第33話〜国綱〜
〜〜〜
ようやく報告にあった門らしき大きな建造物らしき物が見えてきた。
「ガロウ!あれでしょ?」
あたしが門を指差して言うと、
「ええ。あれで間違いないでしょう。それに報告書ではあのあたりで鬼族と魔神に出会い交戦したとか・・・此処からは特にお気をつけ下さい、姫」
真面目に仕事に取り組んでいる発言をした。
だが、
「あら、貴方は鬼族と戦いたいの?」
少し前の発言を思いだし、挑発的に言ってみると、
「はい!・・・・・・いえまさか。私は任務を無事に完了させることを最優先します」
・・・いい返事をしたあとに言われてもね・・・
「はあ。まあいいわ。兎に角あの門まで行きましょう!」
「はい」
と、あたしとガロウが門に近づいていると、
「!?・・・姫、あそこに」
「・・・ええ。歓迎されてるのかしら」
約百mほど離れた大きな門らしき建造物の付近を見ると、4人の人影らしきものが見えた・・・
〜〜〜
ある意味では狙い通りね・・・
デュカ・リーナは悪魔の魔力が途絶えたことを感じ、そう思った。
「でも・・・」
強くなりすぎではないかしら?
自製の魔石の力を取り入れたあのウォルスの生き残りの人間がまさかあそこまで強くなるとは・・・
あの人間と悪魔との戦いの際に感じた沸き上がるチカラの奔流・・・魔力量のみならばまだ悪魔に分があったように感じた。
しかし火喰い島で会った若い人間のようなチカラをあのウォルスの生き残りも身につけていた。
そして、私が消した国ウォルス、火喰い島や水の大陸の龍巣でと会うたびに強大なチカラを身につけていくあの人間・・・おそらくは私への怨みのために強くなったあの人間・・・
魔石に関しては自分で仕組んだこととはいえさすがに次に相対するときは倒されることを覚悟しなければ・・・それか先に神人に・・・
?・・・そう言えば神人らしき魔力もいつの間にか感じなくなっていたことに気づいた・・・
闇の大陸を出たのかしら・・・?
悪魔のように神人が戦うような魔力を感じずにいつの間にか消えたことに私は首を傾げた。
それはともかく水の大陸の人間があそこまで、ね。
元々私の目的、狼と獅子と悪魔への復讐、神人との再会のために水の大陸の一国ウォルスを滅ぼした。というのはウォルスの王家が何を思ったか、悪魔・・・ゲン・マドゥと契約を交わそうとしていたからだ。
最初に魔に堕ちた際には火喰い島で鬼族を増やしたり自分だけの拠点で隠遁していたが、100年程前に人間に転生した後は目的を果たすために様々な大陸に行き多くの情報を集めていた。
そんな風に色々な場所に情報の網を張っているとウォルスの話が聞こえてきた。ウォルス王の血迷った考えを知り、まあおそらくは隣国のレヴィアスに比べて技術的に後進していたための焦りからだろうが、すぐにウォルスに転送して赴き召喚した者とウォルス王を国民共々滅ぼした。
ゲン・マドゥにこれ以上戦力を増やさせないために・・・
私のように人間から亜人を造り出す術を使わせないために・・・
国を丸ごと滅ぼしたことは自分でも執拗にし過ぎた感もあるが・・・結果的には良かったのかもしれない。生き残りのあの者がゲン・マドゥを討ったのだから。
水の大陸の人間は本来身体というよりも頭脳や閃きに秀でている者が多い傾向にある。
だからこそウォルスの王も悪魔との交信ができるほどのある方法に辿り着いた、と言えるのだろうが・・・あの生き残りの人間は天才というやつなのだろう。こと戦闘において。
本当に思わぬ拾い物だったわね。
と、悪魔が消えたことで私はそんなことを考えていた。
そう言えば、と不意に思い出した。
余りにも大昔の記憶なので忘れていたが、かつて私が火の大陸から奪い去り火喰い島に置いていたあの刀は何処にいったのだろう。と
あれは本来あの島の守護者が持つ筈の特殊なものだが・・・今の島の代表者、四柱と言っていたあの者達は誰も持っていなかったしそれ自体が放つ魔力も特に感じなかった・・・?
