機に現れようとは・・・・・・!

我は自分の浅はかさを呪った・・・!



「・・・まあいいか。もしかしてこの辺りに居るとかいう伝説の竜かと思ったけど・・・ははっ。まさかな。それにしてもこの刀は何か不思議な力を感じるな・・・オーラのような、魔物のような不思議な・・・・・・!!まさかこれが神剣ってやつなのか・・・?」



待て・・・我は此処に居る。強大な力を持つ者よ、この戒めを解いていけ・・・


我はどうにかして声が出ないか身体の奥底から力を振り絞って叫んだが声は一向に出ない・・・!



「この刀は凄そうだ。我が家の家宝にするかな・・・未だに絶えることのない魔物に対抗するために、子供・・・いや孫とかに受け継がしてもいいな・・・俺も須佐之男や一弥を見習って何かを創ろうと思っていたが・・・こんな立派な刀があるなら。そうだな・・・今までの経験を活かして剣技でも創るか。よし!」


と、その生き物・・・人間は一頻りひとりごちた後、地面に刺さっていた破焔斬を抜き張り切って何処かへと去ってしまった・・・

!?人間とはあのような強大な力を持っているのか?我の破焔斬をあっさりと抜く程の・・・

もしくは・・・今の人間が特別なのか・・・?

魔力とは違うあの強大なチカラ・・・




だが、そんなことよりも・・・

我は、なんという浅はかな真似を・・・

我はその日、永い生涯に於いておそらく一番の後悔をした・・・




△△△





その後数百年経ち、我の思惑とは違う形だったもののある一体の魔物の手により漸く戒めから開放された。

ただ魔力は完全には回復してはいないので暫くはこの場所で休養し力を蓄えておこう。


そう思っていた矢先だ・・・かつて僅かな魔力と我の想いを込めて造り上げた破焔斬の魔力が尽きたのを感じたのは・・・その我の造った物から魔力を奪った輩も判明している・・・それはかつての我が同胞・・・魔界に堕とされた・・・あの反逆者・・・

その者、ラドンを野放しにするわけにはいかない・・・しかし今の我に何ができるか?そんなことを自問しているとき、


「このあたり?」


そんな人間の声がした。




〜〜〜





あたしは火喰い島でクニツナの特殊能力を知ったとき、あることを試したくなった。

それは、



「このあたりで火の竜の声を聞いたと思うのですが・・・」



このあたり?と尋ねたあたしに対してあまり自信がなさそうにガロウが言う。

あたしはクニツナを使って伝説の火竜と対話しようと思ったのだった。

そのためにイグナに着いてすぐにカグツチに直行せずガロウともう1人を伴って南下してこの山奥にきたのだが、



「貴方はどう?何か感じるかしら?」


「そうだな。微弱だが確かにこのあたりに魔力を感じる」


もう1人の同行者、ジン・ガトウがそう答えた。



「そう。ガロウの記憶と言えども馬鹿にできないのね」


「姫・・・貴女は自分を何だと思って・・・」


「ともかく。この近くに火竜が居るのね!」



ガロウが何かを言いかけていたがあたしはそれを黙殺し辺りを見回した。



「・・・まあ、今さら姫に何を言われようが大して気にはしませんが。確か、以前火の竜は大きな岩の中に居た、というよりは岩そのものだったのですがその岩が見当たりませんね」



「岩ねえ・・・」



人で言うと数人分ぐらいの大きな岩だったというガロウの言に私は疑いの視線を向けた。

だってこのあたりにそんな大きな岩なんてないから。



「いや。自分達が以前来たときには確かにあったのです」



「その火の竜とやらかどうかは知らんがあそこから魔力は感じるぞ」



と、ジン・ガトウが指差したところを見ると木でできた小屋?みたいな物があった。

いや、竜が居るにしては小さいでしょ!と突っ込みたくなるぐらいに小さい建物なんだけど・・・

多分4〜5mぐらいの高さ、幅、奥行きしかない。



「姫?竜かどうかはともかく行ってみる価値はありそうです。自分もあの小屋の中に何となく何かが居る雰囲気を感じますので」



2人にそう言われては行ってみるより他にない。

少なくとも竜は居なさそうだけど・・・

まあ、



「じゃあ行ってみましょうか」



あたしは2人を連れてその小屋へと向かった。



~~~




外でそんな人間の会話が聞こえてきたので我は小屋の中でその3人を待ち構えていた。



トントンッ



と、我が居る小屋の扉を叩く音がしたので、


『誰だ!』


我は人間と思われる者が外に居ると思い小屋の外に叫んだ。



