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第3話〜遭遇〜

 そいつは今まで見たこともないような姿をしていた。魚のような顔(といっても大きさは人の顔ぐらいあるが)、大人と同じぐらいの背丈(165〜170㎝程度)、手足に生えた鱗と青っぽいというか、緑っぽいというか何とも表現し難いぬめっとした皮膚、明らかに人間ではなかった。


「は、半魚人?」

 ネクがそいつを見てそう言う。


「半魚人?あれって魔物の部類に入るのか?確かに異形じゃああるが」


 ――そもそも、今の世でいうところの魔物の定義とは。


『人語を解さず人間へ害意を持つ異形の生物』

 とされている。つまり、こちらの言葉が通じずしかもこちらへ攻撃してきたり食料にしてこようとする生物が魔物というわけだ。

 だから、ものは試しだと俺はそいつに話しかけてみる。言葉が通じるかどうか。


「あー、えっとそこの奴、俺達に何か用か?」

 と、俺が言うとその半魚人?らしき生物は目を大きく見開いた。


「オマエ、俺を見て驚かないのかっ!?」

 何か言葉が通じた。


「い、いや、確かに見た目は人間じゃないけど、別に襲いかかってくるわけでもないしな。それよりも今お前が喋ったことに驚いたが」

 俺がそう言うと半魚人は、


「オレはこう見えてオレの一族では天才と呼ばれている。一族の中には、人語を喋れない奴も居るぞ?むしろ喋れない奴のほうが多いな」

 そんな流暢に返してきた。


「そうか、天才の一言で片付けるのもどうかとおもうが…別に俺達を食おうとしたり襲いかかってくるわけじゃないんだな」

 俺がそう言うとそいつは憤慨して、


「人間が人間以外の生物に対して偏見を持っていることは長の話や人間の書物などで知っているが、勝手に決め付けるな!そもそも俺達魚民(ぎょみん)は海藻や貝ぐらいしか食べない大人しい生物だ!」

「魚民っていうのか。まあ、お前の言いたいことは分かった。じゃあ、改めて聞くが俺達に何の用だ。まさか、ただ話しかけたかっただけか?」

 そう言うと魚民は、


「それもある。この道を人間が通ることは珍しいからな」

 と言った。

 するとネクが、


「そうか、ここはもう村の結界外になるのね。だからか…漁師の人達は普段は村付近の結界内で働いてるからね」


 ちなみに結界とは、かつて250年以上前に歴が始まった当初、この『火の大陸』を制覇した時の王スサノオが各地域を統治しやすくするために、結界技能を持った者、当時妖術師と呼ばれた者をかき集めて、当時存在していた集落毎に施していったもののことである。その結界の範囲を基準に現在の各村が作られていった。正式な呼び名は人口100人以上の集落を村、人口1000人以上の集落を町、人口10000人以上の集落を街という。街規模になると、俺の村では見たこともないような珍しい物がある。何年か前に来た行商の持ってきた、あの甘い菓子…またいつか食いたいなあ…


「それで、本当に何の用なんだ?確かにもの珍しいとは思うが、この道に全然人が通らないというわけでもないだろう。なんでわざわざ俺達に?」


「確かに、人間自体は何回か見たことはある。ただ俺の好奇心は並外れていてな、珍しい人間の(つがい)が見れて思わず興奮して近づいてしまった。俺達魚民は成人して時期がくれば、卵を産み出して子孫を残すが、オマエら人間は雄と雌が交尾して子孫を残すのだろう?だから交尾が見れると思ってつい近づいたんだ」


 と、いった。なるほど、つまりこの道は人が通ることもあるが俺達のように男と女が二人揃って通ったことはないと。それが珍しくてつい近寄ったと。納得だな。

 すると横の奴が


「な、な、な、何を言ってんのよあんたっ!?つ、つがいっ!?こ、こ、こ、こうびっ!?な、なんであたしとこいつが(つがい)でこ、こ、交尾しなくちゃいけないわけっ!?交尾するにしても、こ、こっちだって、段階とか準備とかそれなりに雰囲気とか必要なんだからねっ!?」


「うん、落ち着け。微妙に論点がずれてるぞ。あー、それと魚民?。俺達は別に(つがい)でもなんでもないぞ。ただの知り合いの男と女ってだけで、別にお前が期待することはなんにもないぞ。」

 そう言うと魚民は、


「そ、そうなのか。珍しいものが見れると思ったのだが…まあ、初めて人間と話せただけでもよしとしよう。」

 納得した感じだった。


「まあ、俺も珍しい奴と喋れてよかったよ。それと偏見は改めるわ。悪かったな。旅の途中だから、俺達はもう行くぞ。縁があったらまた会おうぜ」


 俺はそう言うと手を振って魚民に別れを告げ、踵を返して歩き始めた。


「……ただの知り合い…そうよね、そんなものよね……」


 横でネクが小声で何かボソッと言ったようだが、俺にはよく聞こえなかった。

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