まあ、鬼族を造る際には必要だったものだというだけで今の子達にはあまり関係ないか、と思い直した。
それよりも、
「神人は何処へ行ったのかしら・・・?」
デュカ・リーナは闇の大陸で1人そう呟いた。
〜〜〜
私は悪魔を討った後に1つの事実に気づいていた・・・
それは、
「やったな、ミシェール!これであとは闇騎士とデュカ・リーナだけだなっ!」
私が考えていると手を組んでいる獅子、ランザー・レオパルドが上機嫌にそう言った。
「・・・そうだな。それに、ゲン・マドゥの話ぶりだとやはり私の仇は貴様の知る鬼婦神とやらと同じ者らしい・・・肉体は違う、とは言っていたが・・・」
「んー?どういうことだ?同じ奴でも肉体が違う?」
「・・・さあ、な。それよりも貴様は平気だったのか?」
「ああ。それは余裕だったが。それより次の標的はどうする?」
「・・・そうだな」
次の予定を話しながらとりあえずその場を離れることにした。おそらく今の戦闘で闇騎士とやらには私達の魔力が感知されたことだろうから・・・
しかし・・・と、ミシェールは先ほど気づいたことについて考えた。
かつての記憶では、私はあそこまでのオーラの量を持ってはいなかった筈だが?
と、戦いを繰り返すたびに上がっていく己の強さに僅かな疑問を覚えた。
〜〜〜
「な、なんだと!女なのか?」
俺はフェンが何故そこまで驚いているのか分からなかった。
ミシルを見つけて、その後に風の大陸に行くということで俺とフェンの話はまとまったが、俺は水の大陸に来るときにネクが一緒に来る、と言っていたことをふと思いだし(ネクも俺と同じく異大陸に興味があるのだろう)また付いてくると言い出すだろうと思い、床に伏せているが先にフェンを紹介しておこうと思い、2人を会わせたわけだが・・・何でフェンはネクを見て驚いているんだ?
「あー、えっと。はじめまして。ネク・カナワです。トウヤから聞いたけど、風の大陸の、」
ネクが自己紹介をすると、
「あ、ああ。はじめましてわ、俺はフェン・クレアス風の大陸、風厳の里からやってきた・・・」
フェンも合わせて自己紹介をした。
俺がネクにフェンと一緒に風の大陸に行く予定だと話しお前はどうすると聞くと、
「もちろんわたしも一緒に行くわよ!」
予想通りにそう言った。
先に話を振ってて良かった・・・
「そ、そんなことより!」
?フェンが焦って言うが?
「どうしたフェン?」
怪訝に思いフェンに尋ねると、
「ト、トウヤとネクはもしかして恋人同士なのかっ!?」
?こいつは何をめんどくさいことを言い出すんだ?
確か前にも似たような話題を誰かに振られて、ネクがキレてたような・・・
俺はそのことを思いだし、ネクのほうをちらりと見た。
「え、えっと・・・こ、恋人だなんて・・・」
すると奴は俺のほうをちらちら見ながら何かを言い淀む素振りを見せた。
?・・・あれ?怒ってない・・・?
あの短気なネクが?
「こ、恋人っていうよりは、そ、その・・・」
やはり何かを言いたげに俺を見るが・・・?
と、不意にフェンが、
「恋人じゃない?ということはつまり、ふ、ふ夫婦っ!?」
何を勘違いしたのかそんなことを言い出した。
まずい・・・!
そんなことを言い出したら今度こそネクが癇癪を起こすぞ。
そう思ってネクのほうを急いで見ると、
・・・?
なんであいつは俺と目が合った途端に俯いたんだ?
