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第2話〜旅立ち〜

〈暦255年〉

 いざ、出発しようとして家の庭先で佇んでいたら、ふと修行を始めた頃の記憶が頭を掠めた。



「そういや、あの頃はまだ自分の本当の能力も知らなかったな」

 軽く独りごちてみる。


「まあ、右も左もわからんようなガキだったからな。しょうがないか」


 その時後ろのほう、つまり家の玄関から大きな声がした。


「トウヤー!元気でやれよー!魔物に気をつけてなー!」


 親父も心配性だな。


「分かってるってー、父さん!それじゃあ、行ってきまーす!」

 俺も後ろを向き右手を挙げて大声で返す。


「さてと、行きますか」


 こうして俺は生まれ育った村を出た。この先起こるであろう様々な出来事に胸を躍らせながら。




 〜村の外〜


「……」

 そして今、感覚的に村を出て30分ぐらいもした頃だろうか、俺は何と言うか困惑していた。

 というのも、


「聞いてるの?トウヤ?まずはこっちの海沿いよりも山道を通ったほうが隣の村にずっと近いのよ?」

 ずっと話しかけてくる奴が居るからだ。


「いや、だからな、俺が聞きたいのは隣の村への近道じゃなくて、何故お前が村を出て此処に居るかということなんだが…ネク」

 するとそいつは何故か微かに目をそらしながら、


「だ、だから私も母様からちゃんと許可を取って村を出てきたって言ってるじゃない!」

 軽くキレながらそんなことを言ってきた。

 たしかにこいつ(ネク・カナワ♀)の母ちゃん(アオイ・カナワ♀)の大らかな性格なら、例え女の独り旅でも、大して気にせずに旅の許可をくれそうだが。ちなみにこのネクは、俺のお隣さん家の一人娘で、俺にとって所謂幼なじみってやつだ。しかも誕生日が二月ばかり俺より早い。そのせいかやたらと年上ぶってきやがるのがアレだが。

 はぁ…そんなことよりも、


「いや、俺が言いたいのはなんで俺が村を出た後にお前が後ろから追ってくるようなタイミングで現れたってことなんだが。お前はもう少し早く村を出ることができた筈だろう?」


 俺が言うと、こいつは何故か言い訳がましく、


「い、いや私も自分の誕生日に村を出ようとしたのよ?ただ、色々と都合が合わなかったっていうか、気がのらなかったっていうか、独りじゃ不安だったっていうか…な、なによ!こんな美少女と一緒に旅ができるっていうのに何が不満なわけ!?」

 急に逆ギレしてきた。

 不満っていうか、まあ確かにこいつの見てくれは身長155㎝程度で小柄だけど、腰まで伸ばした絹みたいなサラサラの黒髪に異常なぐらい白くて綺麗な肌、2年ぐらい前から急に大きくなりだした胸、にも関わらずやたらと細い腰、猫みたいな大きな黒い瞳と整った形の鼻や口、と傍から見たら間違いなく美少女の部類には入るんだろうが、いや入るのか?

 まあ、人口500人程度の村では同年代の子供は居らずいまいち基準がよく分からんが、そこは大して問題じゃない。


 俺の自由気ままな独り旅計画が……

 まくか?いや、それでもしこいつが魔物や山賊とかに襲われたらさすがに寝覚めが悪いな。

 はあ…


 まあ、とりあえず隣の村までは一緒に行ってそれから考えてみるか。規模が俺の村よりも5倍はあるって話だしな。


「分かった、分かった。一緒に行こうぜ。とりあえず隣の村まで。口入屋で仕事も探す必要があるだろうし、宿屋も探す必要が――」


 そこまで言って、異常な気配と聞いたことがない声が後ろから聞こえた。


 振り返るとそこには、顔が魚っぽく、体つきは人っぽい何かが立っていた。


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