~~~




『誰だ!』



小屋の扉を叩いて確認してみたが2人が言う通り確かに中に誰かが居る。

何か頭に響くような声色だったが。


中に入ろうと扉の取っ手に手をかけると、


「姫、ここは自分が」


ガロウに制された。



かちゃり、とガロウが警戒しながらゆっくりと取っ手を回して扉を開けると、



『そのチカラ・・・汝は先日我の上に登った者じゃな?』


尊大な口調でガロウに話しかける一人の少年が居た。




~~~





「ティアマット?」


俺はレヴィアタンやラドンとの会話から火の大陸の竜の名前はサラマンドラだと思っていた。そして炎斬はどうやらそのサラマンドラが造ったらしい。そこで俺がふと気になりフェンに風の大陸の竜の名前を聞いたところそんな答えが返ってきた。

風の大陸の竜はティアマットっていうのか。



「そうだ。頭領の話だとそのティアマットが自身のチカラと想いを込めてこの風呼びの太刀を造ったらしい」


「成程な。でも、チカラっていうのはレヴィアタンやラドンが持ってるみたいに魔力ってやつのことなんだろうが・・・想いってなんだろう?」


「・・・風に乗って何処までも自由に・・・みたいな感じの想い、だと俺は思う」


「俺は思うって。それはお前の推測じゃないのかフェン?」


「確かに推測だけど。でもこの剣を使っている最中によくそんな気分になるから、多分そうじゃないかな」


「まあ、そういう根拠があるならそうなのかもしれないが・・・・・・それにしてもどうしたもんかな、これを」


俺は炎斬から俺の拳大の大きさの鱗に変わった物を見ながら呟いた。

俺がフェンにふと風の大陸の竜のことを尋ねたのは俺の剣、炎斬から刃が無くなり1枚の鱗になったためだ。

なにしろ切先が折れて食われただけでそんな変化をするなんて考えもしていなかったからな・・・

どうやって元の剣に戻るのか方法が分からないので同じように竜にまつわる物を持つフェンに何かいい案が浮かばないかと思い尋ねてみたが。


魔力と想いか・・・そう聞くと炎斬はサラマンドラ本人が居ないと元の形に戻らないのかもしれない。

特にサラマンドラの想いなんて俺にはさっぱり分からん。

というかサラマンドラって何処に居るんだ。


「・・・そんなことよりも私はあの黒き竜・・・ラドンがいつ攻めてくるか、そちらのほうが重要だと思うが・・・」


俺が悩んでいるとミシルがそんなことを言った。

確かにな。俺達を食い殺すとか言ってたからな。あの爬虫類・・・竜もオーラを感じ取ることができるようだったし。

それにあいつは他人の魔力ってやつも吸収して強くなるからな・・・サラマンドラの造った炎斬に込められていた魔力も無くなって・・・?想いとやらもか?


「黒い竜ですか・・・」


俺が考えているとリシナが目の前の大きな樹を見上げながら呟いていた。


「なんだ?何か気になることでもあるのかリシナ?」


「気になるというか・・・此処が本当に闇の大陸だとするならば・・・」


俺の問いかけにも何処か腑に落ちないといった様子でリシナが樹を見ながら首を傾げている。


「これが伝え聞く[生命の樹]なのではないでしょうか?」


「生命の樹?」


リシナが巨大な樹を見ながら言うが。生命の樹ってなんだ?


「ええ。生命の樹、セフィロト・・・一説にはその樹の果実を食べることで知恵や生命力に恵まれるとか」


「果実?食ってみたいけどどこにもってないぞ?」


「そうですね。私も気になってさっきから探していたのですがどこにも生っていないようです」


「これだけでかい樹だと案外雲にかかる場所ぐらいに生っているのかもしれないが、」


確認する手段がないな。


「・・・ふむ。私が聞いた話と少し食い違うな・・・」


俺とリシナが話しているとミシルがそんなことを言い出した。


「どう違うんだ?」


「・・・ああ。私がそのランザー・・・だった者と行動を共にしていた時だがーーーーーー」


ミシルが傍らの死体を見ながら、此処に来るまでの経緯を説明し始めた。




「成程な。つまりミシルとそのランザーって奴が突然この樹のあたりに3つの魔力を感じたってわけか」


「・・・そうだ。それまで何一つ感じなかったにも関わらずだ。私とランザーが此処に辿り着いた時には魔力は2つになっていたがな・・・その際のランザーの言を借りるならば・・・この樹を護っている黒竜が死んだんじゃねえのか?ということだ。何でも闇の大陸に伝わる話では生命の樹を護るその黒い竜を倒せば力が増すという話らしい・・・」


「黒竜ねえ・・・ラドンのことじゃない、よな?」


あいつも自分のことを竜と言っていたしその姿は真っ黒だったので俺は尋ねた。

ただ伝説にある黒い竜があいつなら最初から此の場に居ないとおかしい。ラドンは俺達の見ている前で羅義神人からラドンに変わったからな。


「・・・違うだろう。それに付け加えるならば黒竜は樹を護る存在らしい。あのラドンのように全てを破壊しようとすることはないだろう・・・」


「だよな。まあ上まで登って果実が生ってるかどうか確認してみるのも無理そうだしその黒竜とかも居ないし、もう此処には用はなさそうだな」


俺は樹を見上げながら言った。

できればその果実とやらを食ってみたかったが・・・


「そうだな。じゃあトウヤ?お前の仲間も見つかったことだし帰ろうぜ!」


フェンが俺に言った。

が、


「うん。それなんだけどなフェン。それにリシナも聞いてくれ」


俺は2人にミシルの現在の状態を説明した。つまり俺達との記憶を失っていることを。




ザッザッザッ


説明している最中にそんな音がしているのでちらりと見るとミシルが何やら地面に穴を掘っていた。

「・・・ランザーよ。短い間とはいえ手を組んだよしみだ。貴様を弔ってやる・・・」


そして死体に向かってそんなことを語りかけていた。