「いや、別に夫婦じゃないぞフェン。俺達はただの幼馴染みだ」
まあ、熱があるかなんかで体がきついのだろうと思い俺がネクの代わりにフェンに答えてやった。
するとフェンが嬉しそうに
「そ、そうかっ!」
と言った。
が、
「・・・・・・・・・・」
何故かネクが俺を睨みながら口を利かなくなった・・・
何故そこでキレる・・・?いや、俺が言ったことが正しいんだけどな・・・
と、俺は嘆息した。
そのあと、何故ネクが不機嫌になったのかよく分からないまま俺はネクを宥め、俺達はネク完治後の今後の行程について話した。
〜〜〜
〜???〜
此処、か・・・?
己の魔力を他者に覚られないように消して態々此処まで移動してきたが・・・
・・・正確な位置を聞いておくべきだった、とシンド・ラギは此処まで来て軽く後悔していた。
「・・・奴の話だとこのあたりの筈だが・・・」
奴、とは同盟相手のランザー・レオパルドのことだ・・・
いつぞやの会談の際、闇の大陸の凡そ中心部に当たるこの辺りに想像を絶する強さの魔物が棲息しているという話を獅子から聞いたのだが・・・
「・・・何も居ない、か・・・」
辺りにあるのは見上げる程大きな巨木ぐらいしかない。太さは数百m離れてようやく全体が見える程であるし高さにいたっては頂点が見えないぐらいに高い、この・・・
「・・・これが生命の樹、か・・・」
巨木を見ながらそう呟いた。
闇の大陸の中心部に存在する(生命の樹)・・・日の光が滅多に差さないために闇の名を冠するこの大陸に、何故日の光を受けて成長する象徴とも言うべき、生命の、という名のつく樹がこのような場所にあるのか・・・まだ、己が人間だったころにとある冒険家の冒険記を呼んで疑問に思ったものだが、その冒険記によると元は別の大陸にあったものらしいがいつの頃からか気付かぬうちに闇の大陸に存在していたらしい・・・一説には何らかの目的のために神が別の大陸から闇の大陸に移し変えた、とのことだが・・・
「・・・だが、どうやって・・・?」
その巨体を維持しているのか、という素朴な疑問を覚えた・・・生命の樹といえど植物であるかぎりは太陽の光を浴びねばならないのではないか?と。
「・・・それよりも」
そもそも此処に来た理由はこの辺りに棲息する魔物に会いに来たということを思いだしそれらしい魔力を探ってみてみるが・・・
「・・・やはり何も居ないな・・・」
魔物を求めて此処に来た理由。それは更なるチカラを求めて・・・己の勘や剣の持つ不思議な力により、導かれるように居場所を移動し魔力を他者に覚られないように消したが。
そのすぐあとに闇の武と魔導王がぶつかり合う魔力を魔導王の居城に感じた。
そしてもう1つ、魔力とオーラの入り交じったチカラをも・・・己の力と似たような、いやそれよりも上のチカラを・・・・・・
そして、魔導王の魔力が完全に消え、闇の武ともう1つのチカラだけが残ったのを感じたとき、私は闇の武、獅子がついに他の三強を蹴落とそうとしていることを覚った。
何故か?私も時期が来ればそうしようと考えていたからだ・・・
移動しながら、かつての話を思いだし此処までやってきたわけだが・・・
「・・・無駄足か」
先ほどから辺りを見渡すが何も居ない上に何の魔力も感じない・・・
『・・・ル』
・・・?
ふと思った。
何の魔力も感じない、とは・・・?確かに此処まで来れば闇の大陸の端のほうに居る獅子やもう1つのチカラは遠すぎて感じないのは分かる・・・しかし此処に来る途中で大小や強さの様々な魔物に遭遇した・・・それらの魔力も感じない、だと・・・?
『・・・ルル』
そんなことがあり得るのだろうか?
・・・・・・!もしやこの場所は・・・?
『・・・グルルル・・・!』
「・・・!魔獣だと・・・?」
魔獣のような唸り声が不意に聞こえ、私は身構えた・・・
だが、やはり魔力は感じない・・・?
「・・・何処だ・・・?」
声はすれど辺りを見ても何も見当たらない・・・?
『ガルルルル・・・!』
「・・・っ!上か・・・」
上空に異様な気配を感じ、私は咄嗟にその場を飛び退いた・・・
ゴオオオオオッ!
