第4話〜魔物〜
俺の村は名前をカリュウ村といい、場所はこの火の大陸の最南端に位置する。
その名産品といえば、海に近いという地の利を活かして収穫の多い海産物が真っ先に挙げられる。
他の地域に行商に持って行く主な商品としては、一番近い村でも、大人の足で歩いて片道に最低3日は掛かるためやはり日持ちのする魚貝類の干物等が多くなるのは、まあしょうがない。隣村は海から遠いためそれらは毎回完売するらしい。
特徴を挙げるとすれば他には、農作物やら織物やらが主力商品とは言わないまでも、安定した供給を行えるので、近隣には固定客がついているらしい。
そんな感じで物についてはそれなりに他の地域と上手く取引をしていると村の行商人達は言っていた。
物以外でカリュウ村の有名なモノと言えば二つある。その内の一つには剣術が挙げられる。ここ数年でじわじわと有名になってきたという話だがそれには理由がある。
この大陸の首都であるカグツチという街で年一回開催される格闘大会でのここ数年の優勝者が、カリュウ村出身のヒノカ流剣術の使い手だということだ。
まあ、知り合いの姉ちゃんなんだが。
何でも噂によると華奢な見た目とは裏腹に鬼神の如き動きで物凄く強いことから人目を引き出身地や流派が他の大会参加者や観客から注目されたらしい。
優勝後、街にある城への士官の話、旅の用心棒、町や村等の警備、ついでに縁談が相当数本人へ舞い込んだらしいが全て蹴って今は街で悠々自適に暮らしているとその人のお母さんは言っていた。まあ余談だが。
もう一つの有名なこととは現在より何百年も前からの話で。
『世界の7大陸にはそれぞれの大陸に一本ずつ、神剣が刺さっておりそれが大地や生物を活性化させ、生活を豊かにしている。それを引き抜き手にした者は人であれ鳥であれ魚であれ神と等しき力を得るだろう』
という確信めいた、冗談のような、『七神剣物語』(ななしんけんものがたり)、という話がある。これは、言い回しや言語が違うにしてもどの大陸にも似たような話が伝えられているらしく、その話を基に、火の大陸初代覇王であるスサノオが大陸統治後に火の大陸の神剣を追い求めたという話が残っている。
結局、見つかったという話はなく(どの大陸でも)、近年に、とある探索方法が見つかるまでは、神剣探索についてはずいぶんと下火になっていたが、その新しい探索方法により、神剣らしき場所に大体の見当がついたということで、現在街では神剣探索隊が編成されているらしい。
その探索方法とは単純な話で、「神剣がある場所に近づくほど魔物が活性化するのではないか」という説をとある学者が以前に打ち出したらしく大陸中の測量と魔物の分布図を作成するため旅を10年程度し、最近漸く完成しそれを見当した結果、大陸の南側の方が明らかに魔物の質、量が高いということが判明したのだった。
だから、大陸の南側に神剣が刺さっている可能性が高いのではないか?との説が広まっていき、最南端にあるカリュウ村に何かしら神剣と関係があるのでは?という話が広まっていき、カリュウ村が大陸で有名になったのはまあ、大会優勝者の話と合わせ、偶々そんな時期が重なった、のだと思うことにしよう。
まあ、何故急にそんな事を思ったかといえば…
「トウヤ!なにボーっとしてんのよっ!右に回りこまれてるわよ!」
と思考しているとネクが焦ったように叫んでいた。
というのも昨日魚民と別れ海沿いの道を進んだあと、山道に入った俺達は今、魔狼の群れに囲まれていた。魔狼とは、見た目は狼のような、だが狼の体長を倍ぐらいにした(ざっと見て3mぐらいか)、全身真っ黒な毛に覆われた、自分達以外の生物は餌ぐらいにしか考えていない魔物の呼び名であり、並の人間が戦えば大人2人でようやく一頭と渡り合えるといった程度の強さの生物である。そんなやつが俺達を取り囲んでいた……十頭ぐらい。
いや、待て。数がおかしくないか。聞いた話では確かにこの生物の習性は数頭群れて獲物を襲うということだが、明らかに多いよな。いくらこのへんが大陸の南とはいえ活性化しすぎじゃないか。そう思いつつ俺は右側に近づいてきた魔狼へ対して腰から抜いた剣を横に薙ぎ払い魔狼を胴から真っ二つにした。
「ギャウンッ!!」
そんな鳴き声と共にその魔狼は倒れた。
「グルルルルッ」
「ウーーー」
「ガオン!ガオン!」
その様子を見た他のやつが俺達を遠巻きにしながら吠えてきた。
今にも飛びかかってきそうな体勢で。
「さすがにあれだけの数に同時に襲いかかられたらまずいな」
「あんた何言ってんの!?あんたが有無を言わさず切り捨てるから手持ちの食糧を蒔いてその隙に逃げようとしたあたしの作戦が台無しじゃない!」
とネクが言ってきた。
「いや、そうは言うけどな?それは一頭二頭ぐらいなら何とか通じる作戦だろ?さすがにあの数には足りないと思うんだが」
するとネクは、
「じゃあ、どうするの!?行商の人が持ってる魔物避けもないし、逃げ切れそうにもないし、どうしようもないじゃない!?」
と焦った様子である。
「まあ、落ち着け。俺の強さは知ってるだろ?あの程度の数どうってことないさ。」
俺が言うとネクは、
「ま、まあトウヤが強いのは知ってるけど。あたしが言いたいのは剣でどうにかなる数か?ってこと」
と言ってくる。
そこで俺は漸く合点した。こいつへは同じ剣術道場での剣技ぐらいしか見せたことがなかったっけ。
「違う。俺の本当の実力を見せてやるよ。下がってろ」
俺はそう言うと愛剣の炎斬へと意識を集中させ始めた。すると……
「えっ?なにこれ、剣が光り始めた?」
ネクが言う。
「ああ、これが所謂オーラってやつだ。このオーラを利用することによって、剣と俺の体は何倍にも強化することができる。ただ昔見たけどニルナ姉もオーラを使ってたぞ?知らなかったか?」
そう言うと俺はオーラを纏った炎斬をネクへ見せる。ちなみにニルナとは三歳上のネクの姉貴で、実は大会優勝者その人である。
「ニルが?確かに昔から強かったけど…」
と若干腑に落ちない顔をする。
「まあ、いいや。さて行くぞ、魔狼どもっ!」
そう言いながら俺は魔狼の群れに飛び込み斬りかかった。
ズバッ!ザシュッ!バキッ!
「グオーッ!」
「ギャン!ギャン!」
「クゥーン……」
そんな鳴き声とともに魔狼は全頭地面に倒れ伏した。
「まあ、こんなもんだ。強いだろ、俺?」
俺がそう言うとネクは、微妙に納得してなさそうな顔で、
「オーラって何かズルい…」
と結構心外なことを言っていた。いや、別にズルくはないだろ…
俺は軽く嘆息し旅を再開した。