~~~






喰らいつくしてやる!

久方ぶりに自由に動かすことが出来る身体を持ったおれは背中から生やした翼で空を飛び太陽の光を浴びながら他者を喰うことだけを考えていた。

この人間界に顕現できた喜びを噛みしめながら。

しかし・・・此処は魔力を持った奴が多いな。己の餌を持った奴が。



邪悪な龍、ラドンは闇の大陸の上空を飛びまわり舌舐めずりしながらそんなことを考えていた。



ドヒュンッ!



と、音がし突然ラドンより更に上空、今まで眩しいぐらいに太陽の光が照っていた場所が突然翳った。



・・・?

己は雲より上空を飛んでいた筈だが?

疑問に思い自身より更に上を見上げてみると、





ゴォォォォォォ



頭上すぐそばに焔が迫っていた。



「黒焔だと?」



自身の焔のようなそれを見て驚くと同時にその焔を回避した。



「ちっ!(おれ)の存在を早速嗅ぎ付けたってわけか!お前がっ!」



そして何かを見つけたように上空の巨体を殺気の籠った瞳で見上げた。



『ラドンよ・・・血縁者として我がこの手で汝を討とう・・・せめてもの罪滅ぼしに・・・』



「はん!己にそんな口を利くとは偉くなったもんだな!黒竜(ニーズヘッグ)!」


己はかつて兄弟だった竜を見上げてそう叫んだ。


〜〜〜





「・・・!」



ミシルが何やら驚いて祈りを止めた。

(さっきランザーという奴を自分が掘った穴に埋めてそいつに向かって祈っていた)

怪訝に思った俺はミシルに何かあったのか尋ねようと、



「どうしたミシ・・・!?この感じは?」



したが俺は此処からそう遠くはない場所に嫌な雰囲気・・・魔力を感じた。

おそらくはラドンの。



「・・・戦っている?奴だけが・・・?」



ミシルの言うように魔力らしい雰囲気は1つしか感じられない。

しかもその雰囲気から感情を感じる・・・?

俺は何故かラドンが今現在どのような感情を抱いているかが分かった。


あいつは今怒っている。そして哀しんで・・・いる?

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