「・・・黒い焔・・・!」
直前まで己が居た場所が黒色の焔に侵食されていくのを見ながら私は呟いた・・・
『・・・勘の良い生き物めが』
上空からそんな声が轟いた・・・
「・・・噂通り実在したか・・・黒竜・・・!」
私は上空に居る黒い巨竜に向かってそう吠えた・・・
〜〜〜
「それが神獣なの?」
あたしはフェニス・カハラと名乗った鬼族が透明な目に見えない器?らしきものに容れている小さな鳥のような生き物を指しながら言った。
「そうだ。先ほども言ったように我等に敵対する意志はない」
と、フェニス・カハラがふんぞり反って言うが。
先ほど後方の神官隊と合流して大きな門に辿り着いたあたし達はこの鬼族の4人と相対した。
しかし鬼族はアズト・ミタラの報告書とは違い最初から此方に敵対する意志がなく(まあ、報告書には此方からいきなり斬りかかった人物が居たのも事態を複雑にした要因とは書かれていたが・・・)此方に交渉を持ちかけてきた。
曰く、神獣はくれてやるからクニツナを寄越せ、と
そして長年の侵略には目を瞑るのでこれからは交流をしよう、という和平案をも。
大まかに言うとそんなところだが・・・
「貴様ら何を企んでいる?」
ガロウが訝しんでそう言った。
そうよね。条件もおかしいし以前はどうしても神獣を渡したくないような感じだったって話だけど・・・
「た、企んでなどいない!わ、我等は純粋に平和を求めてだな、」
「私が代わりに言いましょう」
フェニス・カハラが吃りながら言うのを遮ってこの場で唯一の鬼族の女性、ノルエル・ハザマが後を引き取った。
凄く大きな美人だ。180㎝はありそう・・・
「つまりですね、ーーーーーー」
ノルエル・ハザマが主張するには、神獣フェニックスは本来火の大陸を守護する存在なのでその所在が此処火喰い島だろうが火の大陸だろうが構わないらしい。先日アズト・ミタラ率いる探索隊が来た際に神獣を奪われまいと追い返そうとして戦ったことは完全に鬼族側の不手際だと謝罪された。
そもそも神獣を頑なに護ろうとしたのは侵略者、特に私達火の大陸の人間が攻めて来た際への最終的な切り札として置いておきたい、というのが最も大きな理由らしい。だから私達と和平条約を結びお互いに争いなく往き来できるようになれば神獣の存在意義も薄れるので神獣を手放すことも可能だということだ。
まあ、そこまではいいとしても問題はクニツナのほうだ。
火の大陸の覇王、初代スサノオが255年前に此の島から持ち去ったクニツナ・・・本来の名は鬼丸というらしいのだが、聞くところによると様々な特殊な能力を秘めた刀らしい。
私達人間には感じることの出来ないという魔力を刀自体が持ち、その切れ味は達人が扱えば大地すら2つに割るという。
その上・・・
「どう思うナシラ?」
「そうですのう・・・神獣も本物のようじゃし、ものは試しで、」
「やっぱりやってみるのが一番ね」
神官長のナシラ・カンダリに聞いてみるとあたしと同じ考えだった。ちなみに何故神獣が本物か分かったかというとナシラの持つ勾玉に反応したからだ(クニツナやガロウが話したという神獣火の竜にも反応したということなので間違いないだろう)
あたしと同じ考え、というのはクニツナの特殊なチカラの1つである、
「フェニックスよ、我が呼びかけに応えよ・・・!」
言葉の通じない生き物と意思疎通を図ることができるというクニツナの特殊能力。
それを目の前のフェニックスで実践してみる。
転生後しばらくの間幼獣状態のフェニックスは言葉を発することはできないからだ。
『・・・あなたはだれ?』
すると、不思議な声?があたしの頭に響いた。
本物だ・・・!
『あたしはシエル・スサノオ。あなたはフェニックスよね?』
『そうよ。わたしは火ノ鳥フェニックス。0歳だけど転生前の記憶はあるよ。・・・スサノオっていうのは前世で聞いたことがあるような?』
『記憶はあるのね?スサノオを聞いたことがある、っていうのはいつ?』
あたしはフェニックスの発言?に興味を覚えた。
『うーん・・・何百年前だったかは憶えてないけど・・・火の大陸を制覇したニンゲンの名前だよね?あなたはその子どもなの?』
『何百年・・・いいえ、あたしはスサノオの何代もあとの子孫よ』
『そっか。スサノオは人として生を終えたんだね』
『?スサノオ、は?』
『うん。思い出したよ。スサノオには強い友だちが3人居たんだ。その内の1人が人間じゃなくなってね・・・』
『?それはどういう?』
『わたしも見たわけじゃないから詳しくは知らないけど。火の大陸の獣に聞いた話だとーーーーーー』
!!?
それは驚くべき話だった。しかも、フェニックスは
『それにね。鬼族はそもそもーーーーーー』
鬼族の出生に関する話もした。
それを全て聞きあたしはフェニックスとの会話を一先ず終了した。
そして、
「この島の代表者はあなたたち4人よね?」
と、目の前の鬼族に話しかけた。
「そうだが、結果は交渉成立ということでいいのか?」
と、一際大きな鬼族ジン・ガトウが冷静な口調で確認してきた。
「まあ概ねはね。ただ即決はできないわね」
「なんだと!こっちが下手に出れば調子に乗りやがって!」
と、年若い(ように見える)鬼族、ロナン・サタクが怒鳴ってきた。
「よせ、ロナンっ!
・・・で、即決はできないとはどういうことだ?貴様が火の大陸の代表者ではないのか、闘神の血を引く者よ・・・?」
ジン・ガトウの言うとおりあたしはお父様から代表の権利を委任されてはいるが。
「そうね。まずは他文化の交流から始めましょうか。刀や神獣の委譲はお互い無しにしてね」
「・・・ほう。いいのか?貴様らは神獣を捕まえに来たのではないのか?」
「ええ。勿論神獣は欲しいけど。それ以上に刀・・・クニツナをあたしの独断で渡すわけにはいかないの。それに、」
「?なんだ?」
「あなたたち鬼族とまずは仲良くなろうと思ってね」
あたしは微笑みながらそう言った。
その際の鬼族の反応は、何というか四者四様だった。フェニス・カハラは苦々しい顔を、ジン・ガトウは特に表情が変わらず、ロナン・サタクは怒気を孕んだ顔を、そしてノルエル・ハザマはあたしと同じく微笑んだ。
・・・まあそれはそれとして。
鬼族が元は・・・
あたしはフェニックスから聞いた話を思いだし、今後鬼族との仲を深めるためにはどうすれば良いか頭を捻った。
〜〜〜
黒竜・・・黒焔を吐くその巨大な獣は絶大な魔力、強さを誇り倒した者は未だかつて居ないという・・・
私が危険を侵してまで黒竜に逢いに来た理由。
それは、
「・・・黒竜よ・・・私に力を寄越せ・・・」
『血迷ったか?弱き人間・・・いや魔物よ・・・』
「・・・弱き、だと?」
『・・・そうだ。汝は気づいているか?この空間は・・・』
「・・・魔力が使えないこと、か・・・?」
『そうだ。生命の樹、(セフィロト)は近づいた者の魔力を吸収する。汝も魔物なら感じるだろう?己の力が減少していることに・・・』
・・・確かに黒竜が言うように自身の魔力をまるで感じられない・・・おそらく此処を離れれば回復はするのだろうが・・・
「・・・だが、私は貴様を倒しチカラを手に入れる・・・!」
『汝は何を・・・?』
・・・黒竜は何を不思議がっている・・・?
「・・・貴様を倒せば私は新たなチカラを手にする、はずだ・・・!」
・・・私は言いながら剣を構え、オーラを全開にした・・・
『この力?純粋な魔物ではない、か・・・しかし、そういうことか・・・成程。話が歪んでいる、というわけか・・・』
「・・・?貴様は何を・・・?」
『汝が気にすることはない・・・今から死にゆく汝がな・・・!』
そう言うと黒竜は再度黒焔の息吹を此方へ向けて放った・・・




